
いつもクールな弦先誠人、スター性を持つ神啓文、屋台骨タイラダイスケ。そんな3人が主宰するロック・パーティの最高峰FREE THROW。これはFREE THROWを特集する連続企画の4回目。回を重ねるごとに、FREE THROWに対する彼らの熱意は剥き出しになり、その情熱と佇まいに触れ、さらにFREE THROWが好きになる。気になる方は、最下部の過去のアーカイブを辿って欲しい。今回は、ずっと疑問に思っていた事をぶつけてみたいと思う。ずばり『ロックDJで食えているの? 』。テクノやHIP HOPのDJより、ロックDJの方がポピュラリティがあるように思えるが、ロックDJで生活しているという声を聞く事は少ない。果たしてロックDJ達は、食えているのだろうか? FREE THROWのファン、そしてDJを目指すもの達は必見の記事ですよ。
インタビュー&文 : JJ(Limited Express (has gone?))

FREE THROWが紹介する今月のバンド【24 -TWO FOUR-】

弦先誠人(以下、弦先) : TWO FOURの企画に呼んでもらったり、逗子の海の家でやったこともあったね。
タイラ : 一時期すごい勢いがあったんだけど、その後4人組だったのが2人になっちゃって、そこにドラムが入って今は3人になって、それはそれでファンクっぽい黒い感じが入って、またすごく良くなった。
弦先 : 一曲目は4人の頃の感じを残してるけど、二曲目はまた今までとは違う新しい感じがするよね。前からHIP HOPのテイストはあったんだけど、曲のベースにあるのは初めてかも。
タイラ : 彼らは元々、名古屋の中央通りにある噴水公園という場所で第2週と第4週にジャム・セッションするために集まってた仲間なんです。それで名前もTWO FOUR。だから最初は歌も無くて、もっとジャム・バンドの要素の強いバンドだった。彼らの曲は昔からDJでもよくかけてて、すごい盛り上がるんですよね。四つ打ちで踊るんじゃなくて、グル―ヴで踊る感じ。
弦先 : でも歌ってる内容がすごく日常的で、構えて聴くんじゃなくて自分の生活と同じ目線で聴ける音楽。
神啓文(以下、神) : さらっと聴けるんだけど、実は諸行無常を歌ってる。
タイラ : そうだね、肩肘張って聴く音楽じゃない。ポップでファンキーでグル―ヴもあって、今の東京に居ない感じのバンドだよね。
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24-TWO FOUR- / PROFILE
日本のセントラル・シティー、名古屋ストリート発、Vo.Gt、Ba、Drのスリー・ピース・ジャム・バンド。
幾多のストリート・セッションから生まれた独自のラップとも語りとも言える歌と、愛嬌のあるミニマルな生音グルーブは全国のアルコール片手のパーティー・ピープル達をシンガロングでピースフルな空気に酔わせている。ブルース、ヒップ・ホップ、カントリー、サーフなどを独自に昇華した彼らのグルーブは必踊の価値あり!!
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Vol.4『FREE THROWとクラブ・カルチャー』
――今、ロックDJで生計を立てている人はいますか?
タイラ : ほとんどいないんじゃないですかね。DJ中心の活動で食えてる人はGetting Betterの片平実さんとかかなぁ。
弦先 : 金銭的な話から言えば、一晩にどれだけの動員を集められるかにもよるし、みんなDJ個人の力ではまだ難しいんじゃないかな。人と同じことをやっていてはお客さんは集まらないだろうし。
タイラ : FREE THROWにはバンドが入っているし、時間帯もオール・ナイトだけではないし、100%クラブ・カルチャーという訳ではないんですよね。むしろ活動方法としてはバンドに近いかもしれない。

