
タカツキのニュー・アルバム「旅人のリズム」の発売日が、2009年6月17日と正式にアナウンスされた。そして3ヶ月連続の先行配信が、今回の「MUSIC,」で完結する。名コンダクターに扮する軽快なビートの「アカツキ・コンダクター」。故郷京都を思いながら自身を歌い上げたロー・ビートの「できるなら京都で」。そして、忘れられない旅に乾杯だ「music,」!
ページを作成した3ヶ月の間に交わしたやり取りの中で、穏やかで芯の強い人間性に触れる事ができた。彼から発せられる言葉は、ウッド・ベース音そのものの太さだ。SMRYTRPS(サムライトループス)やSUIKAなど、彼の周りには何故こんなにも面白い人が集まっているのかを理解した。彼についていけば、よくわからないけど大丈夫な気がするから(笑)
さぁ、もう少しだ。「music,」をBGMに、インタビューでも読みながら、ニュー・アルバムに思いを馳せようじゃないか! (JJ:Limited Express (has gone?))
インタビュー
向こうは、皆が最初から違っていることが一緒なんです
—上京して何年目ですか?
タカツキ(以下T) : DJ機材のVestaxで働くことになったのがきっかけで、2000年に上京したので、今年で10年目ですね。
—なのに、関西弁のイントネーションが全然ぬけませんね。
T : それがなくなると、もうねアイデンティティが無くなるんですよ。でも仕事をする時は、いかがわしい標準語で話していますよ(笑)
—そうなんだ。タカツキ君の標準語は、聞きたくないなぁ(笑) 住んでいた場所は、大阪の高槻ですよね?
T : まさか! 高槻に住んでて、タカツキって名乗っていたらおかしいでしょう(笑) 本名がタツキで、派生してタカツキになっただけ。元々の生まれは、兵庫県の家島です。
—家島?
T : 姫路の下に、小さな家島諸島ってのがあるんです。小さな島で、姫路から姫路港までバスで行って、そっから船に乗るんです。
—いつまでいたの?
T : 6歳までかな。その後は、兵庫県の内地、徳島や京都に住んだんです。残念ながら、高槻には住んでいないですわ(笑)

—音楽はいつ頃始めたの?
T : 京都に住んでいた頃かな。MTRを使って音源を作成しだして。それからラップやウッド・ベースで、丸太町のメトロや、西部講堂の横の廃校舎で演奏したりしていました。
—当時は、タカツキ名義で活動していたのですか?
T : うーーーん・・・ その頃は、若気の至りと言うか・・・ どうしようもない名前でやっていましたね。
—というと?
T : あんまり公表しないでくださいよ。
—大丈夫です。レコミュニ読者は、やさしいですから!
T : ほんまですか? じゃぁ言いますけど・・・ 『マーダー・エムシーズ』です。
—(笑) ・・・ 確かに今のタカツキ君から考えると、凄いギャップですね。
T : 殺人MC'sってことですよ! 2MCで、ごりごりのハードコアでした。
—現在の友人、イルリメやゆーきゃんは、京都時代からの繋がりですか?
T : 彼らは皆関西出身やけど、東京に出てから知り合いましたね。当時は、BANBOO BROTHERSの小竹直さんや、亡くなったピアニストの市川修さんとか、ジャズやブルース畑の人と関わりがあったというか、一方的に教わりにいっていたんですよ。
—マーダー・エムシーズでは、ごりごりのラッパーだったのに、聴きにいっていたのはジャズやブルース?
T : そうなんです(笑)。当時は、ヒップ・ホップってもともとやんちゃだったから、まだそういう気持ちが抜けきっていなかったんです。でも、ジャズやソウルが好きになったのは、ヒップ・ホップの影響。中2の時に初めてヒップ・ホップを聴いて、どうやらこの音楽は、サンプリング・ネタを見つけてきてはそれをループさせて、その上にラップをのせるんだってことを知ったんです。で、どうやらその使われているネタは、ソウルやジャズと呼ばれているようだってことで聴きだして、どんどん傾倒していったんですね。
—アメリカにも、行かれていましたよね。
T : そうですね。1999年の9月頃。上京前の空いた時間を利用して、ふらっと音楽を勉強しに行ったんです。そら、めちゃくちゃ楽しかったですよ。行きたかったところに片っ端から向かったし、詩のオープン・マイクやジャム・セッションにも参加しました。

