クレモンティーヌが民謡を、AUN J クラシック・オーケストラとの異色コラボ作をハイレゾで
「和楽器を、もっとわかりやすく、かっこよく、シンプルに!」をコンセプトに世界を股にかけて活躍する和楽器ユニット、AUN Jクラシック・オーケストラがこのたび異色のコラボレーション作品を発表した。コラボ相手はサントリー「ALL-FREE」のTVCMに起用された「天才バカボン」のボッサ・カヴァーで日本でもおなじみ、フランスのシンガー・ソングライター、クレモンティーヌである。
日本の文化へ関心の高いクレモンティーヌがAUN Jクラシック・オーケストラの演奏に感銘を受け、日本とフランスの音楽文化を融合させ、伝統と文化の良さを再発見すべく制作された本作品。「桃太郎」をはじめ、秋田の「ドンパン節」、沖縄の「てぃんさぐぬ花」など、各地の民謡が両者の手によって新たに生まれ変わった楽曲が収録。本作をOTOTOYではハイレゾ配信! クレモンティーヌの歌声、和楽器の鳴り、その響きを最大限捉えた音質にて心ゆくまで楽しんでほしい。
クレモンティーヌ meets AUN J クラシック・オーケストラ / JAPON
【Track List】
01. JAPON -opening-
02. Allez MOMOTARO-「桃太郎」より
03. DONPAN Rhapsody-「ドンパン節」より
04. SHOJOJI-apres-midi-「証城寺の狸囃子」より
05. SHOJOJI -soiree-「証城寺の狸囃子」より
06. Tinsagunu Fleur -「てぃんさぐぬ花」より
07. I-TSU-KI -「五木の子守唄」より
08. YOSAKOI -「よさこい鳴子踊り」より
09. DONPAN Rhapsody -「ドンパン節」より(instrumental)
【配信形態】
[左]24bit/48kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
[右]16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
※ファイル形式について
※ハイレゾとは?
【配信価格】
[左]24bit/48kHz : 単曲 324円(税込) / アルバム 1,944円(税込)
[右]16bit/44.1kHz : 単曲 250円(税込) / アルバム 1,500円(税込)
AAC / MP3 : 単曲 300円(税込) / アルバム 1,800円(税込)
INTERVIEW : 山野安珠美(AUN J クラシック・オーケストラ)
フランスのクレモンティーヌと日本のAUN J クラシック・オーケストラが、共鳴する。そのニュースを聴いた時は、あまりにも意外で、戸惑ってしまった。でも、音を聴くと、彼女たちが、なぜ"クレモンティーヌ meets AUN J クラシック・オーケストラ"というダブル・ネームにしたのかがわかる。このアルバムは、見事に対峙し、そして各国を越境している。首謀者である山野安珠美(AUN J クラシック・オーケストラ)に話を訊いた。
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
構成 : 小山和歌子 写真 : 大橋祐希
わたしたちのステージは、和楽器の固定観念に囚われず、みなさんが今まで思っていたものとは全然違う形ではあると思う
――山野さんは、本作『JAPON』の企画者なのでしょうか?
山野安珠美(以下:山野):企画者とはちょっと違うのですが、プロジェクト・リーダーという名前でみんなをまとめる係です。今回は、企画自体がとても大きなものだったので、リーダーと言いつつもみんなに頼りながら、それぞれの思いを形にできたらなという気持ちで取り組ませていただきました。
――なるほど。ちなみになぜクレモンティーヌとコラボレーションすることになったのでしょう?
山野 : クレモンティーヌさんは、日本の文化を取り入れた何かをやりたいと思っていらしたようです。AUN Jクラシック・オーケストラ(以下、AUN J)は、日本だけじゃなく海外で演奏させていただいたり、和楽器を使って日本にとどまらない活動を続けていたので、声をかけてもらったのだと思います。
――AUN Jクラシック・オーケストラって、すごくやんちゃなバンドですよね(笑)。 球場で国家を演奏したり、フェスでお客さんを踊らせたり。
山野 : わたしたちのステージは、和楽器の固定観念に囚われず、みなさんが今まで思っていたものとは全然違う形ではあると思うので、初めて見たり聴いたりしてくださる方は、すごく楽しんでいるように思います。だから、お客様の反応がダイレクトに伝わってくるライヴは、すごくありがたいです。海外の方に関しては、日本人ほど和楽器への固定観念がないと思うので、ひとつの音楽として聴いてくださっているのが更に良く伝わります。
――なるほど。
山野 : なかなか日本人のお客さんは、和楽器を聴いて「ブラボー! 」とか言わないですよね。いろんな形をチャレンジしていくなかで、みんなが一緒に手を叩いてくれたりジャンプしてくれたりとかするようになってきました。
――それは海外のお客さんですか?
