10年の時間を飛び越えて…
2010年の2月、PLAGUESの深沼元昭率いるMellowheadを見に代官山UNITを訪れた。ライヴでは、アイゴンこと會田茂一や片寄明人(Great 3)、西寺郷太(NONA REEVES)等が飛び入りし大はしゃぎ。10年前の渋谷にタイム・スリップしたかのような光景だった。彼らは、いつでもグッド・メロディを描くことの出来るアーティスト達だ。とは言え、個々人は、バンドのペースがゆっくりになったもの、新しいバンドを始めたもの等様々だったが、共通している点は、みんな現場に居続けていること。長年居続けた場所だからこその余裕が、その遊びのような光景を説得力のあるものにしていた。
そう! 深沼は、PLAGUESの活動休止後も、Mellowheadや元PEALOUTの近藤智洋と組んだGHEEE等、常に現場に居続けた。やっぱり彼はライブがよく似合う。激ウマ・ギターを炸裂させながら淡々と歌う。もの凄い集中しないと、置いていかれそうになる。そんな彼が立ち上げたレーベルが、である。今までは、Mellowheadを出すパーソナルなレーベルだったが、なんと今回、2組の若手バンドのリリースを行った。
1つ目は、フジファブリックや小沢健二、海外ならベル&セバスチャン等を彷彿させる、超グッド・メロディを奏でる5人組、acari。彼らが6月23日にリリースしたのが、アルバム『プリズム』だ。なんとプロデュースは片寄でミックスは深沼と言う黄金コンビ。1曲目の「ほおずき弾けたら」を聞けば、クールな深沼でさえ、彼らに夢中になるのがわかる素晴らしいメロディ。ベル&セバスチャンの『タイガーミルク』を初めて聴いた時の衝撃を、また得ることが出来るなんてっ!!!
2つ目は、平均年齢22歳のwheellz。acariよりはロックなサウンドを奏でるが、バックの轟音に消されることなく聞こえてくるメロディは、やはり素晴らしい。デビュー・アルバム『20-twenty』では、演奏の荒さが、初期衝動と重なって素直に響いてくる。初期のピロウズって、確かこんなだった気がするし、海外ならスーパーグラスとかか! こちらは、プロデュースもミックスも深沼が担当。ほっとけば飛び散ってしまいそうな剥き出しのサウンドをまとめあげた深沼のミックス・ワークが冴える。
両バンド共、プロデュースで片寄や深沼が関わることで、サウンドにある種の懐かしさを同梱している。彼らが持ち込んだ、その10年前の渋谷の匂いは、今は両バンドの個性として表舞台に登場する。体にしみ込んだ現場感で両バンドを見つけた深沼。そして彼が関わることを許した両バンド。acariとwheellzにもっとも興味を持った部分は、そこで生まれた化学反応を聞いてみたかったからだ。はっきり言って、その試みは完璧に成功している。
ビッグ・ニュースが飛び込んできた。PLAGUESのライヴが決定したようだ! PLAGUES、Mellowhead、acari、wheellz… 深沼を中心に、また新しいシーンが生まれるかもしれない。10年の時間を飛び越えるレーベル、。そこでどんな化学反応が起こっているかは、あなたの耳で聞いて欲しい。(text by 飯田仁一郎)
LAVAFLOW RECORDSのご協力により、acari『プリズム』とwheellz『20-twenty』は、HQD(24bit/48khzの高音質wavファイル)で販売しています。グッド・メロディのひとつひとつを、じっくり味わってみてください。
PROFILE
acari
三浦コウジ(Vo&G) / 伊藤祐介(B) / 斉藤正樹(Dr) / 宮野哲郎(G) / 橋本知恵美(Key)
