SYNCHRONICITYと言う音楽イベントを主宰する麻生潤と言う男とは3〜4年の付き合いだ。とても男前で、正義感に溢れ、インディーズとメジャーをクロスオーヴァー出来る視点を持っている。彼とは、いつか一緒にでっかいフェスをしようと企んでいる。そんな男が、横浜でどでかいSYNCHRONICITYを行うようだ。未曾有の大震災の影響で、多くのフェスが開催を延期せざるを得なかったり中止に追い込まれてしまった。でも、まさにこんな時だからこそ、フェスという大きな、そして影響力の強い音楽フェスにしか出来ないことがあるはずなのだ。グリーン・エネルギーを使ったイベントをいち早く主宰しているSYNCHRONICITYが今行うフェスティバルにこそ、『今、音楽イベントが出来ること』が詰まっていると考えている。麻生潤に、『今、SYNCHRONICITYが出来る事を』を聞いた。
インタビュー&文 : 飯田仁一郎(Limited Express (has gone?) / BOROFESTA / OTOTOY)
SYNCHRONICITY'11が開催! 3組6名様をご招待
オトトイでは3組6名様をご招待!
SYNCHRONICITY'11
2011/05/15(SUN)@横浜三連結会場(横浜ベイホール / ベイサイド横浜 / タイクーンコンチネンタル)
open : 14:00
entrance : ADV : 4,800 / DAY : 5,300
出演者
【横浜ベイホール】
ストレイテナー、SOIL&"PIMP"SESSION、曽我部恵一BAND、The Mirraz、DE DE MOUSE、JABBERLOOP、NITORON a.k.a ニトロン虎の巻、POTATO、385、uhnellys
【ベイサイド横浜】
ZAZEN BOYS、te'、mouse on the keys、(仮)ALBATRUS、GAGLE
【オープン・テラス】
キセル、ムッシュかまやつ+沼澤尚、Leyona&Latyr Sy、Nabowa、東田トモヒロ
【DJ】
MITSU THE BEATS、MOODMAN、タカラダミチノブ、Ko Umahara
【LIVE PAINTING】
gravity free、SHOHEI TAKASAKI、NOVOL、shina
SYNCHRONICITY 公式 HP
【応募方法】
件名に「シンクロ二シティ招待券希望」、 本文に氏名/住所/電話番号をご記入の上、info(at)ototoy.jpまでメールをお送りください。
シンクロニシティ招待券応募締め切り : 応募期間は終了いたしました。沢山のご応募ありがとうございました。
当選者の方には、追ってメールにてご連絡します。
※あらかじめinfo(at)ototoy.jpからのメールを受信できるよう、設定ください。
SYNCHRONICITYからのメッセージ
今回のSYNCHRONICITYは、利益の全額を被災地支援のために寄付いたします。
会場にお越しいただき、素晴らしい音楽やアートを思う存分楽しむことが、
被災地への支援となります。
甚大な被害をもたらした今回の震災は、私たちに大きな哀しみをもたらし、
原発事故は、私たちの心に拭うことのできない不安の影を落としています。
また、余震の恐れや計画停電等により、多くの催しが相次いで中止・自粛され、
哀しみと不安に包まれた私たちの心は一層萎縮しているように思います。
音楽やアートは、私たちの心に活力を与え、
明日への希望をもたらしてくれるものです。
SYNCHRONICITYでは、一人でも多くの方にご来場いただき、
そんな音楽やアートの素晴らしさを思う存分に感じ、楽しんでほしい。
そして、そうすることで被災地への支援としたいと思います。
当日、会場にたくさんの笑顔が溢れることを心より楽しみにしています。
SYNCHRONICITY主宰 麻生潤
今、音楽イベントが出来ること
――SYNCHRONICITYの母体は?
麻生潤(以下、J) : 母体は、EARTHTONEという会社なんです。それも-kikyu-から生まれたものなんだけど、 違いを分かりやすく言うと、-kikyu-はクリエイティヴなことを行うクリエイターのチームで、EARTHTONEは仕事なんです。SYNCHRONICITYに関しては、-kikyu-が企画・運営をして、EARTHTONEが穴持ちをするという役割です。-kikyu-が立ち上がったのが9年前の2002年だったから... 若いな~(笑)。その頃は勢いだけで、単純に価値のあるものだけを届けるというスタンスでやっていましたね。その頃はRESISTANCEというイベントも立ち上げてて、2005年にSYNCHRONICITYが始まりました。
――アーティストは、ずっと今のSYNCHRONICITYのようなラインナップ?
