【BiS 3度目の正直は、本当にあり得るのか!?】連載vol.0 渡辺淳之介インタヴュー
伝説の破天荒なアイドルグループBiSが、2019年5月11日に赤坂BLITZにて2度目の解散を迎えた。そんな2度目の解散ライヴを、所属事務所WACKの代表・渡辺淳之介はこう締めくくった。
「俺には俺の解散しなければいけない理由がありました。きっとメンバーにもあると思います。それはきっと研究員には一生わからないことなんだと思います。一生会わないと思いますが、また楽しいところで一緒になれたらいいかなーなんて思っています。いつの日か、この解散がよかったと思えますように。アディオス」
そして3度目のBiSが始まる。3度目のBiSとは!? 第三期BiSがスタートする直前のいま、代表の渡辺淳之介に話を伺った。
新章スタート【BiS 3度目の正直は、本当にあり得るのか!?】。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 水上健汰
写真 : 大橋祐希
きっと第三期BiSは「序」、「破」、「急」の「急」になる
──新たに始まるBiSは、第三期BiSという認識で間違いないですよね?
そうですね、第三期BiSになりますね。
──第一期BiS、第二期BiSは、渡辺さんのなかで言葉に表すとしたら、どういう言葉になりますか?
やっぱり第一期BiSは僕の人生ですね。第一期BiSの活動期間は三年半で、そこから株式会社WACKを立ち上げたんですけど、今度の8月で5周年になるんです。BiSH自体も第一期BiSの活動の三年半を超えているんですけど、不思議なもので、やっぱり第一期BiSの3年半が1番長かったですよね。
──長かったというと、それだけ濃厚だったということ?
そうですね。すごくたくさん下積みをした気持ちでいるんですけど、感じていた時間に比べて、実際経っていた時間はすごく短いんですよね。これは結構不思議な気持ちですね。
──なるほど。
後は最近思うのが、第一期BiS、第二期BiSと、BiSのストーリーを客観的に見たときに、第一期は「序」、第二期は「破」だなと思ってるんですよね。なので、きっと第三期が「急」になる。
──能や歌舞伎でよく言われる3部構成ですね。本格から破格へ、静から動へ、そして、「急」で加速する。ということはこれで最後になるということなんでしょうか?
本当は、毎回これでラストにしたいと思ってるんですけどね(笑)。
──やはり第二期BiSは、第一期BiSのような昇り詰めていく感じを出すのが難しくなっちゃったということなんでしょうか?
なんとかしたいなとは思ってたんですけど、どうしても同じ方向を見れないとうまくいかないので。僕が見ている限りでは、彼女達はメンバー同士ですら同じ方向を見ることができなかったと思います。
──そういえば、日比谷野外音楽堂(以下、野音)でのGANG PARADE(以下、ギャンパレ)の〈CHALLENGE the LIMIT TOUR〉ファイナル公演見て、「いま思えば、ギャンパレもめちゃくちゃ苦労してたよな」って思いだしたんですよ。それこそプラニメ時代からの曲「Plastic 2 Mercy」をやったとき、ボロフェスタでカミヤサキが歌ってたときのこととか思い出しました。あれ何年前でしたっけ?
もう4、5年前ですよね。
──そうですよね。メンバーがいなくなったり入ったり、名前も変わったし。いろいろあったけど、こうして野音がソールドアウトまでしてしまうんだというか。しかも、あの日のライヴはそれこそBiSHやBiSのファンも大手をふって「すげぇ」といわせる圧倒感がありましたから。だからやっぱりこんなに変わるのかと、本当に感無量でした。
そう考えると、もしかしたら第二期BiSの解散も性急だったかもしれないですよね。苦労していたと言われる頃、BiSHがすごく勢いのある時期というのもあって、僕もGANG PARADEは任せていた感じで。本当にお客さんが10人みたいな時期もありましたから。でも「諦めなければここまで来れるのか」ってGANG PARADEを見ていて思いましたよね。
──どうしても時期的にギャンパレと第二期BiSを比べてしまうんですけど、何が違ったんでしょうか?
