「ここからは真っ赤な夏だ」──嫉妬を原動力に結果を出し続けるMOROHA、再録ベスト・アルバム配信開始

聴き手の魂を震わせるリリックと、互いの持ち味を最大限に生かすためアコースティック・ギターとMCだけの最小編成にて行われるライヴで、彼らの音楽を聴いたもの、観たものを圧倒させるMOROHAが6月に再録ベスト・アルバム『MOROHA BEST〜十年再録〜』を〈ユニバーサルミュージック〉からリリースした。12月16日(日)にはZEPP TOKYOにて単独ライヴも決定し、熱い信念を貫き通しながら、デカい方向に向かって着々と歩み続ける彼ら。OTOTOYでは今作を独占ハイレゾ配信するとともに、10周年を迎え、メジャーというフィールドに立った彼らの心境や、嫉妬を持ち続ける意味について2人にインタヴューを敢行した。MOROHAの“いままで”と“これから”をぜひ受け取ってほしい。
結成10周年! 再録ベスト・アルバム。ハイレゾ配信はOTOTOYだけ!
MOROHA「革命」MV(監督:行定勲 MOROHA BEST〜十年再録〜より)MOROHA「革命」MV(監督:行定勲 MOROHA BEST〜十年再録〜より)
〈ボロフェスタ2016〉にて行われたライヴ音源を独占配信中! しかもハイレゾです!
MOROHAの生の叫びをきけ!!
【アルバム購入特典】
・特製デジタルブックレット
・「四文銭」ライヴ映像
【本作に関する特集ページ】
https://ototoy.jp/feature/20161221005
INTERVIEW : MOROHA

ベスト盤『MOROHA BEST〜十年再録〜』に収録されている「四文銭」の最後に〈青い春はもう終わった ここからは真っ赤な夏だぜ〉というアジテーションがある。この意味が、このインタビューでいちばん訊きたいことだった。過去に類を見ない猛暑だけども、MOROHAの暑苦しさに比べたら全然屁でもない。今年は、紅白で見れるっしょ! そうだろ? MOROHA!!!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文・構成 : 千田祥子
写真 : 鳥居洋介
俺のみっともない部分を、いちばん近い相手に見てもらえた
──いきなり聞くけど、音楽で生活できるようになったいま、お金の面は満足していますか?
アフロ : 全然ですね。欲深いので、もっと欲しいです。そして不安もあります。来年ゼロになる可能性がある仕事ですから。
──UKは?
UK : 億万長者になりたいという気持ちはあるけど、かといってお金に捉われてはいないですね。もともと「お金はあとでなんとでもなるから、やりたいことをやりなさい」という環境で育ったので。お金に関してはこだわっていなくて、使うときは使うし、なかったらそのときどうすればを考えればいいし。
アフロ : うちと真逆ですね。うちはじいちゃんが晩酌しながらずっと金の話をしていたので、お金のことが身に染みついています。だから貧乏の血が抜けることはないですね。じいちゃんから「お前の親父が事業に失敗したから、うちに住ませてやっているんだ」って言われ続けてきたから、金がないとこういう思いをするんだなって。俺は絶対に金を稼ごうと思いましたね。
──アフロは儲けたいんだ。UKは?
UK : 音楽の面に関してはやりたいことができていたらいい。それが利益になっていれば自分としては納得がいくので。でも仮に音楽を辞めて諦めがついたとき、やりたいことは他にも出てくるだろうし、その時は音楽と向き合った時と同じくらい努力をするから、生活するレベルで言えば困らないと思います。お金がない時期に親に迷惑をかけたこともあるので、そういうフラストレーションも経験した上での、いまの考え方ですね。
──なるほど。最近ふたりでケンカをしたと聞きました。
アフロ : どこから聞いたんですか? UKが他のアーティストに曲を提供する話があったんです。俺のリリックはもうストックが貯まっていて、曲を待っている状態だった。そんな状況で、ほかの人と曲を作っちゃったら本末転倒じゃない? っていう、完全に俺の嫉妬が原因のケンカです。もしその提供曲に、俺がリリックを乗せたいって思ってしまったら取り返しがつかないし、お前のギター・フレーズは俺の財産だぞって。でも嫉妬していることをまっすぐ整理して伝えられなかった。UKは「他のアーティストに楽曲を作ったとしても、MOROHAの楽曲スピードは変わらない」って言っていて。俺はそういうタイプではないから、その感覚が理解できなくて。でも、その日ちょうどサッカーの日本代表戦をやっていて、やっぱ団結が大事だなって思って次の日に謝りました。
──UKはどうでしたか?
UK : お互いが役割を持っているのであれば、その人の時間割りがあるわけで。それで制作スピードが揃わないことはしょうがないことだよなって。曲作りのスタンスもそうですけど、人が違えばそれぞれスタイルがあると思う。お互いそれに応えていくのが大事だし、アフロの求めている量と、俺が全力を尽くした最大限の量で折り合いがついていないだけなのかなと思っていて。仮に俺がMOROHA以外でやりたいことがあったときに、いまのアフロが求めるペースに付き合っていたらそれに取りかかるタイミングがないよねっていう話をしました。

