リアルとバーチャルが交わり合う、音楽という交差点──〈打奏驚蛇 vol.2〉ライヴレポート
2023年7月7日(金)、リアルとバーチャルのそれぞれで世界で活躍するアーティストの、互いのカルチャーが混じり合うライブイベント「打奏驚蛇」が新宿MARZで開催されました。OTOTOYでは、おやすみホログラム、貝と蜃気楼、nyankobrq&yaca、tomodatiの4組がそれぞれの個性をぶつけ合って作り上げた、熱いイベントの模様をレポートでお届けします。
前回の〈打奏驚蛇 vol.1〉のライヴレポート
LIVE REPORT : 〈打奏驚蛇 vol.2〉
取材&文 : 森山ド・ロ
写真 : 神宮司
2023年7月7日(金)、異色のライブイベント『打奏驚蛇 vol.2』がライブハウス新宿MARZで開催された。第2回目となる『打奏驚蛇 vol.2』は、おやすみホログラムの兎馬フィグとバーチャルシーンで活躍する小宵(貝と蜃気楼)が主宰となり、バーチャルとリアルアーティストとの異色のライブパフォーマンスが展開されるライブイベントとなっている。2回目では、おやすみホログラム、貝と蜃気楼、nyankobrq&yaca、tomodatiの4組が出演。これは第1回の時もそうだったが、異色という点で最も重要なのは、音楽性で、ライブハウスのイベントではあるが、別にバンドミュージックが主体となっているわけではなく、本当に多種多様なジャンルの音楽性を持つアーティストが参加している。そんな異種格闘技のようなライブイベントのレポートをお届けする。
トップバッターには、第1回目でもパフォーマンスを行った兎馬フィグ(おやすみホログラム)と小宵(貝と蜃気楼)のタッグ。主宰を務める2人がトップバッターとして登場し、会場を温めていく。おやすみホログラムの『fire』のイントロが流れると、兎馬フィグと小宵の息の合った掛け合いが鳴り響く。ステージ上をリズミカルに動きながら軽快に歌唱する兎馬フィグと、ステージ後方のスクリーンに映し出された小宵は笑顔を振り撒きながら息を合わせていく。このリアルとバーチャルの視覚的ユニゾンのライブスタイルも打奏驚蛇の特徴だろう。1曲目を歌い終わると、軽いMCを挟んで出来立てほやほやの新譜『nova』を披露。先ほどの『fire』とは打って変わって、アップテンポなバンドサウンドが会場内を駆け巡る。曲調にリンクして、2人のギアも1段階上がったかのように、力強い歌声が繰り出されていた。激しめなサウンドでしかも新曲であっても、しっかりとハマりを効かせて歌い上げる姿を見ると、2人の相性の良さを改めて実感させられるようなステージだと感じた。
続いて登場したのは、nyankobrq&yaca。文脈的にはバーチャルでの活動が印象強い2人ではあるが、ライブスタイルに関しては幅広くパフォーマンスを行っている。この日はリアルの姿で登場し、8曲を歌い上げた。ライブ形式はイベント内容や共演者によって色々変わるにせよ、ライブの場数自体は多いだけあって、煽りやライブの流れはスムーズで、ライブ全体の構成はかなりラフなスタイルではあったものの、洗練されたものだった。そして、ヒップホップを主体とした楽曲が並ぶものの、様々な雰囲気の楽曲を織り交ぜ、曲調で緩急をつけてオーディエンスを飽きさせないような選曲も絶妙だった。開幕『Poison』から『性癖』でメローなスタートダッシュを切ると、『AntiPiracyScreen』でギアを上げていく。『色んな雰囲気の曲をやるユニットなんですけど、ついてこれるかな!』とyacaも語っていた通り、本当に様々なジャンルの楽曲が無造作に展開されていく。
ライブ中盤からは、ソロのパートを交互に歌っていく。yacaの『Surikizu』『無期限活動』、そしてnyankobrqは『コーヒーはあなたと共に』『GEAR feat. をとは』をテンポよく歌い上げていく。一緒に楽曲制作を行うことが多い2人ではあるが、ソロになると楽曲だけではなくライブの見せ方もまた違う雰囲気が感じ取れてワクワク感はずっと継続されているようだった。最後には2人の名刺がわりと言っても過言ではない『twinkle night』を披露。会場のオーディエンスとの掛け合いもありながら、充実感溢れる内容でnyankobrq&yacaのステージは終了した。
