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初めてイベントをひらいたのは、彼と同じ19歳の時だったように思う。彼とは、新宿のフェスティバルETERNAL ROCK CITYを主催する辻友哉のこと。ふわっとした雰囲気はよく知る学生と変わらないのに、音楽の話となると急に眼光が鋭く輝く。この光は、ETERNAL ROCK CITYにかける覚悟だろう。ちなみに私はフェスを主催して一晩で200万円の赤字を出したしたことがある。そんな額、実はフェスをするなら当然の経験との説もある。それくらい音楽フェスをひらくとは、リスキーだ。19歳… 正直、まだ早すぎる。ちょっと心配しながら、色々聞いてみた。インタビュー後、「こんなやつが現れるから音楽業界は面白いな」って思った。
インタビュー&文 : 飯田 仁一郎(BOROFESTA)
ZAZEN BOYS、the telephonesも出演! 9月17日、新宿5会場にて開催!!
『ETERNAL ROCK CITY 2011』へ2組4名様をご招待!
2011年9月17日(土)
会場 : 新宿LOFT、新宿LOFT BAR STAGE、新宿MARZ、新宿Marble、新宿Motion、新宿OTO、5会場6ステージ往来自由
OPEN 11:00 / START 11:00 / CLOSE 22:00
前売 : 一般 3500円 / 高校生 2500円 (共に+1drink)
当日 : 一般 4500円 / 高校生 3000円 (共に+1drink)
※プレイガイドでの購入は学割適用外なのでご注意ください。
【OPENING ACT】
umi、スズメナインティーン、DENSHI JISION ACT 3、the telephones
【MAIN ACT】
about tess、URBANフェチ、Wienners、嘘つきバービー、快速東京、GARI、キドリキドリ、Cathy lost one's apricot yesterday、虚弱。、KING BROTHERS、QUATTRO、クリープハイプ、THE★米騒動、COLD KITCHEN、Psysalia Psysalis Psyche、ZAZEN BOYS、thatta、sisi、6eyes、JABBERLOOP、the SHUWA、the chef cooks me BAND、The John's Guerrilla、sleepy.ac、太平洋不知火楽団、The DARARS、Turntable Films、CHARLTON、THIS IS PANIC、direction of the chord、TWO FOUR、Naked blue star、nhhmbase、HaKU、butter butter、Buffalo'3、Half-Life、he、ヒツジツキ、Brian the Sun、pegmap、ポッグカウチナゲット、HOLIDAYS OF SEVENTEEN、memento森、moja、lines、Large House Satisfaction、THE ラブ人間、wozniak
【DJ】
石毛輝(the telephones)、ツジユウヤ(ERO-FES/HSD)、Terry(BRITISH PAVILION/Tequila69)、西村道男(Nur.)、ヒサシ the KID(THE BEACHES/ex.Jerry Lee Phantom)、Moonbug
【Party】
HIGH SCHOOL DISCO(島田沙耶/ツジユウヤ/ヒグチコウキ)、FREE THROW(神啓文/タイラダイスケ/弦先誠人)
無料招待への応募方法!!!
件名に「ETERNAL ROCK CITY 招待券希望」、本文に氏名、住所、電話番号、をご記入の上、info(at)ototoy.jpまでメールをお送りください。当選者の方には、追ってメールにてご連絡します。
※あらかじめinfo(at)ototoy.jpからのメールを受信できるよう、設定ください。
応募締切 : 2011年8月31日24時まで
【INFORMATION】
ETERNAL ROCK CITY.2011 official site
主催・ツジ : info.yuya.tsuji(at)gmail.com
辻友哉(ETERNAL ROCK CITY主宰者) インタビュー
――辻くんはどうしてETERNAL ROCK CITYを始めようと思ったの?
最近の若者達がライヴ・ハウスに足を運ばなくなってきているので、彼らに素敵なアーティストを生でたくさん見てほしいと思ったのがきっかけですね。僕自身、去年まで高校生だったんですけど、高校生って視野は広いのにお金は無いから色んな音楽を聴く機会が本当に少なくて、メディア露出の多いバンドしか知らずに過ごしていく人がほとんどだと思うんです。なので、メディア露出の少ないシーンに素敵なアーティストがたくさんいるという事を知って欲しいです。
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――じゃあ例えば、ROCK IN JAPAN FES.とETERNAL ROCK CITYの大きな違いって何?
