【Save Our Place レポート】MOROHAの新たな挑戦──〈日程未定、開催確定 TOUR〉に込めた想い
新型コロナウィルスの感染が拡大する中で、オーナー柿沼実に今のリアルな現状を聞いた「小岩BUSHBASHの現状」は、予想通り多くの注目を集めた。同じくミュージシャンも苦しいはずだ。音楽だけで生計を立てているミュージシャンにも話を訊いてみたいと思っていたところ、MOROHAが〈日程未定、開催確定 TOUR〉という新しい挑戦を行うとのことで、インタビューを申し込んだ。
いつこの状態が戻るかもわからない。間違いなく新しい世界になっているだろう。そんな中、我々は必死に頭を使い、変化していかなくちゃいけない。アフロの言葉を読んで、外には出れないけど、何か皆様のヒントになれば幸いだ。
MOROHA全国ツアー〈日程未定、開催確定 TOUR〉
先日、新型コロナウイルスが与えた影響、葛藤を表現した曲“COVID-19”を自主制作でリリースしたMOROHA。彼らが新たに全国ツアー〈日程未定、開催確定 TOUR〉を開催することを発表した。このツアーはイベントの延期や中止が続出する中、困窮を極めているライブハウスにツアーの会場費をMOROHAが先払いし、平穏を取り戻した時に開催される。
MOROHAの〈日程未定、開催確定 TOUR〉に関する詳細はこちら。
INTERVIEW : MOROHA (アフロ)
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 西田健
──今回の企画の内容を教えてください
アフロ : 自分達の職場でもあるライヴハウスが今、イベント中止、延期によって今後の営業が厳しい事を知った。なので会場費を先払いして日程は未定だけどツアーを発表する。これからもMOROHAを続けていく上で、寄付は無理だけれど会場費の先払いだったらできるんじゃないかなと判断しました。
───つまり会場となるライヴハウスだけを発表して、ツアーの日程は出さないということですか?
アフロ : 出さない。というか、この状況がいつごろ収束するか見えない状態なので、日程は出せないよね。
──たとえば3000円のチケットで会場のキャパが70人だとしたら、いつも通りの会場費をお支払いするということですよね。
アフロ : そう。
──ライヴハウスにとっては、今はまずお金が必要だから先に渡すと。
アフロ : ライブハウスの為にというより、口座に眠らせている現金があるなら必要なところに充てようと。今後の自分達の為にも。
──身を削って先に払うんだ。
アフロ : あくまで先払いなので身を削るって感覚はないかな。会場の人と話をしていると、節々にライヴハウスの意地を感じるし。寄付とか恵んでもらうようなのは嫌なんだよなっていう人もいて、そういう気持ちは個人的には凄くわかる。ただ「前払い」はその人達と対等でフラットである事を保つのひとつの方法でもある気がしている。俺達も音楽で食っていかないといけないから、必ずツアーで稼ぐぞという意気込みはもちろんあるし、損する気はさらさらない。
──なるほど。この企画の中で他にやりたいと思っていることはありますか?
アフロ : ひとつやりたいと思っているのは日程未定の状況だけど、ライヴハウスのアドレスでメール予約を受付を始めようと思う。客足が今はないけど、行きたいという気持ち自体がなくなったわけではないという事が可視化できるかと。お客さんがメール予約を通じてライヴハウスに意思を送れるのは良いなと思って。
──なるほど!
アフロ : 今は多分、客さんもお金がないし今回は参加したいという意志だけ。日程が決まったら改めて会場からメールが行くシステムでその時に貰う返信で正式に予約完了。入場料は会場に入る時に払ってもらうという。平穏を取り戻した時に、お客さんにお金を頂くのがいいんじゃないのかな、という着地になった。
──この企画は他のアーティストにもやってほしいと思っていますか?
アフロ : そもそもこれはメンバーもスタッフも少なくて維持費がかからない俺達だからできることだろうなとは思っていて。めちゃくちゃ売れていたらキャパの関係上、会場費も高くなってやれないかもな、とも思う。今、皆が自分にフィットする方法を模索しているんではないかと思う。
配信は配信費用、設備が結構かかる
──音楽で食っているミュージシャンとして、いまはどういう状態なんですか?
アフロ : 俺たちはまず新曲二曲出したので、そこでしばらくの自分たちの食扶持は確保した。あとは、ライヴ配信かな。でも配信はちゃんと見せよう、音を聴かせようとすると、配信費用、設備が結構かかるのよ。投げ銭で頂いた分はまずは経費に回っているんだよね。この前参加した配信イベントに関しては、仕事が減っている音響さんや映像チームへの支援という意味もあったので、多分俺達にはそんなにお金は入らない。
──配信ライヴに関しては、現状は通常のライヴほどの利益を出せるわけではない?
アフロ : それもそうだし、もうスタッフ数人を集めるということが厳しくなっているから、いまは配信ライヴをすること自体も難しいよね。
──ライヴでお金を稼ぐことができなくなったいま、音源を出して売るしかない。その現状が続くとなると、今後はそれだけで生活していけるんですか?
