OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.308 ダイヤモンド解散に寄せて
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
ダイヤモンド解散に寄せて
ダイヤモンドが解散する。彼らで最も有名な漫才はおそらくM-1でやった「レトロニム」。ナチュラルローソンがあるなら普通のローソンは不自然ローソンなのか? みたいな、派生した先の単語を元に戻してみる、というネタだ。わたしが好きなのは「手漫才」。手櫛から始まり、手でやりがちなこと手望遠鏡、手サンバイザー、手でやらないこと手歯ブラシまでいき、もうわけのわからない手肘という部位の名前が発生する。まあシュールといえばそうなのかもしれないけど、どの漫才も「なんなんだよこの言葉笑」というところから始まっているようなラフさがあって入り込みやすくて好きだった。特に野澤輸出の大喜利が好きで、彼の主催する大喜利は途中からお題が形骸化していく。そういう我が道を行ってもその先に面白いものがあればいいというゆるさには一時期救われたものだった。
野澤輸出は大の中島みゆき好きで、前のコンビの名前をエレーンにしていたほど。それきっかけでわたしも中島みゆきを聞いてみたのだけど、とにかく暗い。こんな曲名をコンビ名にしてはいけない笑。とはいえ「生きていてもいいですかと誰も問いたい」と歌う曲を背負って人前に立とうとする人間が誰かを笑わせようと言葉遊びをするのだから、そりゃあ好きになるよなとも思うのだ。だってそれってすごく孤独な行為だから。お笑いは世俗的な価値観の上で成り立つものなんだと思っていたけど、普遍的な感覚を深掘りして面白さを作っている人たちもいるんだということを、ダイヤモンドは教えてくれた。あと中島みゆきの素晴らしさも。これからも言葉で遊んでいるところを見せてくださいよ。ありがとう。
