
10月23日(土)にホフディランが京都のBOROFESTAにやってきた。「8年ぶりだよー。忘れられていなくて良かった。ありがとー」と感謝の言葉を述べる渡辺慎(Vo.&G.)と小宮山雄飛(Vo.&Key.)の顔は、満面の笑みに溢れていた。ホフディランを聞いたことのないオーディエンスも、ラジオでかかった「遠距離恋愛は続く」しか聞いたことのない世代も、もちろん往年のファンも呼応するようにジャンプした。「気持ちいいからもう1曲やろう!」と言って始めた「欲望」は泣けたなぁ。ホフディランは、結成1年目から一度もバンド・メンバーを変更していない。ライヴ・バンドとして、相当力があるってことだ。しかも、今年は復活5周年。彼らの長い歴史の中でも、特にバンドとして調子がいいのだろう。11月3日に発表された『14年の土曜日』からは、そんな自信がひしひしと伝わってくるのだ。
インタビュー & 文 : 飯田仁一郎
デビュー14周年を迎えたホフディランのライヴ・アルバムを配信開始!!
ホフディラン / 14年の土曜日
活動14周年目を迎えた2人の新作はライヴ・アルバムとなっている。ライヴでしか生まれない熱気と会場の一体感を集約した作品となっている。また、ゲストにカジヒデキを迎えての「コジコジ銀座」など、ホフディランのPOPSが炸裂!
【Track List】
01. はじまりの恋 / 02. TOKYO CURRY LIFE〜邦題・東京カレー物語〜 / 03. 恋はいつも幻のように / 04. スピリチュアル / 05. 長い秘密 / 06. コジコジ銀座 / 07. 弾丸ライナー / 08. LOW POWER / 9. マナマナ / 10. サガラミドリさん / 11. HAPPY / 12. SEASON / 13. 美しい音楽 / 14. こんな僕ですが / 15. ホフディランのテーマ (リプライズ) / 16. マゼマゼ (マナマナ Remix by YUHI KOMIYAMA)
INTREVIEW
——「14年の土曜日」という14周年ライヴを行われたわけですが、毎年やられてたんですか?
小宮山(以下K) : 13年目のデビュー記念日に、C.C.Lemon ホールで大きくやったところから始まったんですよ。それで13年目を派手にやっちゃったんで「これは15年目までやらないと」って言って。だから2年目ですね(笑)。
——13年は、お二人にとって重要な年だったのでしょうか?
ワタナベイビー(以下W) : いや、全然ないですけど、ただ場所が取れちゃったっていう(笑)。
K : 14周年もたいして何もないんですけどね。7月3日がデビュー記念日で、来年の15周年も場所を押さえてあるんですよ。だから13、14、15はシリーズ三部作にしてリリースしていきたいと思っていますね。
——かるいっすね(笑)。14周年を振り返ってみてどうですか? 変化はありました?
K : 配信スタイルじゃないですかね?(笑)
W : 変わったね〜。
——でも今作の最後のナレーションを聞いた時に、CDに対する思い入れを強く感じましたけど...
W : 前々からユウヒが提唱していたんですよ。「CDっていうのは後々廃れていくものなんだよ」って13年前から言っていたんですよ。セカンド・アルバムの頃から言っていた。でも僕はね「そんなバカな事があるかよ! 」って言ってたんですよ。「やっとレコードがCDに変わったっていうのに何言ってんだよ」って思ってたんですけど、若者がここまでCDに興味が無くなるんだなっていう... 日に日に感じますね(笑)。それこそ携帯電話なんて俺が若い頃はなかったからね。
——13年前にCDが後退していくと言った理由はなんですか?
