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SCAFULL KING、LOW IQ 01、CUBISMO GRAFICO FIVE、セカンド・ロイヤル・レコーズ・・・
クラブとライブ・ハウスを往来し、革新的で音楽への愛情に溢れたごった煮のパーティー・サウンドを奏でる種族がいる。中でも今をときめくのが、今回紹介する。2nd ALBUMは、1万枚もの初回盤をメンバー自らが全て印刷し、その作品の愛情が見事お客さんにも伝わり即完売。LIVEにはひっぱりだこ、FUJI ROCKやSUMMER SONICにも出演するが、代々木公園でのフリー・ライブやカクバリズムとの共同企画など、自分達で発信することを常に念頭に置いた活動をする。そんな彼らが、2009年10月21日に3rd ALBUM『DAYS LEAD』(邦題『日々は僕らの前を歩いている』)をリリース。しかも、CDとジャケットを別々に販売ときた。つまり、ダウンロードで音源を購入して、気に入ればレコード屋さんでジャケットを購入することだって出来る。なんて、2010年的! 当然、サウンドにもその溢れんばかりの革新がぶち込まれていた。
インタビュー & 文 : JJ(Limited Express(has gone?))
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まったく見ていなかったお客さんが徐々に振り向き始める感じがすごく面白かった
—新作の『Days Lead』はどのようなテーマで制作されたのでしょうか?
田中 啓史(以下 : 田中) : このアルバムは日常をテーマにしました。ファースト・アルバムは夜遊びのイメージ、セカンド・アルバムは夜遊びを終えた日曜の午後。そして、今回のアルバムは、その後の日常の日々のイメージなんです。何事も急には起こらない。自分よりも日々が先にあるという意味が込められているんです。
—今回ノルウェイでレコーディングをされたとのことですが、なぜノルウェイを選んだのでしょうか?
古川 太一(以下 : タイチ) : ノルウェイの音楽が好きなんです。元々ソンドレ・ラルケというノルウェイのアーティストが好きで、さらに去年一緒にツアーを回ったマティアス・テレスというアーティストもノルウェイ人。今年の最初にタイバンしたロイヤリティーズっていうバンドもノルウェイのバンド。ストリングスやホーン隊がたくさん入った、いわゆるオーケストラ・ポップと言われているバンドで、それらのアーティストにインスピレーションを受けて、今回はノルウェイでレコーディングをしようと思いました。タイミングもちょうどよくて、イギリス・ツアーが決まって、海外でレコーディングをしようと話していた時だったんです。
田中 : 最初は何となくレコーディングは海外でするというぐらいだったんですけど、ロイヤリティーズとタイバンをした事がきっかけで一気にノルウェイでのレコーディングが決まりましたね。
—ノルウェイの音楽のどのような部分が魅力的ですか?
タイチ : オーケストレーションとストリングスの壮大な面、あとはものすごくポップなのにひねくれていて、日本はもちろんスウェーデンの音楽とも全く違った展開やコード進行があるんです。しかもそういう音楽は、僕らが行ったヴェルゲンという町に限定されているんです。そこの音楽は日本にはほとんど入ってきていないんです。
—以前から、ノルウェイの音楽を聴いていたのですか?
タイチ : いや、全然聞いていなかったです。気になる音楽の中でも、本当に片隅という感じでした。とにかくソンドレの影響がすごく大きいですね。彼のプロデューサーやアレンジャーを調べて探しました。結局みんな小さな同じ町に住んでいる人たちで、ロイヤリティーズが来日をした時に話をしたら、去年来たマティアスと非常に仲がいいらしくて。
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—レコーディングの期間はどのくらいでしたか?
タイチ : ノルウェイでレコーディングをしたのは5日間くらいでした。ドラム、ギター、ベースを向こうでとりました。周りに何もない場所なので、普通にスタジオに窓があったりするんですよ(笑)。スタジオというよりは普通の家でしたね。
—ノルウェイでレコーディングをした曲は具体的にどのように違いますか?
