原発、宗教、人種差別…。UHNELLYS、社会に警鐘鳴らす最新作をハイレゾ配信!!

ロックを基調にしたソリッドなトラックと、ヒップホップのスタイルで紡がれる攻撃的なリリック。独自のミクスチャー・サウンドを鳴らしてきたUHNELLYSが、最新作『CHORD』を24bit/48kHzでハイレゾ配信開始。前作から2年、通算5枚目のフル・アルバムとなった今作は、原発問題(「DOORS」)、動物虐待(「BOWOWOW」)、宗教問題(「7」)、人種差別(「LETTER FROM」)に言及するなど、これまでになく社会への問いかけが感じられる覚悟の一枚だ。OTOTOYでは、このアルバムの配信を記念して、フロント・マンのkimにインタヴューを敢行。音楽の原体験について、そして情報化社会に対する違和感まで、じっくりと語ってもらった。
UHNELLYS / CHORD
【配信フォーマット / 価格】
WAV(24bit/48kHz(ハイレゾ)) : 1,800円
WAV(16bit/44.1kHz) : 1,650円
mp3 : 1,650円
【Track List】
01. DOORS
02. BLACK OUT (album version)
03. CHORD
04. MINORITY RULE
05. BOWOWOW
06. NO FUTURE
07. 7
08. LETTER FROM
09. ROLLIN' MORNING
INTERVIEW : kim (UHNELLYS)

インタヴュー : 飯田仁一郎 (Limited Express (has gone?))
本当にヒップホップが嫌いだった
――これまでの作品と比べて、kimくんの声がストレートに届いてくるアルバムだなと思いました。何か変化があったんですか?
kim : これまでは歌詞を先に書いて、そこにギターやベースのフレーズを合わせてたんですけど、最近は曲を先に作ってから歌詞を乗せるようになりましたね。フレーズに合わせて言葉を選ぶから、曲と歌詞が一体化しやすいんですよね。
――その変化には何かきっかけがあったの?
kim : やっぱり曲と歌詞が一体化してないと、ライヴでやっていくうちに飽きちゃうというか。ラップしても気持ちよくないし、しっくりこないんですよ。
――なるほど。じゃあいまはしっくりきてますか?
kim : 韻を踏むことが苦じゃなくなりましたね。
――昔は苦だった?
kim : 韻を踏むことに縛られちゃうときがあったんですね。でも、最近は縛りの中でも楽しめるようになりました。もともとそんなにヒップホップを聴いてたわけじゃないんですけど、何に惹かれたかって、韻を踏んでさらに意味も通るっていうところで。言葉で遊びながら、同時に意味も伝えるってことがやっとできるようになったというか。
――そもそもkimくんのヒップホップ原体験は?
kim : 高校3年生のときに聴いたキングギドラとかです。でも当時は本当にヒップホップが嫌いだったんですよ。
――意外だね。あとはライムスターとか?
kim : はい。ラップを日本人がやること自体に恥ずかしさを感じてたんですよね。でも、22歳のときにZeebraの「結婚の理想と現実」という曲を聴いて変わったんです。この曲は母子家庭で育った自分の少年時代を歌った曲なんですけど、こういうことを歌詞にしていいんだって思ったし、今まで聴いてきた音楽とまるで違うものだったんで、一気にハマるきっかけになりました。
――なるほど。実際に自分たちの音楽にヒップホップを取り入れるきっかけはありましたか?
kim : UHNELLYSはもともとガレージ・バンドだったんですけど、途中でヴォーカルが抜けちゃったんですよ。でも次の週にすでにライヴが決まってて(笑)。そのライヴは新曲で挑んだんですけど、そのときに初めて歌とラップをやってみたんです。
――最初からできるもんじゃないでしょ?
kim : ぜんぜんできなかったですね。本当にひどくて。そしたらお客さんがまったく来なくなっちゃったんですよ。それがいちばん辞めそうになった時期ですね(笑)。
――それでも続けたのはラップ・スタイルがおもしろかったからですか?
