REVIEWS : 023 バーチャル・ミュージック──インターネット発、リアルな音楽の現在形(2021年5月)──松島広人
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毎回それぞれのジャンルに特化したライターがこの数ヶ月で「コレ」と思った9作品+αを紹介するコーナー。今回は松島広人による、すでにマスな規模とも言える、ひとつのカルチャー / シーンとなっているインターネット発の音楽の流れ、その現在を指し示す9枚を紹介!
OTOTOY REVIEWS 023
『バーチャル・ミュージック(2021年4月)』
文 : 松島広人
Y ohtrixpointnever 『planet1995』
2020年より、ヒップホップ・クルー、WATER DAWGSのメンバーとして鮮烈なデビューを飾った若き才能、Y ohtrixpointneverの最新シングル。ストレートなバンド・サウンドにクリアなエレクトロニックを融合させた、初夏の今こそ聴きたいフレッシュな感覚の1曲。インターネット・カルチャーを通過した世代ならではの、デジタルなミクスチャー感覚に心が洗われる。挑発的でユーモラスな名義に反し、ピュアな実直さを感じさせる良質のサンプリング・ミュージック。
Nanoray 『Zapper』
アメリカ・ネブラスカ州オマハのプロデューサー最新作。ブレイクコアを主体にしたナード感溢れるサンプリングに、ベース・ミュージックやエレクトロニカ、トランスなどの要素も内包した傑作。タイトルが意味するのは、「テレビなどのチャンネルを頻繁に変えるタイプ」を意味するスラングでもあり、「ビデオゲームのビームレーザー」といった意味も。膨大なジャンルを行き来するコラージュ感覚に魅せられる1枚だろう。 CDR、HAIZAI AUDIOなども出演する日本のオンライン・イベント〈世直しギグONLINE3〉に出演予定もあり、国内勢ともクロスする活動に今後も目が離せない。J-CORE復権の波は、海外から押し寄せつつある?
Neurolucifer 『Virtual Cyberia Experience』
ドリルン~ブレイクコア~IDMを得意とする正体不明のアーティスト、Neuroluciferの最新作。数年前から海外を中心にリヴァイヴァル的盛り上がりを見せる『Serial experiments lain』(1998年に発表された雑誌・アニメ・ゲームで制作されたメディア・ミックス・コンテンツ)をフィーチャーした作品で、タイトル通り「架空のサイベリア(『〜lain』に登場するアンダーグラウンドなクラブ)」を表現したもの。 Bandcampではコンピレーション・アルバムとしてリリースされており、そちらは楽曲追加でヒップホップ・アルバムの“デラックス盤”のような拡張版の雰囲気。Infinite Cloudscapes、OONMOOM7882、mitrizu、PeKaNo、alkalineといったバーチャル感覚に溢れたアーティスト陣が参加し、主人公・岩倉玲音の「遍在」をより一層感じさせる内容は視聴必須。