タイチ : やっぱりドラムがカラッとしていて全然違いますね。あとは、ドンドン重ねていったら、解んなくなってしまってた(笑)。でも、レコーディングしたときの雰囲気は残っていると思います。ロイヤリティーズのリーダーのスタジオで録音したんですけど、彼と色々と遊びながら作りました。
田中 : 何かあったら、いつでもアドヴァイスをしてくれと彼にお願いしていて、お互いにアイデアを出し合いました。
—イギリス・ツアーの方はどうでしたか?
田中 : 想像していた海外ツアーほど、つらくはなかったです。パブのような場所でライヴをして、最初はまったく見ていなかったお客さんが徐々に振り向き始める感じとかがすごく面白かったです。
タイチ : 基本的には町を挙げてのフェスに出演することが多くて、いくつかの会場に色々なバンドが集まっているフェスがほとんどでした。ツアーをしながらレコーディングをしたんですけど、初めての海外ツアーでテンションがあがったままレコーディングが出来たことが、いい流れになりましたね。
—お二人とも北海道の帯広出身ですが、そのことが今回のノルウェイでのレコーディングを決めた事に影響しているのでしょうか?
タイチ : あると思います。ベルゲンはすごく帯広に雰囲気が近いと思いました。やっぱり北の国がすごく好きで、気候も町並みもすごくそっくりでした。
—同郷のバンドはいますか?
タイチ : 同じレーベルのour favorite fabというバンドにはシンパシーを感じます。彼らとは以前スプリット・アルバムを出していて、すごく気があうんです。彼らもさっき挙げたような北欧の音楽が好きなんです。
田中 : メンバーの半分は帯広出身で、札幌のバンドなんです。彼らは今も札幌を中心として活動をしているんです。
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ダウンロードがどうだとか、文句を言っていてもしょうがない
—の皆さんはクラブを中心に活動しているという印象がありますよね。
田中 : タイチがDJをしているという事が大きいと思うんですけど、単純にクラブが好きなんだと思います。
タイチ : 僕はOrgan barで五年くらいレーベルの先輩の松田"チャーベ"岳二さんと一緒にDJイベントをしています。それが今でもずっと続いています。クラブに遊びに行って、好きなDJがかけている曲とか、そこにいる人との話から、アイデアを貰っている部分が大きいと思います。
田中 : だからアイデアは僕ら五人の中だけから出てくるものではないんですよ。色々な人と出会って出来ていく音楽なので、アルバムを作るからといって、こもって絞り出すというよりは、僕ら以外の人から色々と吸収して生まれるんです。
—カクバリズムやSECOND ROYALのようにクラブとライヴを融合していくアーティストとの競演も多いと思うんですけど、その辺りも意識してのことですか?
タイチ : 単純に仲の良い人が多いからです。ノリのあう人と一緒にいるのが楽しいですから。でも、クラブっぽい音楽を作ろうとかそういうことはあまり考えていません。
—やっぱり、遊びというかそういう空気感がキーワードですよね。東京キネマ倶楽部でのライヴもそういった意味で非常に面白いと思いました。
タイチ : 一部と二部に分けたライヴをしたくて、片方は座りでライヴをしたいという話になったんです。さらに新曲だけでライヴをやってみました。
—今回のニュー・アルバムを作る上でのきっかけは、そのライヴだったという事ですね。
タイチ : そのライヴのために新曲を作りました。そのライヴがなかったらずるずる進んでいたかもしれないですね(笑)。いつの間にか自分たちの新しい音を見つけなくちゃいけないという気持ちになってて。そのために、めちゃくちゃがんばって、色々と考えた事がよかったと思いますね。
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—今回はCDとジャケットを別々に販売するということですが。
タイチ : セカンド・アルバムのジャケットは、メンバーみんなで初回盤1万枚をシルク・スクリーンで手刷りしました。それがすごく楽しくて。でも色々なヴァージョンのジャケットを作っても、CDが一緒だと一つしか買えない。だから、別売りにしようと言うことになったんですね。そうすれば、CD一枚で色々なジャケットを買う楽しみが増えるかなって。あとは、今はダウンロードで買う人はジャケットが貰えなくて、そういう人のためにもジャケットを買えるようにしたいと思いました。ダウンロード販売は今後飛躍的に伸びると思うんです。けれど、そうなった時でもジャケットが手に入れられる状況を作りたいなと。色々な提案ができたらと思っています。
田中 : 彼が単純にたくさんジャケットがあるのが楽しいというきっかけで始めた事が、色々な意味を持ち始めていて、こういう楽しみ方もあるんだという広がりが出てきていると思います。
タイチ : それにダウンロードがどうだとか、文句を言っていてもしょうがないと思うんです。手軽に音楽が聴ける環境は素晴らしいですから。僕は実はアナログ派なんですけど、そこにとどまっていてもしょうがないと思うから、どんどん新しくて面白い事をやっていきたいです。
—面白いアイデアが自然と出てくる雰囲気がバンド内にあるんですね。
タイチ : 人がやっていない事をする方が、自分たちが楽しいからですね。一度した事はもうせずに、常に新しい事をやりたいと思っています。
—例えば、メジャーのレコード会社に行きたいとかは思いませんか?
