「金になると思わせるだけのものが俺たちにはあった」──MOROHA、結成10周年記念インタビュー【後半】
魂を震わせるリリックと、互いの持ち味を最大限に生かすためアコースティック・ギターとMCだけの最小編成にて行われるライヴで、彼らの音楽を聴いたもの、観たものを圧倒させるMOROHA。そんな彼らが2018年に10周年を迎える。このタイミングで6月6日(水)には再録ベスト・アルバム『MOROHA BEST〜十年再録〜』のリリース、そして12月16日(日)にZEPP TOKYOにて単独ライブも決定したのだ。着々と多くの人に向けて、彼らの音楽が届くよう歩みを進める彼らであるが、OTOTOYは、お茶の間にもMOROHAの音楽が届く未来がそう遠くないことを確信している! 今回OTOTOYでは、10周年を迎えた今までの活動についてを、インタビューや主宰のボロフェスタに招集する等、時には言い合いをしながらもデビュー当時からずっと応援し続けるOTOTOY編集長の飯田仁一郎と共に振り返る。
先日公開したインタヴュー前半ではメジャー・デビューを果たした今の心境やデビュー当時の彼らの活動、1stアルバムをリリース以降の彼らの想いに迫る内容に。インタヴューではアフロが、デビュー当時から変わらないMOROHAの「根本」は「頑張ること」だと話してくれた。デビュー当時から現在まで常に悔しさを感じながら活動をしてきた彼らが、どのように頑張り、成長してきたのかを紐解いています。今回のインタヴュー後半では2ndアルバム、3rdアルバムをリリースしてからの彼らの変化や、音楽に対する熱い思いを語ってくれた。ぜひ前半と合わせてお読みください!!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文&構成 : 鈴木雄希
編集補助 : 北村奈都樹
写真 : 鳥居洋介
>>インタヴュー前半はこちら<<
多くの出会いがあった2ndアルバム・リリース
──前半でも「ずっと頑張っていた」と話してくれたけど、2ndアルバム(『MOROHA Ⅱ』)からは何を頑張ってきましたか?
アフロ : どんどん自分達に向き合うようになってるっすよね。かっこつけなくなってきた。
──「1stアルバム」から「2ndアルバム」への大きな自分たちの変化はどこだと思っていますか?
アフロ : ライヴをたくさんやったすね。
UK : 自分たちで企画とかをやってなかったんです。バンドとしての成長を遂げる前に、良くも悪くも曽我部さんに見出されてしまったんですよね。バンドとしての力がゼロに等しかった。だから1stアルバムから2ndアルバムまでの3年間でその穴埋めをしてきたんです。それでライヴばっかりやって… って感じでしたね。そのなかで思ったことやムカついたことを曲に落としてって感じで。
──「2ndアルバム」は、流れの中で自然にできた?
アフロ : 自然自然。
UK : こういう曲をつくりたいんだよねって話し合いをした程度で。お互いが共感できるような事柄だったら曲にしますね。
──「2ndアルバム」をリリースしたときの気持ちは?
アフロ : 100万枚売れると思ってましたね。1stアルバムでその気持ちは折れたけど、もう一度100万枚売れると信じて出さなきゃなと思ってましたね。
──劇的な変化はあった?
アフロ : この3年でいろんな事を知ったんです。自分たちの技量が足りない部分はさておき、自分たちが立ちたい場所に立ちたいと思ったときに、俺たちは「そこの人たちはすごくアンテナを立ててくれて、すぐに誘ってくれる」っていうふうに信頼しすぎてたんですよ。でもやっぱりそんなことはないし、聴いてもらえるところまでいかないと聴いてもらえないんだ、って思い知ったんですよ。とにかくいい音楽だけやってればいいっていう世界じゃないんだって。
だから自分を売り込んだりすることさえも歌詞にする、そしてそれを胸張ってやっていくっていう根性を身につけていったのが2ndアルバム『MOROHA Ⅱ』です。このCDのサンプルは、100枚以上宛名書きして送ってると思う。
──「営業」をはじめたんだ。
アフロ : そうですね。だから、このCDを渡して出会った人が多いんです。
──アフロがいろんな人に営業していたことに関して、UKはどう思ってた?