K : 2年目で「コンパクトディスク」っていう曲をセカンド・アルバムに入れたんですけど。当時はCDが主流で皆が浮かれてた時代だったんですね。そのおかげで沢山リリースを出来たりしたんですけどね。ただ売っている反面で環境に悪いっていうことが報道されていなかったんですよね。燃やすわけにもいかないし、どうにもならないじゃないですか? だからそういう事を考えていこうよって歌だったんですよ。浮かれている時期に逆のことを言うのが大切だと思ってて。でも実際にCDが売れなくなると困るんですよね(笑)。買いに行ってよって話になってくるわけですからね... だから「配信危ないぞ」とか「携帯電話危ないぞ」っていう歌を作ろうと思ってます。
——ホフディランは、CDにボーナス・トラックやリミックスを付けたりと面白い展開をされますよね。配信ではどういうことをするのかなって期待しています。
W : 僕がまず配信に関わらなければ...
K : ワタナベ君が分からないんですよ。否定はしないんですけど、まだその面白さが共感できないんですよね(笑)。

——ワタナベさんは、配信のスタイルを最初どう思われましたか?
W : けしからんと思いましたね。
K : けしからん!?(笑)。
W : 中学時代にビートルズが好きだったんですけど。その時にCDを小脇に挟むスタイルがありましてね。そのスタイルと、聞く前のワクワク感がポチって省略されちゃうのがどうかなって思っているんですね。後、音も悪いと思っていたんですよ(笑)。
K : 勝手に思いすぎでしょ!
W : 私ごとなんですけど、最近結婚したんですね。で妻がiPodっていうのを買ったんですね。それをツアーの時とかに借りたら、振動で音飛びとかがなくて、CDウォークマンよりも... それはまぁ良かったんですよね。
K : なんだ。音質が良いとかの話じゃないんだ!
W : で、今更ですけど、便利ですよね(笑)。
——(笑) アナログ世代ではなかったんですか?
K : いや、アナログでしたね。CDになったのは中学1年生とかですかね。でもレコードとかカセットも買ってましたね。僕はあんまり移り変わりにこだわりがないんですよね。よくジャケットがレコードの大きさじゃなくなったとか言われますけど、元々レコードはLPじゃなかったですからね。LPがLPがとか言いますけど違いますからね。
W : (手をくるくる回しながら)昔はこんなのだったよね。
K : いや何を指しているか全然わからないんですけど... 今は、ダウンロードしている人もいれば、CDで聞く人、ラジオで聞く人もいれば、PCで聞く人もいると思うので、面白く伝えることが出来ればなんでもいいかなって。
——ホフディランとしては、何か変わりましたか?
K : 今は変えないようにしているんですよね。基本のバック3人と僕ら2人っていうのは変わってないですしね。ライヴでいうと、その5人っていうのは変わってないんですよね。
W : 一年目から変わってないですね。
——1年目からですかっ!
K : ライヴの規模によって人数が変わったりはするんですけど、メンバーが変わったりとかはないんですよね。2人であったり、5人であったり、今回の楽曲みたいに8人であったりとかサイズが変わるだけなんですよね。
——では、お2人はバンドをしているという感覚ですか?
K : ライヴにおいてはそういう感覚ですよね。個人個人がラジオに出たりとかの活動はあるんですけど、5人組、もしくは8人組の意識でやっていますね。
——取り巻く環境は変わりましたか?
W : 事務所の規模であったりレコード会社の規模がその都度変わっていく中で、1回休止した時にユウヒがビジネス・ライクな会社を作ったんですよ。
K : ビジネス・ライクって! それはそうでしょ(笑)。
W : ホフディラン事務所としてではないものを作って、社長兼アーティストっていう形で、上を通さなくても直でやり取り出来るようにしたんです。前は事務所を通して連絡が行くっていう形だったのでね。それが変わったって言えば変わったっすね。

休む時間は必要でしたね
——休止を決定したのは、何故ですか?
K : 特にってことはないけれど、2002年には皆疲れきってしまって... もういいんじゃないって言って休止になったんですよね。休止して僕は当時の事務所を出たんですね。ワタナベ君は残ったんですけど。それで、もう僕は自分でやるよって言って、先ほど言った事務所を作ったんですよね。
W : 元は事務所じゃなかったんですけどね...