タイチ : 既にやりたいことが出来ているので、あまり考えませんね。めちゃくちゃ色々とやらしてくれるのならば、考えます。けれど、売りにかかることとかはあまり興味がなくて、自分たちのやりたい事が最大限に出来る場所を求めています。僕らは音楽をやっているだけではないので。
—次こんな事をしたいというアイデアはあるのですか?
タイチ : 次はTシャツを裏返してプリントしてやろうと考えています(笑)。あとはこの前思いついたのは、プニュプニュのバッチを作りたいとか・・・。そういう小さな楽しみで生きているので(笑)。
—そういうアイデアをまとめるメンバーは大変そうですね(笑)。もうすぐニュー・アルバムのツアーが始まりますが、どのようなツアーになりそうですか?
田中 : 今回ストリングスを入れて10人で回る予定なので、非常に楽しみです。セカンド・アルバム以降、ライブのときに集まってくれた五人なので、意思疎通はとれています。今回のツアーは自分たちの魅力が最大限に出せると思います。
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—そういう何でも取り入れる部分も、チャーベさんに通じる部分があると思います。
タイチ : あの人のすごいところを近くで見ているので、逆に何をやっていないかと考えてオリジナリティを作り上げていっている部分もあります。チャーベさんのかける一曲ですべてが、決まる事もありますから。僕自身が勝手に感覚が近いと思っているので、あの人からの影響は強いです。
—チャーベさんと最初にあったのはいつですか?
タイチ : 僕がクラブで話しかけたのがきっかけです。かけている曲がすごくかっこよくて、その時に話しかけてそのまま遊んでいたら、いつの間にか仲良くなった感じですね。
—riddim saunterはクラブとライヴの架け橋となっているというイメージがあるのですが、そういう意識はありますか?
タイチ : あまり意識はしていなくて、自然にそうなったのだと思います。どちらも音楽が鳴っている場所という意味ではあまり変わらないし。DJをやっていると、僕らの事を気に入ってくれている人が、僕らのバックボーンを知るわけじゃないですか。そうやって音楽が広がって行く事を楽しんでほしいと思って、活動しています。実際はなかなか難しいんですけど、それでもクラブの楽しさも伝えられたらと思って、オールナイトのイベントも開催しているんですよね。せっかくお金を払って演奏を見に来ているわけだから、僕らはとにかくお客さんが楽しんでくれればいいと思って演奏しています。あまり深い事は考えずに(笑)。
PROFILE
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03年、Niw! Records第一弾のコンピレーション"Niw Stocks"にて音源デビュー。"SKAVILL TOKYO""蓮沼FAINAL"と日比谷野外音楽堂に立て続けに出演するなど、単独音源も出さず注目の若手バンドとして取り上げられる。2005年には1st album "Current "をリリース、SOUL、HIP HOP、ROCK、PUNKなどの様々な音楽性を独自のセンスでまとめあげたデビュー・アルバムが瞬く間に話題となる。1st Albumリリース後、SAX、Baが脱退し、現Ba/HAMADAが入り、現在の5人編成になる。Saxの脱退により2本だったホーンが、TPだけになり、HONMAは、KEYやFLUTEといった新楽器を取り入れ始めたり、B/HAMADA、G/HIROSHIのコーラスも増え、3声のコーラスワークの曲ができあがるなど、新しいUKの音楽シーンとも自然とリンクしたサウンドになっていく。その楽曲的な変化に自分達のルーツであるBLACK MUSICが交じり合いオリジナリティーある作品となった「Think, Lad & Lass」が2007年にリリースされる。全て自ら印刷し色とりどりのジャケットを並べ初回1万枚を即完売させる。その後も、ACOUSTIC ALBUM、海外アーティストも参加したREMIX ALBUMもリリースするなど活動の幅は広い。09年には、メンバーが強く希望していた初のイギリス・ツアー敢行。イギリスでは、THE GREAT ESCAPE、FUTURESONIC、STAG&DAGGER、LIVERPOOL SOUND CITYなど数多くのFESをめぐり大盛況のうちに帰国した。
