【7インチ&OTOTOY限定配信】恋にうつつをぬかして6年の空白? HANDSOMEBOY TECHNIQUEが帰還!

サンプリングを駆使した作風で、国内にとどまらずヨーロッパを中心とした海外のクラブシーンをも虜にした森野義貴によるソロ・ユニット、HANDSOMEBOY TECHNIQUE。前作から6年を経て、HomecomingsやHotel Mexico等を輩出する京都のインディ・レーベル、SECOND ROYAL RECORDSの7インチ・シリーズとして最新作を発表した。A面の「MELODIES」には、同じく京都で活動する井上陽介(Turntable Films)がヴォーカルとして参加。これまでになく生音が多用され、大きな作風の変化を確認できる作品となっている。6年間の空白の理由にはじまり、今作の制作背景からサウンド作りの変化を語ってもらった。
HANDSOMEBOY TECHNIQUE / MELODIES / CUT IT OUT
【Track List】
01. MELODIES / 02.CUT IT OUT
【配信形態】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / mp3
【配信価格】
単曲 200円(税込) / アルバム 400円(税込)
※アルバム購入で「MELODIES」の歌詞カードが付属!
INTERVIEW : HANDSOMEBOY TECHNIQUE
HANDSOMEBOY TECHNIQUE、6年ぶりの公式音源! ってことで鼻息荒く取材しにいったら、恋に忙しくて、曲が創れなかったとのこと。もはやどれほど本気かわからないが、そのあけっぴろげな性格と、出来上がってくる曲のクオリティを愛さずにはいられない。ちなみに、今年の〈ボロフェスタ2015〉のエンドロールに、まだ未発表だった「CUT IT OUT」を使わせてもらったのでした。
インタヴュー : 飯田仁一郎
構成 : 稲田真央子
もう恋に忙しくて曲なんか作っている場合じゃなかったって感じですかね(笑)
——まず作品を発表されていなかった6年間はどういった活動をしていたのかというところからお聞きしたいと思います。
6年間本当になにもやっていない感じなのですが、一応そのあいだもある程度、音楽の仕事はしていました。
——それはどういうお仕事だったのでしょう?
メジャーのバンドのために曲の基礎となるトラックを作ったり、リミックスもいくつかやりました。他には、多くはありませんがCM曲も作ったのかな。基本的にはダラダラしていました(笑)。
——HANDSOMEBOY TECHNIQUEの作品として出さなかったのはモチベーションの問題ですか? DJとしての活動はしていましたよね?
はい。音楽制作は完全に止まっていましたが、DJの仕事は一応ちゃんとやっていましたね。
——音楽制作が完全に止まっていたのは、なぜですか?
環境ですかね。まず離婚したんです。3、4年前、離婚するって決めてからは気まずくて家に帰らなかったので、そのころはまず音楽なんて作れないですよね。離婚したあとは彼女ができて、それはそれで曲なんて作っている場合じゃないですよね(笑)。半年くらいして同棲することになったんですけど、またその半年後に振られて。振られたらまた音楽なんて作っている場合じゃなくなって(笑)。
——これは載せて大丈夫ですか(笑)?
大丈夫です(笑)。もう恋に忙しくて曲なんか作っている場合じゃなかったって感じですかね(笑)。
——なるほど。それはいつ振られたんですか?
2年ぐらい前ですかね。僕は10年間結婚していて、さらに離婚して3ヶ月くらい経ってすぐに彼女ができたので、その子に振られてから本当の一人暮らしになったことに解放感があって。毎日漫画を読んだり、アニメを見たり、そういう自分の好きなことをできる時間がすごく楽しかったんです。
——つまり他のことが楽しくて、音楽制作へのモチベーションがあがらなかったんですか!?
