正直に言うと「アイドル」を追求すればするほど、よく分からなくなる
──ドラマはなにか観ました?
塩見:ドラマ……最近はなにがありましたっけ?
──『俺の家の話』が話題になりましたよ。
塩見:全然テレビを観れてないですね。『プロフェッショナル』とか絶対に観たい番組は録画するけど、リアルタイムでドラマとかバラエティを観ることはできてないです。
──『プロフェッショナル』が好きだったら、NHKオンデマンドがオススメですよ。過去の放送も観れるし、ドラマも充実してますし。
塩見:そうなんだ。なにか面白いのはありました?
──今さらなんですけど、最近は『あまちゃん』を全話観ました。
塩見:面白いですか? 私は朝ドラを観たことがなくて。
──抜群に面白かったですね。海女さんの話もあるんですけど、むしろアイドルとか芸能界の話が色濃く描かれているんですよ。田舎で芸能人のようにモテはやされた子が、上京してアイドルの世界に入るとさっぱりで……みたいな。
塩見:そうなんだ!観てみたいです。朝ドラって朝に放送するじゃないですか。私、朝が弱いし、準備でバタバタしてるから絶対に観る余裕がないんですよね。
──とにかく面白いですよ。内容はふたりの同い年の女子高生がいまして、ひとりは可愛い海女さんとして人気になり、もうひとりは田舎のミスコンで優勝したことで注目されるようになった。ミスコンの子は上京してアイドルになる夢を抱いてたんだけど、紆余曲折あって海女さんの方がアイドルとして大成するんですよ。
塩見:へー!面白そう!
──これって芸能界でもよくあるなって。
塩見:あぁー、確かに。本当にアイドルになりたかった子が上手くいかなかったのか。
──実際にアイドルをやっている側としては身近に感じます?
塩見:んー……どうなんですかね!?確かに、この世界は運ももちろんあると思う。私はアイドルにすごくなりたくて夢を掴んだ側だけど、振り返ると運が良かったのかもしれないです。
──理想は高かったですか。
塩見:「こうなりたい」みたいなことですか? 最初はあったのかなぁ。だけどオーディションをやっていくうちに、自分の理想とかプライドみたいなものを全て捨てなきゃいけなかったんですよ。それができなかったら受からない、というのは何となく感じていたかもしれない。だから自分を全部捨てて、泣きながら笑いながらやるしかなかったです。そこに気づけるかどうかは重要かもしれないですね。
──まさに『あまちゃん』で今の話が出てくるんですよ。
塩見:おぉ!!
──アイドルになりたかった子は、理想が高すぎてプライドを捨てられなかったんです。だけど、海女さんの子は理想も何もないから、与えられた試練に一生懸命になれた。
塩見:そうなんですよね。素直さはすごく大事だと思う。だって、正解なんて自分では中々分からないじゃないですか。だから誰か導いてくれる人も大事だと思うし、その人に素直についていくことも大切だと思う。私はオーディション期間中、プライドを捨ててた。振り返ると、それは大きかったかもしれないですね。
──すぐに捨てられました?
塩見:んー、捨てられたかな? 自分にすごく自信がなかったし、それでもなにか変えたい思いが強かったから、がむしゃらにやって楽しんで、これで無理だったらしょうがないと思ってました。

