
忘れもしない。サイプレス上野とロベルト吉野の1st album『ドリーム』を聴いた時の感じ。あからさまに愛論を語るとか、強さを押し付けるだけのギャング臭にはふたをして、彼らは徹底的に軽かった。しかもちょっと優しくて、ふざけてて... HIP HOPがパーティから生まれた音楽だって事を忘れてたぜい。LIVEでならしたモノホンMCとスクラッチしまくりの大胆なトラック・メイクは、ごっついラッパーと般若みたいなDJがこれまた洒落て見えたもの。『ドリーム』は2000年以降のHIP HOP albumの中で、だんとつに身近で特別な存在になったんだ。
そして、待ってましたよ2nd album『WONDER WHEEL』。横浜のハズレ・モノってラップするけど、スケール・アップしまくりの既に奴らはメイン・ストリーム級! たまらず、lockstockにインタビューを願い出ましたぁ。
インタビュー&文 : JJ(Limited Express (has gone?))
INTERVIEW
—『ドリーム』発売以降、あなた達の状況はどのように変化しましたか?

サイプレス上野 : ライブ開始前に紹介された時に、今までは「シーン...」だったですが、今は歓声があがったり(笑) ライブに来てくれるお客さんも増えて、歌詞とかも覚えてくれている! あとはフリー・スタイルをやたら仕掛けられるようになりました(泣)
—『ドリーム』に比べて今作『WONDER WHEEL』は、音質やクオリティ共に向上し、振り幅が増し、「これでもかっ! 」という説得力を感じました。今作を創るにあたって、どのような部分を意識されましたか? また出来上がった作品は、前作と比べてどうなったと思いますか?
制作開始時は完全にノリ重視、勢い重視でした。レコーディング期間に夏休みもあったりで(笑) でも環境が良かったり、もらったトラックもバッチリだったので、途中からは1STからの2年間味わってきた部分を余す所無くぶち込む感じでぶっかましました! 前作が<おもちゃ箱ひっくり返した感じ><自分達を真空パック>だったので、今回は聴く人の事も頭に入れて少しでもボンクラの成長が伝わればと...あとはHIP HOPに忠実というか、俺たちの好きなHIP HOPを届けたいって感じです。
—INTROからスクラッチが炸裂していますね。今作は、スクラッチが非常に多く取り入れられていますが、それは何故なのですか?
前作で吉野はほぼ居ない事になってて...前回はレコーディング途中に同窓会行って、次のレコーディングで「ケンちゃん(SAKEROCK/ハマケン)に久々会えてよかったすわ〜」とか言って舐めていたので役割を与えました(笑) あとは俺達の好きなHIP HOPにはスクラッチが欠かせない!
—今作は、Pan Pacific Playa、宇多丸(RHYMESTER) 、SLY MONGOOSE等、多彩なゲスト人を迎えて製作していますね。その振り幅が、そのままアルバムの鮮やかさにも繋がっていると思うのですが、何故彼らにお願いしたのですか? また各プロデューサーの魅力は何ですか?
俺が大好きな人達というのが大前提で、かつレコーディングの時だけの仲じゃない人達にお願いしました。ちゃんとこっちの事をしっかり理解してくれている方々。各プロデューサーの魅力は、ありすぎてまとめられないっす。すんません(笑)
—今作、『WONDER WHEEL』制作に当たってのベスト・エピソードを教えて下さい。(ワーストでも)
ラップを録るときに全部が終わるまでブースから出ないので、何度か酸欠で倒れそうになった。
—巨大ロック・フェスから、ロウライフ、KAIKOO等のアンダーグラウンド・フェス、そしてHIP HOPやハウス・イベントまでをも駆け回っていますね。これほど縦横無尽なアーティストもなかなかいないと思うのですが、各イベントによってあなた達の意識や、求められるものに違いはありますか? そして今後もライブに重きを置いた活動を続けていかれるのですか?
とりあえず出るイベント自体を最大限に楽しみたいのでフロアー/会場の空気を吸い取ってから、イベント毎にライブ・セットを変えたりします。でもどこでやっても<俺達は俺達>って感じで。求められるのは様々です。酷いときは酷い(笑) 俺達からライブ取ったら何も残らないんでぶっかまし続けます。作品はライブの幅を広げる為のモノ!
—サイプレス上野とロベルト吉野の音楽は、活動も含めて新しいHIP HOPのあり方を提示していると思います。あなた達にとっての『新しいHIP HOP』とはなんですか?
自分たち的には全く<新しい>とは思わないです(笑) スタンダード・スタイルなんで、逆に古典的というか。そもそも何でもあり、色んな物を吸収して破壊して再生するのがHIP HOPなのに、周りがそれをしなく(出来なく)無ってるのかも...
—recommuniで最近鎮座Dopenessや環ROYを取り上げたのですが、同じくジャンル関係なしの活動は、あなた達と共通する部分のように感じました。彼らのような下の世代、もしくは同世代のHIP HOPアーティストについてどう思われますか?
鎮とは同期で昔っからヤバかった! ヤバすぎて一時期話しかけなかった(笑) ROYもクラブでよく会ってたり、俺が出るイベントにも遊び来てくれたりしてて。最近の活躍には正直、ジェラってます.... 同世代のメンツが色々なやり方を見つけ出して活躍し始めてるのは非常に頼もしいし、いい刺激をもらってます。ただ、人も居ないクラブでシノギ削ってたのに、それを無かった事にする奴、いいように使う奴はちょっと...という感じです。
—先日ディスチャーミング・マンにインタビューをした時、以前サイプレス上野とロベルト吉野のようなサウンドに憧れていたと言っておられました。ちなみに、僕もあなた達のようなサウンドを取り入れれないものかと、試行錯誤したことがあります。そのように、他ジャンルのアーティストからもリスペクトされているのですが、あなた達はそのようなアーティストと絡むことをどのようにとらえておられますか?
マジで有り難い限りです! 俺達みたいなボンクラがすんませんって感じです(泣) 絡めるものは男の裸以外は絡みたい性格なんで、お互いの良い所を潰さないリンクが出来ればと思います!