UK : 大事だと思って僕もやってました。ただその反面、自分たちで動ける範囲ではないところまで広げてやることでもないなとも思っていましたね。だから半々の気持ちでした。
──それはなんで?
UK : 単純にプライドだと思います。おれたちが価値のあると思っているCDを人に無償で渡すということに、すごい抵抗を持っていたんですよ。未だにあるけど、当時はそれを引きずっていた時期なんです。名刺代わりに簡単にCDを渡すことは、安売りなんじゃないかって思っているところもあるけど、やったらやっただけ広がるってことも知ってるし。だからためらいつつも渡している時期ではあったかな。
──2ndアルバムをつくったあとで、どうプロモーションするかを考えた?
UK : そうですね。
アフロ : CDを送ったり、自分たちでプロモーションをしたりすることに成果を感じたんです。でもこれをローズ(レコーズ)がやってくれるって言われたら、スタッフも少ないので、限度があるのかなって思ったんです。アーティストは俺たちだけじゃないし。そういう部分でMOROHAを広めるために、別のところに行った方がいいのかなって考えになった。
──もうひとつ大きい会社の方がよかったということ?
アフロ : 会社じゃなくても、個人でもいいけど、俺たちに集中してくれる人がよかった。
──なるほど。だから自分たちで〈YAVAY YAYVA RECORDS〉を立ち上げるんだ。
アフロ : これはセカンドの経験を踏まえて、プロモーションとかブッキングとかを全部自分たちでやるぞっていう気迫の表れだったんですよね。
──プロモーションを自分たちでやったことで、このときに掴んだものはありますか?
アフロ : なんだろうな…… でも「2ndアルバム」が自分の想像よりも売れなかったから、より貪欲になったのかもしれないですね。
音楽的にさらなる厚みを増した3rdアルバム
──アフロの貪欲な気持ちを叶えるには、内部のチーム体制から変えていったってことだよね。音楽的にはどう成長したと思う?
アフロ : 「2ndアルバム」から「3rdアルバム」というと、UKが革命的な奏法を完成させたのでそこは大きかったですね。あと歌詞の内容でいうと… なんだろうな。「1stアルバム」と「2ndアルバム」って21歳から24歳なんですよ。やっぱりこの3年の変化ってすごいですね。方向が思いっきりガクって変わるぐらい。
──声の発声方法から全然違うもんね。
アフロ : その方向性の変化から、より分厚くしたのが「3rdアルバム」って感じですね。
──UKの奏法っていうのは、リズムを入れるって事?
UK : それもそうですけど、もっと根本の部分でギターに対する解釈が段階を踏んでできていて。「1stアルバム」には、MOROHAを真剣にやってない頃にできあがった曲とかもあったりして。言ってみたら、腹くくってMOROHAをやろうと、1から作った曲が「2ndアルバム」に全部込められてるんです。お客さんも徐々に増え始めて反応が見えてきたことで、ギターのフレーズや曲の強度はこういうふうに受け取られるんだな、というのをちょっとずつ実感する時期だったんです。
「バラ色の日々」や「上京タワー」で自分がこういうふうに曲を作ったら人は感動するんだっていうルールが、確実にハマった時期だったんですよ。あとはそこに自分なりに当てはめていく発想勝負というか… それが「3rdアルバム」だったかな。それに加えて、自分の新技が開発されたって感じですね。それで曲の作り方の幅が広がりましたね。もう一つは、自分にとって周りで売れていく音楽の質が上がってきて、曲を聴いて悔しくなってくる事が増えてきてるんです。自分の自信の無さが減ってきたんじゃなくて、3枚のアルバムで段階を踏んで、徐々に世の中の音楽が自分に刺激をあたえてくれるようになったんですよ。
──へえ。それはなんでだろう。
UK : 世の中的にバンドが売れるようにもなったし、世の中に出てくる同年代が増えてきて、それに刺激される事が多いですね。
──同世代の音楽が売れ始めた。
UK : 秋元(康)さんの書いた曲とかザ・ビートルズの曲って言われても、正直そこに刺激はされないんです。でも米津玄師が書いた曲って言われたらやっぱり悔しいしグっとくる。PUNPEEが書いた曲にも悔しい思いがあるので。…… そこに勝ちたいというか。やっぱり売れてる人が正解になる世界だから、自分が同じ事をやっていても先出しされたら、もうその人の手柄なので。そういう悔しい思いをしたから、その人たちに勝とうと思ったのがデカイですね。
──「2ndアルバム」で自分のプレイ・スタイルを発見して、「3rdアルバム」で完成に近づけたって感じなんだね。
UK : そうですね。そういうことと、プレイの掛け算というか。
──アフロとしてはどうですか? 「2ndアルバム」から「3rdアルバム」のラップとか歌詞に関しては、どんな変化を?
