REVIEWS : 058 VTuber(2023年5月)──森山ド・ロ
毎回それぞれのジャンルに特化したライターがこの数ヶ月で「コレ」と思った9作品+αを紹介するコーナー、REVIEWS。今回はVTuberをメインに活動するライター、森山ド・ロが登場。様々なジャンルにまたがったVTuberによる楽曲のなかから、9作品をセレクト。
OTOTOY REVIEWS 058
『VTuber新譜(2023年5月)』
文 : 森山ド・ロ
存流 『ARU』
囁くような透き通る声を奏でながら、ダイレクトな歌詞を力強く刻んでくるヴァーチャル・シンガー、存流、待望のファースト・アルバム。楽しさと寂しさが絶妙に混在する楽曲『さよなら』から、MIMIがコンポーザーとして参加した『まってるよ』の旋律の美しさ。そしてなんといっても『いんさいどぐるうゔ』のグルーヴィーで自由度の高い演奏と、サビで豹変したかのように力強さを感じさせる凄まじいヴォーカルに衝撃を受けた。ヴォーカリストとしての性質は言うまでもなく高く、自身の世界観の構築を、楽曲を通して上手く形成しており、楽曲の幅もとにかく広い。ファースト・アルバムにして、存流のバイタリティが詰め込まれた1枚となっていることには間違いないだろう。
[ahi:] 『Time Machine (feat. 花奏かのん)』
数多くのアーティストとのフィーチャリングも精力的に行っている[ahi:]。その中で、バンド・ミュージックを主体とした花奏かのんとの共作は、[ahi:]の音作りの良さが凝縮された作品となっている。開幕から綺麗なピアノの旋律が終盤まで楽曲を彩っており、淡いダンス・ミュージックとして色んな仕掛けが見られる。花奏かのんのヴォーカルも、[ahi:]の壮大なトラックに見事に彩りを与えていて、優しい歌声を淡々と奏でている。強弱あるトラックに対して、平常的に言葉を口ずさむように歌い上げており、歌詞がくっきりと聞き取りやすい。冬の季節感もダイレクトではなく、ピアノのメロディでさりげなく演出していたり、オールシーズン・ヘビロテしてしまうくらいの魔力を感じる楽曲だ。
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海月シェル 『Mer』
作詞・作曲から、編曲まで自ら手がける個人勢Vtuberの海月シェル。音楽に限らず配信業もコンスタントにこなすマルチな才能を持つ彼女の2ndアルバム『Mer』。実はすでに3rdアルバムも最近リリースしたばかりであり、個人勢で配信業をやりながらとは思えないほど、リリースの頻度は極めて高い。ダンス・ミュージックやアニソン、そしてボカロなど様々なルーツを感じさせるトラックと、キャッチーでしっとりとしたメロディラインが魅力的。自分がやりたい音楽をとにかく追及したような印象が強く、特に『Ready steady go!!!』は聴いているだけで楽しんで歌っている姿が浮かび上がってくるほど。季節感とアップテンポなサウンドが癖になってしまう。