—ジャケットは、上野君のお母さんの手書きですね。また、今作では『Dear MaMa』と言う曲が収録されていますね。母親とはどのような存在なのですか?
ILL MAMA ! !
—敬愛する横浜ミュージック・シーンの現在を教えて下さい。
HIP HOPなら、ZZ PROや村一揆、ウェッサイも勿論だし色々なタイプの奴らが出てきてて楽しいし、レゲエに関してはいわずもがな! PPP(Pan Pacific Playa)のようなイカした先輩方、やけのはら君、タカラダミチノブ君も居るし遊び相手に困らない! バンドも横浜〜湘南は間違いないっす!
—あなたたちから、< LOCKSTOCK >< カクバリズム >< 横浜 >は大きなキーワードとして浮かんできます。それらはあなた達にとってどのような存在ですか?
< LOCKSTOCK >〜事務所というより、ボンクラ共が大人の責任を無理矢理背負う為に作っちゃった会社(笑) 社訓はださい仕事はしない/させない/ダメ絶対!
< カクバリズム>〜音楽を通しての遊びと真剣さを教えてくれたレーベル。最初の頃のライブのオファーはDISK UNIONの社内電話だった(笑) 色々与えられすぎて大変です!
<横浜 >〜一番落ち着く居場所! かつ刺激満載の街です ! !
—最後に、リリース・ツアーはされるのですか? 発表出来る情報があれば、是非 教えて下さい。
勿論っす! とはいっても、制作中もずっとライブやっていたので今までと変わりません(笑) 毎週末全国各地でぶっかまします! とりあえず地元横浜は2月10日(火/祝日前)にBAY SIDEで俺のイベント<建設的>でリリパやります! 横浜をはじめ色んな所の友達がかましに来てくれます。絶対遊び来てくだせえ!!!

LIVE SCHEDULE

- 02.02(mon) THE GARAGE @渋谷VUENOS
- 02.06(fri) STYLICON @渋谷BX CAFE
- 02.07(sat) 蝕 @渋谷THE GAME
- 02.10(tue) 建設的 @横浜BAY SIDE
- 02.14(sat) AGGREGATEvol.3 @新潟Praha
- 02.15(sun) ZANZIBAR EXTRA @恵比寿LIQUIDROOM
- 02.20(fri) HIPHOP @大阪TRIANGLE
- 02.21(sat) mount vol.20 @福岡HIPHOP SUBWAY STYLE
LINK
- サイプレス上野とロベルト吉野 website : http://www.sauetoroyoshi.com/
- サイプレス上野とロベルト吉野 myspace : http://www.myspace.com/sauetoroyoshi
- LOCKSTOCK official website : http://www.lockstock.jp/
- official blog : http://ameblo.jp/sauetoroyoshi/
- PV『WONDER WHEEL』 http://www.youtube.com/watch?v=zdA_RP6JcBs&hl=ja

サイプレス上野とロベルト吉野
2000年のアツい夏、あらゆる意味で横浜のハズレ『横浜ドリームランド』出身のマイクロフォン担当:サイプレス上野(先輩)/2台のターン・テーブル担当:ロベルト吉野(後輩)で結成。
通称“サ上とロ吉”『HIP HOPミーツallグッド何か』を座右の銘に、『決してHIP HOPを薄めないエンターテイメント』と称されるライブ・パフォーマンスを武器に、毎年120本近くのライブを全国規模で撃ち放つ。HIP HOPにとどまらず、ハードコア・パンクからロックステディからハウス・イベントまで、あらゆるジャンルを駆け抜ける現在進行形HIP HOP ユニット

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