京都発、2ピースで紡がれるシューゲイズの慈雨ーーメシアと人人、アルバム配信&インタヴュー掲載!
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京都出身の北山敬将(Vo.Gt) と福田夏子(Vo.Dr) によるシューゲイザー・バンド、メシアと人人 (めしあとにんじん) 。2人組、変わっているバンド名、名乗る音楽性は「はんなり相撲 ドリームノイズポップ」。そんな突っ込みどころ満載の彼らが、ボロフェスタへの出演や全国の地方公演を経て、2016年1月13日(水) に初全国流通となるアルバム、『最後の悪あがき』をリリース。バンドが2人となった秘話から今回のアルバム制作の舞台裏まで、全国流通前夜に大いに語ってもらった。
メシアと人人 / 最後の悪あがき
【配信形態】
16bit/44.1kHz(WAV / FLAC / ALAC) / AAC / MP3
【価格】
単曲 : 270円(税込) まとめ購入 : 1620円(税込)
【収録曲】
01. お金
02. あいうえ
03. 待って
04. 牛乳
05. 悪あがき
06. おんなし
07. おばけ
08. ルーパー
09. ホームセンター
INTERVIEW : メシアと人人
今年で15周年を迎える京都を代表する音楽フェス、ボロフェスタ! そんなボロフェスタの今を彩るバンドが、メシアと人人だ。2人組で、音がばかでかいくせに、ええメロディを唄う。そして歌詞がめっちゃ奥ゆかしい。彼らの音楽からは、確実に京都の香りがする。大好きなバンドです。
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎(BOROFESTA/Limited Express (has gone?))
写真 : 岡安いつ美
ある日いきなりベースの奴が親に強制送還させられて、軟禁されたんです。
ーーまずは結成のいきさつから教えてもらえますか?
北山敬将 (以下、北山) : 立命館大学にフォークソング同好会KEAKSってサークルがあって、そこで出会いました。
福田夏子 (以下、なつこ) : 1年生の夏ごろに取りあえず組もうってなったんですけど、ほぼ初心者。サークル内だけでやるライヴでコピー・バンドをしていて、自分たちの曲を創りはじめたのはその年の冬くらいからですね。
ーー何のコピーを?
なつこ : THEE MICHELLE GUN ELEPHANTです。
ーー北山くんが歌っていたの?
北山 : いや、ヴォーカルがいました。オリジナルを創りはじめるようになるころに、ベース、ギター、ドラムの3人になって。
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ーーそのころはどんな音楽を?
北山 : 漠然としていましたけど、ポップな音楽をやろうと。サイケデリックなところも入れたいけど、ポップであることをできるだけ推していきたいと思っていました。耳に残りやすい音楽というか、1回聴いただけで頭に残るような音楽。メロディも歌詞も。ポップス、童謡的な音楽を創りたかったんです。
ーーその意識は、なつこさんも一緒ですか?
なつこ : そうですね。歌メインで覚えられるような音楽が創りたかったです。
ーーベーシストが抜けたのはいつごろですか?
北山 : ある日いきなりベースの奴が親に強制送還させられて、軟禁されたんです。
ーーえ?
北山 : ライヴの前日の夜中に急に「名古屋から出られない」って連絡があって、実家でめちゃくちゃ怒られて軟禁されていると。僕ら次の日から京都で2日連続でライヴだったんですけど、とりあえず2人でやるしかないなっていう状況に追い込まれまして。それでとにかく練習なしでやって。
ーー練習無しで! 上手くいきました?
北山 : あんまできてないですけど、どうにか乗り切りました(笑)。
ーーベースの彼が続けられないことに対しては、どんな気持ちでしたか?
北山 : 急すぎてしょうがないっていうのはありましたね。「ごめんどうしても無理」って感じやったから、怒るってことでもなく。「どうしようもないな」「でもライヴいっぱい決まってるな…」ってなって。
2人でできることを考えていく中で自然と今の感じの曲もできていった
ーーそこから覚悟を決めてふたりでやろうってなった?
北山 : 最初はベースを入れようかなって思ったんですけど、ライヴがとにかくめっちゃ決まってたから、それどころじゃないなって。
ーーなんでそんなにライヴを入れていたんですか?
