日本中に響き渡れ! むき出しのロックンロール! ──ソウル・フラワー・ユニオン、新作を先行&独占配信
結成25周年という節目の年となる2018年の最後に、新生ソウル・フラワー・ユニオンの幕開けを告げるニュー・アルバムが到着。4年ぶりの新作にして、タイトルは『バタフライ・アフェクツ』。中川敬のルーツ・ミュージックがストレートに表現されたヘヴィ・ソウル・ロック・アルバムに。OTOTOYでは今作のハイレゾ独占配信と合わせて、CDリリースに先駆けた1週間先行配信がスタートします! 中川敬への単独インタヴューとともにお楽しみください。
ソウル・フラワー・ユニオン、4年ぶりのフル・アルバムをハイレゾで!
アルバム特設サイトはこちらから!!
http://www.breast.co.jp/soulflower/special/butterflyaffects
INTERVIEW : 中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)
ソウル・フラワー・ユニオンのアルバムは特別だ。僕が京都のツタヤ西院店で働いていたときから、彼らのアルバムが出るときは入荷前からワクワクし、コメント入りのポップ作りに勤しんでいた。そして中川敬と喋れるようになってからも、やはり新作は特別だ。いまは、よく喋る熱い男、中川敬にインタヴューできるのが、僕のさらなる楽しみとなっている。音楽業界に関わり続けてよかったなと思う瞬間だ。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文&構成 : 三浦智文
写真 : 大橋祐希
「休むな、中川敬! ロックしろ!」
──今作は今年に入ってからつくられたんですよね。
ソウル・フラワー・ユニオンとしては、もう4年ぶりのニュー・アルバムになるんよね。ソウル・フラワー・ユニオン25周年、ええ加減ニュー・アルバムを作らなあかんな、っていう。去年春、ドラムにJah-Rahが入ったことで、ここにきてメンバーも落ち着いたし。
──思い立った感じなんですね。
そうやね。去年の段階で「来年はアルバムを作ろう」ってメンバーに言ってたし。で、今回、俺が自分に幾つかテーマを課したことがあって。前作『アンダーグラウンド・レイルロード』(2014)以降、ソロ・アルバムを2作(『にじむ残響、バザールの夢』『豊穣なる闇のバラッド』)作って、休まずにこのままのノリで作ろう、と。なおかつ、いままで録り溜めてた歌詞やメロディーを一切使わずに、2018年の年頭、まったくの白紙の状態から新曲を書こう、と。それで年内に出せたら、俺イケてるやん、っていう(笑)。短いスパンで一気に曲を書いて、名盤を作ろう、と。なんというか、「休むな、中川敬! ロックしろ!」と自分自身に問う感じで(笑)。
──25周年という節目は、中川さん的にはどうですか?
ソウル・フラワー・ユニオンの前身ニューエスト・モデルは今年で結成33年やし、その頃から奥野(真哉 / key)ともずっとやってるから、感覚的には「そういや25周年やな」ぐらいの感じやね。ローリング・ストーンズのまだ半分以下やん、とか(笑)。ソウル・フラワー・ユニオンのファースト・アルバム『カムイ・イピリマ』(1993)は、もともとあったメスカリン・ドライヴの曲を俺や奥野がサポートして作った作品やし、その次の『ワタツミ・ヤマツミ』(1994)は、ニューエスト・モデルの後期の頃にやってた曲が過半数を占めてて。そういう意味で、ソウル・フラワー・ユニオンっていうのは、それまで自分がやってたニューエスト・モデルとの境界が曖昧やね。だから、どうしてもニューエスト・モデルの始まりを起点に考える感じが常にあるな。
──地続きって感じなんですね。今後30周年、35周年みたいなことって考えるものなんですか?
まあ、十進法も便利なもんやとは思うよ、みんなで盛り上がれるし(笑)。
──ここまで続けると思ってました?
ほんまなあ。大体、こんなに生きるとも思ってなかったし。ジョン・レノンの12才歳上やで。ミック・ジャガーの23才歳下という言い方もできるけど(笑)。20代の頃は、なんかいつも怒ってる感じで、寿命短そうやったもんなあ(笑)。
──いま、上の年代のミュージシャンたちも亡くなったりして。
片山(広明)さんも亡くなってしまったし、なんか、ちょっと早いよね、みんな…。(遠藤)ミチロウさん、柴山(俊之)さんの世代の人たちには、ほんま長生きしてずっと音楽をやってて欲しい。
こんなバンドが世界のどこかにあって欲しいわけよ、俺は
──今回のアルバムは全体を通して、ヘヴィ・ソウル・ロックということですが、このサウンド・テーマはあったんですか?
