2021/10/22 18:45

この先どんな年齢どんな状況になっても自分で自分の曲に救われるイメージがある

──さきほど “地獄の星” は新しく作ったとありましたが、他に宅録時代以外の曲は?

SACOYAN : ファーストだと、“ニベア” は2019年の春、バンドをはじめようと思う前に書いた曲です。 “食卓の間” はバンドをやろうと思ってからメンバーが固まるまでの間にできた曲。セカンドは “読み解いて” が2019年。さっき言ったように “地獄の星” がいちばん新しい曲で、これが唯一バンド結成後に作った曲です。それ以外はぜんぶ宅録時代からある曲です。

──宅録時代の曲は、古いものは10年以上前の曲だったりします。それをバンドでやろうとしたとき、古いなとか、この歌詞は今はそぐわないないと思うことは?

SACOYAN : それが不思議とないんです。昔の曲も、そのときの気持ちを歌っているのではなく、自己中心的な、根本的な、抽象的なことばかり曲にしてるからだと思います。おそらくこの先どんな年齢になっても、どんな状況になっても、結局、自分で自分の曲に救われるんだろうなっていうイメージがあります。ずっと抱えていく気持ちみたいなのを歌詞にしているから、いまこれ歌えないなっていうのはないです。歌詞を変えたりもしていないです。10年前の曲をやってるけど、感覚として古くなってるっていうのは一切なくて。そこは不思議なんですけど。

──自分のなかで普遍的な変わらないものが曲にある?

SACOYAN : そうなんでしょうね。私の曲には決め台詞みたいなものがなくて、そのときに思いついたムードとかぼんやりした感覚を、ぼやきみたいにしてる歌詞が多いと思っています。いわゆるみんなに対する応援歌とか、なにかを扇動するようなスタンスで曲づくりはしてこなかったから。ほんとうにチラシの裏に書くとか、つぶやきをとかを曲にしていて。でも私はずっとそれに支えられているので、自分のなかで変わらない部分を歌っているんだと思います。

──“流行りじゃない” サウンドは意図的なもの?

Takeshi : 意識的に作ったということはなくて、結果としてオルタナティヴになっているんだと思います。自分が普段よく聴く曲とも違う音ですし。曲に対していちばん良いと思うギター弾いたら、音をつくったらそうなった、みたいな感覚です。ライヴで自分が演奏して楽しいように作っていったら、結果として、自然な流れでこういう音になった。

みわこ : SACOYANの曲ぜんぶ大好きですし、大好きな曲を演奏しているだけです。私はお客さんがいるステージで演奏したら、それは自分たちの曲ではなく、聴いてるひとたちの曲になると思っているので、聴いてるひとが好きな、自分も好きな曲を演奏しているだけです。

原尻 : 俺はこれまでSACOYANの原曲はそれほどちゃんと聴いてないし、アレンジするときも弾き語りのやつを参考にしているので、いまの話で「あれ10年前の曲だったんだ」ってはじめて知ったくらい。自分のなかではすべて新曲・書き下ろしみたいなもので、常に新鮮です。時代感で作るとかは考えていません。自分もオルタナとかグランジとか大好きだから、やりたいジャンルと曲が一致している。自分のなかでは演奏していて、ずっと新鮮です。

SACOYAN : 私は他の3人よりも人生で音楽をやっていた時間が少ないし、やりたい気持ちがあるのに動き出せないみたいな時期もあって、自分のなかの音楽史だけで見ると、そんなに時間がたっている感覚がないんです。人生のうち音楽に関係ある時間をギュッと集めたらなるべくしてなった、みたいなものがライヴでできてアルバムが録れて。自分の音楽が好きで、タイミングが良かったから出せた、につきます。

──セカンドで他にアピールしたいことは?

みわこ : ジャケットも可愛い。最高!

SACOYAN : ジャケットにメンバー4人の星座が描かれているんです。私が獅子座で、たけちゃんが山羊座。店長が魚座で、みわこさんが牡牛座。その4体が……

原尻 : そうなの?!