北山 : いろんなところに出たい、いろんな人とライヴをしたいっていうのがあって。それでいろんなライヴハウスにデモを送ってて、その流れでライヴハウスに呼ばれたり、知り合い伝いに出ることになったりしてたころだったんです。
なつこ : あと初めての自主企画が1ヶ月後に決まっていて。その企画までの間にも5本くらいあったんですよ。
北山 : とにかくいっぱいあったな。
ーーとにかく全部出て、ノルマも払ってってスタンスだったんだ。
北山 : 恥ずかしい話ですが、お客さん呼べなくてノルマはできる限り減らしてもらってましたけど、結構普通に払ってましたね。
ーーそんな楽な額でもないですよね?
北山 : そうですね。ベースが抜けたのは、そういう理由もありましたね。
ーーやむを得ず始まった2人編成から、どうやっていまの音楽性を確立していったんですか?
北山 : ベースがいなくなって、当然それを補うようなギターやドラムを考えなければいけなくなりましたけど、他の2人組のバンドを参考にしようっていうのはなかったんです。2人でできることを考えていく中で自然と今の感じの曲もできていったんで、そのままシンプルに、自由にやっていました。
ーー3人から2人になることで気をつけたことはありますか?
北山 : ベースが今まで保っていた低音や曲の輪郭を補うこと。あとコードは、今まで使ってたコードとは全然違うものを創らないとあかんなあと。だから色々自分でコードを考えたりする作業はありましたね。2人組って、リズムがすごく面白いバンドが多いじゃないですか。あふりらんぽとかKIRIHITOとか。基本的に歌がどうというよりも、強烈なリズムというか。まあそんなこともないけど。そういうバンドも凄い格好良いですけど、僕らは面白いリズムを出すことができるタイプでもないと思ったし、3人でやっていたころからのポップさ、歌メロを重視してやっていくには、単音を弾くんじゃなくて、どうにかしてコードを。それを探していって今に至る感じですね。
ーーなるほど。やっぱり歌が大事なんですね。なつこさんはどうですか?
なつこ : 低音を補うってなったときに、リズムも音量もベースに頼っていたなって思うところがあって。ベースが抜けたことで、ギターもアンプが増えたので、低音とかギターの音が大きくてドラムが聴こえないってなったので、とにかく音を大きく出そうって思いました。あとベースのメロディー・ラインが減った分、フレーズなり、もうちょっとドラムを面白くせなあかんなあとも。音に隙間ができた分、ドラムで動きをださないとなと。
英語は喋れへんし難しいから日本語にしよって決めた感じなので、そこまで誰かを意識したことはないですね。
ーーちなみに2人が影響を受けた音楽は?
北山 : ぼくは洋楽全般ですね。ロック、パンク。1番はじめはニルヴァーナかな。そこからめちゃくちゃ色々聴きましたね。高校が、洋楽が好きな人が集まっている変な高校で、みんなで共有してました。プログレ好きな人はプログレをめっちゃ聴いていて、パンク好きな人はパンクをすごい聴いてて。それでみんながCDをめっちゃ貸しあっていました。ただ、日本の音楽を全く聴いてなくて、大学に入ると大学の先輩が、日本のインディーとか日本語のロックとかをよく知っていて、大学時代にはその辺りをよく聴いていましたね。
なつこ : 私は逆に中・高と日本のバンドしか聴いていなくて、バンドを聴き始めたのはELLEGARDENとか。高校生のときにインディーズのバンドを聴くようになったんですけど、ちょうど東京ではandymoriが盛り上がっていた頃。あと当時神戸に住んでいて、ライヴ・ハウスに行くようになって、踊ってばかりの国とかを観にいってました。そのときに関西のライヴ・ハウスに出ているバンドを知るようになり、自分でバンドをやりはじめたときには、神戸でもやるようになりました。
北山 : 日本のバンドで昔からずっと聴いてたなーっていうのはゆらゆら帝国とかBLANKEY JET CITYとかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTですけど、あんまり影響を受けてないと思っているんですよね。さらに最近よく「ナンバーガールとかbloodthirsty butchersとか、よう聴いてる? 」って言われるんです! 全く聴いてないんですけどね(笑)。言われるようになってからアルバム1枚聴いてみたりした程度。
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ーーそうなんですか。今作を聴いて、僕も向井(秀徳)さんや吉村(秀樹)さんの影響があるんじゃないかと思いました。
北山 : ほんまですか? でも当然ピクシーズとかはめちゃくちゃ聴いてたり、洋楽のハードコアを色々聴いてたりはしていて。その中で自分がバンドを始めるときに、英語は喋れへんし難しいから日本語にしよって決めた感じなので、そこまで誰かを意識したことはないですね。
本当にどうでもいいこと、生活の中におけるどうでもいいことを歌っている。
ーー今回のアルバムのレコーディングは、どこで?