アフロ : 上手くなりましたよね。
──上手くなったよね! なぜだと思う?
アフロ : ライヴをしたからっすね。結局「2ndアルバム」から「3rdアルバム」にかけても同じだけやってるもんね。
──作品をひとつずつ聴いていくと、人間的にもすげぇデカくなったなとも思った。
アフロ : 人間的にもデカくなってるっすよ(笑)。
多くの悔しさを経験して、いまMOROHAはどこへ向かう?
──この期間で悔しかったことはある?
アフロ : なんだろうな。別に音楽的なことじゃなくても、すげーいい漫画を読んだときに「俺が伝えたいことってこういう事だよな」と思って悔しくなることもあるし。彼女と別れたとかもそうか。
──レーベルを変えて自分たちで営業をはじめたりして、こっちのほうが届いたって感覚はある? それとも変わってないって感覚?
アフロ : 自分たちの期待が高すぎるから。
UK : 言っても、アルバムを出すときはいつも「これは爆発する」って思ってたけど、実際はそうはならなくて。「3rdアルバム」を出すときには、現実的に見てしまっている自分も少なからずいました。
──やめようと思ったことはあるの?
アフロ : 俺はないですね。
UK : 俺もないですね。
──いま聞いてる限りでは、3rdアルバムの結果に満足してないんだと思うんだけど、これが10枚続いてもやってる?
アフロ : やってると思う。
──それはなぜ?
アフロ : やっぱり音楽が好きだから頑張れる。頑張れることって俺らにとって限られてるから。俺にとっては頑張ることの方が大事。
──UKは? 「4thアルバム」、「5thアルバム」でも大物になれなかったらどうする?
UK : 自分の才能のなさを認めますね。でも必ず認めてもらうことができると思ってるので。夢とかではなく、目標のひとつ。
──紅白に出たりして目標が叶ったら?
アフロ : 「目標が叶ったらどうするの?」ってフジロックに出るときも言われたっすけど、別に次の目標があるし、ずっと悔しいと思うんですよね。
──それが叶ったときにどうなるかはそのときにならないとわからない、と。規模感を大きくしたいとかは?
アフロ : 規模感の目標は、全体の半分ぐらいしかないです。もちろん「小さい箱で深く深く刺していく」みたいなかっこよさを、大きい規模でやれるようになったら素敵だなと思う。
──晩年まで小さいライヴハウスで弾き語ってました、みたいな生き方もあるじゃないですか。
UK : ハッキリといまの段階でわかるのは、俺はそうはなりたくない。死ぬまでライヴハウス現役みたいなのは、その人たちは素晴らしいですけど、そうなるぐらいだったら、俺はたぶんやめます。どのタイミングでそこに気付くのかわからないですけど、自分を客観的に見てかっこ悪いと思ったらやめますね。自分がどんだけ輝いてるかだと思うので。
アフロ : そのときには、また考え方も変わってるかもしれないですしね。
UK : そうそう、それはわかんないし。音楽自体をやめてる可能性もあって、別の目標ができてるかもしれないし。はっきり言ってわからないですけど、現段階でいえることはそうですね。
──じゃあ、メジャー・デビューを掴んだのは、なんでだと思いますか?
アフロ : かっこいいからっすよ。それはメジャーじゃなくても、曽我部恵一さんに出会えたときにも思いましたし。あと変な言い方ですけど、少なからず金になると思わせるだけのものが俺たちにはあった。
UK : 思ってる事しか実現できないので。強く思えば思うほどそれは実現できると思ってるし、「自分たちはしてきた」という自負があるので。
──なるほど。今までのなかでいちばん自分たちに影響を与えた人って誰?
UK : ちょっと恥ずかしいですけど、そういう風に聞かれたらアフロじゃないですかね。俺はこういう努力家ではないし、それに引っ張られたところがあるので。特にCDを出す前と比べたら、絶対人間として変わってた。
アフロ : 俺もUKですね。たぶん1人じゃやっていけなかったと思うから。
2018年一発目の最新曲をチェック!