kim : そう、おもしろかったですね。
――そうなんだね。そういう文脈があってこそ、今のような特異なサウンドが生まれたと思うんですけど、kimくんはUHNELLYSをどんなバンドだと思ってますか?
kim : やっぱりロック・バンドですよ。

――それはどんな部分が?
kim : ヒップホップのライヴを観てもあんまり興奮しないんですよ。やっぱりロック・バンドの生演奏が好きでやりはじめたから。もちろんループは使いますけど、生演奏のダイナミクスを伝えたいと思ってるので、ロック・バンドでありたいですよね。
――ループを使いながらダイナミクスを出すのって難しかったりしません?
kim : リアル・タイムでサンプリングしてるから、一度失敗するとずっとその失敗が続いちゃうんですよ。自分の中でそれがかなりダイナミックなんですけどね(笑)。
――ははは(笑)。ドラムは大変ですね。
kim : ほんとに困るでしょうね。でも、そのズレを目立たせないように叩くんですよね。だから、ちょっとズレちゃったなって思うときでも、ドラムが入ると気にならなくなることがよくあるんです。調整してくれるんですよ。
正直に言ってしまえば、最初はへこみましたね
――今回のアルバムには社会的なことを歌った曲も多いですよね。ここ最近のバンドのテーマ、あるいは表現したいものって何ですか?
kim : サウンド面で新しいことをするよりは、歌詞で問題提起をしたいんですよ。
――サウンドも斬新だけどね。
kim : やり方次第で斬新に聴こえるようにはできるけど、フレーズとかで根本的に新しいことをやるのは難しい。だからこそ歌詞で問題提起をしたいんですよ。
――そういう意味で、「体温」の一件(※註)は象徴的でしたよね。たくさんの人から批判と称賛を一気に受けたじゃないですか。
編集部註
2013年5月、YouTubeにアップされたUHNELLYSのPV「体温」が、ネットを中心に大きな賛否両論を集めた。同PVは、ガンに侵された妻と、その最期を看取る夫の一日を描いたのもの。
kim : 正直に言ってしまえば、最初はへこみましたね。ひどいコメントも多かったし。でも、僕たちみたいな音楽をやってると、一般の人たちが聴く機会って少ないじゃないですか。そういう意味でいい経験だったし、これからもそういうことをしていかなきゃいけないと思いますね。
――問題提起をするってまさにそういうことですよね。あの一件が今作に与えた影響ってありますか?
kim : とくに意識したわけではないですけど、絶対にありますね。「体温」のあとに作った曲ばかりなんで、歌詞もかなり影響を受けてると思う。
――僕はこれまでUHNELLYSの作品を全部聴いてるんですけど、前作までは「一緒にいこうぜ!」とか「頑張ろうぜ!」みたいなことを歌ってる印象だったんです。だけど今回は、事実を淡々と伝えながら、同時にこんな見方もできるんだよって提案するような。この変化には「体温」の影響があるのかなと。
kim : なるほど。それはあるかもしれないですね。
スタイルが固まっていても、前に進み続けられる
――レコーディングはどんな方法でやったんですか?
kim : 先にギターやベースのループを組んで、それを流しつつ歌とドラムを同時に録るっていうやり方です。普通はドラムから録ることが多いと思うんで、逆なんですよね。
――でもすごいライヴ感がありますよね。てっきりバンドで録ってるのかと思いました。
kim : ライヴの感じを音源で出すのは難しいですね。『to too two』のときはスタジオで録ったループを使ったんですけど、それでも音源になるとライヴとは違うものになるし。
――ライヴと音源は初めから別物だと考えてる?
