あどけなくも凛とした“少女のリアル”――白波多カミン、ノイズ、アバンギャルド界の大御所多数参加のミニ・アルバムをハイレゾ・リリース

京都出身のシンガー・ソングライター、白波多カミン。“初音階段”での、初音ミクのコスプレ・ヴォーカリストとしてご存知の方も多いでしょう。今回リリースとなるのは、なんと3年ぶりとなるミニ・アルバム。キュートなルックスから生み出される、繊細で切ない少女のうた。バック・ミュージシャンには奇形児、非常階段、ミドリなど、ノイズ・アバンギャルド界のトップ・ミュージシャンが参加し、作品に色を添えます。さらにジャズの巨匠、サックスの坂田明が参加。このSAXの音色は、本当に素晴らしいので、是非ともハイレゾで酔いしれていただきたい1枚です。また、彼女は、なんとメジャー・デビューが決まっています。なので、これから、どんどん大きくなっていくので、振り落とされないようについていきましょう。アイドルの次は、彼女ですよ。

インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 長島大輔

白波多カミン / くだもの

【収録曲】
1. 予感
2. あたまいたい
3. わたしの東京
4. Tel.
5. くだもの

【配信価格】
alac / flac / wav(24bit/48kHz) : 単曲 200円 / アルバム購入 800円
mp3 : 単曲 150円 / アルバム購入 600円



くだもの(MV)

INTERVIEW : 白波多カミン

物事がおもしろく転がっていく可能性があるのが良いなって

――メジャー・デビュー決定、おめでとうございます! カミンさんはずっとプロのミュージシャンを目指していたんですか?

音楽だけをして生きていきたいっていう気持ちと、ほかの仕事をしながらでも自分の歌が歌えるならいい。っていう気持ちと、ずっと半分半分だったんですよね。で、私は京都で巫女さんをやっていたんですけど、その巫女さんを辞めようと思ったのが、「やっぱり私は歌がもっと歌いたい!」って感じたからなんです。巫女さんってイメージよりも忙しい職業で、なかなかライヴもできなかったですし。それで、「よっしゃ、とことんやってやる!!」と思って、その頃から本気でプロを目指すようになりました。

――京都から東京に出てきたのには何かきっかけがあったんですか?

巫女さんを辞めたあと、大阪のベアーズによく出入りしてました。自分のライヴも見に行くのもベアーズが多かった。そこでたくさんのアンダーグラウンドのミュージシャンから影響を受けました。オシリペンペンズとかめっちゃ好きでライブよく見に行きました。そこでふと、自分がやってる音楽を考えたとき、私のうたは、人生が退屈で憂鬱だと感じている高校生とか、家の中で外に出るのがしんどいわとか思ってる中学生(私がそうやった)とかにも聴いてほしいって思って、ずっと京都や大阪にいるより、やっぱり東京って日本の中心やから、自分の音楽をたくさんの人に聴いてもらえる機会が多いのではないかと思って引っ越してきました。

――なるほど。どうですか、東京は?

早い。全部が早い。3倍くらい早い! 京都が1回転してる間に東京は3回転してるから、3倍時間が過ぎてるような気がします。とにかく人が多いし、それだけ物量もすごいし。しばらくはびっくりの連続でした。

――楽しめてますか?

楽しいというよりも、物事がおもしろく転がっていく可能性があるのが良いなって感じですかね。東京に出てくるまでは、電車がパンパンになるまでぎゅうぎゅうに押し込められる感じとか、おかしいやんって思ってたんです。まあ、いまでもおかしいやんって思ってるんですけど(笑)。でも、それだけ人がたくさんいて、いろんな人と出会う可能性があるっていうことだから、それはすごい利点だなと思います。いくらインターネットが発達したとはいえ、すぐに直接会えるっていうのはぜんぜん違うなと。だからみんな集まってきて余計パンパンになるんだなってわかりました(笑)。不思議な街やと思います。

――今回のアルバムにも、「わたしの東京」って曲が入ってますよね。あれはカミンさんの東京への思いをそのまま歌ってるんですか?

引っ越しする日に京都から東京へ来る夜行バスに乗っているときに思いついた曲なんですけど、東京への思いというよりも、もっと漠然とした空気とか気持ちとかを言葉にしたって感じです。この曲は個人的な物語の曲ですが、見えてくるシーンをひとつひとつ描写して、その時の香りを閉じ込めて、真空パックしたというか。正直、東京ってものが何かってわかってない状態で作りましたね。「わたしの東京」って言ってしまってるんですけど(笑)。

――なるほど。どういうきっかけで曲ができますか?