はい。でも、音楽の仕事をするなかで、徐々に上がっていきました。今回のシングル曲もベースになるトラックは元々仕事で作っていました。新しいものは作りませんでしたが、自分の過去の曲は聴いていて、そのなかで「CUT IT OUT」の元になったトラックは何度も聴いていいなと思っていたので、音色とか作り直したいなと。
この機会を逃したら、一生作品を出さないんじゃないかと思ったんですよね。
——「CUT IT OUT」は、いつごろできあがっていたものですか?
元の曲は4年ぐらい前に依頼を受けて東京ゲームショウでのX-BOXのブース用に作ったものです。A面の「MELODIES」のベースとなるストリングスのフレーズは録音していたので、両方とも元ネタがあったといえばありました。
——じゃあこの曲たちは、「さぁ音楽をやるぞ」という気持ちになってから作ったわけではなかったということですね。7インチを出そうと思ったきっかけは、いつだったんですか?
8月が制作期間だったのですが、その少し前の7月半ばくらいにHALFBYの高橋孝博君から、SECOND ROYAL RECORDS(以下、セカロイ)の7インチ・シリーズで次に出さないかと声をかけられて。参加するのは若い新人バンドばっかりだったから、僕が出したら流れとしてもおもしろいんじゃないかと。それにこの機会を逃したら、一生作品を出さないんじゃないかと思ったんですよね。それがきっかけで本当に集中して1ヶ月ほどで作りました。
——「MELODIES」には井上(陽介 / Turntable Films)君が参加していますよね。
そうですね。元々ヴォーカルを入れたいという前提で作っていて、出来れば近しい人に歌ってもらいたいなと考えていました。前のアルバムの時は4組ほど外国のアーティストの方に頼んで歌ってもらったのですが、今回それはいいかなと。それでヴォーカルを頼むなら第1の前提としてブレイクしていないというのが僕にとってあるんですね。
——それはどうしてですか?
人気に乗っかっている感じがするのが絶対いやなんですよね。しかも日本語じゃなくて英語が良い人。消去法というわけではないですが、最初から井上が全曲歌っているアルバムでもいいんじゃないかって思っていたくらいだったんです。
——井上くんのどこがよかったのでしょうか?
英語が日本語英語じゃないのと、声がいいのがありました。今回は歌い上げるようなヴォーカルではなく、ソフトな雰囲気がいいなと思っていて、井上のキーが低くてサラっと歌ったようなヴォーカルがすごく好きだったので歌ってもらいたいなと。完成した今も、色んな意味で井上に頼んでよかったなって思っています。歌詞はもちろん、声質も理想的でした。
——井上くんはどこまで制作に携わっているのですか? 音域もメロディーも彼が普段作っているものとは違いますよね。
メロディーは完全に僕が作りました。僕が日本語英語みたいに歌ったものをトラックに載せて作業し、その音源を井上に渡して。歌詞はテーマがあって、それに沿った言葉を井上に送って英語で作ってもらいました。僕が考えた言葉や文章をそのまま英語にしたところもあれば、井上本人の表現になっていたりするところもあります。
——歌詞のテーマは、なんですか?
それは恥ずかしいので…。対訳も井上が書いて送ってくれました。彼らしい雰囲気です。
——じゃあ内緒のテーマを伝えて、それを元に井上くんが作ると。HANDSOMEBOY TECHNIQUEはいつもそういう曲作りの仕方をしているんですか?
メロディーはいつも僕が作ります。外国人に頼むと結構変わってきたりしますが、おもしろいので採用しています。歌詞も完全に僕が考えて送ったんだけど、向こうが完全に変えてきたりしたこともあって。今回は、僕が送ったテーマは暗かったんですけど、それがサビで前向きな感じになって返って来たから、よかったかなって思っています。
——制作中にサウンド面で影響を受けたもの重要なものはありますか?