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz)
【配信価格】
257円
MOROHAの過去作をチェック!
古→新
【過去の特集ページをチェック!】
>> そのリリックは五感を振るわす──『MOROHA』リリース : インタヴュー
>> 3年ぶり!セカンド・アルバム、『MOROHA Ⅱ』がリリース! : インタヴュー
>> MOROHA、魂の3rdアルバムが吐く程ヤバイ!!! : インタヴュー
>> MOROHAの伝説となったボロフェスタ・ライヴのハイレゾ音源配信開始!! : レヴュー
LIVE SCHEDULE
モルタルレコード17周年アニバーサリー~ MOROHA自主企画『破竹』第十五回
2018年1月26日(金)@埼玉・熊谷ヘブンズロックVJ-1
時間 : Open 19:00 / Start 19:30
出演 : MOROHA / THE NOVEMBERS
SUPER BEAVER presents SUPER BEAVER 「 都会のラクダ Tour 2018 ~前人未到のラクダチェリーパ イ!~」
2018年2月3日(土)@岐阜・岐阜Club-G
時間 : Open 17:00 / Start 18:00
出演 : SUPER BEAVER / MOROHA
SUPER BEAVER presents SUPER BEAVER 「 都会のラクダ Tour 2018 ~前人未到のラクダチェリーパ イ!~」
2018年2月4日(日)@徳島・徳島club GRIND HOUSE
時間 : Open 17:00 / Start 17:30
出演 : SUPER BEAVER / MOROHA
モーチャーフェス
2018年2月9日(金)@愛知・名古屋クラブクアトロ
時間 : Open 18:00 / Start 19:00
出演 : MOROHA / ビッケブランカ / NakamuraEmi【MC】 小林拓一郎
MOROHA自主企画「怒濤」第十三回
2018年2月14日(水)@東京・新宿LOFT
時間 : Open 18:30 / Start 19:30
出演 : MOROHA / SUPER BEAVER
HI BACK PACK SPECIAL
2018年2月23日(金)@愛媛・Double-u Studio
時間 : Open 18:30 / Start 19:00
出演 : 八十八ヶ所巡礼 / MOROHA / O.A:BONKURA FEVERS
エリザベス宮地 presents エリザベス宮地企画 Vol.2 「大阪サバイバル」
2018年2月25日(日)@大阪・umeda TRAD
時間 : Open 16:00 / Start 17:00
出演 : BiSH / MOROHA
ZEPHYREN presents Zephyren presents A.V.E.S.T project vol.12
2018年3月10日(土)@東京・渋谷ライブハウス、クラブ 全7会場
時間 : Open 11:30 / Start 12:30
KKTくまもと県民テレビ presents HAPPY JACK 2018 ※3月17日,18日
2018年3月17日(土)@熊本・熊本市内、ライブハウス
時間 : Open 13:30 / Start 14:00
Fear, and Loathing in Las Vegas presents 「New Sunrise」 Release Tour 2017-18
2018年3月24日(土)@北海道・札幌PENNYLANE24
時間 : Open 17:15 / Start 18:00
出演 : MOROHA / Fear, and Loathing in Las Vegas
極東最前線〜ハルカゼフクモロハノヤイバ〜
2018年4月20日(金)@東京・渋谷クラブクアトロ
時間 : Open 18:00 / Start 19:00
出演 : eastern youth / MOROHA
MOROHA ZEPP TOKYO 単独ライヴ
2018年12月16日(日)@ZEPP TOKYO
詳細後報
PROFILE
MOROHA
2008年結成。 舞台上に鎮座するアコースティック・ギターのUKと、汗に染まるTシャツを纏いマイクに喰らいつくMCのアフロからなる二人組。
互いの持ち味を最大限生かす為、楽曲、ライブ共にGt × MCという最小最強編成で臨む。
その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。
相手を選ばず、選ぶ筈が無く、「対ジャンル」ではなく「対人間」を題目に活動。
ライヴハウス、ホール、フェス、場所を問わず聴き手の人生へと踏み込む。
道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽をかき鳴らし、賛否両論を巻き起こしている。
雪国信州信濃から冷えた拳骨振り回す。