――DJの職種自体の状況が厳しい訳ではないですよね。同じDJの中でもテクノやハウスと違って、なぜロックDJには食えてない人がたくさんいるんでしょう? むしろとっつきやすいはずなのに。
タイラ : テクノ、ハウスやヒップ・ホップはクラブから派生して盛り上がった音楽だけど、ロックって部屋で一人で聴いてても成立するから、クラブに直結してないんじゃないですかね。
神 : ダンス・ミュージックって知らない曲でも踊れるじゃないですか。ロックだと曲を知ってる人はがっと前に集まるけど、知らない人はさーっと後ろに引いちゃうんですよね。そこをどうにかするのがDJなんですけど。
弦先 : 初めてロックのパーティに行って自分の好きな曲がかかった時、感動したけどね。あれがなかったら未だにやってないだろうし。
タイラ : これは勝手な予想なんだけど、ハウスやテクノのパーティに遊びに来てる人って楽しみが音楽だけの要素じゃないような気もする。ナンパとか(笑)。
神 : 場所を作るという意味では俺は意識してるよ。この前すごいびっくりしたのが、多分若い子がやってるであろうパーティの告知で、「皆遊びに来てね! 」の下に「注意事項、ナンパ禁止」って書いてあったんだよね。お前ら何がしてえんだよ(笑)! それって楽しみの一つじゃないのかな。
タイラ : 新しく始まるパーティの方がそういう意味で健全な方向性がある感じがしますよね。たとえばミッチー(西村道男)主宰のパーティって、ぎらっとした夜遊び感、ちょっと背伸びして行く感じがあって。行ってみるとカジュアルなんだけど、ちょっと大人な匂いがする。そこがいいんですよね。神さんも誠人さんも、昔CLUB SNOOZER行ってましたよね? どれぐらいの動員数でした?
神 : 俺行き始めたのは後半だったから、300、400人とか。
弦先 : 入る時は1000人ぐらい入ってたよ。あれもバンドが入ってたけどね。

――CLUB SNOOZERとGetting Betterは唯一商業として成り立ってますよね。FREE THROWもロックDJ界隈では一番お客さんが入るパーティなんじゃないですか?
神 : DJ個人にお客さんが付くというより、パーティにお客さんが付いている感覚ですね。
――石野卓球やEYE(ボアダムス)のように、なぜDJ個人に付かないんでしょう?
タイラ : こっち側の意識の問題もあるかも。俺に関してはMARZで働いて給料をもらってるんで、FREE THROWにお客さんが入ってバンドに還元できて+αでこっちにも返ってくるものがあればラッキーって考えなんです。他のDJも自分のマネージメントに対してあまり自覚的じゃない気がします。もっとストイックに「この道で食う! 」という意識が高ければ、もっとお客さんを呼んだり、出演時に発生するお金についてシビアに主宰の人と話さなきゃいけないし。
自分達なりの選択肢を探っていくしかない
――ロックDJで食っていけてる人達の理由はどこにあると思います?
神 : 圧倒的なセンスと企画力。
弦先 : マーケティング能力に長けているのかな。
タイラ : やっぱり周りのニーズを嗅ぎとる能力が高いと思うんです。ロックDJで食って行くには今のところその方法論しかないんだけど、それを自分達に当てはめても、おそらくいびつな形にしかならない。周りのニーズと自分達の好きなものが全部合致するとは限らないんで。だから自分達なりの選択肢を探っていくしかない。

――弦先さんは、DJで食って行きたいと思いますか?
弦先 : その道で食っていくためには動員数を上げればいい話だから、結果的にそこに繋がればいいと思ってたんですけど、最近はあんまり思わないかな。というのは、そこを考え始めるとやっぱり丸くなってしまうんですよね。ロックDJとして音楽を突き詰めながら自然に食えるようになるのが理想だけど、色んな人を見ててそれが難しいのもよくわかったし、諦めた部分もありつつ、でもちゃんとやろうという気持ちももちろんありつつ。
――誠人さんは好きにできないけどDJで食って行くか、好きにDJをやりながら違う仕事で食って行くか、どちらかを取れと言われれば後者なんですね。
弦先 : そうですね。
――神さんはどうですか?
神 : 実際、過去に「あれ、これいけるかもしんない」っていうのを体験してるんです。でも「こりゃだめだわ」も体験していて、波があるんですよね。
――それは、集客に関してですか?
神 : そうですね。100人ぐらい入って「いけるかも」でもゼロになって「やっぱだめだ」を何度か繰り返してます。
弦先 : 多分、この中では神くんが一番ロックDJで食えるか食えないかの境目を見てきたと思います。集客とお金の話だと、たとえば1人で100人集められたとして、それで10万円稼げるとする。それを月に2本やれたら一応食っていける。一本で200人入れば月1本でよくなるし、その考え方でいけばもう少しで届きそうなんだけど、そうはいかない。難しいんです。
タイラ : 神さん、携帯持ってないじゃないですか。神さんへの全国からのオファーはオレに届けられるんですよ。その時に、「神さんお金無いからすいませんがギャラ下さい」って俺が交渉してるんです(笑)。