大きなサウンド・テーマはなかった。けど、木暮(晋也)君にベーシック・レコーディングの段階で入ってもらうことによって、ギター3本が初めからいる。ある意味、ソウル・フラワー・ユニオン史上初の、ギター・ロック的なシンプルなアルバムになるんじゃないかっていう予感はあった。金管楽器は入れないで行こう、というのは初めからあったし。
──そこを外した理由は何かあるんですか?
いちばんわかりやすい部分で言うと、現体制になって去年1年、どういう楽曲で(阿部)光一郎(Ba)やJah-Rah(Dr)が光るのかを見定めようとした。で、その結果スイングする8ビートやなと。それはロックンロールっていう意味でもあるし、ソウル・ミュージックっていう意味でもあった。俺は1960年代のソウル・ミュージックで育ってるし、1970年代、1980年代のパンクが俺の中の血みたいなもんやから、ああ、俺のルーツ・ミュージックをストレートに出したらええやん、という。
──その8ビートの楽曲を作っていくのって、中川さん的には腑に落ちた感じなんですか?
10代の頃は完全ロック少年やから、当然8ビートこそ自分の体の根底にある。ローリング・ストーンズ、ザ・フー、村八分、Tレックス、デヴィッド・ボウイ、ザ・ジャム、ストラングラーズ、クラッシュ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、1960'sモータウン……。だから別に苦労することでもなんでもない。
──ソウル・フラワー・ユニオンの特筆すべき点は、新しいところに挑戦していくところだと思うんですけど、8ビートに帰ってしまうことの怖さはあった?
いやいや、何をやっても他にこういうバンドがいないから。いま、まさにリスナーとして聴きたいロック・バンドが欲しくて。それがいまのソウル・フラワー・ユニオン。まあ、これは常に自分の原理としてあること。だから、今回8ビートをやることに関して、原点回帰という感じはなかった。こんなバンドが世界のどこかにあって欲しいわけよ、俺は。
──この時代においては唯一ですよね。
ありそうでないんよね、この感じ。たとえば、2018年の英米最新サウンド! から何かをパクって、それ風の曲をつくってみたところで、自分の心に響くまでに至らないくらいには、俺自身、老化している(笑)。中川敬がそんなことを思い悩む必要はまったくないわけであって。俺はただ、そのときに自分がかっこいいと思える音楽、やりたい音楽を、手を抜かずにやるだけなんよね。
──アルバム内で、〈尊厳〉というワードが多く使われていましたが、それは意図的ですか?
個人の尊厳を踏みにじられるようなことが多過ぎるでしょ、いまの日本。
──このアルバムを作るときに、いちばん尊厳を踏みにじられた出来事って?
入管問題。医療にしても食べ物にしても、めちゃくちゃ。人間を人間として見ない、人でなしの世界。実は、ここ数日、大阪入管に抗議に通ってるんやけど、行くと、壁だけを隔てた10メートルほど向こうから「ありがとう!」っていう声が返ってくるわけ。で、外にいるこちら側から「人権守れ!」って言うと、施設内からも「人権守れ!」っていうレスポンスが返ってくる。これはキツイね。彼らに「ありがとう」と言わせている社会のマジョリティ側にいるのが俺らでしょ。俺らの税金を使って非道な人権侵害が平気で行なわれている、という。
──それは「最果てのバスターミナル」で歌われていること?
入管問題や技能実習生問題は以前からずっと自分の中で引っかかってて。この曲は自分なりの物語を作って歌にした。難民問題や移民問題は、人類にとって壮大なブルースなんよ。尊厳を脅かされながら、“移動”を余儀なくされる人生。彼らの、“えも言われぬ悔しさ”をちゃんと曲にしたいと思った。
──もう少しだけ、世の中の話をしたくて。これは僕の意見も入っているんですけど、いまって間違いなく世の中がいい方向に入っていないじゃないですか。
14年前、高遠菜穂子さんたちがイラクで武装勢力に監禁されたとき(イラク日本人人質事件)、“自己責任論”っていう言葉が浮上した。そのときメディアはほぼ、“自己責任論”に乗っかった。今回、安田純平君がようやく解放されたとき、意見は割れたよね。“何が自己責任論や!”という声がマスコミにもあった。以前よりも二極分化してる感じがあるな。酷いのも増えたけど、ちゃん考えれる人も以前より増えてる感じがある。二極分化。今は少しづつではあるけど、カジュアルに抗議やデモに参加する人も増えた。まだまだやけど。
いつまでも忌野清志郎に頼るな(笑)!