3番手に登場したのは、エレクトロでオルタナティブな楽曲を世に放つ3ピースバンドのtomodati。すでに熱気が渦巻く会場を目の当たりにし、『これからノンストップで死ぬほどダンスミュージックかけるんで、ぶち上がっていこうぜ!』と中村むつおが呼びかける。同時にステージを真っ赤なライトが覆い尽くすと、1曲目『PIKA DON』を披露。エッジの効いた歌詞に、重低音の組み合わせが、会場を瞬く間にロックする。そのまま休む間もなくアップテンポでメロディアスな『B A D D R E A M S』が展開され、今度は緑のスポットライトが縦横無尽に暴れ回る。曲を重ねていく度に、オーディエンスの熱気は跳ね上がるように上昇していくのが一目散にわかった。続いて披露した『You just like me』は、VJのsadakataがメインボーカルを務める。これまで以上にキャッチーな楽曲ではあるが、思わず体が動いてしまうようなダンスミュージックの基盤は変わらぬまま。
MCを挟むことなく、いつの間にか『今夜悪いことしようheard techno mix』へとシフトされていく。この日はバンドセットでのライブだったが、DJセットでのライブもできるtomodatiらしいライブの運び方で、まさに”死ぬほどダンスミュージックがかかっている”状態が継続していく。『ZETSUBOFANCLUB』では、客演のカナミルが登場し、ツインボーカルで会場を湧かせていく。キャッチーなHOOKに加え、重めのダンスミュージックが融合された楽曲で、1度聞くだけで思わず癖になってしまう。メロディと純粋に音に酔いしれる時間が提供され、そのまま新曲の『touch you』、最後に『Let me sing a sad song』と怒涛のダンスミュージックでtomodatiはパフォーマンスを終えた。この日、ライブにおけるインパクトは間違いなくtomodatiの圧勝だろう。
ラスト前は、前回同様バンドセットで登場した貝と蜃気楼。開幕『落日』のギターイントロが流れるのと同時に会場からは大きな声援が飛び交っていた。そのままボーカルの小宵の叙情詩がギターの旋律を掻い潜るかのように投げかけられていく。そして1年前の初ライブからどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか期待が高まる中、それを煽っていくかのように前回の一発目に披露した『空になれ』を披露。ボーカル小宵の躍動感がはっきりわかるほど、それに並行して感情の込め方や表現力の進化がバンド全体から感じられた。そこから少し雰囲気が変わって『失楽園』を披露。がなりの効いた小宵のボーカルと高揚感を煽るような轟音のギターが組み合わさっていく。3曲目を終えた時点で、バンドメンバーの紹介が入り、その流れのまま『スカーレット・パレード』に続いていく。『スカーレット・パレード』は個人的に小宵の歌声が1番際立つ楽曲となっており、少し妖艶で中毒性のあるフロウに小宵のボーカルとしてのポテンシャルが発揮されている。
ここから貝と蜃気楼のパフォーマンスもラストスパートに突入していく。今の季節にピッタリな『熱帯夜』を披露し、会場は静かに左右へリズムをとっていく。情緒的な楽曲との相性が抜群なイメージがある貝と蜃気楼だが、季節感のある楽曲もバンドの世界観へ上手く落とし込んでいる。時間が過ぎるのは一瞬で、あっという間に最後の楽曲『亡日』が披露された。はるばる遠方からライブに訪れた友人の好きな曲だからとアナウンスされたが、まさにラストらしく小宵の感情的表現が炸裂した1曲となった。オーディエンスは、無意識にリズムに乗りながらも、音や声を聞くことに専念しているようにも思え、小宵の歌声とバンド全体から鳴り響く激しい音楽にのめり込むようにしているのが印象的だった。