三浦コウジ(Vo&G)の独特で繊細な歌声と、儚い日常を切り取った言葉と切ないメロディー、60'sソフト・ロックからオルタナティブ・ロックまで様々な音楽要素を消化したサウンドは、センチメンタルでありながら、激しく包み込まれる独自の世界。口コミだけで大評判となった1stアルバム『片想いのレッスン』から約1年半、耳の早いリスナーはもちろん、業界内やミュージシャンの間で噂が噂を呼ぶ爆発寸前の状況の中、片寄明人(Great 3)をプロデューサーに迎えて、ブレイク必至の極上ポップ・アルバム『プリズム』が完成。
wheellz
栗山康之(Vo&G) / 三輪竜哉(Dr) / 藤平恭弘(Ba)
2008年に大学のサークルで出会ったメンバーで結成し、下北沢や渋谷を拠点に活動中。60年代UKから90年代オルタナまでを新世代の感覚で消化したサウンド、フロント・マン栗山康之による狂気を内包したメロディアスな楽曲と、繊細ながらカリスマ性を備えたボーカルが圧倒的な存在感を放つ、突如シーンに現れた平均年齢23歳の3ピース・ギター・ロック・バンド。深沼元昭(プレイグス)プロデュースにより、全国のロック・ファンに衝撃を与える1stフル・アルバム『20-twenty』が完成。
時を超えるグッド・メロディ
Daydream weaver / Mellowhead
フィーチャリング・ボーカルに佐野元春を迎えた、約4年ぶり通算4作目となる入魂のニュー・アルバム。ドラムに小松シゲル (NONA REEVES) 、ベースに林幸治 (TRICERATOPS) というバンド編成によるレコーディングも導入、これまでの深沼サウンドを包括した、ロック&ポップ・センス全開の最高傑作。
三次元ダンスLP / sister jet
片寄明人を共同プロデューサーに迎えたファースト・アルバム。「ラブソングしか歌わない!」。思春期特有の普遍的な思い、恋することのもどかしさを抱え込んだ若者の心をうまく捕えた歌詞に歯切れのいいビート。思わず体が踊り出すようなポップでキャッチーなリフにスウィートな歌声が誘う、判りやすく洗練されたメロディ。チャレンジ精神旺盛なリズムセクションが支える弾けるようなグリッター風ビートポップスに見られる躍動、開放&キラメキ感。つまり、ロックでありながらポップ、青くてナイーブ、センチメンタルな情感を喚起させる青春的な音楽の一面がここに溢れ出ています。新世代のためのピュアなビート・ポップス!
Idiots / Curly Giraffe
GREAT 3、HONESTY、サポート・ミュージシャンとして様々なフィールドで活躍するCurly Giraffeの4thアルバムは、自身のルーツ・ミュージックに回帰した、実に爽快なロック・アルバム。制作のほとんどすべてを一人でこなすアルバム制作のスタイルとは別に、ライブにおいては永年の仲間たちである凄腕の曲者たちとともにセッションを繰り広げ各地のフェス等で観客を沸かしている。
Yoi Toy / YOMOYA
日本語ロックのニュー・スタンダードとも言うべき、ゼロ年代型シティ・ポップの名盤。プロデューサー/エンジニアに、OGRE YOU ASSHOLEの出世作 『アルファ ベータ vs, ラムダ』やmooolsの名盤『モチーフ返し』を手がけた7e.p.の斉藤耕治と多田聖樹を迎え制作された2ndアルバムは、 常にライヴのクライマックスを演出してきた11分強の大曲「雨あがりあと少し」をはじめ、フィッシュマンズにも通じる 浮遊感を漂わす「サイレン、再度オンサイド」、三拍子が新鮮な「周波数」、オルタナティヴ感とフォーキー・メロディーが見事に融合した 「Chorus」、そしてJ-POPチャートに登場してもおかしくないほどの訴求力を持った名曲「フィルムとシャッター」、「世界中」などといった充実ぶり。 確実にバンドがネクスト・レヴェルに上ったこと、そして大きな舞台に羽ばたくであろうこ とを確信させる、溢れんばかりの魅力、パワーが宿った8曲+α。