—いきなり行って、オープン・マイクとかさせてくれるの?
T : SLAMって言う映画で有名になったニューヨリカン・ポエツ・カフェは、いつもオープン・マイクが出来る。詩を書いている人なら、いつでも表現出来るんですよ。
—そこでは、英詩を読んだの?
T : 日本語詩を読みました。意味は伝わらなかったけど、受けたと思う。僕はいつでもリズムを大事にしているので、海外のヒップ・ホップが、詩の意味はわからなくてもグルーブしているのと同じことが出来たんだと思います。
—アメリカと日本の違いはありましたか?
T : 朝起きて、日本でお味噌汁をのみながらブルースのことを考えるのと、向こうで安いパンをかじりながらブルースのことを考えるのとでは大きく違う。どちらの良さもあるんだけど、違いがあることを知ることができただけでも良かったかな。パンを食べた時の、口の中がぱさぱさする感じは忘れられないなぁ。
あと、最初から違いが存在していた。例えば、肌の色とか。日本の考え方は、元々皆が一緒。で、一緒じゃない人も同じなんですよって教わる。でも向こうは、皆が最初から違っていることが一緒なんです。だから、その違いを当たり前のように楽しんでいて、それぞれがかっこいいと思う生き方にトライしているんです。
そうだっ! なによりも、向こうの人は声がでかかった。隣で 「へいっ!」って言ってて、誰を呼んでいるのかと思えば、でっかい道路の対岸の友人を呼んでた(笑) 心臓止まるかと思ったもの。
ソウル、ファンク、ヒップ・ホップとジャズだけでここまで来てしまったんです
—帰国後上京した東京はどうでしたか?
T : そうすね。当時、東京は面白くないなって思っていたんです。2001年に『hiphopmusic』と言うソロ作を出すまでは、京都に帰ろうとさえ思ってた。でもリリースしてみたら、「これおもしろいね」ってリアクションをもらって、色んな人達が集まってきてくれた。で、もう少しこっちでやろうと思って、この作品でマイク・リレーをしてくれた人たちでSMRYTRPSを結成したんです。
—メンバーとは、どのようにして出会ったの?
T : ヒップ・ホップを生楽器で演奏するVIBES CREWというチームがあって、みんなそこへ顔を出していたんです。VIBES CREW自体は大きな形にならなかったけれど、面白いMC達がいるって事をそこで知ったんですね。
—SUIKAは、どのように結成されたのですか?
T : 2002年に2ndソロ・アルバム『東京京都NY』を出すんです。その前後で、ウーリッツァー・プレイヤーのタケウチカズタケ君と出会った。「大阪のベイサイド・ジェニーのthe Rootsのライブに行ってた」「おれもおれも」みたいな話で盛り上がって、僕のバンドで鍵盤を弾いてくれるようになったんです。
—タケウチ君とのチーム・ワークは、前回の配信曲「アカツキ・コンダクター」でもそうだったけど、とてもマッチしています。
T : 嬉しいですね。彼のウーリッツァーはサンプリング泣かせなんですよ。弾くフレーズは全部グルーブしているから、おいしくて切る所がない。あの配信の曲も、結局そのまま全部使いましたもん。その後に、Shinjuku Spoken Words Slam(SSWS)っていう、詩人のオープン・マイクのイベントに出た。司会を務めていたSPIRITUAL JUICEのATOMさんや詩人のtotoさんがいて、彼らの表現方法に感激して、東京にもこんなに面白いことをやっている人がいたんだって思ったんです。で、タケウチ君とSSWSに参加していた人達を中心に結成したのが、SUIKAなんです。

—Spoken Words Slamって、今や全国で行われていますよね?
T : そうですね。5分間の持ち時間の中でパフォーマンスをして優越をつけるんです。詩の朗読、ラップのフリー・スタイルや落語等の様々な口述表現に無理矢理勝敗をつけていくんです。当時は東京にしかなくて、地方の人がわざわざ見に来てくれて、彼らが更に普及させていったんです。
—タカツキ君のプロジェクトは、どれも独自のヒップ・ホップを提示していますね。Kochitola Haguretic Emcee's や環ROYのような最近話題のラッパーのスタイルとも又違うし。
T : 違うことをやってやろうとは思っていないですよ。好きなことをやっていたら、こうなったんですね。違いと言えば、イルリメ君や環君はロックのことをよく知っている。でも、僕はロックをまったく通っていないんですよ。ストーンズやビートルズくらいしかしらない。ソウル、ファンク、ヒップ・ホップとジャズだけでここまで来てしまったんです。
—日本人のロックも?
T : そうですね。忌野清志郎さんぐらいだったら知っていますけど・・・。
—タカツキ君の歌う言語感覚からは、日本人のロックに通じる独特の情緒を感じとることが出来るのですが。
T : 日本の歌とか詩とかは大好きですよ。母親がさだまさしを聴いていたから、フォーキーなものは好んで聴いていましたね。