そこはさっきも言った、メンバー同士が同じ場所を見ていなかったというところかなと思いますね。同じ目標とか、同じ景色を共有できなかった。合宿オーディションでも言い続けていたんですけど、なかなか伝わらなかったと思っています。こうしてGANG PARADEがすごかったと飯田さんに言ってもらえるような状況に、彼女たちは出来なかったということだと思います。本当に難しいですけど、アイドルって逃げやすいといえば逃げやすいですよね。楽曲は作ってもらってるわけだし、歌詞もたまに書くにせよ、 正直、何にもやらなくても基本用意してもらったものをこなせばアイドルになれるじゃないですか。マネジメントがダメだから売れなかったと言われることも多いんですけど、そんなわけはないんですよね。もちろん、例えば大手事務所に入ったら、売れる可能性というか露出する可能性は増えるんですけど、大手事務所に入っても売れないアーティストは売れないじゃないですか。逆に言えば、大手じゃないところでも売れるアーティストは売れるし。第二期BiSも、そういう負のスパイラルにはまっちゃったんだなと思っていますね。
──彼女達も頭ではわかってるはずなんですけど、同じ場所を見るのってやっぱり難しいですよね。
どうしようもない所もあると思うんですけどね。
合格が決まっていてもここから人数が減ったりするので
──第三期BiSはどんな進捗なんですか? メンバーとかはもう決まってきている?
決まりました。でもたぶんですけど、いま合格を出していても、ここからお披露目するまでに人数が減るので(笑)。
──BiSHでもユカコラブデラックスが脱退しましたもんね。でも、ここから減ると伝説がはじまる感じはしますよね。
たしかにそういう感じはするんですけど、最近はBiSHを始めたときとは違って、軽く未来が見えているんですよね。当然CDがリリースされて、数百人規模、マイナビBLITZ赤坂規模くらいは埋められるようになるんだろう、みたいな。そういうのが見えちゃって辞めづらいですよね。
──今回、第三期BiSのメンバーの選考基準みたいなものはありますか?
へんな話ですけど会話ができるかどうかは一番重視しましたね。今回のメンバーは割とみんな大人というか、応募要項にもありましたが18歳以上で構成しています。
──それは何故?
基本的にはなにをやっても18歳以上であれば本人たちが責任を取らないといけないからというのはありますよね。やっぱり、周知の事実なので言っちゃいますけど、急に帰っちゃう子とかもいましたもんね(笑)。なので、基本18歳以上でちゃんと話がわかる子っていうのを1番に重視しましたね。
──今回のオーディションも、また合宿で集めたりするのかなって思っていたら、そうじゃなかったじゃないですか。そこになにか理由はあるのでしょか?
やっぱり合宿だと、お客さんにもいろいろ見えちゃうじゃないですか。合宿には合宿のいい部分がいっぱいあるとは思うんですけど、新しいBiSをはじめるときはもうちょっとミステリアスで居たいなというのがありますよね。まぁ、ゲン担ぎというか、僕がよくやる逆張りじゃないですけど、第二期BiSは合宿で選んだので違う方向でやりたいというのはありますよね。
──応募は何通くらい来たんですか?
2000通くらいですね。
──多いですね! 昔はぜんぜん来ない時期もありましたよね。
10人とか。
──第一期でしたかね。ぜんぜんこないみたいな(笑)。
でもおもしろいのが、たとえばWACKの合宿オーディションで書類審査の合格の通知を100人出すとすると、面接には10人は来なくても絶対に90人は来るんですよ。でも今回の第三期BiSで書類審査の合格の通知を出しても半数以上は面接に来ないっていう。
──たしか、第二期のスタートもそうでしたよね。
そうなんですよ。第二期のオーディションもそんな状況で。他のオーディションはすごい来るのに。
──やっぱどこかで怖いんでしょうね。
そうだと思いますね。
──やっぱり、BiSHやギャンパレ、EMPiREといる中で、BiSだけ特別に強い負荷をかけているイメージはありますよね。
実は、僕としてはそのつもりはないんですよね。逆にいうと、BiSだけがずっと負荷をかけないとどうしようもない状況にあったというか。そんな状況がずっと続いてしまっていたというイメージですよね。
おそらくBiSが武道館やるときは俺が死ぬとき
──では、BiSHやギャンパレ、BiS、EMPiREと、渡辺さんの中に「こういうグループを作りたい」という一貫したイメージみたいなのがあるということなんでしょうか?
