轟音とともに発される“ヤング”の叫び──ニトロデイ、オルタナ・シーンに殴り込む初フル・アルバム
OTOTOY最注目バンドのひとつ! 新たなシーンを切り開き、その先頭を突っ走ること間違いなしのオルタナティヴ・ロック・バンド、ニトロデイが初のフル・アルバム『マシン・ザ・ヤング』をリリース! 7月にリリースしたセカンドEP『レモンドEP』ではキャッチーさに磨きがかかった新たな顔を見せた彼ら。今作ではウィーザーやアッシュをはじめ、さまざまなジャンルからの影響も感じられる、まさに新機軸な1枚に仕上がっている。このような変化がどのように起こったのか、フロントマンの小室ぺいへの単独インタヴューで明らかにする。
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INTERVIEW : 小室ぺい(ニトロデイ)
このフル・アルバム『マシン・ザ・ヤング』で小室ぺい、そしてニトロデイは、サウンド、歌詞、歌、その全てにおいて大きな進化を遂げた。これまでの作品と比べても、1曲、1曲、ニトロデイが音楽を通してリスナーにぶつけたい感情が溢れているし、なによりストレートにその感情がぶつかってきた。若干20歳、自分たちを「ヤング」と自称する彼らの等身大のアルバムが完成した! ニトロデイよ、“自分たちの音楽”を完成させたいまこそ、僕らにロックのおもしろさを見せつけてくれ!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文&構成 : 三浦智文
写真 : 大橋祐希
“ニトロデイとしての音楽”の拡張
──今回の『マシン・ザ・ヤング』、とてもいいアルバムでした。
ほんとですか? 自分でも結構手ごたえがあって。前作の『レモンド EP』に収録されている「レモンド」という曲で“ニトロデイとしての音楽”がつかめたなと感じていて。今作はその部分をより拡張していこうと思って作りましたね。
──“ニトロデイとしての音楽”というのは?
言葉にすると難しいのですが、曲を作りはじめたときは、自分が聴いていたバンドとか音楽にとらわれすぎていたところがあって、早くそこを何とかしなくてはと思っていたんです。「これは自分たちの音楽だ」と自信をもって宣言できる部分をずっと探していて。
──なるほど。
そこで、これまでは自分ひとりで曲を作っていたのですが、バンド・メンバーと意見交換をしながら作るようにして。そうしたらようやく自分たちの音楽になってきたんです。あとは、単純に作曲の部分でも自分のできることが増えたというか、いいメロディーも書けるようになりましたね。メロディーと歌詞とアレンジがバラバラではなく、しっかりと意味のある形でお互い同士が強め合うのを目標にするというか。
──メロディーと歌詞とアレンジを互いに強め合う……。
そうですね。それが結構理想というか。これまでは、ただ書きたい歌詞や書きたい曲、やりたいアレンジをやっていたので、そこに意味を作れていなかったんですよね。だから今回はそこを何とか脱していこうという感じはありました。
──だから歌詞に意味が出てきたんだ。
単純に歌詞を置くだけよりも、歌詞の意味があったほうが、より歌に自分の気持ちも入っていくし気持ちの入れ方も違ってくるなというのは実感としてあります。
──作曲はどのようにして自分のものにしていったの?
まずはたくさん作品を聴いて、自分のものにできるものをどんどん吸収していこうと。ウィーザ―の『Pinkerton』やアッシュなどから刺激をもらっていましたね。
──アレンジとかコーラスも今作の特徴のひとつだよね?
そうですね。ニトロデイは、ナンバーガールやART-SCHOOLなどと比べられることが多かったので、そこと違う感じを出したくて「コーラスをどんどん入れていこう」と。あとは、レンタルズのコーラスの入れ方に魅力を感じて。自分たちもこういうサウンドでコーラスを入れてみたらおもしろいんじゃないかなと。
──いまは、ナンバーガールとかART-SCHOOLっぽいとか言われるのは嫌なんだ?
もちろん尊敬はしているんですけど、彼らと同じことをやっていても意味がないなというのがずっとあったので。だから“自分たちでないと鳴らせない音楽”を探していて。その意味で今作はその答えに近づくことができたんじゃないかなとは思います。
──バンド・メンバーでアレンジを進めていくやり方は、これまであまりやっていなかったの?