――凄いスター性の強いミュージシャンって、音楽を作る才能は人の何百倍もあるけど、それ以外は10分の1だったりするんですよね。タイラさんみたいにビジネス感覚がある人の方がレアだと思いますよ。
タイラ : 俺がFREE THROWに入って初めて二人と親しく話した時、「この2人、ダメだな」って思いましたよ(笑)。でも俺が持ってないものを2人はたくさん持っているし、DJとしては絶対俺より先に二人が食えるようになると思った。逆に俺は他のこともそれなりに出来るから、DJで生計を立てるということにこだわらなくていいのかもしれないなって。結局震災の影響でできなかったけど、STUDIO COASTでFREE THROWをやったり、コンピレーションを作ったりっていうのは、DJの価値観を高めるために、そこにシンクロするような無理のないサブ・アイテムを作るという意味合いも強かったんです。「コンピCD発売! 」とか「STUDIO COASTで開催! 」とか、分かりやすいキャッチ・コピーが必要だと。もちろん、純粋に自分の好きな音楽でみんなを楽しませたいという気持ちありきですけど。自分の好きなものが不特定多数の人の価値観にひっかかれば、それにより分母が増えて、そこを先導することによって結果的にお金が生まれる。そういうしくみを作れないかなと考えてるんですよね。
――神さんにちゃんとしたマネージメントが出来る人が付いて、アーティスト・パワーを高めていきつつ、神さん自身のDJの指針も変わらず進めば、ロックDJの次の道が見えるのかもしれない。次回は神さん特集にしましょうか(笑)。
神 : もう既にお客さん何人かに「神さん、居酒屋に住んでたんですか? 」って聞かれましたからね(笑)。
ロックDJのスターが必要
――FREE THROW全体としてはこれからどこを目指していくんでしょう? 前々回話題に出たHi-STANDARDのAIR JAMを目指してどんどん大きくしていくのか、「自分達の場所はここなんだ」と、新宿MARZに戻るのか。
タイラ : STUDIO COASTは出演者数も予想動員も多くてMARZに入りきらないだろうなと思ったからで、必然性があって大きい場所でやろうと思ったんです。基本的には毎月やっているレギュラーのFREE THROWが一番楽しいし、一番大切にしてます。でも、ポイント、ポイントでハードルを作っていくとモチベーションにも繋がるじゃないですか。毎月の積み重ねで、どこまで力が付いたか試してみたいなって。だから、今までやって来たことの流れの中に自然と大きい会場があるだけなんで、そこは最終目標ではないんです。それは俺が考えるパーティとはちょっと違う。
――なるほど。弦先さんはどうですか?
弦先 : タイラが言ってることが一番自然だと思うし、毎月やっているものを1個1個大切に面白くするということが大事なんだと思います。何万人も動員があるフェスにDJとしてずっと出続けるのってすごいことだと思うんですけど、1本、2本やっただけではタイミングが良かっただけかもしれないというのもあるから、それよりも月に1回100人集まるパーティを続けられる人の方がすごいと僕は思いますね。