—2009年の6月17日に発売する新作『旅人のリズム』について聴かせてください。テーマはありましたか?
T : 前作は、ゲストが盛り沢山だったので、今作では自分のコアな部分を見つめなおしてみようと思ったんです。ゲストなしで、トラックも自分で作りました。少ない時間と曲数で、丁寧な自分流のアルバムにしようと思ったんです。
—イルリメ君も全く同じことを言っていましたよ。
T : 『メイド イン ジャパニーズ』を聴きましたけど、やり方は違えど「同じ気持ちなんだなぁ」って、凄い共感出来ました。自分を丁寧に見つめてみたかったんだと思う。初期のプリミティブな頃は、自分だけで作りあげて、色々フィーチャー・アーティストを入れた時期を経由して、又初期に戻っていったんだと思います。
—タカツキ君が、ラップで表現したいことは何ですか?
T : 自由になろうとか、色んな考えがあって良いんだってことを伝えたいですね。でも、特にラップでってわけではなく、演奏や楽曲で感じてもらえたら良いかな。あと、野心として、音楽で世界を変えたいとは思っています。植物のように、直接力を加えて曲がるのではなく、気がついたらグネーとまがってしまっているような、タカツキが存在しているだけで、音楽の未来が少し変わっていけばいいなぁと思っていますね。
—作品からは、「ついてこいよ!」ってエネルギーを感じることが出来ます。
T : うーーーん。どっちかと言えば、「ついてくれば? 」ぐらいですよ(笑) その代わりついてきてくれるなら、「間違いない景色を見せるよ」って思っています。自信があるんかないんか・・・(笑)
このインタビューはVOICE WAVEで聞ける!
recommuniと夢中になれる放送局 ボイス・ウェーブが協力してお送りするマンスリー企画が始まりました。オススメのアーティストのインタビューは、recommuniで読めて、VOICE WAVEで聞くことができます。
VOICE WAVEでインタビューを聞くにはこちら → http://www.voice-wave.jp/recommuni/index.html
VOICE WAVEは、テキストと音声で構成された新しいメディアです。コンセプトはただひとつ「何でも面白がろう! 」。 テレビや雑誌では紹介されなくても知る人ぞ知る創造性溢れた人や物や行為をピック・アップしていきます。きっと新しい「楽しい! 」を見つけられると思います。番組はランダムに増殖・変化・進化していきます。
ホームページ : http://www.voice-wave.jp/
先行配信シリーズ
タカツキの新アルバム「旅人のリズム」から先行配信第1弾! 町に住まうひとを居ながらにして旅へといざなう旅行代理店「アカツキ・コンダクター」。今度の旅はかなりけったい/でもあなたが来なけりゃ始まらない。ウーリッツァーはタケウチカズタケ !
アルバム全曲購入者には、recommuni限定「アカツキ・コンダクター(wood bass 弾き語り version)」をプレゼント!
先行第2弾! それぞれが愛した"懐かしい場所"へといざなう、ゆったりとした音とことば...過去を大切にしながらも、いまの中で前を向いて歩いていく人達への静かな応援の歌。
こちらもアルバム全曲購入者には、recommuni限定「できるなら京都で(wood bass 弾き語り version)」をプレゼント!
先行第3弾! 「君を連れ出しにきたんだ、ミュージック」 サラーム・レミのあの隠れ名トラックをタカツキがウッド・ベースで再構築! 90´hiphopsのソウルを愛するすべてのひとへ。「忘れられない旅にしようぜ! 」
こちらもアルバム全曲購入者には、recommuni限定「music,(wood bass 弾き語り version)」をプレゼント!
Takatsuki Works
タカツキ
日本が世界に誇る唯一無二のヒップホップ・アーティスト、"ウッド・ベースの吟遊詩人"こと。ウッド・ベース弾き語りでラップという他に類を見ないスタイルのみならず、そのキャッチーなメロディと奥深い詩の世界は、ソロ・プロジェクトならでは。ヒップ・ホップ界のみならず幅広い支持を受け、話題を呼んでいる。
- blog : http://ameblo.jp/nrecords/
- Artist Page : https://ototoy.jp/them/index.php/ARTIST/4764/
SMRYTRPS
の1st Album『hiphop music』に収録されたポッセカットをきっかけにcrew以上unit以下という緩い繋がりで結成されたグループ、サムライトループス。6MC1DJというメンバー構成を基本軸に様々な形で活動。それぞれがソロや別グループでも活動しており、常に有機的なセッションが繰り返されている。
- Website : http://www.samurai-troops.com/
- Artist Page : https://ototoy.jp/them/index.php/ARTIST/22847/
SUIKA
2003年夏、ビルの屋上からスイカの種をプップと飛ばしながら結成。(ウーリッツァ+曲間のおしゃべり)、(ウッドベース+ラップ)、ATOM(ラップ+YOGA)、toto(ポエトリー+お母さん)、高橋結子(パーカッション+Tシャツ販売)の5名に古書店主YM-Zを加えてという。ジャンル不明。
- Website : http://www.suikaweb.com/
- Artist Page : https://ototoy.jp/them/index.php/ARTIST/4761/
- タケウチカズタケ特集 : https://ototoy.jp/feature/20081203
LIVE SCHEDULE

- 6/20(土) @渋谷 7th floor(SUIKA)
- 7/13(月) @青山 月見ル君想フ(SUIKA)
- 7/15(水) @名古屋KD ハポン(タカツキ)
- 7/16(木) @京都トガトガ(タカツキ)
- 7/26(日) @渋谷PLUG(SamuraiTroops)