kim : そこは最大のテーマなんです。音源でUHNELLYSを初めて聴く人も楽しませないといけないんだけど、どうやってもライヴほどの勢いは出せないんですよね。だから少し割り切って、音源にはいろんな音を足しながら迫力を出すようにしています。
――じゃあ逆に、UHNELLYSにとってライヴはどういう位置づけなんですか?
kim : いちばん大事なものですね。ツアーを回るために音源を作ってるようなものなんで。
――ライヴのどこに喜びを感じますか?
kim : 作品をリリースするたびに聴いてくれる人が増えてると思うんですけど、ライヴだとそれがはっきりと見えるんですよね。こないだ金沢でライヴしたときは能登半島からお客さんが来てくれて。そういうのを見ると、どんどん作品を出してツアーを回りたいなって思っちゃうんですよ。もちろん、UHNELLYSにしかできない、代わりのきかない演奏をしてると思ってるので、それをちゃんと見せるっていうのが前提ですけどね。

――UHNELLYSはツアーの予算も自分たちで立ててますよね。そういうモチベーションってどこから湧いてくるんですか?
kim : 少しでも勢いが下がったとか、聴く人が減ってきたと感じたら、たぶんスパッと辞めるんだと思うんですよ。でも自分はまだそれを感じてないから、どんどんやれるんでしょうね。仮にお客さんが増えなくても、自分の中でちゃんと前に進んでる感じがあれば、やり続けると思います。
――前に進んでるっていうのは、アーティストとしてってこと?
kim : そうですね。ライヴの技術だったり、歌詞の内容だったり。
――なるほど。でも、バンドって2、3枚アルバムを出すと、ある程度スタイルが固まってくるじゃないですか。それは悪い意味ではなく、ある種の完成でもあるわけだけど。
kim : 完成はしてると思います。
――完成してるのに、まだ前に進むことができるのはなぜなんだろう?
kim : 前のアルバムは震災が起きてから歌詞をほとんど変えたんですよ。震災後に歌詞を見返したら、すごく違和感があったので。やっぱり時代に沿って問題提起していくべきだし、だからこそスタイルが固まっていても、前に進み続けられるのかなと。
――やっぱり歌詞に対する想いが強いんですね。
kim : もともと社会を風刺するような歌詞が好きだったんです。でも、それってスピード感をもってリリースしないと、どんどん遅れていくじゃないですか。そのときに作ったものを半年後くらいには出さないと、すぐに古くなっていくんで。だからいつも新しいことを歌っていたいんですよね。
――なるほど。いまのkimくんが歌いたいことって何ですか?
kim : いまは情報が多すぎて、どこか偏っている印象がすごくあります。物事には良い面と悪い面と、常に2つあるじゃないですか。なのに悪い面の情報ばかり流れてくる。その情報に乗っかるのは簡単なんですけど、逆に良い面を探してみると、そっちにも納得しちゃったりして、なかなか自分の意見をバチっと言うことが難しくなってると思うんですね。俺はそれがすごく良くないと思ってます。だから、引け目を感じずに自分の意見を持つことが大事なんじゃないかなと。

――SNSとかね。
kim : そうです。FacebookやTwitterで情報が流れてきたときに、その人がどう思ったかが見えてこないというか。ただ情報をシェアするだけじゃなくて、その人の意図を知りたいなと思います。
――なるほどね。意図のない情報で溢れてる。
kim : 良いも悪いも知っちゃってるから、意見できない状況なんですよ。意見を言ったところで、いくらでも反論が出てきちゃうってことだから。それが怖くて萎縮してる人が多いんじゃないかな。
――そうだね。kimくんが言いたいのは、それでも発信しろってことですよね?