山野 : 最近はわりと日本でもあるんですよ! みなさんを楽しい気持ちにできたらいいなと思います。
――日本人にとって和楽器は身近な存在だけど、一般的ではないように感じます。
山野 : そうですね。例えばピアノだったら世界中の人が知っていると思うんですけど、民族楽器は国が違えばみんな知らないし、国のなかでさえ距離がある。ライヴで実際に見て、その楽器を実際に感じてもらえれば、わたしたちも嬉しいです。
グループにいる時はこのグループでしかできないことをやらなきゃ、と思うようになって
――山野さんが、最初に箏に触れたきっかけはなんだったのでしょうか?
山野 : 母がお箏の師匠をやっていまして、スタートはそこからです。その昔はピアノをやっていたので、なかなか楽器2つに同じエネルギーを注げずに、しばらくはずっとピアノをやっていました。
――いつまで?
山野 : 中学2年生ぐらいまでです。そのままピアノの道に進もうかと思っていたところに、今は亡くなってしまったわたしの師匠の沢井忠夫という人に出会って、お箏の魅力を自分なりに発見できたこともあり、今に至ります。
――お箏の魅力は、なんだったのでしょうか?
山野 : ピアノって永遠に1人で戦うものですよね。楽器と、作品と。でもお箏は人と合奏ができるっていうのがなによりも楽しくて。また、先生の音がすごく生きている音がして、簡単な曲でも先生が一緒に弾いてくださると、全然違う曲を弾いている気持ちになるんですね。そこからどんどんはまっていきました。
――じゃあ沢井先生との出会いが重要だったんですね!
山野 : そうですね。そして、AUN Jに入る前、大学4年生の就職活動のタイミングで、先生のお家に内弟子に入るという道を選んだんですよ。ただ、先生はわたしが大学2年生の時に亡くなられたので、そこからは奥様の沢井一恵先生についていました。わたしと同世代の市川慎さん(AUN Jクラシック・オーケストラ)も先生の内弟子で、そこで出会ったので同門になります。
――なるほど〜。内弟子としては、どのくらい?
山野 : 2年間やらせていただき、卒業してからは自分で演奏活動を始め、そのなかでAUN Jクラシック・オーケストラが出来るので参加しないか? というお話をいただきました。
――山野さんにとってAUN Jクラシック・オーケストラっていうのは、箏以外の楽器とアンサンブルをする初めての経験だったのでしょうか?
山野 : 太鼓は箏と両極端な楽器なので、なかなか機会はありませんでした。音楽を作る上での精神性が、全然違うなと感じます。太鼓や篠笛は、お祭りでみんなを賑やかにする音楽ですから、エネルギーをどんどん外に向けて人の気持ちを盛り上げる音楽なんです。それに対して、お箏、尺八や三味線は、間と呼吸で成り立つもので、盛り上がったときにエネルギーが内へ向いていくような気がするんですよ。そういう違いを実感することが最初の頃はすごく多くて、それはアンサンブルを創る上で、もっとも難しかったことかもしれません。
――どんな部分が難しかったのでしょうか?
山野 : 今までは、わずかな音のゆらぎなどを楽しみに弾いていたのが、自分の音もなかなか聞こえなくて、そうはいかなくなりました。あと、今までみんなの目線を見たり体を揺らしたりはしなかったんですけど、グループにいる時はこのグループでしかできないことをやらなきゃ、と思うようになって、そのように体で音を伝えるようにしています。
――なるほど!
山野 : 今回の、クレモンティーヌとのコラボレーションも一緒で、1人じゃできないことを人から刺激を受けてやることだと思うので、とても面白いです。
秋田音頭っていう江戸時代のラップみたいなものが「ドンパン節」にあるんですけど、すごく難しかったとおっしゃっていました
――クレモンティーヌとコラボレーションするにあたって、過去に共演したことはあったんですか?
山野 : ゼロです。
――えっ!
山野 : わたしもすごくびっくりしました。ご本人が、すごく日本が好きでいらっしゃるので、表現の新しい挑戦として、お声がけくださったのかなと思います。
――今回、『クレモンティーヌ meets AUN J クラシック・オーケストラ』ということで、クレモンティーヌ名義のアルバムじゃないですよね。理由お聞かせいただけますか?