──「これは解散だ!」とはならなかった?
アフロ : ならないです。俺がイタイやつなだけなんで。
UK : 別のことで得たものをノウハウとして閉じ込められればという認識でもやっていて。それが実際、曲になったり、技術の進歩や曲の振り幅や捉え方が広がったりするので、俺にとっては大事なことだと思います。
──「スペシャル」を聴いて、UKのギターに驚いたし、その次はどういうギターを弾くんだろうって思った。
UK : 自分がいままで築いてきたものをぶっ壊して、自分が新しく挑戦している姿勢が見える曲を作りたいと思っています。その作業にいちばん時間がかかる。
──ケンカはどういう結末を迎えたの?
UK : 他の人とやることに対しては、自分のなかではとうの昔に考えが決まっていて自分の軸はある、ということを話しました。
アフロ : 一緒にやっていく限りはUKの言っていることを信じるしかないと思いました。相方のソロ・ワークにあれこれ言うのってダサいけど、ツアーがはじまる前に俺のみっともない部分を、いちばん近い相手に見てもらえたのは良かったなと思っています。
──UKはソロ・ワークをすることで、自分を伸ばしていけると言っていたけど、アフロは音楽家として、ラッパーとして自分のリリックはどうやって育てている?
アフロ : 日々、普通に生きていたら育ちますね。
──なるほどね。ラッパーってそういうもの?
アフロ : そうだと思います。ただフロウに関しては海外の音楽を聴いて学ぶタイプの人もいると思うけど、俺はいまのところそういうタイプではないので。語彙力をつけるとか、みんなが思っているのに誰も言っていなかったことを見つけたりする作業は、日々生きることですよね。
悔しさを感じる相手しかライヴに呼んだりしない
──さて、ベスト盤(『MOROHA BEST~十年再録~』)を、2018年6月6日にメジャー・レコード会社の〈ユニバーサルミュージック〉(以下、ユニバーサル)より発売しました。変化はありましたか?
UK : CDをリリースしたことによってMOROHAの動きが体外的に見えている実感はありますね。みんなが話題にしてくれることにメジャーの色が出ているかといえば、それはまだかも。ツアーがはじまってから実感が湧くのかなと思います。

──ツアーは次々ソールド・アウトしていて、すごいことだと思うんだけど……。
アフロ : 目指しているところがあるので。今作を出してZEPPツアーをやれるなっていう手応えはありました。インディーズでリキッドルームをやった地続きの広がり方なので、メジャーに行ったから、という感じではないですよね。各地方のラジオに出演してプロモーションをしたり、これから爆発するであろう時限爆弾をたくさんしかけている感覚はあります。それはメジャーが一緒に仕事をしてくれなかったらできなかったことだと思うので、これから先どうなるかが楽しみだなと。
──しかけてくれているんだ?
アフロ : 「名前は聞いたことあるけど、観たことがない」という人に対して。たとえば、フェスに出てたら「観に行ってみるか」とかそういうキッカケをいま一緒に作っていますね。
──メジャー・デビューしたことでアフロの嫉妬は減りましたか?
アフロ : 全然減らなくて、変わらないです。嫉妬って言い方が正しいかはわからないけど、とりあえず全否定から入らないと気が済まない。全否定して受け入れざるを得なかったものだけ信じていくというスタンスなんですよね。たとえば、ユニバーサルの1階のカフェに壁一面、その週リリースされたアーティストの中で1組だけポスターが貼られるんです。俺たちのリリースした週は、エレカシ(エレファントカシマシ)が一面に貼られていて。他にも、フェスの持ち時間が他の人は35分なのに、俺たちはトップバッターで25分の枠だったり。そういう悔しいことがいっぱいあるから、嫉妬は止まないんですよ。あとUKがモテるみたいなのも腹立ちますね。
──モテてもよくない(笑)?
アフロ : いや許さないですね。
UK : 許してもらわなくもいいよ。
アフロ : それをエネルギーにしてきた自分もいますからね。
──アフロはその嫉妬が原動力になっている人だから、いろいろ状況が変わっていくことで、その嫉妬がどうなっていくのか非常に興味があります。
アフロ : それがなくならないために、俺よりもすごいと思って、悔しさを感じる相手しかライヴに呼んだりしないですね。「もうそろそろ挑戦を受ける側だろ」って言われても、「いやいや、なに言ってんだ! 下なんか眼中にないですよ」と。