北山 : 京都のmusic studio SIMPOで。ライヴとは違うものにしたいなっていうのがコンセプトとしてありました。
ーー具体的な違いは?
北山 : ライヴはギターとドラムだけでやっているんで、それ以外の楽器を入れること。あと、ライヴでは音の大きさとか迫力の良さがあると思うんですけど、そこを抑えて。いろんな人から「ライヴっぽい雑な感じの音源もいいんじゃないか」って言われたんですけど、それだったらライヴ盤でいいのかなと思って。普通のレコーディング・スタジオで録るし、そもそもレコーディングもやったことがなかったので、そういうものを創ってみたいなっていうのがあって。
ーー「悪あがき」とかキーボードが入ってますもんね? ライヴよりカラフルなアルバムだと思いました。
北山 : それはエンジニアの小泉(大輔)さんとも話して、できる限りバラエティ豊かにしようと。そんなに統一性は持たさずに、1曲1曲バラバラな感じでやろうということにしたんです。ライヴでやらない曲とかも入れて、全体を通してポップなイメージになるよう意識しました。
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ーーなつこさんのヴォーカルが多いのもカラフルに聴こえる一因だと思うんですが、最初からツイン・ヴォーカルでやっていたんですか?
北山 : 3人編成のときから、ドラムが歌う曲とかベースが歌う曲とかあったんです。あんまり僕歌いたくなかったんで。
ーーメイン・ヴォーカルという意識はない?
北山 : 全然ないです。そうじゃないほうがいいです。
ーー歌詞は誰が?
北山 : 僕です。別に誰かに影響を与えるとか、誰かのためにとか、そういうことは歌っていなくて。本当にどうでもいいこと、生活の中におけるどうでもいいことを歌っている。
ーー北山くん、大人が嫌いですか? 「オッサン何か変わったのか」「ベロベロでヘラヘラしてるクズ」「お前馬鹿か? 」等の歌詞を読んで、疎んじているように感じたのですが。
北山 : あー、そうですかね。大人全般が嫌いかもしれないですね。
ーーどういうところが?
北山 : 経験しているところですかね。みんなバラバラにいろんな経験をして、いろいろ知りすぎ。ちゃんと知らんこともあるやろうけど、知りすぎじゃないと生きていけない感じというか…… めっちゃ子供っぽい発言ですけど(笑)。
ーーそれは大人への憧れから出てきたものなのか、中2病的なものなのか、それとも反抗心から出てきたものなのか、どれなのでしょうか。
北山 : それだったら絶対に憧れじゃないですかね。反発なのかもしれんけど。なんていうのかな…… 大人は偉いけどめっちゃアホやなというか、人間全体的にバカやなって。全員弱いなあ、力がないなあってイメージで曲にしてます。結局中2ということかもしれませんね。
ーー弱いっていうのは?
北山 : 人間とか、もっと言えば動物とか全般、結局何にも勝ててないなって。別に勝ちにいってないかもしれないですけど。
初めて聴く人には自己紹介になったと思います。
ーー「待って」の歌詞では、それを如実に感じますね。
北山 : ニュースとか見ていると捕まる人がおって、捕まる人やその周りの人には色々あるけど、それ以外の人にはあんまり関係ない。なのにその話を延々としている。別にどういう人であろうと、どういう状況であろうと、結局は皆死ぬんちゃうかなって思うんですよね。だから誰が嫌とかそういうことでもなくて、生活の中でどうにもならないところへのイメージがすごく強くあるんだと思います。
ーーなつこちゃんは自分にとってこのアルバムはどんなアルバムになりましたか?
