【BiSH】Episode85 アイナ・ジ・エンド「BiSHがなかったら、今どうなっていたか分からない」

対バンツアー〈 BiSH’S 5G are MAKiNG LOVE TOUR〉や、名古屋では初となるアリーナ公演〈BiSH SPARKS "This is not BiSH except BiSH" EPiSODE 4〉の開催を控え、その勢いはとどまることを知らない“楽器を持たないパンクバンド”BiSH。13周目となるメンバー個別インタヴューの第3回は、ソロ活動の活動も大忙しのアイナ・ジ・エンドにメンバーへの想い、新曲について、そして、これからのBiSHについて伺いました。
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INTERVIEW : アイナ・ジ・エンド

アイナさんはソロを経て、また大きく成長した。彼女の歌声を聴くと、その表現力の深さに驚いてしまう。ここまですごい表現者になるなんて! そして本インタビューは、BiSHもまた一つ上の表現者になったことを証明する言葉が多く散りばめられている貴重なものとなった。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 井上沙織
写真 : 大橋祐希
“STAR”も“ZENSHiN ZENREi”も「松隈の命」みたい
──ソロアルバムをリリースしてツアーを回ったり、新たに三船(雅也/ROTH BART BARON)さんとのユニット・A_oが発表されたり、相変わらずソロの仕事も忙しそうですね。今後ソロではどう進んでいきたいと思っていますか。
アイナ・ジ・エンド(以下、アイナ) : ちゃんと地に足を付けて、生きた心地を感じながら音楽をやりたいですね。この音楽は私にしかできないと思ってやりたい。スタッフさんもきっとそう思っていて、良し悪しをみんなで考えて提案してくれるので本当に幸せです。いまは曲の幅を広げていこうと、たくさんの人に聴いてもらえる曲を作ろうと思っているところです。
──ソロ活動を経て、歌うことに対する意識の変化はありましたか。
アイナ : 歌に素直になれました。いろんな人とフィーチャリングしたり亀田(誠治)さんに録ってもらったりしていくなかで自由に歌わせてもらう機会が増えて、自分と向き合って考えているときは孤独でしんどいんですけど、歌い終わった後に新しい自分を見つけた感覚があって。それを何回も繰り返していったら、上手さとか表現力とか情緒とかどうでもよくなって、思うがままにやるほうがいいなって吹っ切れたんですよね。散々歌に関して向き合ってきたので、いまは気分で歌うようにしていて。でもきっとまたどこかで壁にぶつかって向き合う時期が来るんだと思います。
──BiSHとしても“STAR”、“ZENSHiN ZENREi”と立て続けに新曲がリリースされ、ツアーに向けて活発に動いている時期でしょうか。
アイナ : そうですね。やっぱり松隈さんの作った曲は愛も好奇心もあってかっこよくて。“STAR”も“ZENSHiN ZENREi”も「松隈の命」みたいだなぁって。
──「松隈の命」?
アイナ : 「これが松隈の命です」みたいな曲をもらうじゃないですか。「松隈の命」を歌えるんだ、こんな曲を歌えるのは当たり前じゃないな、すごいことだなって、自分で曲を作るようになってさらに感じるようになりました。リハーサルのときもBiSHのバンドメンバーが演奏してくれるたびに新しい発見がたくさんあるんですよ。「ここはこういう音の入れ方をしていたんだ」とか、そういう部分が耳に入ってきて、そのたびにすごく幸せな気持ちになります。だからソロをやってよかったですね。BiSHのメンバーの声色の唯一無二さとかも分かりましたし。いままで分かっていたつもりだったんですけど、いまはもっと分かる気がします。

──振り付けはもう完成しているんですか?
アイナ : はい。“ZENSHiN ZENREi”に関しては10分もかからずに「これしかないやろ!」みたいな振りができて。なんでこんなすぐできたんだろうって考えたら、初期のBiSHっぽい曲なんだなって。BiSHを結成して7年目なんですけど、“ZENSHiN ZENREi”を歌ってBiSHってこういうグループだったなって思い返せたというか。それこそファースト・アルバムのときのナニクソ根性と言いますか、振りも原点回帰であっという間に作れて楽しくて。松隈さんもボーカルディレクションのときに「お前ら中野heavysick ZEROでワンマンしたやろ。それがいま東京国際フォーラムでソロって。BiSHはそんなんじゃないだろ」みたいなことを楽しい雰囲気で言ってくれていて。
──“STAR”もBiSHらしい曲ですよね。
アイナ : “STAR”も思いがたくさんあって、何から話したらいいのか分からないくらい好きなんですけど。まず歌割りがモモカンはじまりで、リンリンやモモカンもサビを歌っていたりして、みんなで回していく歌割りってあんまり多くないので嬉しくて。しかもサビがずっと高音だから、みんなギリギリの声色で歌っているんですよね。リンリンがサビの後半を歌っているんですけど、前かがみになって力を入れないと声が出ないって言っていて、一緒に練習したりして。テレビ初披露でリンリンが見事に歌い切ったときはかっこよくて私も泣きそうになりました。
──あのリンリンのパンクな声、かっこいいですよね。
アイナ : リンリンの声って珍しすぎません? ちょっと腑抜けて聞こえる瞬間もあるのに、芯が強くて稀有で。リンリンが歌いづらそうにしているだけで私も一緒にしんどくなったりするくらい好きなんですよね。リンリンが一生懸命歌うって思っただけで泣けるんですよ。
──チッチもアイナもアユニもかっこいいけど、モモコ、リンリン、ハシヤスメがサビをバシッと歌うのがいいですよね。
アイナ : 「二人で見た空」っていう歌詞があったりするので、振り付けもあんまりBiSHだったら組まない2人ずつのペアにしてて。メンバーには言っていないんですけど、それぞれにテーマがあるんです。ハシヤスメとリンリンのペアだったら、ふとしたときに隣にいるのはハシヤスメっていうか、大事なときに上を見上げたらハシヤスメの顔が浮かぶ、みたいな(笑)。「お互い意外に大事な存在じゃない?」みたいなことをじわじわ気づく感じのペア。 チッチとモモカンは甘えるのがそんなに上手くない2人なんですけど、その2人がちょっと甘えてみようかな、でも無理だなっていうのを繰り返しながら生きているみたいな。
──アイナとアユニは?
アイナ : そんなに素直じゃなくてあまのじゃくなところがテーマとしてあるんですけど、「ひとつ扉を開くだけでいままで溜めてきた気持ちがぶわーっと出て2人とも楽になるのにね。いまはあまのじゃく同士だね」みたいな。でも2人で空を見上げたときはちょっと素直になれるみたいな関係性ですね。
──おもしろい。
アイナ : 勝手にテーマを作っているだけで、振りの内容的にはそういう演出を全くしていなくて。あんまり演技とか入れると意味がありすぎて、それにしか思えないダンスになるから、何となく察してもらえるくらいに、表情とか指先とか触れている手と手のニュアンスとかだけで表現したいですね。あんまり意味を込めすぎたらよくないなって思ってきました。
──その表現はメンバーに託しているんですか?
アイナ : そうです。もうBiSHの1人1人は、立っているだけでも絵になるんじゃないかなって思ってきていて。私はまだ立っているだけだと自信がないんですけど、1人1人がそういう風になりたいから無駄に演技を入れるより、黒目の動かし方とか指先だけとか髪の毛を触る仕草とか、そういうナチュラルなものだけで何を伝えようとしているかが分かる振り付けをしていきたいですね。余計なことをそぎ落としたい。