J : 昔からDoggystyleとかGOTH-TRAD等が出ていたりしたんで、ラインは変わってないですね。でも今より反骨精神があったと思います(笑)。「こんな世の中を! 」ってメッセージがあったりね。よく吉祥寺のSTAR PINE’S CAFEでやっていましたね。
――その反骨精神は、何かのきっかけがあって芽生えたんですか?
J : 特に何かあったわけじゃないんだけど、もっと面白いこと出来るでしょ? って力ですかね。元々俺もバンドをやってたんですよ。それが解散した時に、クリエイターの力でもっと生活に活力を与えることが出来るんじゃないかと思ったんだよね。それで始めたのがイベントという形だった。音楽とかアートって日々の生活を潤してくれるし、色々な希望をもたらしてくれると思うんです。それを世の中に届けたいと思ったのが、きっかけですね。
――RESISTANCEが変化して、SYNCHRONICITYになったんですか?
J : いや、もうちょっと大きな規模でやりたいということで、 RESISTANCEとは違うコンセプトのものをやろうってなったんです。SYNCHRONICITYはインディペンデントなものでも分かり易さとか、楽しさを大切にしたいと思ったんです。そこで、代官山UNITで立ち上げました。ここ2~3年は、渋谷のO-EASTで開催しています。
――母体のEARTHTONEはいつ設立したの?
J : -Kikyu-にアート・ディレクター、デザイナーやフィトグラファーなど、多くのクリエイターが集まり出したので、仕事としてまとめようと思って2008年に創設したんです。ウエディング事業もやっていたり。
――へぇ、ウエディング事業って?
J : 主にはウエディング・パーティーのプランニングをやってます。自分達ならではのオリジナル・スタイルなウエディングをやりたいって方向けに、青山のEATS and MEETS Cayというレストランでやってます。また、式場のアルバムやムービー等が高くて質が微妙な物も多いので、持込料等も負担してリーズナブルでハイクオリティなアルバムやムービーも提供しています。ウエディングは唐突かもしれませんが、僕たちに取っては違和感はなくてクリエイティヴを通して喜びや幸せを届けたいというのが根本にあります。ついオーダー以上に親身になってしまうところが、いいところでもあり、大変なところです笑。
――なるほど。そしてSYNCHRONICITYは、横浜という場所で開催するわけだけど、三連結会場とは?
J : これは勝手に名付けちゃった(笑)。横浜ベイホール、ベイサイド横浜、タイクーンコンチネンタルと繋がっているオープンテラスを合わせるとまるで一つの会場の会場のようなんです。野外フェスティバルのステージが屋内になった感じで、キャパシティは3000人くらいあると思います。
――なぜ横浜なんですか?
J : 以前、nbsa+×÷((仮)ALBATRUSの三宅洋平等が主催するアーティスト主動のイベント)が、ここでやってたんです。その時に「このロケーションは素晴らしいな」って思ったんですよね。それぞれの屋内の会場もとてもいいんだけど、オープンテラスがまた解放的ですごく気持ち良いんですよ。野外フェスの良さと屋内の良さってそれぞれあると思うんですけど、この会場はその良さを両方楽しめます。具体的に言うと、野外の解放感と屋内の一体感が両方楽しめます。また、自分達が知っているのって、都市でのライフスタイルじゃないですか。その身近なライフスタイルをSYNCHRONICITYでは大切にしているし、そういう意味でも横浜って自分達に近くて親しみやすいと思ってます。
――このクラスの開催は初めて?
J : 3000人っていう規模は初めてですね。もう大変(笑)。震災や原発の不安がある中での開催なので、どうしてもお客さんが自粛してしまってて、やっぱり人が集まりにくい状況なんです。だからそのムードを解きたくて、今回のSYNCHRONICITYでは「FUTURE TALK SESSION」っていう題で、テラス・ステージにアーティストやライターの方をよんで、トーク・セッションを行おうと思っています。SYNCHRONICITYが、家か ら出るきっかけになってくれればいいと思うんです。さらに、今回出た利益は、全部義援金に回すことにしました。
――思い切りましたね。
J : うん。この震災があって友達と支援物資を持って気仙沼に行ったんだけど、言葉が出なかった。現地の人と話をして、その時に、人と人が集まって出来ることの1つとしてSYNCHRONICITYが存在出来ないか、SYNCHRONICITYの楽しさを通して被災地の為に行動を起こせないかって思ったんですよね。音楽とかアートっていうのは、こういう時期だからこそ表現方法として素晴らしいと思うんです。活力や希望をそこから感じとってほしいんです。
――被災地に行った事は、きっかけになりましたか?