kim : うん。全員が発信しなきゃいけないってわけじゃないけど、「自分はこうだ」っていうのがもっと見えたほうがいいんじゃないかって。
RECOMMEND
UHNELLYS / UHNELLYS
kimのバリトン・ギターによるリアル・タイム・サンプリングと、midiのグルーヴを基盤に、ロック、ヒップホップ、ジャズの垣根を飛び越えたサウンドを構築。海外でのツアーや、数重なるライヴで実力を知らしめてきたUHNELLYSによる、初のセルフ・タイトル作。その名の通り、これぞUHNELLYSというサウンドからは、本物のロックンロールを感じる。
UHNELLYS / to too two (24bit/48kHz)
2011年にリリースされたUHNELLYSの3rdアルバム。初のセルフ・プロデュースで鮮明に浮かび上がったのは、五感を鷲掴みされるような人力ブルース・ヒップホップ。原点に帰る2人だけでの生演奏を実現するなど、ライヴと音源の距離を限界まで近づけ、限りなくリアルな空気感を再現した全10曲。
SuiseiNoboAz / ubik
高田馬場発の3ピース・ロック・バンド、SuiseiNoboAz(スイセイノボアズ)のメジャー・デビュー作。向井秀徳プロデュースのデビュー作『SusiseiNoboAz』で見せた疾走感が、渦を描くように表現され、歌詞も文学性を帯びたものへと昇華された。歪んだギターが奏でるエモーション、情熱を掻き立てるビート、そのすべてが驚くほどの圧力で迫ってくる。
LIVE INFORMATION
2014年3月22日(土) @ 六本木 SuperDeluxe 〈みんなの戦艦2014〉
2014年3月23日(日) @ 渋谷 TOWER RECORDS 1F 〈『CHORD』発売記念インストア・ライヴ〉
2014年3月29日(土) @ 北浦和 KYARA
2014年4月5日(土) @ 長野 LIVE HOUSE J
2014年4月12日(土) @ 山形 SANDINISTA
2014年4月20日(日) @ 渋谷 Milkyway
2014年5月5日(月) @ 大阪 CONPASS
2014年5月6日(火) @ 名古屋 CLUB UPSET
2014年5月29日(木) @ 福岡 the boodoo lounge
2014年5月31日(土) @ 広島 CAVE-BE
2014年6月1日(日) @ 松山 SALON KITTY
2014年7月4日(金) @ 下北沢 SHELTER
PROFILE
UHNELLYS
kimのバリトン・ギターによるリアル・タイム・サンプリングと、そこにジャストのタイミングで合わせたmidiのグルーヴを基盤に、ロック、ヒップホップ、ジャズの垣根を飛び越えた独自のサウンドを構築。2007年、ヨーロッパ・ツアーでのライヴを収めた『Live in Europe』をリリース。2008年、2ndアルバム『MAWARU』発表。そして、ソウル・コフィンのヴォーカル、Mike doughtyのジャパン・ツアー招聘や、アメリカ音楽番組への出演を経て、2009年、プロデューサーにzero db(NINJA TUNE)の名で知られるTHE OKI BASSを迎え、ブレイクビーツに特化したミニ・アルバム『PIKA mood』をリリース。さらにTOKIEによるプロデュース & 全曲アップライト・ベースでのコラボが実現したミニ・アルバム『BE BO DA』をリリース。2010年には、野外フェス〈neutralnation 2010〉、オーストラリアの大型フェス〈One Movement festival〉への出演、3都市を回るカナダ・ツアーなど、活動を確実にステップアップ。2011年3月、ライヴと音源の距離を限界まで近づけ、尖った空気感をそのまま収録した3rd album『to too two』を発表。以後、〈FUJI ROCK FESTIVAL〉、〈ARABAKI ROCK FEST〉、〈FESTA de RAMA〉、〈SYNCRONICITY〉と全国の大型フェスへの出演を果たす。2012年、自主レーベル「I'mOK」を設立し、3月にライヴ盤『Ladies and Gentlemen』、6月に4thアルバム『UHNELLYS』を発表。そして、2013年春、「体温」を含むEP『SCREAMER』をリリース。唯一無二のスタイルとライヴ・パフォーマンスで世界から評価が高まる男女2人組の企みはまだまだ続く…。