一番分かりやすいところでいえば、出演アーティストの知名度。あとはチケット代ですね。
――ROCK IN JAPAN FES.は高い?
あれだけ有名なアーティストをたくさん揃えていますし、会場費も含めたコストを考えれば妥当な価格だとは思います。でも、高校生にとってはやっぱり高いと思います。
――知名度の違いはあるとして、出演アーティストの実力はROCK IN JAPAN FES.と比較してどうでしょう?
五分五分… いや、超えているアーティストも絶対にいます。自分たちのライヴの良さを音源で伝えきれていないアーティストっていっぱいいると思うんです。今はPCから音楽をチェックする人が多いと思うんですが、それってライヴに足を運んではいないじゃないですか。ライヴは生ものだし、常に進化し続けているんだから動画じゃなくてライヴ・ハウスで見た方が絶対良い。
――辻くんは「ロック」というものに対してこだわりはある?
あります。僕の中で、ロックの定義は音だけではない。主張も含めてのロックだと思うんです。アーティストがライヴでオーディエンスにどれだけ強い主張を伝えられるか。その主張がかっこよければ、音がポップであろうと英語詩で分かりにくくとも、電子音主体であろうとロックだと思います。そういう主張が伝わって、人を胸の奥から熱くさせてくれるアーティストはロックだと思います。
――正直、僕は今「ロック」という言葉にあまり魅力を感じていなくて、例えば内田裕也が渋谷で訳の分からないことをしながら「ロックンロール」って言うのは、ロックじゃない。「原発反対のデモをすることはロックですか? 」それもロックじゃない、デモだと思う。今、ロックって言葉が安売りされていてあまりかっこいいと思わないんですよ。辻くんは「ロック」というものにどういう魅力を感じている?
熱い。その一言に尽きます。このフェスの出演オファーも、僕がアーティストに企画主旨を説明して、全員ではないにしろ、そこに「熱い」と感じて出演を決めてくれたアーティストもいるんです。僕も熱いし向こうも熱い、その気持ちがすごくかっこいいことだと思う。その熱さこそが最高のライヴ、最高のロック・フェスに直結するんじゃないかなと。
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全部のフェスを越える気持ちでやらないと何も出来ない
――高校生へ向けたイベントにこだわる理由って何でしょう?
高校生で音楽を好きな人は、自分が良いと思ったものを友達に勧める傾向があるんです。そこで勧められたものをその人が気に入れば他の高校生にも勧めて、口コミで良いアーティストがどんどん広がっていく。そうやって良いアーティストの知名度が徐々に上がっていけば、日本のロック・シーンを盛り上げることができる。これほど魅力的な事はないと思っています。僕はまだ生まれていない時なので人から聞いた話なのですが、イカ天(1989~90年に放映されたTV番組「三宅裕司のいかすバンド天国」)が流行っていた時代のバンド・ブームって、見たいアーティストがなくてもみんなライヴ・ハウスに通っていたそうですね。
――でもきっと、イカ天の頃はヒップ・ホップもレゲエも無かったよね。だから当時の感覚として、ロックを聴くのってちょっと不良なことだったと思う。で、今の高校生の中でロックを聴いている子って実際どれぐらいいるんだろう? 教室に40人いるとして、割合としてどれぐらい?
多分、オリコンでトップ10を占めているアーティストを聴いているのが大体28人。7人ぐらいが僕みたいなロック好きで、5人がその他という感じですね。正直な事を言うとオリコン上位のアーティストは全て同じ事を言っているように見えるし、今の音楽業界はあまり好きじゃないんです。作詞してもらって、それを歌手が歌うのが当たり前だけど、その曲の中にその歌手の意志と思いと熱量はどこにあるのだろうか… と思います。
――じゃあ、出演アーティストたちはどうやって探したの?
元々好きだったアーティストと、噂で名前を聴いて実際にライヴを見に行ってよかったアーティストです。
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――ETERNAL ROCK CITYに出演するバンドが共通して持っているものってある?