K : いや、事務所でしょ! なんだったのよ。僕の個人事務所だったんです。
W : あっ! 個人事務所か... 俺は居候してるのか。
K : いきなりワタナベ君が来て、デスクよこせって言うんですよ。
W : でも、くれなかった... 出勤しないから。
K : あげて何に使うのよ!
(一同爆笑)
——休止の決定の時は、メンバー間で意見はわかれましたか?
K : もめてはないですよ。1回リセットしようかって意味もあったし、僕としては意外と続いた方。今もそうなんですけど、飽きっぽくて次に行っちゃうタイプなんでね。
W : 1回バラバラになったんですけど、それを公に休止という形で公表するかしないかは別にして、時間は必要でしたね。
——休止中は、連絡とかも取り合ってたりしたんですか?
K : 取り合ってましたけどね。ワタナベ君の事務所の愚痴とかも聞いたりしてましたよ。
W : 一応どこかに所属していることが社会人だと思ってたんですよね。会社員気取りだったんですよね。
K : ワタナベ君は意外とインディー精神ないですからね(笑)。
W : SET YOU FREEと関わってからは、インディーまっしぐらですよ。
——3年経って、復活のきっかけはなんだったのでしょう?
W : ちょくちょく連絡が行き交うようになって、そのタイミングでユウヒと一緒に映画出演があったんですね。で控え室で12時間ぐらい一緒にいたんすよ。俳優さんばかりで話し相手もいなくて、そしたらつってあったミラー・ボールも回りだしてね、「もう一回ライヴ出来たらいいな」ってムードになったんですよね。それで、「良しやるか」みたいな!
K : 結構ドラマ・チックに脚色しますね(笑)。
W : 駄目?
K : 別にいいですよ...
W : もうユウヒなんて出演ないのに鈴木京香さん見たくていましたからね。
K : あれは立っててって指示があったの!
W : あっ! そうなんだ(笑)。でも本当にそれがきっかけでもあったし、周りも見たいって言ってくれてたりして。
——3年って長いですよね?
W : 長かったですね。今思い返すと、もっと長かった印象ですからね。
K : それは単純に歳とったんですよ。
W : もうあっちこっち行き過ぎて、10年ぐらい経った感じでいましたね。日本中を車で回ったりとかしてたんですよ。もう何も決めないでね。
——バックのメンバーもすんなり集まってくれたんですか?
W : 2人がやるっていうならって言って集まってくれましたね。威圧的な社長もいなくてやりやすいですよ(笑)。
K : それは語弊が生まれちゃうでしょ!
W : 例えばですよ。例えば...
(一同爆笑)

弱い人達を盛り上げたい
——『13年の金曜日』『14年の土曜日』とライヴ・アルバムを出したのは?
K : ライヴは歳をとっちゃうと出来なくなってくる気がするんですよ。作品はどんな形であれ、作り続けられると思うんです。歌わなくても、プロデューサーであったり、バックで弾いたりして作れると思うんですよ。ただライヴは会場なりお客さんで出来上がるじゃないすか。20代のライヴは30代で出来ないし、お客さんも変わってくると思うので、残しておきたいという思いがあるんですよね。作品も同じ事なんですけど、作品はもっと密室的。例えばピアノのアルバムがあるとしたら35歳の時に弾いても、45歳で弾いても、作品として出た時にそんなに変わらないかもしれないじゃないですか? ライヴに関しては、見た目からお客さんのノリから、年代によっても変わってく るじゃないですか? だからライヴを多くやりたいっていうのはもちろんなんですが、残しておきたいっていうことを強く思っていますね。
W : 僕は自分のバンドのファンなんでね。いつも映像で見て駄目な部分はひとり反省会をやっていますね。後、いいところだけ見る癖もあるんです。自分の出来ってよりも、会場全体のいいところね。
K : AXのライヴはどうでした?