Live Schedule
Riddim Saunter "Days Lead" Tour
- 2009/11/1 (日) @仙台 darwin
- 2009/11/03 (火) @札幌 cube garden
- 2009/11/21 (土) @福岡 DRUM Be-1
- 2009/11/22 (日) @岡山 cafe.the market maimai
- 2009/11/23 (月) @名古屋 CLUB QUATTRO
- 2009/12/11 (金) @大阪 AKASO
- 2009/12/13 (日) @新潟 CLUB JUNK BOX
- 2010/01/24 (日) @水戸LIGHTHOUSE
Riddim Saunter Days Lead Tour Final
- 2010/02/19(金) @赤坂BLITZ
チケット:12/12 発売
ぴあ(340-269)、ローソン(71316) 、e+ http://eplus.jp/、
さらに踊れる4枚!!
half works / HALFBY
DJとして、京都・東京・神戸でのレギュラー・イベ ントを中心に活躍。2007年からはイギリスを中心としたロック・シーンの影響でDJバッグの8割を最新の7インチ・シングルに衣替え、テムズ・ビートよろしくの軟弱パンク精神を引っ提げ、全国各地のクラブからお寺、銭湯、果ては夏フェスまでを飛び回り、毎週末どこかしらの誰かしらを盛り上げる。しかし、平日は京都の某レコード・ショップの幽霊スタッフとして勤務。世界中からやってくる最新のレコードと地味に格闘する毎日。ハーフビーとしては、2005年にファースト・アルバム『GREEN HOURS』をリリース、その後メ ジャーへと活動の場を広げ、DJとしては異例のシングル4部作を成功させ、2007年8月29日、前作から約2年ぶりとなるメジャー・デビュー・アルバム『SIDE FARMERS』をリリースした。
BGM LP / MU-STARS
2001年(頃)結成のsarudog(曲作り担当)とタカ(あいづち担当)の二人組。
2003年にカクバリズムよりリリースした7'singleが全国のレコード店で瞬く間に完売。全国のHIP HOP〜FUNK〜BREAKBEATSファンに衝撃を与えた。2005年にリリースした1stアルバム「CHECK 1,2」は、BREAKBEATSを中心とした楽曲に多数のゲストが参加したファンキーで熱い1枚になり、このアルバムがジャンル・レスに絶賛を受ける。アルバム・リリース後は全国各地のイベントでのDJの他に、CM楽曲の制作や、コンピレーションへの楽曲提供をしつつも、並行して2ndアルバム「BGM LP」を制作。1stから4年振りとなるフル・アルバムを2009年9月30日にDROP!
ホニャララ / SAKEROCK
2000年結成。メンバーは星野源(ギター)、田中馨(ベース)、伊藤大地(ドラムス)、浜野謙太(トロンボーン)の四人。様々な音楽的要素と無駄な感覚を多分に含んだストレンジ・インストゥルメンタル・グループ。センスが湯水のごとく溢れ出る!
Rollin' Rollin' / 七尾旅人×やけのはら
新しいポップ・ミュージックを世間に叩き付け続けるシンガー・ソングライター七尾旅人と、DJ として名前を見ないことが無い程多数のパーティーに出演し、楽曲参加や番組の楽曲制作も手掛けるHIPHOP アーティスト、やけのはら。話題の二人のコラボレーション・ナンバーは、うたとグルーヴィーなラップが凄まじくキャッチーな、アーバン・ヒップホップ・ソウル。一瞬にしてフロアを沸かせてしまう、今世紀最大のアンセムです。