アフロ : ドームでライヴするぐらいのアーティストなら音源だけでもいけると思うけど。まぁそれも事務所の有無、契約の仕方、リリースのペースとか本当に人それぞれだと思うよ。裏方作業の全てをスタッフにやってもらってる人達はその分、ガッツリ支払いがあるわけだし。俺達は殆ど自分達でやってるけど、制作ペースがむちゃくちゃ遅いので音源だけでずっと、ってのは無理かな。
自分たちが耕してきた畑を焼け野原にしないぜ
──本当にどうしていいか分からない状況の中、MOROHAはシングルを出してから急に動きが加速していったような気がします。考え方がどう変わっていったのか教えてください。
アフロ : 2月28日に中野サンプラザで予定していたライヴが流れてしまったときから、2週間ぐらいはボーっとしてた。でも、だんだん黙っていたくないなと思い始めて。そのときの気持ちを書いたのが、“COVID-19”だったかな。
──あの曲は沁みますね。発売した時よりも状況が悪くなってきたことで、さらに刺さります。
アフロ : “COVID-19”を出したときといまでは微妙に気持ちが変わっている部分もある。「政治家に俺たちは音楽をやらせていただいているわけではないから」というフレーズがあるんだけど、今ももちろんその気持ちもあるんだけれど、その反面、補償の事を考えると若干ズレがある言葉なのかなと思った。もう少し奥行きがあるかと。
──というと?
アフロ : あんまりいいたくないんだけど、実際音楽をやらせていただいている部分もあるかもしれない。あくまで国というものがあって俺らは音楽活動ができているという事。俺らはそこら辺の野原でもできるけど、国の恩恵を受けている箱でライヴをさせてもらってきた。もはや「俺ら」という言葉は、いろんな人との関係でできていてMOROHA2人を指す言葉じゃなくなってきている。そのうえで、音楽をやらせていただいている部分っていうのはあるんだなと思う。
── 自粛を要請しつつ補償を明示されないことによって、ライヴハウスや飲食店その他様々な業種がしんどい思いをしている状況です。それについてはどう思いますか?
アフロ : 補償を求める活動がありつつ、それと同時に補償が出ないものだと思ってどうにかするという動きも一緒にやっていたほうがいいと思うし、それがぶつからなければいい。
──MOROHAの曲で救われる人や、曲を聴いて奮い立つ人にとって、MOROHAの音楽は大事だと思いますがどうでしょう。
アフロ : 正直言って俺達がいなくなったら、それをチャンスだって張り切る誰かがいると思う。同じ様にライヴハウスがなくなっても表現の場は廃れないと思う。そこら辺の広場で誰かが何かをはじめるだろうなという感覚はある。それぐらい人間のエネルギーは凄い。もし補償してもらわないとできないのであれば、それは時代に追い出されただけなんじゃないかなと思ったりもちょっとするのよ。だけど個人の希望としてその未来を望んでない。俺たちが自分たちが耕してきた畑を焼け野原にしないぜっていう気持ちだね。あくまでこの世界が弱肉強食っていうのは、自分たちの好きなことをやるっていう上でひとつ覚悟してきたことだから、それは自分の中の矜持として思っているかな。
──最後に伝えたいことや言いたいことはありますか?
アフロ : こういう機会にライヴハウスの人と電話で長話ができて嬉しかった。外に出る事を我慢している分、自分に何かご褒美をと思って深夜にホットケーキ焼いたりしてます。元気です。
MOROHAの〈日程未定、開催確定 TOUR〉に関するニュースはこちら。
MOROHAの最新シングル“COVID-19”、OTOTOY限定で配信中
MOROHAの最新シングル“スコールアンドレスポンス”
PROFILE
2008年結成。
舞台上に鎮座するアコースティックギターのUKと、汗に染まるTシャツを纏いマイクに喰らいつくMCのアフロからなる二人組。
互いの持ち味を最大限生かす為、楽曲、ライブ共にGt×MCという最小最強編成で臨む。
その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。
相手を選ばず、選ぶ筈が無く、「対ジャンル」ではなく「対人間」を題目に活動。
ライブハウス、ホール、フェス、場所を問わず聴き手の人生へと踏み込む。
道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽をかき鳴らし、賛否両論を巻き起こしている。
雪国信州信濃から冷えた拳骨振り回す。
【INFO】
■MOROHAオフィシャルHP:https://moroha.jp/
■MOROHA AFRO公式Twitter:https://twitter.com/MOROHA_AFRO
『Save Our Place』
OTOTOYは、音源配信でライヴハウスを救うべく、支援企画『Save Our Place』をスタートさせました。『Save Our Place』では、企画に賛同していただいたミュージシャン / レーベルが未リリースの音源をOTOTOYにて配信します。その音源売り上げは、クレジット決済手数料、(著作権登録がある場合のみ)著作権使用料を除いた全額を、ミュージシャンが希望する施設(ライヴハウス、クラブ、劇場など)へ送金します。
詳細はこちら
https://ototoy.jp/feature/saveourplace/