W : 良かったね(笑)。しかも録る時って専属のカメラマンを2人呼んで、ツー・アングルから録るんですよね。
——ワタナベさんは、自分を見るのが好きなんですね?
W : 好きです。上手くいったらその晩に録ったのを見るのが楽しみなんですよね。
K : つまりナルシストってことですよね(笑)。
——年齢を重ねてくると、若い子達にも見てもらいたいという気持ちは強くなりますか?
W : 昔はあったんですけど。今は若い子に限るってことはないですね。
K : 僕は弱い人を助けたいんですよね。若い頃って、若い人たちを弱いと思ってましたし、実際弱かったですしね。高校生の時なんか、自分らの上に大きな音楽業界があって、インディーで頑張っている若いミュージシャン達が「音楽業界を壊そうぜ」って動くオルタナティヴな動きがあったりしたじゃないですか? だからこそ若者と何かやりたかったんですよね。 いわゆる往年のロック・スターや歌謡スターではなくて、インディペンデントで面白いことをやって行こうぜっていうのがあったんですよね。でも俺が30代の大人になってみると、バブルがはじけたりして大人の方が弱くなっちゃった。30代後半とか、40代って本当につらい生活をしていると思うんですよね。若くもないし、大人だからって楽な部分があるかって言ったらそうじゃなかったり... いきなりリスト ラされるし。だから弱い人達を盛り上げたいなって思うと、30代のOLやサラリーマンであったり、頑張ってもなかなか先が見えない人たちを盛り上げたいなって思いますね。もちろんオールラウンドに行けるところまで行きたいと思っていますよ。極端に若者向けでもなくて、年代を代表するようなオールディーズでも無くね。
——ホフディランは、これからインディーズでやって行くんですか?
K : そこで聞きたいんですけど、これからどうなっちゃうんですか(笑)? HMVがローソンに買われちゃう時代ですからね。でももうメジャーにいなきゃいけないっていう事はないですよね。配信であれ、インディーであれ、面白くなっているものは動きますもんね。
——次のアルバムなどは考えていらっしゃるんですか?
K : ホフディラン自体が来年15年目を迎えて、懲りずに「15年目の日曜日」をやるのでそれに合わせながら、カジ(ヒデキ)君も来年ちょうど15年目なので一緒に面白い事をやろうかって話をしていますね。サニーデイサービスも再結成なんでね。皆でやろうかって話はしてますね。とりあえず15周年を盛り上げないと。
W : 今作で予習をしてもらって、15年目も来てねっていうユウヒ社長の意向ですね。

INFORMATION
「ワタナベイビーびくびくライブ Vol.3 ? ホフディラン大阪ワンマン前夜祭編」
日時 : 2010/12/02(木)
場所 : 京都SOLE CAFE
出演 : ワタナベイビー
「ホフディラン 決戦の地は大阪」
日時 : 2010/12/03(金)
場所 : 梅田シャングリラ
ホフディラン PROFILE
渡辺慎(Vo.&G.)と小宮山雄飛(Vo.&Key.)の2人組。1996年にポニーキャニオンよりシングル『スマイル』でデビュー。メンバーそれぞれが作詞、作曲、ヴォーカルというスタイルをとるバンドであり、現在までにリリースした全作品がメンバーによるアレンジ、プロデュースによるもの。1997年に発売した2ndアルバム『Washington, C.D.』はオリコン初登場10位となる。1998年にはFUJI ROCK FESTIVALへ参加。1999年には各々のソロ・プロジェクト「ザ・ユウヒーズ」、「ワタナベイビー」をスタートさせる。2000年10月にリリースしたシングル『長い秘密』よりヒートウェ−ヴ・トライアドに移籍。 休止を挟み、2006年に活動を再開し、2007年には新作を発表。5年ぶりのワンマン・ライヴなど、精力的に活動中。