──オーディションの話で言うと、同じ候補生の話も聞きたくて。これは塩見さんか本人たちしか語れないと思うんですけど、かみやどの解散についてどう思ってます?
塩見:話を聞いたのは解散発表の直前で、詳しく知ってるわけではないけど、色々と大変なこともあったんだろうなと思う。私も加入して大変なことがあったけど、他の4人が引っ張って支えてくれたから、神宿として2年続けられていると思うんですよね。ひらがな(かみやど)のみんなは、全員が同じスタートラインから始まったじゃないですか。だから葛藤しながら、一緒に戦いながら必死に頑張っていたんだろうなって。私がどういう言い方をすれば良いのか分からないけど、ひらがなを応援しているファンの方からしたら「ひらがなのメンバーが神宿だったら、人生が違ったのかな」とかいろんなことを考えるだろうし。逆に、私がひらがなだったらどうだったのか? とか考えるけど。6月にかみやどとしての活動は終了してしまうけれど、それまでの日々と未来はこれからの行動でなんとでも変えられると思うというか。とにかくがむしゃらに、それこそプライドを捨てて楽しんでほしいなって。……ん〜、難しいですね!上から言ってるつもりは全然ないんですけど……。
──慎重に言葉を選びながら答えてるのは伝わってますよ。
塩見:たまに神宿のライヴを観にきてくれた時に顔を合わせるぐらいしか、みんなと会う機会がないんですけど。これから2マンもあるし、その時にいろんな感情が動いてなにか変わるきっかけを生み出せるようなライヴができるといいなと思っています。それを神宿とかみやどで作り上げられたらなって。

──解散の話に繋がりますけど、前回のインタビューで「アイドルで居続けるためにはなにか必要か? 」という話をしたじゃないですか。改めて何だと思います?
塩見:そうですよね。あの時、私はその答えが見つかっていなくて。「結局、アイドルって何なんだろう? 」とか「ずっとアイドルでいるにはなにか必要なのか? 」とか考える度に、あの時の問いがずっと頭の中で巡っていたりして。正直に言うと、アイドルというものを追求すればするほど、よく分からなくなる。「アイドル」って言葉があるということは、正しい定義があるのかもしれないですけど、「こういうものでありたい」と思って走っていくよりは、アイドルは何なのかを模索しながら、自分たちで定義し続けることがアイドルで居続けるために必要なことじゃないかな、というか。
──うーん、もっと具体的に言うと?
塩見:神宿が何年も活動してきて、ずっとファンの方がついてきてくれる理由は、私たちが日々進化し続けているからだと思うんですよ。最近になって「楽曲の雰囲気が変わったよね」とか「みんなのビジュアルが変わったよね」と言われることが多いですけど、最初から追いかけてみると、神宿は常に進化しているんですよね。今と昔を比べると、急に変わったように見えるかもしれないですけど、その時々でみんな変わっているんですよ。だから、ずっと進化し続けることは必要じゃないかなと思ってます。逆に、同じことをやっていたら飽きられちゃうと思う。だからこそ、常に私たちが新しいものを見つけていかなきゃいけない。それを体現し続けて楽しんでもらうことが、エンターテイメントを届ける立場として必要なことじゃないかな、と思います。

──人って1日ごとに老いてるわけだから、進化はしていると思うんですよ。ただ、芸能の世界は1日分の速度で進化するのではダメで、1日で3日分も4日分も進化しているように見せないとダメな世界なんですよね。
塩見:おっしゃる通りで……そうなんですよ。一日一歩では衰退しているように見られちゃう。その怖さはすごくあります。常にすごい速度で進化し続けなきゃいけないプレッシャーというか。
──アイドル雑誌のインタビューだと「前とどこが変わったのか? 」という質問を毎回聞かれないですか?
塩見:聞かれますね(笑)。「前と今で心境の変化はありますか? 」とか「なにか変わったことはありますか? 」と聞かれますけど、毎回だと「んん〜……何て答えよう」っていう(笑)。
──アイドルの場合は新作リリースと関係なく、コンスタントにインタビューを受けるから、毎度答えるのは大変ですよね。
塩見:アイドルの良さは自分の進化を一緒になって応援してくれて、楽しんでもらえるのが1つの醍醐味。だから「しおみぃはこんな風に変わったんだ。俺も私も頑張ろう」と思ってもらいたいし、だからこそ常になにか言えるようにしなきゃ!とは思います(笑)。大変だけど、必要な質問なのかなと思いますね。