J : 何が必要で、何を求められているのかを知ることも、行って経験しなければ分からないことだったからね。
震災後に音楽フェスが出来ること
――SYNCHRONICITYでは、グリーン・エネルギーを使用しています。このことを詳しく教えてください。
J : グリーン電力っていうのは、温室効果ガスや有害ガスの排出が少なく,環境への負荷が小さい自然エネルギーによって発電された電力、またはそれを選択して購入する仕組みを指します。電力っていうのは送電線を使って送られてくるんだけど、イベントが使用する電力をバイオマスであったり、太陽光であったり、地熱でやろうってなると、まずそういう所に発電を依頼するんです。各々の自然エネルギーの発電をまと めている会社があるんだけど、そこを介してお願いして発電してもらい、イベント側でその電力を購入します。で、実際にイベントの時に発電した分を、東京電力に売る。そうすると東京電力は原発や火力で、その分を発電しなくて済むんです。結果、相対的にグリーン電力でまかなえるっていうことなんです。売電ってあるでしょ?太陽光等で発電して、余った分の電力は電力会社に売れるっていう。イメージとしてはそうい う仕組みになっていて、他のイベントでも使用することができます。
――なるほど。日本には、グリーン・エネルギーが直接会場に運ばれてくるシステムはないのですね。
J : システムそのものはないと思う。でも、送電線の問題で、それこそ全てのイベントで皆がグリーン電力を使うってなれば、そのシステムは整備されると思う。また、スウェーデンは一般の人が使用する電気の種類を選ぶことが出来るんですよ。
――SYNCHRONICITYの場合は、会場に常設である通常の電気代プラス、会場で生まれた電力を計算してグリーン・エネルギーを発電する会社に支払っているってこと?
J : 払っているよ。余分なコストはかかっているよね。それでもやるっていうのは、うちらが使用する電力を東京電力が発電しなくて済むという事実がある。もう1つはグリーン・エネルギーをうちらが率先して使い続けることで「こういうことがあるんだ」っていう気付きを、人に与えられる。特に後者に関しては、意識を変えることに繋がる大事なことだと思うんです。
――一般家庭などで発生する1ヶ月あたりに使用する電気を、グリーン・エネルギーに変えることは出来るんですか?
J : 個々の家庭が使うのは難しいと思いますが、ファンドや基金という形ではあると思う。自分達が使っているのは、ある程度の需要が見込める場合じゃないと出来ないんだよ。だからその会社からは「最低で1000kwhは支払ってくれ」って言われるんだよね。どの電力を使うかで電気代は変わってくるんだけど、値段で言うと1000kwhで大体2万円前後。全ての電力をグリーン電力で使用する場合は、各会場でどれくらいの電気が使用されるか、算出することが必要です。
――他のイベントでグリーン・エネルギーを使用している所ってありますか?
J : ap bank fesを始め色々あると思います。でも音楽系は意外と少なくて、うちらがやろうとした時に言われたのが、「クラブ系のイベントで使うのは初めて」って言われましたね。
――BOROFESTAやSYNCHRONICITYって、ぶっちゃけギリギリのところでやっているじゃないですか? それでもそれを行う理由は?
J : 何度も言いますが、意識を持つって言うことは本当に大切だと思うんです。啓蒙的なことかもしれないけれど、自分達が使うことで「こういうことが出来る」ってアピールしていく。原子力に頼らなくてもいい仕組みを自分達が考えなきゃいけないと思うし、皆で学べるようなきっかけを作っていきたいと思う。
――グリーン・エネルギーの使用以外で、SYNCHRONICITYが他のフェスと違う所を教えてください。
J : SYNCHRONICITYはまだ知られていないアーティストを紹介する場所として存在しています。ストレイテナー、SOIL &"PIMP"SESSIONSや曽我部恵一BANDは多くの方に知られていますよね? でもPOTATOとか、uhnellys、NITORONとかは知名度としてはまだまだ知られていないと思うんだよね。SYNCHRONICITYでは、そういう方に出演してもらうことで色々なアーティストを知ってもらうきっかけを作っているし、逆にその人達がメインを食う位の音楽を見せられているなと思いますね。
――どんどんポップになっていると思うんですけど、どう思います?
J : その意識はないし、音楽にジャンルはないでしょ。考えているのは、出会ったことのないものを出会って貰うことなんだよね。The Mirrazとかストレイテナーって今までSYNCHRONICITYではなかったんですよ。ROCKIN’ON JAPANとかならあると思うんだけど。SYNCHRONICITYではないし、びっくりした方もいると思うんです。でもそんなふうに、会ったことのないアーティストと出会ってもらうことはとても大切だと思います。出会いと感動っていうのは凄い大事にしているからね。でもジャンルを横断する事はリスキーでもある。だから、感動を抜きにしてこういうことは出来ないですよ。
――震災後にSYNCHRONICITYを行うにあたって、心の変化はありました?
