下山(GEZAN)が時代を変える!? 2ndアルバム『凸-DECO-』誕生!!!
鬼神のごときパフォーマンスで、異質な輝きを放つロック・バンド、下山(GEZAN)の2ndフル・アルバム『凸-DECO-』がリリースされた。明らかに前作とは異なる本作。死生観、焦燥感、それを振り切るかのように疾走する下山のサウンド。フロントマンのマヒトゥ・ザ・ピーポーは、果たして本作にどんな思いをこめたのだろうか? 何を求めているのだろうか? OTOTOYでは編集長、飯田仁一郎がインタヴューで迫る。
下山(GEZAN) / 凸-DECO-
【価格】
WAV、mp3とも : 1,800円 (単曲は各200円)mp3
【Track List】
01. 瘡蓋と爆撃機
02. 共振
03. 八月のメフィストと
04. MAN 麻疹
05. ストリップチーズ
06. ぴかりのヒビ
07. あぶら無知の涙
08. 癲癇する大脳たち
09. となりのベジタリアン
10. 蒼白のとおく
11. 2013年12月・九十九里浜にて [Bonus Track]
INTERVIEW : マヒトゥ・ザ・ピーポー
大阪で2年程前に一緒にやった下山は、今の下山ではない。言葉は前に、音圧はしっかりと、爆音はそのままに…。この変化は、同じバンドマンとして、とても美しくクールだ。今回、マヒトゥ・ザ・ピーポーにインタヴューする機会を得た。うつむきながら言葉を紡ぐその眼光の先に見えているものは、予想していたよりずっと遠くだ。
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎(Limited Express (has gone?))
構成 : 長島大輔
下山は時代を変えるバンドだと思ってる
ーー今回のアルバムは前作から本当に大きく変化したよね。何よりちゃんと歌を聴かせようとしてる。マヒトの中で何が変わったんだろう?
マヒトゥ・ザ・ピーポー (以下、マヒト) : うーん、窓をひとつ開けた感じはしますね。
ーーと言うと?
マヒト : 外のことに興味が出てきたんですよ。それは人と関わるってことも含めて。前の作品までは、録音からジャケットまで全部自分たちでやることが一番クールだと思ってたけど、人と関わって、片足を預けながらやることに面白さを感じはじめてるんでしょうね。
ーーそれはすごく大きな変化だね。
マヒト : 前のアルバムって、聴く人の鼓膜を傷つけようとしてたし、「それがコミュニケーションだろ」っていう感覚があったんですよね。でも今回はそういうのが自然と削ぎ落ちて、音楽そのものの純度だけが残ったというか。
ーーそうか。今作は初めて東京で作ったアルバムですよね。その影響はある?
マヒト : いや、東京というのはあまりキーワードにはならないかな。ただ、東京… というか日本って、ほとんどごまかしと勘違いからできてると思ってて。なぜ下山が外に向かってアクセスしはじめているか、その理由を強いて挙げるとしたら、人のそういう部分を剥ぎ取りたいっていう思いがあるからかもしれない。
ーーなるほどね。マヒトは「東京はキーワードじゃない」って言うけど、環境の変化はバンドにとって重要だと思うから、もう少しだけその部分を訊かせてほしい。東京に来て具体的に何が変わりましたか?
マヒト : まあ、アイディアの面で刺激を受けることもあったし、逆に雑念みたいなものが何倍にも膨れ上がったところもありますよ。
ーー雑念っていうのはやっぱり膨大な情報?
マヒト : 情報もそうだし、さっきも言ったけど、ごまかしと勘違いばかりってところですよね。子供っぽい言い方だけど、「汚ねえな」って思うことも多かったから。
ーーそれは政治的なことに対して?