――神さんはどうですか?
神 : 大きい所が目標だということは無いです。毎月続けるという点ではみんなと同じで、同時に思うことがあるんですけど、ロックDJの中から圧倒的なスターが一人抜きんでたら、シーン全体がぐんと上がる気がする。それを毎日考えてて、でも俺はやんないです。失敗を極端に恐れるんで。
タイラ : もう何も失うものないじゃないですか(笑)!
神 : 俺も20代全部捨ててずっと同じ所を掘り続けてきたんだけど、まだまだ底が見えない。まだあんのかーって(笑)。
タイラ : そろそろ石油でるかもしれない(笑)。
神 : 俺、石油王になろうとしてるんです。
一同 : 爆笑
神 : でも、ロックDJのスターが必要だなって思います。じゃないと後輩にも申し訳ないし、夢がないじゃないですか。
――でも、神さんはスター気質ですよね。
タイラ : 俺は色々と客観的に色んなDJを見てる方だと思うんですけど、そういう中で、神さんは天然のスター性を持っているDJだと思います。一方で誠人さんは天才肌で、セオリーとか関係ない。新人類です(笑)。神さんはこう見えて常識人で、今まで積み重ねてきたことを消化してから次のことをするタイプなんだけど、誠人さんはもっとアクロバティックな積み方をするんです。
――神さんより誠人さんの方が新人類なんですね(笑)。
タイラ : 神さんは意外と常識人なんです。後輩にも慕われてるし。
神 : 優しいんです。
タイラ : 後輩のギャラとかもちゃんと考えてるし。
――お金もちゃんとあげてるんですね。
神 : あげるんです。もらう時もあるけど。
タイラ : こないだ「千円欲しい」ってメール来ましたからね(笑)。誠人さんはもっとアーティスティックな感じ。
神 : そんなタイラは今日取材場所を飯田橋と参宮橋で間違えたよね。そっちの方がおかしいよ!
――このチームはタイラさんが居ないとだめなんだから、しっかりしてくれないと(笑)!
タイラ : 「橋」しか合ってないですよね。4回目なのに… 何でだろう。

⇒⇒⇒次回『FREE THROWの神啓文特集』に続く
FREE THROW /// NEWS!
『FREE THROW vol.53』へ5組10名様を2drinkにてご招待!!
2011/06/17(fri)@新宿MARZ
open / start 23:30
adv.2000yen(1drink別)
door.2300yen(1drink別)
DJ : 弦先誠人, 神啓文, タイラダイスケ
GUEST BAND : To Be Announced!!
【応募方法】
件名に「『FREE THROW vol.53』に行きたい! 」、
本文に氏名、住所、電話番号をご記入の上、info(at)ototoy.jpまでメールをお送りください。
『FREE THROW vol.53』応募締め切り : 2011/06/12(sun)
当選者の方には、追ってメールにてご連絡します。
※あらかじめinfo(at)ototoy.jpからのメールを受信できるよう、設定ください。
『FREE THROW SENDAI』
2011/05/28(sat)@CLUB SHAFT
open / start 23:30
adv.2000yen(1drink別)
door.2300yen(1drink別)
GUEST DJ : 岩本岳士(QUATTRO), 入江良介(veni vidi vicious)
DJ : 弦先誠人(puke!), 神啓文(Getting Better), タイラダイスケ(soultoday)
『TWISTEDLINES 5-ERA 9th Anniversary-』
2011/05/29(sun)@下北沢ERA
open / start 18:00
adv.1800yen(1drink別)
door.2100yen(1drink別)
LIVE : Christopher Allan Diadora, PILLS EMPIRE, and one more band!
DJ : FREE THROW
『Kings Vol.3』
2011/08/23(tue)@新木場STUDIO COAST
OPEN 16:00 / START 17:00
adv.3000yen(1drink別)
door.3500yen(1drink別)
LIVE : The Brixton Academy, QUATTRO, the telephones, PILLS EMPIRE, THE BAWDIES
DJ : FREE THROW
FREE THROW /// PROFILE!
2006年5月に下北沢Daisy Barにて弦先誠人、神啓文により始動。
2006年12月タイラダイスケの加入により現在の3DJに。
2007年4月から新宿MARZにホームを移し、DJ×LIVEという従来のCLUBシーンではほとんど成立例の無かった新しいパーティーのスタイルを確立させ、クラブ・シーンとライブハウスの垣根を無くし、その距離を縮める。3人によるジャンルや洋邦新旧問わないDJプレイは幅広い音楽ファンから高い評価を受けている。
また、有名無名問わず自分達のアンテナに引っかかったバンドには助力を惜しまず、それをきっかけとして台頭をあらわしたバンドも少なくない。その活動は東京だけに止まらず、これまでに名古屋・大阪・新潟・長野・柏・水戸・仙台・札幌・静岡とその活動の幅を広げている。