みわこ : そういうことだったのか。

Takeshi : 俺も知らなかった。

SACOYAN : みんなの星座だよ! (笑)。私は占星術が好きで、人を星座で見る癖があるんです。星座というモチーフも好きだし。

『Gasoline Rainbow』 ジャケット

私は絶対に良い曲を書いてる、私にもやらせてよ、って

──今後の予定を教えてください。

原尻 : ライヴが5公演あります。10月23日の熊本、30日から横浜、東京、東京。そして最後が11月13日の福岡です。

──福岡のライヴ後はしばらくお休みですね。

SACOYAN : 来年1月に出産予定なんですけど、たぶん産んで半年か1年くらいは何もできないんじゃないかな。でも産む前に弾き語りのデモを撮って3人に渡して、触っておいていただこうかと。リハビリみたいに徐々にスタジオに入れるようになったら、さっそく3枚目のことを考えたいとか、勝手に思っています。実際に子供が産まれたらわからないですけどね。やめるとかはぜんぜん思ってなくて、やり続けたいです。

──休み明け以降も含めて長い目でみたバンドとしての野望はありますか?

SACOYAN : 中学生みたいですけど、CMに起用されたり、映画の主題歌になったり、大きなフェスに出たり、なんかロック・バンドみたいなことがしたいです。私がロックが好きだからこそ、そういうものに憧れがあります。憧れというか、ちょっと私にもやらせてよ、っていう図々しい気持ちもあるかも。

──そういう気持ちは宅録をしていたときから? それともバンドを組んでから?

SACOYAN : バンドを組んでからより一層強くなったかもしれません。でも宅録のときも、私は絶対に良い曲を書いているという自信が漠然とあって、それを使ってもらえないのはおかしいって思う20代前半もありました。すこしくらいやらせてくれよ、って。

──他のみなさんは?

みわこ : 私は良い曲をやり続けたいだけなので、SACOYANからのデモを待ってます。はやくデモこないかな。

Takeshi : こんな状況じゃなければ、海外で演奏してみたかったですね。

原尻 : SACOYANはもともとすごい良かったし、SACOYANSは可能性があるバンドだと、ライヴハウスをやっている立場で客観的に見ても思います。SACOYANの夢がかなうといいし、自分もそうなるような演奏をしないといけないなと思っています。海外の話もそうですが、コロナ禍じゃなかったらもうすこし違う展開があり得たわけで。そこは今後に期待したいですし、続けていこうと思います。

──最後に。

原尻 : 11月13日(土曜日)の福岡UTEROでのワンマン・ライヴは、お休み前の最後のライヴになります。たくさんの人に観てもらえたらなと思っています。全国から観に来て欲しいです!

編集 : 高田敏弘

ALBUMS

文 : 高田敏弘

2020年9月リリースのファースト・アルバム。アルバム冒頭、イントロのギターが鳴った瞬間に、このアルバムの素晴らしさを確信したリスナーは多いだろう。その確信は裏切られることなく ”偉大なお告げ” から “音楽の天才” へと展開される。どの曲も素晴らしいが、やはり出色は “ニベア” と “JK“ のメロディの美しさだ。アルバムは “JK“ の1分40秒におよぶノイジーなギターによるアウトロから唐突に終わる。聴いたものの心にSACOYANSの音楽というスペースを造り出したのち、それが鳴らないぽっかりと空いた空白を訴える余韻。ちなみに “JK“ はいわゆる “女子高生” のことではなく、SACOYANの友人のジュンコさんのこと。SACOYANが彼女のために書いた曲。

2021年10月リリースのセカンド・アルバム。徐々に霞が晴れ視界が開けていくようなアルバムのオープニング。それはすなわち “よりバンドになった” SACOYANSへと至る小路だ。“素敵な11月” の終盤、ふっと音が落ちる瞬間、演奏する4人の心と身体が同期するさまが目に浮かぶ。バンドだ。“読み解いて” のブリット・ポップ感にヤラれてしまうひとも多いだろう。“まぼろし” はインタヴュー中にもある〈MOOSIC LAB 2016〉グランプリ受賞作品の主題歌であり、当時音楽活動を休止していたSACOYANが数年ぶりに発表した曲でもある。歌、ハーモニー、アウトロのギターからのフェードアウト。すべてが切なく美しい。この曲でアルバムを終えても十分なはずだが、このあとに “のみものを買いに行こう” が続き、希望とともにこのアルバムは終わる。「だいじょうぶ だいじょうぶ だいじょうぶ だいじょうぶ」