まず、ライヴがすごいってこと。でもライヴの良さと言っても、最高のライヴってイベントの主催者とアーティストの波長が合わないと出来ないものだと思ってるんです。その上で、出演バンドの中で良いライヴをするのが半数、主催者とアーティストの波長をギリギリ合わせることができなくて、限りなく最高に近い惜しいライヴをするのが4分の1、残りの4分の1が最高のライヴをしてくれるかなと思っています。もちろん、そのアーティストは当日になってみないとわからないことですが… 。例えば、この日出るmemento森さんなんかは、動員が一人でも何百人でも1人1人に訴えかける熱い主張を持っていて、尚且つ主催者と波長を絶対に合わせてくれるので間違いなく最高のライヴをしてくれるかと思います。他の14組は当日自分で見つけ出して欲しいですね。
――なるほど。これだけの出演者がいると、全部のライヴを見ることはできませんよね。そこに対するジレンマはありますか?
もちろんありますが、これを2デイズにしてしまうとチケット代を上げざるを得ない。でも高校生はお金がないから、いかに一日の濃度を上げるかが勝負になってくるんです。あと、往来自由のイベントや野外のフェスで見たいアーティストの時間帯がかぶることってよくあるけど、それも楽しみのひとつだと思うんです。どれを選ぶかによって、その人にしか作れないタイムテーブルが出来る。どこで休憩を挟むかを考えるのもフェスの楽しみの一つになります。
――このイベントをやってる辻くんを見て、自分でもイベントを立ち上げようって人が出てくると思うんだけど、それに対してはどう思う?
嬉しいです。僕は一応音楽の専門学校へ行ってるんですけど、みんな適当なんですよ。僕を見て自分でもイベントをやろうって人が増えたらすごい良いとは思うけど、やるんだったら、最初は運営がぐだぐだになってもいいから熱量だけはちゃんと持ってやってほしいです。
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――目標にしているフェスはある?
それはないですね。仮にROCK IN JAPAN FES.やフジロックのようなフェスを作りたいと思っても絶対に作れないだろうし、目標を設定してしまうとそこを越えることができなくなるので。動員の面では新宿で続ける限り限界はありますが、見た目の規模と熱量においては全部のフェスを越える気持ちでやらないと何も出来ない。お金が好きな訳ではないし僕一人でやっていることなので、一度痛い目を見るまではずっとこれを貫き通してやりたいと思っています。
アーティストとしてお金をもらうのであれば強い主張を持ってほしい
――一人でやる事にはこだわってるの?
こだわってます。イベントを始めて半年くらい経って感じたことなんですが、集団でイベントをやっている人達と一人でやっている人達とで熱量は大きな差が生まれるんです。あと、複数人でやると身内感が出てしまうし、人によって熱量にもばらつきがでるから、均等化しようとすると全体的に下がってしまう。僕の場合はお客さんに伝えたいことが明確なので、一人でやる方がシンプルだし伝わりやすいと思ったので今の形でやっています。
――たとえばFREE THROWはどう思う? あれは3人でやっているけど。
奇跡だと思います。3人の意思があそこまで合致するっていうのはなかなか無いことだと思う。なので、あのパーティーのあの環境はすごく羨ましい。
――ETERNAL ROCK CITYの次のステップは何か考えている?
今年は、全体の規模が去年の5倍になっているんです。だから今年も成功して来年も続けることができるなら、今の数倍大きくしたい。新宿のライヴ・ハウス12店舗ぐらいを借りて同時開催。それがさらに上手くいけば次は3デイズ。4年目ぐらいで僕が望むフェスの完成形ができて、一人で企画するイベントとしてもそこが限界なのかなと思います。
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――新宿って場所には何かこだわりがあるの?
下北沢にはインディー・ファンクラブがあるし、渋谷にはまだないけど、音楽の街というイメージが定着してますよね。新宿にもライヴ・ハウスはたくさんあるのに、歌舞伎町の怖い夜のイメージが強くてなかなか音楽の文化が定着していない。いや、定着はしてるのに、定着しているように見えないんですよね。だからそこでやることにすごく価値があると思いました。あと交通の便がいいので高校生たちも来やすいと思うので、僕は新宿にこだわろうと思います。
――さっき、今の音楽業界を好きじゃないと話してくれたけど、自分のフェスが大きくなることによって音楽業界にどうなってほしい?
メディア露出の少ないけど素敵なミュージシャンたちが有名になって、CDを多くの人の手に渡らせたいです。僕は、アーティストとしてお金をもらうのであれば強い主張を持ってほしいと思うんです。熱い主張をするアーティストで構成される音楽シーンが出来たら本当に素敵な業界になるんだろうなーと心から思っています。
『ETERNAL ROCK CITY 2011』出演者の作品はこちら!