いろいろなんですけど、言葉とか物語のアイディアからできることが多いですね。もしくは風景とか写真とか、そういうのが先に浮かんだり。

――カミンさんの歌う世界ってちょっと毒がありますよね。

それは嬉しいですね。毒というか、聴いてる人の心の底に触れたいという欲求があるんだと思います。外側よりも中に触れていきたい。聴いてる人をちょっと痛い目にあわせたいというか。音楽とか映画を見ていても、ハッとする瞬間が好きなんです。赤の他人が作ったものなのに、まるで自分のことのように感じるときに、生きてるって感じがする。そういうことがやりたいんですよね。

――表層的なことを歌うんじゃなくて。

そうですね。たとえ表層的な歌詞だとしても、やっぱり深いところまで表現できていないと、いまの自分が歌う意味はないかなと思います。

「女の子であることとどう戦うか」みたいなところが似てるのかなあと思います

――弾き語りを始めた頃って、どんなアーティストを聴いていたんですか?

あの頃はくるりの『さよならストレンジャー』ばっかり聴いてましたね。あとは、椎名林檎、ゆらゆら帝国、Blankey Jet City、サニーディサービスとか。洋楽だとoasis、ニルヴァーナ、ツェッペリン、ジミヘン。そのころ歌詞で影響を受けたのは、岸田繁さん、坂本慎太郎さん、浅井健一さんです。あとは、俳句が好きでよく読んだり作ったりしていました。俳句の影響は大きいです。言葉で写真を撮る感じ。実際起こっていない事でも言葉を選んで配置すれば、そこにきちんと存在するんです。文学やったら、谷川俊太郎、澁澤龍彦、太宰治とか。

――けっこうメジャーどころなのが意外です。でも、今回のアルバムに参加してるのって、奇形児、非常階段、ミドリとか、アングラ界のトップランナーたちじゃないですか。しかも、サックスで坂田明まで参加しているとか…

坂田さんとやりたいっていうのは完全に自分の欲求ですね。正直に言うと、もともといわゆるサックスの音って苦手だったんです。ぶいぶいしてるっていうか(笑)。でも、非常階段と私と坂田さんでノイズのセッションをする機会があったんですけど、そのときに坂田さんが吹かれた「赤とんぼ」が素晴らしくて、隣から聴こえてくる坂田さんのサックスの音にすっごい鳥肌が立って。自分の作品でも絶対吹いてほしいって思いました。


JAZZ非常階段(SAX 坂田明)

――そうだったんですね。あとは、ハジメちゃん(※ミドリのキーボーディスト)がピアノを弾いているのを聴いて、ミドリの世界とカミンさんの世界って、離れているようで実は似ているのかなと思いましたね。

そうかもしれないですね。こういうことを言うとおこがましいけど、「女の子であることとどう戦うか」みたいなところが似てるのかなあと思います。

――なるほど。カミンさんにとって「女の子であること」は重要なテーマ?

神社で働いて、古いしきたりの中で仕事をすることを経験したので、男の人との差を感じることが多くなったんです。それと同時に、自分が女の子であることを強く意識するようになって。そこをいかに破っていくかはひとつのテーマだと思います。「女やからってなめんなよ」みたいな。

――そういう気持ちが歌になる?

自分の中にいったい何があるのか、みたいなことを掘り進めていく過程が歌になります。だからけっこう突き詰めていくんですけど、それと同時に、「どうせ死ぬから大丈夫」っていう思いもあって。自分たちは短い時間しか生きられないんだから、好きなように生きて死ぬだけというか。実は「くだもの」っていうアルバム・タイトルもその辺と関係しているんですよね。くだものって、自分の中に種を持っていて、土に落ちたら腐って栄養になって、でも種が育ってまたくだものになって… っていう長い長い時間を持っているものだと思うんです。私もそんな長い時間を曲に込めたいなと考えています。

――長い時間を表現したい?