計4組のパフォーマンスが行われ、『打奏驚蛇 vol.2』も最後のパフォーマンスを迎えた。もちろんラストを飾るのは、おやすみホログラム。1曲目に披露した『note』ではいきなりボーカル3人のハーモニーが飛び交う。前奏ではカナミルが『いい夜にしましょう』と言葉を投げかけ、おやすみホログラムのバンドセットが始まった。淡い青のライトがステージを照らしていく中、小刻みにリズムを取りながらカナミル、兎馬フィグ、マドちゃんが躍動していく。続いて『nights out』では、一気にギアを上げていくようにハードなサウンドがうねりをあげ、それに呼応するように力強いボーカルが鳴り響く。そして間髪入れずに流れるように人気曲『ghost rider』に続いていく。キャッチーなサビでは、ボーカルに合わせて手拍子が会場から鳴り響き、ラストには会場全体で合唱が巻き起こる。会場だけではなく、ステージ上の高揚感が高まっていくのがわかるほど、音に合わせて激しく体を動かしていく。MCパートでは、主宰の兎馬フィグからの言葉で『今日はこの世で私が1番楽しみにしていた』と語られ、主宰自らが1番楽しんでいくまさにおやホロらしいスタンスで会場は笑いに包まれた。
最初のMCが終わり、パフォーマンスも終盤戦に突入していく。グルーヴィーなサウンドが特徴的な『planet』が披露されると、より一層ボーカルに力が入っていくのがわかった。叫びのような歌声をあげるカナミル、そして兎馬フィグとマドちゃんはそんなカナミルのボーカルを包み込むようにハモったり、時には同調して歌い上げていく。おやホロらしいメロディアスでテンションの起伏が激しい『亜空間』、定番曲である『ニューロマンサー』が続けて披露された。そして『打奏驚蛇 vol.2』の最後は、『Count Zero』。最後ということもあり、会場のボルテージは最高潮に上がっており、踊り狂うオーディエンスの光景が印象的だった。まさに異種格闘技のようなライブイベントではあるが、音楽という共通点によって集められたアーティストたちをこのような形で一斉に体感できるイベントは少ないだろう。年に1回というスパンで開催されているイベントだが、この先も続けてほしいと切実に願えるような時間を体験できた。
セットリスト
打奏驚蛇 vol.2
2023/7/7(fri)
@新宿MARZ
出演 : おやすみホログラム、貝と蜃気楼、nyankobrq&yaca、tomodati
●兎馬フィグ(おやすみホログラム)、小宵(貝と蜃気楼)
1.fire
2.nova
●nyankobrq&yaca
1.Poison
2.性癖
3.AntiPiracyScreen
4.Surikizu
5.コーヒーはあなたと共に
6.無期限活動
7.GEAR
8.twinkle night
●tomodati
1.PIKA DON
2.B A D D R E A M S
3.You just like me
4.今夜悪いことしようheard techno mix
5.ZETSUBOFANCLUB(カナミル客演)
6.touch you
7.Let me sing a sad song
●貝と蜃気楼
1.落日
2.空になれ
3.失楽園
4.スカーレット・パレード
5.熱帯夜
6.亡日
●おやすみホログラム
1.note
2.nights out
3.ghost rider
4.planet
5.亜空間
6.ニューロマンサー
7.Count Zero
出演アーティストの音源、配信中!
INFORMATION
●おやすみホログラム
■公式HP http://oysm-hologram.com/
■公式ツイッター https://twitter.com/oysm_hologram
●貝と蜃気楼
■公式ツイッター https://twitter.com/CLAM_AND_MIRAGE
●nyankobrq&yaca
■Yaca公式ツイッター https://twitter.com/C_Yaca
■nyankobrq公式ツイッター https://twitter.com/nyankobrq
●tomodati
■公式HP https://tomodati.me/
■公式ツイッター https://twitter.com/tomodati