2024/11/29 19:00

REVIEWS : 089 ヒップホップ (2024年11月)──アボかど

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ3ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。驚愕の更新頻度を誇る自身のnoteを中心に、その他、各音楽メディアなどで、ヒップホップ〜R&Bについて執筆中のアボかど。本コーナーではR&B Lovers Clubの一員としてR&Bの新譜に関しても書いてもらっていますが、今回はもちろんヒップホップの、ここ3ヶ月のエッセンシャルな新譜を9枚レヴューしてもらいました。

OTOTOY REVIEWS 089
『ヒップホップ(2024年11月)』
文 : アボかど

Baby Kia 『I PRAY YOU DIE』

アトランタヒップホップ最前線。トラップ・ミュージックの聖地であるかの地から、また一人奇妙なラッパーが登場した。まだ10代のベイビー・キーアは、威圧的なトラップやプラグのビートに乗せてアグレッシヴ極まりない荒くれたラップを聴かせる。直球のアルバム・タイトルからして攻撃的だが、とにかく終始ブチギレのキレッキレ。その濁った発声はメタルやパンクなど他ジャンルのファンも虜にし得る強烈な魅力を放っている。サウンド的には正統派のアトランタヒップホップなだけに、尚更その異質さが際立つ。ヒップホップに限らず刺激的な音楽を求める方も、メインストリームのトラップ好きの方も必聴だ。

DC The Don 『REBIRTH』

ミルウォーキー生まれでLA拠点のDC・ザ・ドンは、エモーショナルに歌い上げるようなラップスタイルの「SoundCloudラップ」の系譜にあるラッパーだ。しかし、単なるリル・ウージー・ヴァートやジュース・ワールドのフォロワーで片づけられないのがそのビート選びの面白さ。典型的なトラップビートは全くないわけではないがほとんど使わず、インディロックやエレクトロニカ風味、アフロビーツなどを織り交ぜてポップにまとめ上げている。メロウ路線が続く中盤の流れが特に素晴らしい。熱心なヒップホップファンは「HOLY MATRIMOTY」でのザ・ネプチューンズへのオマージュ的なビートに思わずニヤリとするはず。

L U C I D「REVALATOR」

気付けば現行ブーンバップのトップに君臨しているエルシッドのニュー・アルバムは、次から次へと飛び出す刺激的なビートに迫力ある低音のラップをどっしりと乗せていくヘヴィ級の作品。ジャズやソウルというよりもロックに近い質感のビートが多く、ブーンバップ文脈の作品ながら「昔ながらの」という言葉は似合わないエッジーなサウンドが詰まっている。プロデュースにはシンセポップデュオからソロのブーンバップ・プロデューサーへと不思議な転身を遂げたチャイルド・アクターのほか、〈ブレインフィーダー〉からのリリースやアール・スウェットシャツへのビート提供などで知られるサムアイアムらが参加。相方ビリー・ウッズも2曲で声を添えている。

[連載] DC The Don

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