そうですね。今回のアルバムには「Tel.」という短い曲が入ってるんですけど、それは本当に30秒くらいのことを歌った曲なんです。でも、その先にはずっと続くストーリーがあるというのがわかる。そういう長い時間を表現したいんです。私と君が出会って、2人で育てたくだものを食べる。2人はいつか死んでしまうけど、くだものは種になってずっと続いていく、というか。

濃ゆい部分をぎゅっと絞ったようなアルバムになりました

――今回のミニ・アルバムを作ることになった経緯を教えてください。

前作からけっこう時間が空いてしまって、曲もいっぱい溜まっていたので、メジャーで出す前にインディーで1枚出しておきたいなと思って。濃ゆい部分をぎゅっと絞ったようなアルバムになりました。

――じゃあ、曲が最初にあって、そこからメンバーを集めていって… という感じ? ほぼセルフ・プロデュースですよね。

そうですね。アレンジも自分で「こういうふうにしたい」っていうのを出しました。とはいえ、メンバーの方たちがすごいアイディアをいっぱい出してくれるので、すごく頼りましたね。この辺りで入ってきてくださいとか、ここでギターお願いしますとか、ここはピアノがいいです、みたいなことは言いましたが、個々のフレーズはすべてメンバーさんのアイディアです。総合プロデュースのJOJO広重さんも重要ポイントで的確な意見をくださいました。

――「予感」とか「くだもの」って曲の構成がしっかりしてるじゃないですか。あれもメンバーと一緒に決めたんですか?

たとえば「予感」では、1番は弾き語りで2番からはバンドでみたいな構成は私が考えました。あとは、ギターソロはこうしてくださいとか、ここでこういうふうに入ってくださいとか、そういう全体的なことは私のアイディアです。メンバーのみなさんが白波多カミンのうたを最優先に考えてくださって、一つ一つの曲をすごく大事にしてくれました。この曲はこうなりたい! という願いをきちんと叶えていただきました。本当にありがたいですね。

――それはすごく感じました。個性的なメンバーがそろっていて、たしかにアンダーグラウンドの匂いはするんだけど、じゃあ具体的にどこがアンダーグラウンドなのかっていうと、不思議とそういう部分がないんですよね。

そうですよね。たぶんすっごい考えてくれはったと思います。非常階段の岡野さんにドラムを叩いていただいたんですけど、最初、すごいかっこいい音で叩いてくれはって。でも、もうちょっと優しく叩いてくださいとか、注文をたくさんつけました(笑)。非常階段の岡野さんにもっと優しくってのも、おかしいやろって感じなんですけど(笑)。

――カミンさんの世界を出そうと大御所たちががんばってくれたんですね。

その気持ちがすっごい伝わって嬉しかったです。

――最後に、ミュージシャンとしての目標を聞かせてください。

夢は武道館です。しかも生声で。

――生声はさすがに無理だと思います(笑)。

そうかな? やるつもりでいます。自分の歌に導かれて人生が決まっていってる感じがあるので、これからどうなっていくのか、自分でも楽しみです。自分の人生を歌うというよりは、歌のほうが先をいっている感じなんですよね。歌のほうが自分よりも偉いんで。

――それはおもしろいですね。

はっきりしたヴィジョンを持つのも必要だと思うんですけど、そのときそのときで面白いと思ったことを一生懸命やるのが自然なことだと思います。大きいところで人に囲まれて歌うのも、小さいところでマイクなしで歌うのも、どっちも好きなので。あとは歌任せで、私は歌に付いていくだけというか。

白波多カミンが初音ミクに!? 初音階段の作品はこちら

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LIVE INFORMATION

2014年4月16日(水)@代々木 ミューズ音楽院
2014年4月24日(木)@新宿LOFT
2014年4月23日(水)@渋谷アップリンク
2014年5月1日(木)@秋葉原CLUB GOODMAN
2014年5月17日(土)@難波タワーレコード
2014年5月18日(日)@京都 ライヴサーキット“いつまでも世界は…''
2014年5月19日(月)@難波ベアーズ
2014年5月23日(金)@タワーレコード渋谷店

PROFILE

白波多カミン

京都生まれ。2009年からソロ・シンガーとして活動開始。2011年にギューンカセットより「ランドセルカバーのゆくえ」でインディーズ・デビューし、好セールスを記録する。2012年、初音ミク音源を使用した非常階段のユニット「初音階段」のライヴにおけるコスプレ・ボーカリストとしても活動を開始しこれまでに3作品を発表。その完璧なコスプレとキュートなルックスが話題になり一気にブレイク。2013年より活動拠点を東京に移し、2014年末にはメジャー・デビューも決定している。

>>OFFICIAL HP

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インタヴュー

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筆者について
J J (JJ)

パンク・バンドLimited Express (has gone?)のギター・ボーカル。BOROFESTAの主催者。ototoyのチーフ・プロデューサー。JUNK Lab Recordsのレーベル・オーナー。ライターやイベント・オーガナイズも多数。ototoyでは、リミエキのJJとして喋っている時は、JJ(Limited Express (has gone?))と記載しています。

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