「アイドルは人形じゃダメなんですよ!」──神宿・塩見きらが語る、ポップ・カルチャーへの愛と理想のアイドル像

原宿発の5人組アイドル・ユニット、神宿。OTOTOYのコラボ連載〈神宿 road to success!!!〉第19回となる今回は、塩見きらにソロでのインタヴューを実施。最近のポップ・カルチャーにまつわる話から、ひらがなかみやどの話や最新曲「FANTASTIC GIRL」についての想いなどたっぷり訊いちゃいました。そして、彼女が想い描く「アイドル」の形とは。
最新曲「FANTASTIC GIRL」ハイレゾ配信中!
INTERVIEW :塩見きら(神宿)

2019年に神宿に加入して以降、塩見きらはパフォーマンスだけでなく、作詞の面でも力を発揮していった。今回は「FANTASTIC GIRL」のリリースを記念して、今作でも作詞を担当した塩見を招いてソロインタビューを実施。とはいえ、楽曲のことだけを聞いても面白くないので、最近プライベートで感じたことや、ひらがなかみやどについて、彼女が思う理想のアイドル像についてなど、闇鍋のように質問をごちゃごちゃ詰め込んで話を聞かせてもらった
インタヴュー&文:真貝聡
撮影: YURIE PEPE
庵野監督の命を懸けている感じは本当に心を動かされました
──今日はたっぷりと時間をいただいてまして。
塩見:本当ですか? あー、緊張します(笑)。
──緊張します? もうソロインタビューも慣れたんじゃないですか。
塩見:いやいや、そんなことないですよ(笑)。
──最近は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と『花束みたいな恋をした』が話題ですけど、塩見さんはなにか観ました?
塩見:それで言うと、『エヴァンゲリオン』も『花束みたいな恋をした』も観ました!
──お!どうでした?
塩見:どちらも素晴らしかったですね。『エヴァ』は3回観たし、『はな恋』はもう1回観に行きたいと思いつつ、ノベライズ本は買いました。
──どっちからいきますか? 時間はあるので、両方お聞きしますけど(笑)。
塩見:アハハハ、そうですね。どちらも観ました?
──『エヴァ』は観てないんですよ。そもそもテレビ版も途中で観るのやめちゃって。
塩見:それはどうしてですか?
──みんなが言ってるほど感動できてない自分がいて。
塩見:アニメって話の途中で「この後はこうなっていくんだな」とか「このふたりは結ばれるんだろうな」とか、そういう先の展開が読めちゃうとつまらないし、感情移入ができないんですよ。でも『エヴァ』はそうではなくて。予想できない展開も魅力的だし、主人公たちの心情にフォーカスして、みんなが共感できる。気づけば世界観にのめり込んでて、デッカイ使徒が戦っている場面にさえ感情移入しちゃうみたいな。そこがすごく面白いなと思うし、庵野(秀明)監督はすごいなって思います。
──初めて『エヴァ』を観たのはいつですか?
塩見:高校生の時ですね。それこそ私もみんなから「観た方が良い!」と言われて、何となく観たけど、正直あんまりのめり込めなかったんですよ。なにかきっかけかな? ずっと家に引きこもっていた時に、アニメを一気見することにハマって。気づいたら虜になってました。
──世間がハマる理由も分かりました?
塩見:分かりましたね。ギミックが多いんですよ。「あそこってああいう伏線が回収されているよね」とかファンの間でいろんな考察があって、それを読むのも私は楽しかった。ゲームの実況動画を見て「こうやって攻略するんだ」とか「こんな手法があるんだ」と、より魅力を発見してプレイしたくなる感覚と一緒で。アニメ版を1回観て、YouTubeで考察動画を観て、もう一度アニメを観て「これってこうじゃない? 」といろんな感情が湧き出てくる面白さがありますね。
──僕もいくつか考察を読んだら、回が進むにつれて「監督の心労とか感情と相まって、作品もカオスな画になっていく」みたいな投稿を目にしたんですけど、どうなんですか?
塩見:監督のエゴがめちゃくちゃ盛り込まれているというか、そこも含めてエンタメだなと思った。『プロフェッショナル 仕事の流儀』に庵野監督が出ていらしたんですけど、番組を観てから、また『エヴァ』の印象が変わったんですよ。なんか、すごく命を懸けているんですよね。その姿勢が素敵だなって。私もあんな風にアイドルを全うしたいと思った。自分はアニメとか映画を観るたびにすごく影響を受けるタイプなんですよ。そういう意味では、庵野監督の命を懸けている感じは本当に心を動かされましたね。