──このベスト盤に収録されている「四文銭」の最後〈青い春はもう終わった ここからは真っ赤な夏だぜ〉という叫びは、具体的にはどういう意味?
アフロ : 「やってやるぞ」「悔しい」という意気込みだけでみんなの気が引けた日々は終了ということです。そういう時期が、俺の中で「青い春」なんです。
──その時期が終了した?
アフロ : 高らかに言っていられた、それだけでかっこいいって言ってもらえた時期が終わって、ここからは結果も伴わないといけない。やる気があるだけで可愛いって言ってもらえた20代と、「お前、なにができるの?」って言われはじめる30代と同じような感覚だと思います。
──そう思ったのはなんで?
アフロ : やっぱり結果を出したら、出たかったフェスに呼ばれたりして。「頑張ってきた」ということが、何にも代えがたい証明書だと思うんですよね。頑張るヤツなんだってわかってもらうために、結果は必要。
──「真っ赤な夏」というのは?
アフロ : 結果を出し続ける日々ですね。
──ベスト盤を聴きながら思ったんだけど、結果が出ていなかった5年前とメジャー・デビューをしているいま、同じ歌詞を歌っていてもMOROHAの状況が違うから受け手が感じる意味合いが違うんじゃないかな。だって5年間の間には頑張っても結果が出なかった人もいるわけだし。同調できない人もいると思うけど、どう思う?
アフロ : 俺たちを好いてくれていた人たちが、おれたちと一緒に成長していないなら、フラットな意味で聴くことができないこともあると思いますね。それに対して俺が言い方を変えてちょっと優しくしようとすることは嘘くさい。でも俺は「お前はどうだ? 」とは言いますけど、「お前の努力が足りないからだ」という言い方はしないようにしているんですね。俺が「俺の努力が足りないからだ」という言い方をして、勝手に自分に身に覚えがあるから自分の努力が足りないって聞こえてしまう場合は、それでいいと思っています。
ずっと嫉妬の対象が近くにいる
──6月4日にMCなしの単独公演〈尋問〉を開催しました。これはどういう心境で開催を決めたの?
アフロ : 5月17日の阿部真央さんとのツーマン(自主企画〈怒涛〉)の直後にやると決めたんですけど、あの日はテレビのカメラも来ていて、阿部真央さんとのコラボもして、ちょっとしたアクシデントもあって俺たちの中では緩やかな“ふんわりライヴ”だったんですよ。
──阿部真央さんとやったらふんわりになるのでは?
アフロ : それはそれで良かったんです。だけど俺の中で、ある一点満たされなかったことがあって、そこを埋めないとツアーに挑めない気がした。デカい方向に向かって超人気者にもなりたいし、狭いシーンのコアのところでも胸張って歩きたい。そういう自分を目指すためには、あらゆる角度の修行をしなきゃいけない。阿部真央さんとの1日もいい日で最高だったんですけど、全方位ナメられないために〈尋問〉をやりました。