最初は自分で考えたものをメンバーに指示して演奏してもらっていました。でも、それだとバンドでやる意味がないと思ってしまって。単純に4人分のアイデアで曲を作ったら、ひとりでやるよりも作品に幅も出るし、バンドでやっている実感も生まれると思ったんです。
──それで見えてきたものはぜんぜん違った?
自分の頭の中でやっているだけでは見えなかったものが見えますね。なので最終的に曲が完成したときに、すごくよくなったと感じることが増えました。
──アレンジをバンド・メンバーに任せたときに、逆に「そのアレンジはないな」と感じることはありませんか? そのときバンド・メンバーと衝突することはいままでよりも増えた?
ぶつかることは増えましたね。だからスタジオでは、自分がわがままを言って通す感じです(笑)。でも、どうにもならない時もあって。一度持ち帰って改めて聴いてみると意外とよかったということもありますね。アレンジ以外のところでも衝突は増えたかもしれないです。今作の10曲目はもともと別の曲を録る予定だったんですけど、松島(早紀 / Bベイス)から「これを入れるなら私はベース弾かない」と言われて(笑)。結局その曲をボツにして、「ボクサー」という曲を新しく作ったんです。
「ニトロデイというバンドがいて、自分(小室ぺい)という人間がいるよ」
──今回のアルバムのコンセプトってあったんですか?
いつも入っているスタジオに『ヤングマシン』という雑誌があって、その帯に「バイクは危ないけどおもしろい」って書いてあったんですよね。その言葉にニトロデイというバンドにも通ずる何かがあるなって思ったんです。そこから「ヤングマシン」の歌詞を書き出して。アルバム全体を通しても、この「ヤングマシン」の感じがあるなと思って。
──「ヤングマシン」の感じっていうのは、「危ないけどおもしろい」というキャッチコピーの感じ? それとも“ヤングマシン”という言葉自体が持つイメージ?
“ヤングマシン”という言葉のイメージですね。“マシン”という言葉がいいなと思ってて。自分たちを“ヤングマシン”として見たときにしっくりきたというか。それが何かはなんとなくしかわからないけど(笑)。
──なるほど。
この前Base Ball Bearの小出さんとお話しさせていただく機会があって。小出さんは曲を書くとき、昔は自分の中のどうしようもない感じを曲にしていったみたいで、いま改めてそのときの曲を聴くと、めちゃくちゃだなって思うらしいんです。いま自分も当時の小出さんのような感じで、ただ曲を書きたいから書いているんですよね。それをそのまま全力でパッケージしたものが名盤になればいいなって思ったんです。
──いまの感じ?
喜怒哀楽はあるんですけど、そのどれでもなくて、どれでもあるみたいな感じ。わからないまま、それをあえて「何か」って断定しないで曲にしているというのがあります。
──僕はこのアルバムを聴いたとき、そこがおもしろいと思いました。歌詞に関してもずいぶん変わりましたよね。前作はただ言葉を並べている感じで、そこに作詞家である、ぺい君の真意はどこだろ? と思ったんです。でも、今作に関してはもうひとつ深みがあるなと感じて。タイトルと歌詞はどちらを先に書くんですか?
曲によります。曲を作っていて「これだ!」というものが明確に見えたときは、タイトルを先につけて、それを埋めていくように歌詞をつけていきますね。そうではないときは、歌詞を書いて、そこからタイトルをつける感じです。前作までの歌詞だと、曲の持っているイメージがぼやけてしまっている感じがあって。最近はメロディーと歌詞に意味を持たせる部分を頑張らないと気が済まなくなった感じですね。
──このアルバムでなにか言いたいことはあるの?
あえて言うなら、「ニトロデイというバンドがいて、自分(小室ぺい)という人間がいるよ」ということに気が付いてほしい。バンドをやっていなかったら、自分を発信していく術がないから、おそらく一生気づかれない存在として終わると思うんです。それってすごく残念だしむなしいと思うから。
──存在証明なんだ。ちなみにレコーディングでこだわったところはありますか?