──『はな恋』はどうでした?
塩見:恋愛映画ってしょうもないな、と私は思っちゃうんですよ。男女が恋愛をして喧嘩をして。
──また仲直りして。
塩見:そうそう。そういうのがしょうもないと思っちゃう。『はな恋』はストーリーだけ見ると、普通の恋愛の話かなと思う。ただ、あのサブカルの感じとか、出てくる固有名詞とか、趣味が合う人はめちゃくちゃ刺さっちゃうんだろうなって。例えばナンバガ(NUMBER GIRL)のTシャツを着ていたり、きのこ帝国の「クロノスタシス」を歌っていたり、そういうのが自分の青春と重なっちゃう人はすごくいると思った。私もきのこ帝国が好きだから「クロノスタシスを歌ってるよ!うわぁ、イイなあ」って。コンビニに帰る途中で男女のカップルが歌いながら帰るとかあるの!?そんなのないよ!と思いつつ良いなぁって。
──めちゃくちゃハマってるじゃないですか。
塩見:ふふふ。それと要所要所、心情をナレーション風に喋ってるけど、そのセリフが文学チックというか、言い回しが素敵だなと思いました。「雨の音をドライヤーの風がかき消してくれた」みたいな表現が好きだなって。すごく刺さりましたね。
──この前、映画館へ行ったら女性同士とかカップルが多くて、僕はひとりでキュンキュンして帰りました
塩見:私もひとりで観に行ったら、周りはみんなカップルだらけで「うわぁ……アウェイだ」と思いながら鑑賞しました(笑)。私、映画はひとりで観に行きたい派で、他人と観て感想を言い合うのはちょっと恥ずかしいと思っちゃう。だけど、この前『エヴァ』を(一ノ瀬)みかさんと観に行って、上映後にランチをしながら「あそこはああだよね!」なんて話をするのが楽しかったんですよ。こういう楽しみ方もあるんだな、と発見しました。
──それは『はな恋』を観てて思いました。二人で川沿いを歩いてパン屋さんに行くシーンとか、就活の話をしながらご飯を食べるシーンとか、そういうのをしてこなかったけど「あったら、こんな風に楽しかったんだろうな」って。
塩見:あー、なるほど。
──「20代前半の恋愛ってこういう感じだよね」みたいな。
塩見:ああいう恋愛をしてこられたんですか。
──えっと……夢ではあったけど、結局そのレールには乗れなかったです。
塩見:アハハハ!なるほどね。ああいうのを見ると、確かに良いなって思うけど……私はそういうわけにもいかないし(笑)。現実的に難しいですね。

──誰かのじゃなくて、みんなのアイドルですからね。
塩見:例え自分が自由の身になったとて、そういう恋愛をしようと思うのかな? 多分、面倒くさいと思っちゃうかもしれない。
──恋愛に対してネガティブな発言が多い(笑)。
塩見:他人を見てると、恋愛って面倒くさいと思っちゃうんですよね。相手の気持ちを考えて、気遣いあって。それがしょうもないなって思うんですよ。こんな言い方をするのは、私がまだ世の中とか恋愛を何も知らないからですけど……。
──今の段階ではそう思っちゃうわけですね。
塩見:そうですね。だけど『はな恋』はすごい好きだったし、こんな私でも世界観に浸れました。
──オリジナル脚本を務めた坂元裕二さんは50代。だけど今作は10代や20代の若者を中心に支持されていて、多分好きなシーンも共通していると思うんですよね。観る人の心をくすぐるセリフを考えて、見事にみんなの心を射抜くのは、とんでもなく爽快だろうなって思う。
塩見:そうですよね。それはライヴも同じで、演者側は「ここで感動させたいよね」と緻密に考えて構成しているわけじゃないですか。そう考えると、映画は90分とか120分の中で「ここで感動させて、ここで盛り上げて、最後にもう一度感動させて」といろんな感情の流れを計算しているのがめちゃくちゃすごいと思う。
──感動させるための滑走路を作ってるわけですもんね。
塩見:そうなんですよね。みんな何となく感動してるわけじゃない。それを作り手は受け手側にバレないように、魔法のようにギミックをかけるのが正解じゃないですか。だから面白いなと思いますね。