ハイレゾ版『Gasoline Rainbow』が手に入るのはOTOTOYだけ! またOTOTOYでアルバムをご購入いただくとPDF版オジリナル歌詞カードがついてきます。

MV

【MV】SACOYANS -ニベア- “Nivea”
【MV】SACOYANS -ニベア- “Nivea”

【MV】SACOYANS -家- “HOUSE”
【MV】SACOYANS -家- “HOUSE”

LIVE SCHEDULE

SACOYANS 2nd Album “Gasoline Rainbow” Release Tour

2021.10.23 (土) @ 熊本 NAVARO
Open/Start : 18:30/19:00
出演 : SACOYANS, 田中事件, Mul-Let-Ct2, My Lucky Day, Sisley
詳細 : https://navaro.info/...

2021.10.30 (土) @ 横浜 B.B.STREET
Open/Start : 17:00/17:30
出演 : SACOYANS, gnkosaiBAND, THE ティバ
詳細 : http://www.bbstreet.com/...

2021.10.31 (日) @ 東京 秋葉原 CLUB GOODMAN
Open/Start : 12:00/12:30
出演 : SACOYANS
詳細 : https://club.goodman2020.com/...

2021.11.01 (月) @ 東京 渋谷 CYCLONE
Open/Start : 18:00/18:30
出演 : SACOYANS, BUGY CRAXONE, Half-Life
詳細 : http://www.cyclone1997.com/...

2021.11.13 (土) @ 福岡 UTERO
Open/Start : 17:30/18:00
出演 : SACOYANS, o/a 藤井邦博
詳細 : http://utero.jp/...

PROFILE

2010年より宅録音源を発表していた東京出身のSACOYANが福岡に移住。交流があったTakeshi、みわこ、ライヴハウス福岡UTERO店長・原尻と組んだご近所バンド。2019年10月、UTERO隣りのカレー屋〈加藤小判〉にて結成。アメリカンオルタナ要素とUK的メロディセンスがここではない広大な土地を聴く者に思わせ、大陸系バンドとしてカテゴライズされる。2019年12月よりライヴ活動開始。2020年9月ファースト・アルバム『Yomosue』、2021年10月セカンド・アルバム『Gasoline Rainbow』をリリース。

Twitter : https://twitter.com/TSacoyan
Instagram : https://www.instagram.com/sacoyans/
YouTube : https://www.youtube.com/channel/UCsl3kDrxlRgTfzCFp94_iBw

(左→右)
Yamamoto Takeshi : Guitar
みわこ : Drums
SACOYAN : Vocal, Guitar, Synthesizer
原尻 : Bass

この記事の筆者
高田 敏弘 (takadat)

Director。東京都出身。技術担当。編集部では “音楽好き目線・ファン目線を忘れない” 担当。

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.266 ロスレスをdigる

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.266 ロスレスをdigる

「ついに日本でやるんだ」──アジアの観客とアーティストたちが〈BiKN Shibuya〉で灯した光

「ついに日本でやるんだ」──アジアの観客とアーティストたちが〈BiKN Shibuya〉で灯した光

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.231 夏です

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.231 夏です

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.219 アズテック・カメラから、ウェブ経由、The 1975まで

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.219 アズテック・カメラから、ウェブ経由、The 1975まで

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.201 2022年をふりかえる

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.201 2022年をふりかえる

やりたいことが増えて満足してないです──バンドになったcolormalが目指す色彩と普遍

やりたいことが増えて満足してないです──バンドになったcolormalが目指す色彩と普遍

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.161 私立恵比寿中学と時と私

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.161 私立恵比寿中学と時と私

名盤を50年かけてでも作りたい──NaNoMoRaLが放つ、渾身の自信作『ne temo same temo』

名盤を50年かけてでも作りたい──NaNoMoRaLが放つ、渾身の自信作『ne temo same temo』

この記事の編集者

[インタヴュー] SACOYANS

TOP