マヒト : 政治的なことも含めてですけど、音楽業界みたいなものに対してもそう思いました。でもそれは一個の事実にすぎないんで、べつにそれに向けてプロテスト・ソング的なものを書きたいとは思わない。むしろ、そういう光景を見れば見るほど、さて自分自身はどうするんだっていう方向に向かいましたね。下山ってそういうバンドなんですよ。
ーー周囲を変えようとするんじゃなくてね。
マヒト : 個人に立ち返ることがすごく重要になった気がするんですよ。いろんな主張を掲げて世の中を変えようとしてる人っていっぱいいて、それはそれでぜんぜん否定しないんですけど、自分にとっては、たとえば"朝カーテンの隙間から差し込んでくる光"とか、そういうもののほうが大切に思えるというか。極端な言い方をすれば、明日地球が滅びますってなっても、俺はそのニュースを無視しますね。コーヒーでも淹れてギター持って歌ってるんじゃないかな。
ーー世界がどうなろうと知らないと。ただ、今回のアルバムからは「これで世界を変えてやるぜ」的なエネルギーも感じたけどね。
マヒト : どちらかと言えば周囲を無視することにエネルギーを使ってるし、そのエネルギーが下山を動かしてる気がする。でもそれは社会を遮断してるんじゃなくて、それもひとつの関係の仕方っていうか。そういう存在が増えれば、それはそれでひとつの時代を作り得ると思う。
ーーなるほどね。
マヒト : 下山は時代を変えるバンドだと思ってるんですけど、それは「みんな俺らについて来い!」みたいなやり方じゃないんですよ。もっと個人個人に問いかけて、それが広がったときにいつのまにか何かが変わっているというか。べつに俺らのこと嫌おうが、こんなの違うって思おうが、それぞれの人の中で何かしらの変化があるんだったら有意義な存在だと思います。
ーー周囲を無視しながら、それでも時代を変えようとしているわけだ。今回のアルバムって、前作までの刺々しさを残しながらも、しっかり歌を聴かせようとしてる印象だったけど、その理由が分かった気がします。チープな質問かもしれないけど、マヒトは何に向かって歌ってるの?
マヒト : 太陽ですかね。うん。
ーー太陽… そうか。
マヒト : 太陽に当たるとそれが全部下に落ちるんですよ。だからより遠くまで飛ばせるんですよね。
アルバムのムードに曲が吸い寄せられていった
ーーメンバーのことについて訊かせてください。アルバムの1曲目「瘡蓋と爆撃機」に〈この4人なら行けるよと信じて〉って歌詞が出てくるよね。マヒトは下山のメンバーをどう見てるの?
マヒト : いいメンバーだと思いますよ。それはプレイが上手いとか下手とかじゃなくて。やっぱり楽譜に現れないところにバンドのよさってあると思うんで。もちろん好き嫌いはあるでしょうけど、いいバンドかそうじゃないかって言ったら、誰が見てもいいバンドだと思いますけどね。
ーーそれって下山を組んだ2009年くらいから変わらない?
マヒト : 変わらないですね。
ーーマヒトのアイディアとか感覚にみんなが合わせるという感じ?
マヒト : 合わせるっていう感じはないですよ。最初から一緒に変わっていく過程を共有してきましたからね。
ーーそれはどういうふうに共有したの?
マヒト : モーターヘッドを爆音で聴きながら、「これ最高だねえ」って言うとか、ライヴを観に行って、「どこがいいんだよこのクソバンド」って文句言いながら帰るとか、そういうシンプルなことですよ。でも、そういう時間を共有するのが一番だと思います。そういうことの積み重ねって、楽譜には変換できないバンドの力になると思うんですよね。
ーー今回、選曲とかもメンバー全員でやりました?
マヒト : そうですね。でも、音楽の意志みたいなものを尊重した気はします。ライヴで一番演奏してる曲を入れたわけでもないし、大阪から出るときに最後のワンマンでやったすごい大事な曲も入ってないし。アルバムのムードに曲が吸い寄せられていったような感じです。
ーーなるほど。今回は録音に中村宗一郎さん(※ゆらゆら帝国、ギターウルフなどを手掛けたエンジニア)を迎えてるよね。やってみてどうでした?
ーーははははは(笑)。そうなんだ。
マヒト : そういう感じの人なんですけど、だからこそ「このテイクかっこいいねえ」っていう一言がぐっと効いてくるっていうか。ダメなものはダメって言ってくるんで、「ギターウルフとかBORISにこれ以上出してって言われても無理だよ」みたいなことを言われたのは嬉しかったな。
ーーけっこう時間かけて録ったの?
マヒト : ミックスと合わせて30日くらいかかっちゃって、「普通にやったら相当の額になるよ」って言われちゃいましたね(笑)。
ーーそんなに時間かけたんだ(笑)。
マヒト : だから売れて恩返ししなきゃなって。
最高傑作だと思いますよ
ーー「売れて恩返し」ってワードが出たけど、下山は”売れる”ってことをどんなふうに捉えてる?