常にかっこいいグループがいいなとは思ってるんですけどね。
──渡辺さんの「かっこいい」というのはどういう感じなんでしょうか?
単純に見た目もあるんですけど、僕が言う「かっこいい」は自分に厳しいかどうかですね。ストイックかどうか。厳しさと優しさって同居していると思うんですよ。なんというか、人間社会ってどこもそうですけど、亀裂も生みたくないし、めんどくさいし、大人になるとだんだん怒らなくなるじゃないですか。プー・ルイとか特に、第一期の時とか「こんなんできないならやめればいいじゃん」って厳しいことを言える優しさみたいなのがあったと思うんですよ。結局、第一目標の「売れる」というところに向かって本音というか、厳しいことを言える空気が絶対に必要なんですよね。「売れたい」とか「幕張メッセでライヴがしたい」とか言うのは簡単なんですよ。そこに向かうために具体的にどうしていくのかというのを、真剣に突き詰められるのが大切なことなのかなと思いますね。
──第二期BiSの解散ライヴで「Fly」以外に第一期BiSの曲をやらなかったじゃないですか。「Fly」も第二期BiSでカヴァーし直したものだし、もはやBiSを名乗らなくても成立したんじゃないかって思うところも少しあって、その時にBiSをBiSたらしめるものって何なんだろうなということをすごく考えたんですよね。
BiSがなんなのかっていわれると、僕もはっきり言えなくて。基本的に僕がやっていることは、どのグループでも変わらないと思っているんですよ。やっぱり1番やりたいことは、「世界を変える」とか「人の気持ちを変える」ということで、それが自分を突き動かす衝動だったので。それが選択の末、各グループの色になっていったとは思うんですよね。あとは僕的なエゴなんですけど、第一期BiSが僕のキャリアのスタートでライフワークなので、BiSという名前のグループは続けていきたいと思っているんですよ。もう1回BiSをやるって言ってはじめたBiSHだったんですけど、やっぱり別物になって、いまやBiSHしか知らない人たちもたくさんいる中で、本家というかBiSっていうものがあるということを大切にしていきたいんですよね。いまだに「全裸のPVの……」とか「伝説の破天荒……」って言われるものがあり続けるのが大切だなって。おニャン子クラブでも、やめても元おニャン子クラブって言える状況というか、元セックス・ピストルズとか、そういう風に元BiSのメンバーたちに伝説的な存在になってもらいたくて、そこの居場所を作っていくみたいな感覚ですかね。
──ちなみにBiSにはゴールはあるんですか。
そこはやっぱり武道館ですよ。
──今度こそ行けるんですかね。
でも、やっぱり武道館でやりたいですね。もしくは僕が武道館作るか。WACK武道館。
──どこまで行ってもやっぱり目標は武道館なんですね。
どのアーティストでも、武道館が決まった時はお客さんがすごく喜んでくれるじゃないですか。そういうのもあるんですけど、どこか自分の中でも拭えない武道館への憧れみたいなものがあるんですよね。
──これでBiSが武道館やったら感激ですよね。
そうですよね。でも、おそらくBiSが武道館やるときは俺が死ぬときですね。
編集 : 伊達恭平
編集補助 : 矢野圭将
第三期BiSがスタート前にこれまでの音源も復習しておこう!
第一期BiS
新→古
第二期BiS
新→古
BiS1st
BiS2nd
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