アメリカ・オルタナティブ・ミュージックの最高峰2組、破壊力抜群、爆裂ドラム&ベース・デュオ、LIGHTNING BOLTが5th album『Earthly Delights』を、アンダーグラウンド・シーン最重要レーベル、アンチコン代表アーティスト、ヨニ・ウルフ率いるWHY?が4th album『ESKIMO SNOW』を同時期に発売した。
両アルバム共、彼らが世界中をツアーし、常に音楽の可能性を切り開き続けたことが血肉となっていて、オルタナティブに最も大切なサウンドの完成度と独自性の高さに鳥肌が止まらない。ここでしか聴けない音がなっているから、血眼になって彼らの音源を世界中の人間が追いかけている。新しい出会いに取り付かれたミュージック・ピープルには、ドラッグのように即効性のある2枚だ。
LIGHTNING BOLTのショウを2002年の初来日時に見たのだが、フロアにベース・アンプを4台置いて、2台にはベースを繋ぎ、ドラムの男が口にくわえた卵形のマイクの先を残り2台のベース・アンプにぶち込んだとたんに起こった地響きを一生忘れることはない。圧巻だったのは、ショウの間にドラムをステージ前方から後方に移動させたこと。よってお世辞にも多いとはいえないお客さんが、好き勝手に踊りだして、狂乱の祝祭が始まったのだ。彼ら自身も影響を受けたという初期ボアダムスを、さらに豪快に激しくしたサウンドとショウは瞬く間に日本中で噂になり、所属レーベルLOAD RECORDSの商品が取り引きされ始め(当時、最もおかしな音を鳴らすレーベルだった)、彼らのライブを見逃した人たちが、日本公演のブートDVDを血眼になって探し始めたのだ。
WHY?との出会いは、Limited Express (has gone?)の2006年の2回目のアメリカ・ツアー。DEERHOOFだ。あのショウに限っては、オオトリだったDEERHOOFを食っていたかもしれない。4人が1列に並び、ボーカルのヨニがスネアを叩きながら時にRAPを、時にボブ・ディランを思わせる哀愁のメロディーを歌う。そしてドラムのジョサイア・ウルフがドラムを叩きながらの鉄琴プレイを披露する。ヒップホップ? ロック? 音楽をジャンルで捕えることしか出来なくなっていた当時の筆者にとって、彼らとの出会いは、ジャンルの垣根をぶち壊す可能性が、音楽には秘められていることを思い知らされたのだ。WHY?の京都公演を企画してくれといわれて選んだ場所が、普通のライブ・ハウスではなく、キャパ1000人のロックの聖地西部講堂だったのも、世界のミュージック・シーンにおいて、最も重要なバンドであるとの確信があったからだ。
今年は、日本ではKIRIHITOが『Question』を、手前味噌ながら、我がバンドLimited Express (has gone?)が『LTD』を発売した。それなりのキャリアを積んだバンドが、同時多発的に作品を生みつづけるこのオルタナティブ・ミュージック・シーンは、いつまでも追いつづけることの出来る楽しさがある。何故なら、オルタナティブなアーティスト達は、常に新しいサウンドをリスナーに提供しつづけることを許されたジャンルだからだ。新しいサウンドに出会えた喜びは、大人になっても音楽を新鮮に楽しみ続けることの出来る最良の特効薬なのだ。
オルタナティブの先へ
DEERHOOF
真にインディペンデントで自由な精神を守りながらも絶え間なく変化し続け、現在KILL ROCK STARSの中で最もキャリアの長いバンドであるサンフランシスコのアヴァン・ポップ・バンド。ジャキっと攻めたギターとリズムでキテレツな展開を施すバンドですが、日本人ボーカルSatomiによるふわふわとしたメルヘンな歌声が程よい緩さを醸し出していて、心地良さをも感じます。
Calvin Johnson
イアン・マッケイ、スティーヴ・アルビニと並ぶUSインディの象徴。アコギ一本のシンプルな録音で彼の不思議に心地よいダミ声と洗練された歌詞、心に優しいメロディーが最も堪能できるアルバム。ゴスペルやブルースの要素を彼なりに表現した良い味が出ています。 超低音ヴォイスとアコースティック・ギター、ダンスで構成されるパフォーマスは唯一無二。
Sebadoh
1986年結成。ダイナソーJr.のオリジナル・メンバー、ルー・バーロウを中心とした、3ピース・ローファイ・バンド。ローファイをメイン・ストリームに進出させたバンドで、90年代のオルタナ・シーンで最も重要なバンドの一つ。即興的で壊れたメロディーと、ルー・バーロウによるダイレクトでありながら痛烈にロマンチックな歌詞の組み合わせは、まさに芸術作品。本作は、彼らの代表作であり、このアルバムから、「マグネッツ・コイル」、「スカル」、「リバウンド」と言った、ヒット曲が多数生まれました。
PROFILE
WHY?
Yoni Wolfを中心に、壮絶なドラムを叩きまくるヨニの兄Josiah Wolf、キーボード&サンプラーにDoug McDiarmidの3人からなるUSインディーを代表するバンド。ヴォーカルの美しいハーモニー、ボブ・ディランを彷彿とさせるフォーキーなタッチ、カントリー風のアメリカン・ポップ、時にはヒップホップまで、音楽性は実に幅広く、2008年リリースの『Alopecai』はウェブ・メディアの「Pitchfork」でレコメンドに選出されるなど、国内外から多くの支持を集めている。レーベル・アンチコン所属。
- anticon web : http://www.anticon.com/
LIGHTNING BOLT
轟音ドラム&ベース・デュオ(結成当初は、後にブラック・ダイスに加入するヒシャム・バルーチャを加えたトリオだった)、ライトニング・ボルト。口の中に含んだマイクを使って呻くように歌いながらノン・ストップでひたすら叩きまくる、肉体の限界に挑戦しているかのようなブライアン・チッペンデイルの狂騒ドラムと、ひずみまくり、ゆがみまくり、ライト・ハンド奏法も織り交ぜたブライアン・ギブソンの超高速ファズ・ベースから生み出される、ハードコアでアヴァンギャルドでありながらもトランシーなノイズ・ロックで世界中を震撼させている。ルインズやボアダムス、メルツバウといった日本のミュージシャンから大きな影響を受けているという。ステージではなくフロアにセットを組み、前のバンドのステージが終わると同時に演奏を始めるという特異なライヴ形態と激烈なパフォーマンスは、観る者すべてを驚愕させる。チッペンデイルがビョークの最新作『ヴォルタ』(07年)に参加したことも大きな話題となった。
- web : http://laserbeast.com/
FORTJ presents LIGHTNING BOLT JAPAN TOUR 2009
- 11月 5日(木)@渋谷 O-NEST
- 11月 6日(金)@名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
- 11月 7日(土)@京都 UrBANGUILD
- 11月 8日(日)@防府 bar 印度洋
- 11月 9日(月)@福岡 VooDooLounge
- 11月10日(火)@大分 AT HALL
- 11月11日(水)@岡山 Pepper Land
- 11月12日(木)@大阪 Shangri-La
- 11月13日(金)@渋谷 O-NEST
- 11月14日(土)@江ノ島 OPPA-LA
- 11月15日(日)@新代田 FEVER
- 11月16日(月)@東高円寺 UFO CLUB