──〈尋問〉を観て「54-71」を思い出しました。あんな振り方もいいなと。一方で「MOROHAはどうなりたいんだろう?」とも思いました(笑)。
アフロ : どうなりたいんですかね。インタヴューで「どんなツアーになりますか」って聞かれたらその日の気分でやりますと答えていて。ノーMCの日があってもいいと思うし。
──仕込みが多いタイプではないよね?
アフロ : なんとなく朝起きて、自分の感覚でこうしようと方向性は決めています。ここで笑いを取りたいと思ったら、小話をひとつ用意することもありますし。
──ショーにはあまりしたくはない?
アフロ : ショーにしたい日もあると思うんですよ。だから「気分」になるかな……。どっちの日なのか楽しみに来てほしいな。
──ふたりのライヴのヴィジョンってあるの?
アフロ : ないですね。
UK : 音楽にこだわりがあって、ライヴで表現をして、それを見せつける場だと僕たちは思っているので、それが全てなんですよね。あとはライヴへの持っていき方はその都度違うので、気分で決めたりとか。それがハマらなくて悪かったときももちろんあるけど、それがライヴだよねって思います。
アフロ : やっぱ毎回同じMCをしているバンドをナメちゃうんですよ。どんなに売れてても「ダサっ! 」と思っちゃう。
UK : 失敗することが怖いと思うのは勘違いで、挑戦することのほうが怖い。だけどお互いそれをしたいというモチベーションはあります。だから今日何かをするって自分が決めたら、怖くてもそれに向かっていく。失敗することが怖いというよりも、やったもん勝ちというか。そういう頭の使い方ですね。
アフロ : つまんなくなったら辞めちゃうじゃないですか。あと修行中の身なのでね、安定飛行に入るにはまだ早いですね。
──Zeppは埋まりそうですか?
アフロ : 埋まりますね。数字として出ていますね。これで埋まらなかったら失速率がやばいです。
──すごいね!!
アフロ : ありがたいですよね。でもそう言ってもらえても心から笑えないのは、ずっと嫉妬の対象が近くにいること。いままでに「かっこいいから一緒にやりたい」って声をかけて共演してきた相手がいまガンガン行っていて、昔からの付き合いだしずっと嫉妬し続けられている。未だに悔しいっていう歌が歌えているのは、いままでの自分たちが作ってきた人間関係、フィールド作りのおかげだと思いますね。

──Zepp以降は何か考えていますか?
アフロ : すぐ大きい規模を行くわけではなくて、コンセプトを持った自主企画をやろうと考えています。楽しみですね。
──僕は、Zepp以降もMOROHAにはでっかく行ってほしいです。
アフロ : 紅白は出たいですね。でも紅白に出たいって言っているのにNHKのラジオにUKが遅刻して来たんですよ。しかも喧嘩した日の翌日。
──(笑)。
アフロ : 日本戦を観て、今日謝ろうって思って決めてた朝、来ないんですよ。そしたら「いま起きた」って連絡が来て。だからいまUKのせいでNHKからのMOROHAの印象は最低です。
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過去の特集記事もチェック!
・『MOROHA』特集 : インタヴュー
https://ototoy.jp/feature/20101021
・『MOROHA Ⅱ』特集 : インタヴュー
https://ototoy.jp/feature/20131106
・『MOROHA Ⅲ』特集 : インタヴュー
https://ototoy.jp/feature/20161008
・結成10周年記念インタビュー【前半】
https://ototoy.jp/feature/20180114
・結成10周年記念インタビュー【後半】
https://ototoy.jp/feature/20180122
LIVE SCHEDULE
「MOROHA BEST~十年再録~」単独ツアー
2018年8月24日(金)@岩手 the five morioka
時間 : OPEN18:30 / START19:30
2018年8月26日(日)@新潟 CLUB RIVERST
時間 : OPEN18:00 / START19:00
2018年9月5日(水)@沖縄 G-shelter
時間 : OPEN18:00 / START19:00
その他公演はSOLD OUT
「MOROHA BEST~十年再録~」FINAL SERIES (対バンツアー)
2018年10月13日(土)@名古屋 CLUB QUATTRO
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、BiSH
2018年10月14日(日)@松本 ALECX
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、eastern youth
2018年10月20日(土)@仙台 CLUB JUNK BOX
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、キュウソネコカミ
2018年10月27日(土)@福岡 BEAT STATION
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、般若
2018年11月3日(土)@札幌 Bessie Hall
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、小山田壮平
2018年11月10日(土)@大阪 BIGCAT
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、bacho、GEZAN
2018年11月11日(日)@広島 CLUB QUATTRO
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、My Hair is Bad
2018年11月17日(土)@松山 W studio RED
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、さユり
2018年11月25日(日)@熊本 Django
時間 : OPEN17:00 / START18:00
出演 : MOROHA、忘れらんねえよ
〈MOROHA ZEPP TOKYO 単独ライブ〉
2018年12月16日(日)@ZEPP TOKYO
時間 : OPEN16:00 / START17:00
PROFILE
MOROHA
2008年結成、長野県出身。 今年10周年を迎えるアコースティックギターのUKとMCのアフロからなる二人組。 互いの持ち味を最大限生かす為、楽曲、ライブ共にGt×MCという最小最強編成で臨む。 その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。 道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽は、 あなたにとって、君にとって、お前にとって、最高か、最悪か。
>>MOROHA official site
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