HACHI 『Midnight blue』
コンポーザーとのマンツーマン作品の中でもトップクラスに好きなのがHACHIと海野水玉のコンビ。そのふたりが一蓮托生で作り上げた至高の1枚が『Midnight blue』。2ndシングル『Rainy proof』から始まったタッグは、それぞれが持つ音楽性、そしてメッセージ性のケミストリーがとにかく素晴らしい。“似ている”というわけではなく、お互いが楽曲を制作していく中で、寄り添い合えた時の完成度のクオリティは凄まじい。バラード調の楽曲が多いHACHIとそれを活かす海野水玉のメッセージを音楽に落とし込む能力が存分に発揮された1枚。特に『バスタイムプラネタリウム』は、綺麗なギターの音とは裏腹に、人によってはえぐられてしまうようなリアリティあるメッセージを、HACHIがぼやかすように歌い上げている。
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雨ニマケテモ 『un-Lock』
もうヴァーチャルのカテゴリにしてもいいのかわからないほど、界隈のバンド・ミュージックの中でもずば抜けた音楽を突き通している、雨ニマケテモの2ndアルバム。ぬゆりとの共作で話題を集めた『愛です。嫌いです。』や『A9A9A9』をはじめ、前作の『Palette』と比べると、クールで疾走感ある楽曲が多く並んでいる。特に1番最新のシングルカットである『introduction』が個人的に大のお気に入りで、ヴォーカルSHiNOの表現力の拡張が著しい。淡い幻想との隔たりを、音やヴォーカルの鋭さでかき消すような哀愁がとにかく心地良い。楽曲の雰囲気はガラッと変わりつつあるものの、聴いている者になんだかんだ寄り添っているような根本的な要素は変わってはいない。歌詞を彩るファジーさと、オーバーキルのような感情の浮き沈みを表現したSHiNOのヴォーカルは新たなステージへと向かっている。
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TEMPLIME and 星宮とと 『Escapism』
昨年は『skycave』といい、今回ピックする『Escapism』といい、彼らが生み出したアンセム“ネオンライト”を擬似リバイバルさせたような作品の連続に悶絶させられることが多かった。2021年の『HYOJO』や『TIMESURF』でバンド・サウンドを明白にダンス・ミュージックへ落とし込んだ新境地はそのまま、『Escapism』は原点回帰に近く、懐かしさを感じさせるサウンドがずらりと並んだ。星宮ととの耳に残るような絶妙なメロディと、TEMPLIMEのはちゃめちゃな音数のトラックが上手く融合している。新しさを感じつつも、リバイバルの要素も感じさせるバランスはさすがとしか言いようがない。この絶妙さこそがTEMPLIME and 星宮ととの強さだと改めて感じるが、ある種ファンからすると係累を断てないような不思議な感覚に陥ってしまう。