仕事柄、新譜は耳に入ってくるのですが、そういうものにそこまで興味はなくて。普段はiTunesでお気に入りのフォルダに入れている音楽や自分の曲を聞いています。前のアルバムを作ったときは、ほんとにエレクトロ的なものが流行っていたのでそういうものは避けたいと考えていました。当時、そういう音は海外では終わっている感じだったのに日本では盛り上がっていたので、それに対するアンチのような考え方をしていて。でも今回は流行を避けたいという意図があったわけでもなく、世間から離れている感じがします。
——HANDSOMEBOY TECHNIQUEの音楽は、意識していなくても時代からは離れずリンクしていてさすがだなと思いました。特に「MELODIES」はそう感じました。
確かに新鮮な感じかもしれないですね。世間的にいいのかは分かりませんが、古いとは思われないかなって。
自分の頭の中にあるものとは違うものがやってくると楽しい
——「CUT IT OUT」の方はベースがすでに出来上がっていたということですが、これはどうやって仕上げていったのでしょう?
ベースになっているものの音色を変えるような感じですね。具体的に言うと5年前のトラックは昔のガレージのレコードからギターの音を一音ずつ切り取ってリフを作ったものでした。さらにそれに自分で弾いたギターやストリングスを加えましたね。
——じゃあ今回はご自分で弾いている部分が多いんですね。
はい。前は9割サンプリングで他を自分で打ち込んだり弾いたりしていましたが、それに比べると自分で弾く割合は増えました。
——それは作風や作り方が変わってきたということですか?
まずはいい音源があり、それをストリングスで弾くと自分である程度リアルなフレーズが作れるんだと思ったのがきっかけです。元々バンドをやっていたこともあって、デビューした時点で楽器は弾けたんですが、それでもサンプリングはずっとしていたんです。それが今回は弾く方に興味が傾いたというか。でもフレーズのサンプリングも入れています。完全に生演奏だと自分じゃない感じがして。
——今回の2曲では、生音とサンプリングの割合はどのくらいなんですか?
「MELODIES」が半々、「CUT IT OUT」は生音が9割くらいですかね。
——作風がそういう方向に傾いてきましたが、やっぱりサンプリングした音を使っている方がおもしろいと思うのはなぜですか?
単純に自分が思いついたメロディーやコード進行を形にするのは曲を作る上ではごく当たり前のことですよね。でもサンプリングの場合、元々ベースラインがあってそこに全然関係ない年代のレコードの音や、テンポもキーも違うような音を合わせてはめこんでいく。すると頭の中で思い描いていたものとは違う音が出来上がるんです。
——それはバンドでいうところの思いがけない化学反応と同じようなものですか?
そう言うと大袈裟ですが、チャンスオペレーション的というか偶然性を大事にしていて。自分の曲はそうやって作ってきたものが多いんです。例えば、昔サンプラーとシーケンサーを使って作曲していた頃、シーケンサーで打ち込む数字を間違って変なタイミングでベースが鳴ってしまったことがありました。でもそれがすごく良くてそのまま曲に取り入れたんです。そういう風に自分の頭の中にあるものとは違うものがやってくると楽しいですね。それがレコードだとフレーズやコード感として出てきます。これとこれを組み合わせたらこうなるという結果は実際にやってみるまで分からないけど、ずっと前に僕が作ったレコードはその偶然性の集大成なんです。だから今回のように生音が増えたとしてもそういう要素は残しておきたいと考えています。
——前に制作されたレコードのことを集大成とおっしゃいましたが、この6年間、HANDSOMEBOY TECHNIQUEが音楽制作をしていなかったのは、その偶然性の集大成を越えるのに時間がかかったのかなと個人的には思っていて。
確かに前の作品の中でできることはやりきったという思いはありました。だからといって、そのあと悩んだわけでもなくただダラダラしていただけなんですが…(笑)。 どういう感じで作ったらいいか迷っていた部分はあったかもしれません。
——「CUT IT OUT」は楽器を9割ほど入れて作っていったとのことですが、コンセプトやイメージは何かありましたか?
これは何もないです。曲としてはどちらも何も考えずに作りました。
——音作りがすごくおもしろいなと思いました。世界観はヘビーな感じがしないのに、でもリフとしては立っている。ミックスのバランスが良いのかな?
