【In search of lost night】単純にクラブ流行ってますよね? 【前編】2023年も現場に繰り出す座談会
In search of lost night vol.04
In search of lost night vol.04
座談会 Ver.3『前編』
クラブにライブハウス、果てはSNS上に至るまで、散在されゆく音楽の「現場」。タイムラインや喫煙所での語りのような、忘れ去られていく現場の音楽にまつわるあれこれを、パーティーレポート、ミックス・レビュー、インタビューなど、さまざまな方向からアーカイブするための連載【In search of lost night】、なんとか季刊連載のペースとなりました第3回座談会。季節は移ろい春、鬱屈としたムードが少しは晴れようやく更新です。
vol.04と05は、前編後編で、 NordOst(松島広人)、山本輝洋、yukinoise、TUDAの4人による座談会を届けします。20203年の国内アンダーグラウンド・シーンは? 20代ライター、クラバー、DJ…ハイクラスとは縁遠い面々が等身大で感じた現場の雰囲気を雑多に語り合いました。
構成 : NordOST
O-EASTでCYKワンマンが成立するのって本当すごいね
yukinoise : 前の連載収録のとき話した〈Contact Tokyo〉クローズ問題あったじゃん(2023年9月17日クローズ)、その後どうなるかみたいな。その続きの話からしたらいいのかなって。後継とか。
NordOst : ある意味で後継の、系列の〈ENTER〉はどうですか? 僕はまだ行けてないんですよ。出音の良さとかの評判は聞いてて気になってるんだけど。
TOPIC
ENTER
https://entershibuya.com/
山本輝洋 : 〈ENTER〉良いですよ!
NordOst : 気になる、そろそろ行きます。ただ〈ENTER〉でも他の場所でも、活気が戻ったぶんトラブルとかあったりもするみたいで。
山本 : ちょっと前だったら冗談みたいなことも起きちゃうような…。まあ、良くも悪くも色んな人がクラブにまた来るようになった程度には活気が戻ってきた、とも言えますけど…(笑)。
yukinoise : 状況が戻ったことはもちろん良いことなんだけど、その反面気をつけないといけないことも増えたよね。
山本 : 単純にクラブ流行ってますよね?
yukinoise : 流行ってる。〈O-EAST〉がクラブ営業みたいなのにめっちゃ力入れ始めてるし。年末にCYKの6周年パーティーに遊び行ったんだけど、パーティと場所がめちゃくちゃ合ってたの。上階の席でスポーツ観戦みたいな感じで見れるのとか、サブフロアとして東問屋も使えるのとか。メインではCYKらしく盛り上がってて、サブではハウス以外のサウンドを届けてるって構図が良かった。6年続けてるからとはいえ、O-EASTでワンマンが成立するのって本当すごいね。びっくりした。
NordOst : しっかり誠実にやり続けた人たちがちゃんと然るべき場所を作れてるってのは素晴らしいことだなと思った。勇気もらえました。
山本 : でも誠実であり続けることって結構難しいんでしょうね、人としても音楽に対しても。
NordOst : 常に本気度がキープできてないと達成できないことでもあるし。
yukinoise : しかも仲間と足並みを揃えながら活動を続けるってそう簡単にできることじゃない。彼らがコロナ禍を経ても活動を6年続けてるのは同世代としても嬉しい限りだし、同じくリスペクトしているプレイヤーもオーディエンスも多いはず。だからこそ〈WWW X〉のKotsuワンマンも実現できたことなんだろうな。
TOPIC
CYK 6th Anniversary. ALL NIGHT LONG "and You!"
2022年12月3日(土)
会場:Spotify O-EAST / 東間屋
出演:O-EAST : CYK -All Night Long Set- / 東間屋 : Himawari, midori, ShioriyBradshaw, YOSHIHAARAA / VJ: Kenchan, Manami
TOPIC
Kotsu All Night Long set -Reflection-"
2023年3月11日(土)
会場:WWW
出演:Kotsu All Night Long set -Reflection- / VJ: kenchan / Toshifumi Kiuchi (LAID BUG) / artwork: Kotsu / YOSHIROTTEN / Shun Ishizuka
TUDA : ENTERはあの回くらいですか? K8 (TYO GQOM)さん主催のパーティ。
山本 : それぐらいですかねー。〈Gravity Bongo〉出させてもらって、めちゃくちゃ楽しかったです。
yukinoise : 年明けにWWWのカウントダウンに行ってからJun Inagawaくんのカウントダウンパーティー<MAD MAGIC ORCHESTR>にもハシゴしたけど、あの時はニューイヤームードに包まれてたからまだENTERの雰囲気そのものをわたしは掴みきれてなかったかも。
NordOst : ようやく安定してきた頃だろうから、今行ったらもうちょっとテンションとか掴めそうっすね。
yukinoise : オープン間もない時期ってお店特有のバイブスや個性が醸造される前の段階だと思うから、もうちょっとだけ箱の背景とか文脈が確立されてったら更に面白くなると思う!
山本 : それで言うと既にちょっとずつ面白くなってきてますね!