山野 : クレモンティーヌさんのアルバムだと、AUN Jは伴奏のための楽器隊ということになりますよね。でも、今回はコラボレーションですので、それぞれが同じだけのエネルギーを持って、音楽的な役割も同じだけ持って、ひとつのアルバムを作りたいと思っていたんです。だから、わたしが「これは、クレモンティーヌさんのアルバムですか?」と確認したところ、「そうではない」と言っていただけたので、とても嬉しかったのです。
――彼女は、フランス在中ですよね? 一体どうやって作ったのでしょうか?
山野 : 彼女から、日本の文化を音楽で取り入れたいという話が出てきまして、そこから広げていきました。日本各地の民謡や童謡などを集めて選曲して、いくつも候補を挙げたなかで、メンバーと相談しながら選曲しました。
――AUN Jのメンバーが、主に選曲を?
山野 : そうです。そして選曲したものを、彼女に聴いてもらったんです。1番最初に聴いてもらった「桃太郎」を、すごく気に入ってらっしゃったので、全国に渡って各地域の曲をどんどん取り入れていこうとなりまして、メンバーや彼女と相談しながら選曲していきました。彼女の「東北の曲を入れたい」という強い希望で秋田の「どんぱん節」が入っています。
――なぜ、彼女は、東北の曲を入れたかったのでしょうか?
山野 : 彼女は震災の直後に日本に来て、震災復興のライヴ活動をしたり、東北に対して応援したい気持ちを強く持っています。
――なるほど。他の曲は、どの地方の曲でしょうか?
山野 : 「桃太郎」は岡山県の歌ですし、「証城寺の狸囃子」は千葉県、「てぃんさぐぬ花」は沖縄県、「五木の子守歌」は熊本県、「よさこい鳴子踊り」は高知県です。メンバーにゆかりのある地域を入れたりもしています。
――クレモンティーヌさんと制作する上で、難しかったことはありますか?
山野 : リハーサルの段階で彼女が日本に来るタイミングがなかったので、一緒に演奏しながら作ることができなかったんです。譜面と音源とメールのやりとりで曲をつくっていったんですけど、最終的には日本で録ったものを、わたしがフランスに持って行きました。彼女は普段、日本語の歌もフランス語で歌うことが多いんですけど、今回は日本語で頑張ってくださった部分がたくさんあります。秋田音頭っていう江戸時代のラップみたいなものが「ドンパン節」にあるんですけど、すごく難しかったとおっしゃっていました。
――へえ。
山野 : あと、「よさこい鳴子踊り」は、尾上(秀樹)くんがアレンジをしてくれているんですけれど、彼の特徴であるポップでロックなノリが、クレモンティーヌさんには今まであまりなかったものだったみたいです。「よっちょれ」というお囃子の言葉も、フランス語にはない発音ですごく苦労されて、何度も練習されていました。
――確かに、「これクレモンティーヌが歌っているの!」って思った曲がありました。
山野 : あと「五木の子守歌」は、全て日本語で歌ってくださったので、大変だったみたいです。熊本の地域の言葉なので、日本人のわたしたちが聴いてもなにを歌っているか分からないんですよ。それを耳コピで勉強して練習してくれていたので、よくぞやってくださったなあという気持ちです。
――なるほど。
山野 : 彼女と一緒にやるのが大変だったという気持ちはあんまりなくて、そこに至るまでの選曲や、一緒にやっていくための形を探すのが、1番時間がかかったところです。
――単なるバック・バンドにならないために、意識したことはなんですか?
山野 : まず、各楽器を活かすということです。他の楽器で代用できないような、その楽器らしさを出すようにしました。
――なるほど。
山野 : 民謡に関しては特に、アレンジで歌の世界を損なわないようにしたいと思っていました。わざわざフランス語で民謡をやることがどういうことかを考えると、そのままの楽曲の世界をクレモンティーヌさんに歌ってもらうのが1番いいんじゃないかと。
「今見えている部分の先を見たい! 」って思ってもらうこと
――本作は、AUN Jにとって、どのような作品になりましたか?
山野 : クレモンティーヌ、AUN J、和楽器の3つの要素を融合させ、今までとは違うことを打ち出したいというチャレンジの気持ちを、形にすることが出来たと思います。
――ぼくは、AUN Jの全然違う一面を見れたと思っています。グルーヴ重視のバンドだと思っていたのですが、そうではなくて、すごく新鮮でした。実はAUN Jって激しい部分からぐっと締める部分まで、全部いけるバンドなんだなと。
山野 : このグループで最も見えている部分は、かっこいい曲、激しい曲、ノリがいい曲とかだと思うんですよ。でも本当は、それを見せつつも、1番見せたいものを常に意識しています。それは、「今見えている部分の先を見たい!」って思ってもらうこと。その意識が無ければ、ただ賑やかなだけで終わってしまうので。
――世界を見渡してもAUN Jにしかできないことをなさっていると思います。
山野 : 今、和楽器のグループがたくさんあるなかで、自分たちにしかできないことを問い続けるのが、グループを続けていくこと意味であり、音楽的にも充実できることなのかなって思います。
――このコラボレーションってライヴで実現できそうなんですか?