ミックスは最初からずっと同じ人に頼んでいます。ミックスを自分でしていないというのもさっき話したのと同じ理由で、自分では予想しなかった仕上がりになるのがおもしろいからなんです。ファーストを作ったときも、セカンドを作った時も、音源が戻ってきたら前とは全く違う音が入っていたりして。ミックスを頼んだはずなのに、ドラムが入っていない曲にドラムの音が入っていたり(笑)。加えて、音としてもミックスやマスタリングは他の人にやってもらった方が客観的な意見を言ってもらえるのでいいなと思っています。
——HANDSOMEBOY TECHNIQUEではどのくらいチャンネルを使いますか?
10〜15ぐらいですね。前は40とかだったので、どんどんすっきりしてきているかなと。ミックスもあって作り方も変わってきた気がします。自分なりにバランスをとったあと、それぞれの楽器の音に関して指示を出して、エンジニアに返してもらうという流れです。
——その指示や考えの往復は何度も繰り返すのですか?
10〜20回繰り返すこともありますね。指示を出すだけでなく、向こうなりの意見を受け取ることもありますね。
——新しい世代が出てきていることに対してはどう思いますか?
僕はそういうのは全く興味がないですね。古くても新しくても、皆それぞれ単純にやりたい音楽をやってるだけだと思いますし。ただ「新しい世代」を意識した音楽は、素直に気持ち悪いと思います。
——セカロイのレーベル内では交流があったりしますか? DJ同士の交流等は?
レーベル内ではありますが、僕は昔からDJやパンドとの交流が少ないので誰かと影響し合うということはあまりなくて。井上とは仲良くなってよかったなって思ってます(笑)。
——ちなみに6年前、どんどん曲を作っていた時はどういう気持ちだったんですか?
あれはどうしてだったんでしょうね(笑)。海外からリアクションがあったりして新しいものを出そうって気持ちになっていたのかな? でも、今回はこの2曲を無駄にしないためにも、もう1枚シングルを出して、来年にはアルバムを作るという流れが目標です。恋愛も出来そうにないので音楽を作るしかないですね(笑)。
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Handsomeboy Technique / Terrestrial Tone Cluster
HANDSOMEBOY TECHNIQUEのセカンド・アルバム。前作『ADELIE LAND』が国内外で高く評価され、その後構想3年、制作期間1年をかけて待望のリリースとなった。自身のディープなリスニング体験をもとにした多彩なサンプリングソースとソングライティング、トラックメイキングのセンスはさらに進化し、世界的に見ても新鮮な「ポップ・ミュージック / ダンス・ミュージック」を確立させた1枚。
A面の「MELODIES」にヴォーカルとして参加している井上陽介が参加する京都出身のバンド・Turntable Films。Predawnもフィーチャーされている今作には、海外のルーツ・ミュージックへの敬愛と彼らの感性が丁寧に織り込まれている。2015年11月にはASIAN KANG-FU GENERATION・後藤が主宰するレーベルからセカンド・アルバムのリリースも予定している要注目のインディーズバンド。
HANDSOMEBOY TECHNIQUEが所属する京都のインディ・レーベル、SECOND ROYAL RECORDSのレーベル・コンピレーション第1弾。HANDSOMEBOY TECHNIQUEやSatoru Ono等が参加し、ブレイク・ビーツ、ハウスからギター・ポップまでジャンルレスながらポップでキャッチーな14曲を収録!
PROFILE
Handsomeboy Technique
デビュー直後からスウェーデンの国営放送やカルチャー誌が特集を組む等、ヨーロッパを中心に海外でも評価され、リミキサーとしても国内外のアーティストを多数手がける。DJとしては地元京都METROのレギュラー・イベントを中心に全国各地でプレイし、大型フェスにも多数出演。スウェーデン・ツアー時には本国最大のフェス『UMEA OPEN』に出演した。
>>Handsomeboy Technique Official Twitter