NordOst : 平日に深めのパーティーをやってくれてるのはすごくありがたいっすね。例えばたまたま渋谷辺りで予定が空いたとして、大箱クローズ以降絞られてた遊びの選択肢が一個できたっていう役割的な話でも。それは多分デカ過ぎない規模感だからこそ開ける、小回りの効いた良いパーティだろうし…なのでそろそろ遊びに行きたいっすね。
(追記:その後JUN INAGAWA氏が手掛けるTVアニメ「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」試写会~同氏主催のMAD MAGIC ORCHESTRAに参加。テクノが映える音響と全体に漂うハイソ感が渋谷っぽいバランス感で、良かったです。)
TUDA : 音鳴りの感じどうだった?
山本 : STUDIO X (旧Contactのメインフロア) のシステムがそのまま持ち込まれてるんですけど、何というか、やっとあるべき規模に収まってる感じがしましたね。
NordOst : STUDIO Xの音も好きだったけど、空間に対して抜けが良すぎてたようにも感じてたからそれは楽しみ。
山本 : STUDIO Xの広さに見合う音量に上げられた状態でしかあのシステムの鳴りを体験出来ていなかったんですけど、ENTERで聴いてみたらまた違う良さがあって。あれぐらいの規模の空間の方がベストな鳴り方に落ちついてるような気がします。
NordOst : 200人くらい入る? ENTERって。それとも(下北沢の)SPREADぐらいの規模感です?全然分からん…。
yukinoise : 200人は入らないでしょ(笑)。
山本 : 不眠遊戯ライオンの感じを想像してもらったら大体想像付くはずです。同じ建物だし。
yukinoise : ライオンは2時までだけど、ENTERがアフターアワーズでその後のパーティーを用意してくれてるから助かる。グローバルハーツの会員なら割引で入れるし、系列のWREP、BRIDGE(新宿、渋谷)も行き来できるし。遊び方の選択肢としてもっと気軽にハシゴ出来たらいいのにな~って思ってたから、回遊のシステムはありがたい!
NordOst : 今後の遊び方の選択肢のひとつとして、ハシゴも流行りそう。良いっすね。
山本 : ハシゴはいいですよね~。行き来する時間の感じも楽しいし。
yukinoise : ずっと同じ空間にいたら、ムードに慣れすぎて他の刺激が欲しくなることもあるよね。
NordOst : 自分のノリと場のトーンの反りがだんだん合わなくなってきたりする瞬間もあるからね。だから個人的には、やっぱ遊ぶ場所には逃げ場があった方が嬉しくて。無いならドリンク代で再入場できたり、ハシゴが気楽に出来たりすると遊ぶ側としてはありがたいんですけど。
身体的な面白さを体験する現場たち
山本 : 3~4年ぐらい前かな、韓国のクラブに遊びに行ったことがあるんですけど。
yukinoise : いいな~どこ行ったの?
山本 : Trippy(注:2019年に閉業)とMODECiとCakeshopだったかな。韓国って基本的にハシゴで遊ぶのが普通みたいな感じで、どこ行ってもスタンプとかブレスレットとか毎回普通に巻いてくれて、あちこち行き来出来るし、店もずっと開いてるからすっごい遊ぶの楽しくて。コロナ以前の話なので、今はもう少し変わってしまっていると思いますけど。
NordOst : この間HAIZAI AUDIO君が韓国に海外公演をしに行ってて、話を聞いたところ韓国ユースは割とインターネット寄りの趣味だったとしてもすべからくみんな遊び方の仕上がりが高いらしくて(笑)。元気でバイブス高いしお酒もめっちゃ飲むし、みたいな。
yukinoise : K-POPのトラックの質がどれも日本に比べてめちゃくちゃ良いみたいなことも背景にあるのかな、となんとなく思う。日本の文化圏だと耳慣れたサウンドとか共感性を求めるけど、LE SSERAFIMやNewJeansの楽曲には結構ダンス・ミュージックが取り入れられてるし、ポピュラーな立ち位置のアイドルですらアーティスト的なプロップスをサウンドで示してる気がする。
山本 : 日本よりも欧米的な価値観ですよね。さっきの話もそうですけど、最近クラブで遊びはじめたぐらいの人たちって一度箱に入ったら最後まで出ちゃいけないって思ってるみたいで、そういうのは日本特有の感覚なのかな、とか。
NordOst : 「クラブを出たら最後」くらいのテンションというか(笑)。まあ、お金も無いし…。
TUDA : 特にバンドのイベントとかそうだけど、ライブの延長線上で遊んでいると深夜帯の感覚もあまり無いだろうし。ライブアクト観に行ってから一旦出てどっか行く、みたいな感じは無いんじゃないですかね?
NordOst : 20歳くらいの世代の人でパーティとかイベントを主催するような層全員の共通の課題っぽいのは、お客さんにDJとかクラブ・カルチャー的な側面の魅力を伝えられきれないことみたいで。ナイトって建て付けでもやっぱりライブアクトをしっかり固めて動かさないと難しい面があったりとか。極論。
yukinoise : やっぱDJはBGM、転換DJ要員だと思われちゃうことがまだあるのかな?
山本 : 「そういうもんだ」って感じで聴くような感覚もあるのかもしれないですけど、やっぱりなかなか踊ってくれないこともありますよね。伝え方の問題もあるかもですけど…。
NordOst : たぶん、これはもう単純にコロナの弊害というか。今ようやく深夜のクラブに、それこそ2022年くらいからやっと行けるようになった世代くらいの人だと体をどう動かしたら楽しいか、みたいな身体的な面白さが体験できてないんだと思うんですよね。色んな楽しみ方があるのが理想的だし、それはそれで全然良いと思いますけど。