OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.234
毎週金曜日に編集部セレクトのプレイリスト&コラムをお届けしている『OTOTOY EDITOR’S CHOICE』。8月は恒例のゲスト月間―OTOTOY Contributorsスペシャルです。第三週はOTOTOYニュース・チームの一員で、この春から連載コラムの「もらとりあむ漫遊記」が「上京編」となった田代芽生が、涼を感じながら夏を楽しむためのオススメ曲をお届けします。
2023 CONTRIBUTORS SPECIAL
儚い思い出と、ニッチな趣味を夏のお供に
2年前の初夏、大学で農業を専攻していた私は地元県北にあるワイナリーにて住み込みインターンシップに励んでいた。ほとんどの学部生が一般企業へ通う中、異質的なゼミに所属していた私は家から車で2時間以上離れた高原にあるワイナリーにお世話になるため、会社近くの民宿で1ヶ月間の共同生活をスタートさせた。
住んでいた地域は牧場・農業が盛んで壮大な草原が広がり、今まで生活を送っていた市街地とは真逆な環境だった。不安も抱えながら出掛けたインターンシップだったけれど、朝は鳥と牛の鳴き声で起きて、牧草畑が広がる中を涼やかな風に吹かれながら出勤、昼は葡萄の木の剪定をして、夜は働き疲れて21時には眠りにつくという、身も心も健康的な生活に心地よさを覚えてすぐに馴染んでいった。
ワイナリーでは畑仕事やワインのラベル貼り、瓶詰め作業などを体験。休みの日には民宿のご主人にカフェへ連れて行ってもらったり、片道徒歩30分のコンビニへ出掛けたり、時には自然豊かな地域特有? の特大サイズの虫たちに怯えながら眠ったりなど、とても貴重で豊かな生活を送っていたあの1ヶ月は白昼夢のようでもあり、今でも夏を感じ始めると必ず思い出す宝物のような記憶です。
あれから時が経ち、また新しい夏が来た。今年の夏は身の危険を感じるほどの暑さで出掛けることも億劫になり、あの時ほど夏を楽しむことは難しくなってしまった。それでもあの民宿生活の時のように、生い茂る自然と涼を感じながら夏を楽しみ続けたいと思い立ち、私が始めた夏のmyイベントは “ダム巡り”。
“ダム巡り” は、ただ車に乗りダムを見に行くだけと思われるかも知れないけれど一番のお楽しみは “ダムカード”。ダムカードとはカード式のパンフレットで、全国のダム管理所にて誰でも無料で貰うことができるもの。表面にはダムの写真と名前が印刷され、裏面には型式や総貯水容量に加え「ランダム情報」や「こだわり技術」が紹介されている。ダムカードの種類は600以上とも言われていてすべて集めるのは難しいけれど、トレーディングカードのように集めると少し嬉しくなるし記念にもなるニッチな代物。
冷房の効いた車に乗り、好きな音楽を流しながら山道を進んで目的のダムへ出発。ダムの壮大さと、少し怖くなるほどの高さに高揚感を覚えながら涼を感じ、帰りに管理所によってダムカードをもらう。夏の風物詩といえば? で浮かんでくるイベントとは楽しみかたが地味に思えるかも知れないけれど、夏のちょっとしたお出かけにおすすめです。
今回のプレイリストは、涼を感じながら夏を楽しむためのオススメ曲を選曲。茹だるような暑さが続く中でも心と体に余裕を持ちながら、たくさんの人にとって記憶に残る良い夏になることを願って。
文・田代芽生