今回はそのままライヴの音を録った感じになっていて。レコーディングだから特別なことをしたということはあんまりないです。というのも、今回はいまの自分たちの音をそのまま録りたいというイメージが強かったから。でも次のアルバムからは、レコーディングのときにいろいろなギミックを取り入れていきたいなとも思っています。
“マジな音楽”がいいなと思っているんで
──今後の作品で、違ったジャンルのサウンドを自分たちの曲に入れていこうという考えなどはありますか?
自分はそんなに音楽を楽しむ余裕がまだないというか。1から10まで全部命を懸けるぞってくらいの勢いでやりたいから、そういう余裕を持てるようになってくるのは違うんじゃないかなって思ってしまいますね。
──自分には余裕がない感じ?
全身全霊というか。ありふれたことをいうと、“マジな音楽”がいいなと思っているんで。
──ニトロデイは、「俺たちバンドで食ってやるぜ」みたいな気概はあるんですか?
もちろんバンドとして大きくなっていきたいというのはあります。結構前までは、先のことはどうでもいいなって思っていたんです。でも最近は、バンドとして本当に自分が納得のいく曲を作れるようになってきた。だから「いい曲が書けたな」と思うたびに、「次はもっといい曲を書きたい」というチャレンジ精神が生まれています。
──バンドで食べていきたいというよりも、制作をし続けていきたい「ヤングマシン」って感じなんだね。
でも、制作に集中するには、バンドとしてやっていけるっていう立場になる方が絶対にいいので。
──なんかギラギラしてきましたね(笑)。それこそ2年前くらいにインタヴューさせてもらったときと比べて、すごく自信に満ち溢れているなと思って。いまのニトロデイにとって、若さというのは武器だと思っていますか?
今作では“ヤング”って使っているけど、「若い」という意味で使っている感じはそんなになくて。いまの自分たちを言葉にするなら“ヤング”かな、と。それは『いま、この音楽をやっている』感じを大事にしたいっていうイメージがあるんです。だから武器という感じはあまりないです。
──ニトロデイにはいまの10代後半のロック好きを興奮させる存在になってくれたらいいと思っています。今作はそんな力強さを感じられるようなアルバムだったと思います。
ありがとうございます。
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過去の特集ページ
・1990年代USグランジ難破船が辿り着いた先──新時代を告げる“ニトロデイ”という名の大型船
https://ototoy.jp/feature/2017071203
LIVE SCHEDULE
マシン・ザ・ヤング リリース・ツアー
2019年2月10日(日)@横浜 BB STREET
出演 : ニトロデイ / and more (※2マン・ライヴ)
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
チケット : 前売り 2500円 / 当日 3000円
2019年3月3日(日)@心斎橋 Pangea
出演 : ニトロデイ / NOT WONK
時間 : OPEN 15:30 / START 16:00
チケット : 前売り 2500円 / 当日 3000円
2019年3月22日(金)@新代田 FEVER
出演 : ニトロデイ(※ワンマン)
時間 : OPEN 19:00 / START 20:00
チケット : 前売り 2500円 / 当日 3000円
【その他、詳しいライヴ情報はこちら】
https://artist.aremond.net/nitroday/schedule
PROFILE
ニトロデイ
小室ぺい(ギボ)、やぎひろみ(ジャズマスター)、岩方ロクロー(ドラムス)、松島早紀(ベイス)
ニトロデイのサウンドは1990年代のUSインディー、オルタナティヴ、 パワーポップなどの影響を大きく感じるサウンドが特徴で、吐き出す様に歌うヴォーカル・小室ぺいの独特の語感によって描かれるキャッチーでフックのある歌、初期衝動と繊細さを兼ね備えたやぎひろみのギター・サウンド、それを支える屈強なリズム隊。初期衝動は勿論、それだけでは終わらない大きな可能性を秘めている。2018年7月に2nd EP『レモンド EP』をリリースし、Apple Music「今週の NEW ARTIST」、「SPACE SHOWER NEW FORCE 2018」、「タワレコメン」などにも選出され、今、最も大きな注目を集めているロック・バンドである。
【公式HP】
https://artist.aremond.net/nitroday
【公式ツイッター】
https://twitter.com/nitrodayyy