山野 : それは次のステップとして、わたしたちもどうしよう! と思っています(笑)。もしかしたら、お互いが音源とは全然違う形で見せ合うことができるかもしれないし。どうなるかな… 楽しみなような… ドキドキしますね。
AUN J クラシック・オーケストラ 過去作
オススメ!!
AUN J クラシック・オーケストラ / 八人の響き
※左から、5.6MHz DSD+mp3、2.8MHz DSD+mp3、24bit/96kHz、24bit/48kHz
AUN J クラシック・オーケストラとして5枚目となるこのアルバムは、メンバー全員が1曲ずつ作曲した計8曲に、サンクス・トラック1曲を加えた9曲編成となっており、納得するまで何度もメンバー全員で話し合いながら、ひとつの形に作り上げた、まさに8人の魂がこもった作品。
【特集】
>>『八人の響き』DSD配信&井上公平、井上良平インタヴュー
>>『Octet』ハイレゾ配信&石垣秀基、尾上秀樹インタヴュー
LIVE INFORMATION
クレモンティーヌ meets AUN J クラシック・オーケストラ JAPON TOUR 2015
2015年11月1日(日)@滋賀 国宝彦根城 名勝玄宮楽々園内 楽々園御書院野外ステージ
2015年11月3日(火)@倉敷 児島市民交流センター ジーンズホール
2015年11月4日(水)@東京 NEW PIER HALL
2015年11月6日(金)@秋田アトリオン音楽ホール
2015年11月7日(土)@仙台 定義如来 西方寺 野外特設ステージ
PROFILE
AUN J クラシック・オーケストラ
和太鼓 / 三味線 : 井上良平
和太鼓 / 三味線 / 篠笛 : 井上公平
鳴り物 : HIDE
中棹三味線 : 尾上秀樹
尺八 : 石垣秀基
篠笛 : 山田路子
箏 : 市川慎
箏 : 山野安珠美
『和楽器を、もっとわかりやすく、かっこよく、シンプルに!』
それが、AUN J クラシック・オーケストラ。和太鼓、三味線、箏、尺八、篠笛、鳴り物。通常一緒に演奏されることのない和楽器を再編成し独自の音楽性を追求する、2008年に結成された和楽器のみのユニット。各楽器の第一線で活躍する邦楽家8人が集結し、一級の古典技術と新世代の感性を兼ね備えた、聴きやすく誰にでも楽しめる楽曲は、他の和楽器グループにはない独自の世界観を作り上げている。
『音楽には、国境はないが国籍はある』
伝統と確信を高いレベルで両立させたクオリティとパフォーマンス性は、海外においても高い評価を得ており、世界初のフランス、モン=サン・ミッシェル内ライヴ演奏を皮切りに、世界遺産を舞台としたライヴ・ツアーを毎年開催。2013年には「ONE ASIA」をテーマに、アンコールワットにて、ASEAN4カ国の民族楽器アーティストとのジョイント・コンサートを成功させる。国内においても伊勢神宮や薬師寺など日本を代表する名所にて公演多数。日本文化の普遍性や多様性を、国境を越えて発信することで、世界が音楽で繋がるための挑戦を続けている。
>>AUN J クラシック・オーケストラ Official HP
クレモンティーヌ
パリ生まれ。レコードコレクターの父親の影響でジャズに囲まれながら育つ。88年SONY FRANCEよりデビュー。以来、ジャズ、ポップス、ボサノヴァなど様々なジャンルで数々の作品を発表。音楽だけではなく、オン、オフを自然体なスローライフで実践する、ライフスタイルも注目を浴び続けている日本で最も愛されるフランス人歌手。今までのレコードセールスはトータル150万枚以上。日本での実績をシラク前大統領より賞賛され、クレモンティーヌの活動はフランスの2大新聞「ル・モンド」と「フィガロ」の一面に掲載される事になる。それを機にヨーロッパでは主にジャズシンガーとして活躍していた彼女の存在は一気にヨーロッパ全土で注目されることになる。現在は韓国、台湾などアジア全土でもその人気を不動のものとしている。