J : 変わってないというか、むしろ、確信は更に強くなりましたね。今はもっと感動してほしいと思うし、楽しんで、幸せになって、喜んでもらいたい気持ちがあります。ポジティブで前向きな活力で、日々の辛いことを乗り越えていってほしいです。SYNCHRONICITYを、そういうエネルギーの源にしてほしい。ジャンルがクロスオーヴァーする面白さも感じてほしいし、その日たまたま出会った人が凄い面白くて、その後に付き合ってしまってもいいしね。普段巡り会わないような感動がこの場にはあると思います。その楽しみ方を伝える役割が僕たちにはあると思うんです。
――SYNCHRONICITYは、更に大きな規模を目指していますか? 例えば10000人規模とか。
J : ないですね。規模が大きくても伝わらなきゃ意味がないと思うんです。SYNCHRONICITYは、究極のシンクロ感だと思っているんだよね。奇跡のようなもの。言葉にするのはちょっとおこがましいけれど、SYNCHRONICITYでは、まるで奇跡とも呼べるような感動と出会いを届けたいと思っています。いつもそれを目指して取り組んでるんですけど、それが届けられる規模っていうのは5000人ぐらいまでじゃないかなと 思うんですよね。今のところ規模に関しては、それ以上のイメージはしてないね。
――震災後、音楽フェスは、何が出来るのでしょうか?
J : グリーン・エネルギーは、震災後多くの人が反応してくれるんです。そこで俺たちはこれが未来に、どう組み込まれていくのかを考えることも大事だと思っています。そして伝えながら、もっと未来のイベントのヴィジョンを見せることが出来ると思うんです。あと、やっぱり音楽やアートっていうのはマインドに凄い訴えかけてくれる。それが最高だし、生きてて良かったと感じさせてくれるものなんです。音楽も電気も 触れることは出来ないじゃないですか。でもリアルに存在するんだよね。それを伝えていきたいんです。
――音楽は無力じゃないと?
J : 音楽は無力じゃないよ。音楽を失ったら生きていく上での活力が失われてしまうと思う。音楽やアートが必要とされていることをもっと知ってほしいね。地震があった時、俺、凄い落ち込んだんだよね。そこで曽我部(恵一)さんの『PINK』を聞いた時に、泣いちゃったんだよ。皆ギリギリの状態だと思うから、今こそ活力を与えてくれるものに触れてほしいね。それが未来のエネルギーになるよ。
SYNCHRONICITY'11への出演者の作品はこちら!
SYNCHRONICITYとは
CONSEPT
SYNCHRONICITYとは、「未来へつなぐ出会いと感動」をコンセプトに、クリエイティヴ・チーム「-kikyu-」が開催する都市型アート・フェスティバル。音楽を中心に、ライヴ・ペインティング、映像、ダンス・パフォーマンス等、ジャンルを超え様々なアートが交わる空間を通して、未来へ続く前向きなエネルギーを生み出すことを目的に開催しています。また、SYNCHRONICITYでは、 環境への負荷を極力与えないという目的に加え、自然環境の素晴らしさ、生きることの大切さを伝えるために、グリーン電力(※)を使用しています。自然は優しさや豊かさを教え、心を潤してくれるものです。その自然への想いを形にしていくことは、家族や大切な人への想いを形にするようなもの。その想いと行動が未来へ向けての大切な一つと考えています。クラブ、ライヴ・ハウスにてグリーン電力を使用したのはSYNCHRONICITYが初めて。
※グリーン電力 : 風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの環境への負荷を極力与えない自然エネルギーによって発電された電力。
-Kikyu-(クリエイティブ・チーム)
「楽しさの、一歩先へ」をテーマに2002年に結成されたクリエイター・チーム。自由の象徴としての「気球」、願い求めるというベクトルを指す「希求」。その二つの意味を合わせ持ち、イベント制作をベースとしながら、映像、デザイン等幅広いクリエイティヴ・ワークを手がける。オーガナイザーを始め、トラック・メイカー、VJ、ムービー・ディレクター、フォトグラファー等様々なクリエイターが在籍。未来へ向けた様々なクリエイションを発信し続けている。
他のフェス特集ページ
カクバリズム VS ボロフェスタ
https://ototoy.jp/feature/20101015
VS退屈。何故東京ボアダムは必要なのか?
https://ototoy.jp/feature/20100918
FUJI ROCK FESTIVAL'09
https://ototoy.jp/feature/20090714