なつこ : 今回、前のデモに入っていた曲とかもあって(「ホームセンター」「お金」「あいうえ」「おばけ」)。よくライヴでやる曲も入っているし、ライヴを見てくれてる人にはライヴとは違う感じをみせられる、初めて聴く人には自己紹介になったと思います。自分的には初めてのレコーディングだったので、違う楽器を入れたり、とにかく学びの時間でした。
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ーーこれからどんな活動をしていきたいですか。
北山 : 活動的には京都を中心に全国で活動したい。あとやっぱり昔から海外でライヴをしていきたいなと考えてます。音楽的にも成長したくて、シンセとかサンプラーとかを増やしていこうかなって考えています。
ーーぜひ海外でやってほしいです。あと、二人は細かく全国をライヴで回りますよね。そのやり方って今はそんなに主流じゃない。インターネットが普及してPVや音源を見聞きできるように皆が頭を使ってて、ちゃんと地方を回ってファンを作っていくっていうのはインディーでも少なくなってきてると思うんです。そんな中で、メシアは地道に活動していて素晴らしい。
北山 : 今までいっぱいライヴをやってきた中で知り合った全国のバンドの人たちが、各地でイベントを組んでくれるんです。自分達がやってきたことが繋がっていくのはすごくいいことだと思っているんで、スピードは遅いかもしれないですけど、やっててよかったなって思います。イベント組んでもらえるの、嬉しいですし。
ーー一方で、現在の活動拠点の京都ではどんな活動をしたいと思っていますか?
北山 : 京都でもワンマンができるくらいお客さんを増やしたいって思います。お客さんも仲のいいバンドも大阪のほうが多いんですよね。今までシーンを作りたいっていうのはあんまり考えたことはなかったですけど、京都でもめっちゃ頑張って盛り上げてる人たちがいっぱいいるから、僕らもバンド自身とバンド周りを盛り上げていきたいですね。
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京都のシンガー・ソングライター、長谷川健一の2年ぶりにリリースされたオリジナル・アルバム。ファースト・アルバム『震える牙、震える水』、ジム・オルークがプロディースしたセカンド・アルバム『423』、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)が関わって制作されたカヴァー・アルバム『my favorite things』を経て、制作された本作はセルフ・プロデュース作であり、バンド・サウンドを多く取り入れている。多くの才能を触れ、一段と柔らかさと力強さが増した彼の歌声は必聴。
V.A. / BOROFESTA 2014 心の癒し AL
まずはフリー・ダウンロード!
ボロフェスタのコンセプト、知名度の有無やジャンルに関係なく主催者が「観たい! 呼びたい!」と思うアーティストのみをブッキング。たしかに名前の知らないバンドもちらほら… という方も少なくないはず。でも実際どんなやねん! そんな皆様に向けてオリジナルコンピレーションアルバムを配信致します! 収録バンドは何と20組。もちろん既にご存知の皆様の予習にも、観に行けないあなたの心の癒しにも、迷ってるあの子の決め手にも! (メシアと人人 Dr.福田夏子)
V.A. / 生き埋めVA
2013年末に始動した京都発INDIE/PUNKレーベル、生き埋めレコーズから第1弾リリースとして「生き埋めVA」が登場! いろんな町の僕たち私たちが参加! 今作のために書き下ろされた曲も多数収録! アンテナを張っている方は是非チェックしてください!
LIVE INFORMATION
~「最後の悪あがき」発売記念 『悪いツアー』~
「田舎者」
2016年1月23日(土)@広島 puvlicbar ROOTZ
w/ 〇菌(福岡) / クラムラッツ(山口) / waveofmutilation(波) / ウサギバニーボーイ / オカダノリコ+ウサギバニーボーイ
ケンカキック企画「コズミックスペースVol.2」
2016年1月24日(日)@高知 カオティックノイズ
w/ FIGHT CLUB / THE BROKEN HEARTS CLUB / 薄力小麦子 / ケンカキック
「colours」
2016年1月31日(日)@愛媛 松山 Bar Caezar
w/ throma / スナッチハンター
[DJ] Jeremy (Let's Find Out!) / kou (Check!) / Bun
2016年2月27日(土)@福岡 薬院UTERO
おかる presents EPOCH “メシアと人人「悪いツアー」高松篇”
2016年3月5日(土)@香川 髙松TOONICE
w/ ロンリー (岡山) / ヤングパーソンクラブ (徳島) / MCバタケとDJアパッチ / and more !!!
2016年3月11日(金)@北海道 札幌SPIRITUAL LOUNGE
2016年3月12日(土)@北海道 札幌SOUND CRUE
2016年3月27日(日)@京都 METRO
2016年4月2日(土)@滋賀 酒游舘
PROFILE
メシアと人人
京都発男女2人組ドリーム・ノイズ・ポップ・バンド。