マヒト : いろんな人に聴かれるって意味では嬉しいことですけど、そこで変な焦り方はしたくないですよね。だってもともとメンバーが集まって、「さあ一緒にやるぞ」ってなったときの気持ちって、ものすごく純粋なものじゃないですか。やっぱそこが失われるとクリエイティヴなものは生まれなくなりますよね。もちろん値段のついた商品を出すわけだから、セールスも切り離せない部分ではあるんですけど、そこが先行していくとただの会社員みたいになっちゃうから。いや、会社員を否定するわけじゃないけど。
ーーなるほどね。
マヒト : 音楽には健康的なままでいてほしいです。
ーー売ることは目標にしてない?
マヒト : 数字っていろんなものを計る目安としてありますけど、もともと音楽って個人の領域に属してると思うんで、たった1人の人生でも変えることができたらそのバンドは素敵なバンドなんですよ。その数が増えるのは単純に嬉しいけど、目標とは違いますよね。まあ最終的に人気出ちゃうと思いますけどね(笑)。
ーーもちろん(笑)。最後に、この『凸-DECO-』っていうアルバム、下山としてはどう評価してますか?
マヒト : 最高傑作だと思いますよ。
ーーでも本当に大きく変わったよね。
マヒト : この先もどんどん変わります。過去なんてそんなに大切なことだと思わないんで、作品としてこの瞬間を残すことはできたし、あとはおのずと変わっていくでしょう。
ーー「八月のメフィストと」では〈思い出はただの死体さ〉って歌ってますね。
マヒト : そうですね。びっくりするぐらい人って変わりますからね。バンドだって信用しちゃいけない。でも少なくとも今思ってることは誰が何と言おうと正しいんで、逆に言えば今を信用しろってことですね。
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LIVE INFORMATION
下山(GEZAN) & Paradise ダブルレコ発ライブ『HOMESICK17』
2014年2月9日(日)@京都METRO
出演 : 下山(Gezan) / Paradise / ボーイズヤング / MILK SOUND:dj colaboy
時間 : 開場 18:00 開演 ???
料金 : 予約 ¥2,000 当日 ¥2,500
問い合わせ : 京都METRO (http://www.metro.ne.jp/)
オフィシャル・ページ予約 : info@gezan.net※「件名に日付」「本文にお名前・枚数」を明記してください
下山(GEZAN)2nd FULL ALBUM『凸-DECO-』レコ発ツアー初日
2014年2月11日(火・祝)@下北沢GARDEN
出演 : 下山(Gezan) / NATSUMEN / 漁港
時間 : 開演 17:30 開場 18:00
料金 : 予約 ¥2,800
問い合わせ : HOT STUFF PROMOTION (03-5720-9999 / http://www.red-hot.ne.jp/)
オフィシャル・ページ予約 : info@gezan.net※「件名に日付」「本文にお名前・枚数」を明記してください
下山(GEZAN)2nd FULL ALBUM『凸-DECO-』レコ発ツアー
2014年2月13日(木)@札幌COLONY
出演 : 下山(Gezan) / The coridras / とびだせ!おともだち and more!!!
時間 : 開演 18:30 開場 19:00
料金 : 予約 ¥1,900
問い合わせ : 札幌COLONY(http://www.colony6.com/)
『凸-DECO-』レコ発、東名阪ワンマン・ツアー
3月30日(日) 心斎橋 CONPASS (大阪)
4月3日(木) 名古屋アポロベイス (愛知)
4月5日(土) 新代田FEVER (東京)
PROFILE
下山
2009年の夏にライヴ活動を開始。2012年3月7日、自主レーベル「十三月の甲虫」を立ち上げ、1stフル・アルバム『かつて うた といわれたそれ』をリリースする。2012年夏、〈FUJI ROCK'12 ROOKIE A GO GO〉に出演し、その足で東京に拠点を移し、都内16ヶ所、16日連続ライヴ〈侵蝕の赤い十六日〉を敢行する。2012年12月12日、ライヴ盤&ドキュメントDVD2枚組み『LIVE 2012・大阪 / 侵蝕の赤い十六日・東京』をリリースする。2013年夏、踊ってばかりの国とのスプリット・シングルをライヴ会場限定で発売。「8月のメフィストと」を収録し、同時にPVも公開される。2014年2月には2ndフルアルバム『凸-DECO-』を発売。全国ツアー、そしてSXSW出演を含むアメリカ・ツアーを敢行する。