──アルバムの話に戻りますけど、僕はもっと直接的に歌詞を書けたのかもなと思ったんですよ。これはあえて直接的に書かない中川さんの手法なのかもしれないですけど。
そういうのは若い人がどんどんやればいい。いつまでも忌野清志郎に頼るな(笑)! 世の中にもっといろんな歌の作法があってしかるべき。「安倍を倒せ!」とか「辺野古を埋めるな! 安倍を埋めろ!」とか(笑)、もっと元気なの、でてこいやと。で、音楽的にかっこよかったら応援するよ。若いのん、もっとガンガンやれよって思うけどね。飯田君(インタヴュアー)、やれ(笑)! まぁ俺は、こういうタイプの曲じゃないとあかんとか、ラヴ・ソングを歌わないようにしようっていうのもないし、自分にとっていい曲ができたかどうかだけやな。政治であれ何であれ、タブーもないし。
──「愛の遊撃戦」は、沖縄の問題について歌われている楽曲なのかとも思ったのですが、その中で知事が変わったことは、いまの沖縄にとって大きいと思いますか?
玉城デニーさんね。彼がいて良かった。ほんと、沖縄の人は民意を示し続けているわけやから、完全にこちら(内地)側の問題や。なんで日本にある米軍施設の75%がこんな小さい島にあり続けるんや? 厳然とある構造的差別に対して声を上げなあかんのはあくまで“主流日本人”の側。どの角度から見ても、辺野古に新基地なんていらない。
──この曲はそんな人々へのメッセージでもある?
「愛の遊撃戦」のテーマは、沖縄戦からはじまる。沖縄戦を描いた、ある短編小説から影響を受けた部分があって。戦況もぜんぜん知らされていない沖縄戦末期の最中、青年2人が歩いているところに米軍機が飛んできて、機銃掃射してきた。で、逃げようと思って木に登った自分たちの姿がさなぎのようだったっていうシーンがあって。そこから一気に歌詞を書き始めた。あとは、戦争を体験した80代のおばあちゃんとか、いまでも辺野古に座り込みに行ってる人たち。その人たちへのエールのつもりで書いた曲でもある。
──なるほど。話を変えて録音のことを訊きたいのですが、ソウル・フラワー・ユニオンって一発録りなんですよね?
一発録り。もちろんテイクを重ねて、一番エディットが少なくすむテイクでオッケーを出す感じ。後日、ミュージシャン・中川敬が、完全プロデューサーになってメスを入れる。磨きをかける。
──それって一発録りの方が雰囲気が壊れない、みたいな美学に抗ってるということはないですか?
それを言ってたらPro Toolsなんてものは使わないよね。ゆくゆく純粋な一発録りのアルバムも作ってみたいとは思うけど。
──一応そういう価値観もありつつという感じなんですね。
最近、アナログ盤でばっかり音楽を聴いてて。なんか、ロック喫茶で管巻いてる“ロック爺”みたいになってきてる(笑)。阪神淡路大震災のあと、モノを大量所持してることに虚しさを覚えて、1990年代後半に8,000枚くらい持ってたアナログ盤を全部売っぱらってね。ところが、3年前にまたプレイヤーを買ってしまって、いまアナログ盤にハマっているという。各所で掘りまくり。まあ、病気やな(笑)。
──アナログに回帰したのはなぜ?
針を落として15分から20分で終わると、まさしく音楽を聴いている感じがあるんよね。集中力にちょうど見合う長さというか。だから今作の収録曲数を10曲にしたのもそれと関係してて。これぐらいのサイズで2年に1枚とか、1年半に1枚とか出したいとは思ったな。
──音に対してのこだわりはありますか?
ミックスとかマスタリングはしつこいよ。“しつこさ”の世界大会があったら優勝できる(笑)。ただ、それは“正しいもの”に向かっているわけではなくて、俺の“納得”に向かっているだけの話やから。とはいえ、ほんとしつこいです。毎回自分でもあきれる。ミックスとかマスタリングとか、なかなか終わらないからしんどくなって「はよ、次行きたいわ」とか思うんやけど、もうひとりの俺が行かせない(笑)。
──そういう過程って効率が良くなっていくものではないんですね。
忙しさは相変わらずやけど、チンドン楽団のソウル・フラワー・モノノケ・サミットで海外ツアーとかやってたころに比べると、いまはかなりシンプルな音楽活動になってるから、作品作りの時間のかけ方も変わってきた。アコースティック・ギターを抱えて全国を周って、毎週どこかで歌いながら、平日はなにがしかの新作を作ると。そのルーティンの中で、以前よりも音楽に没頭することができているというか。
──そんなルーティンの中で今作はできた感じなんですね。僕はソウル・フラワー・ユニオンの新作が出たら、やっぱりあがりますよ。
それはうれしいね。そういえば、2000年代初頭、俺らの作品が小さな街のCDショップからなくなりはじめた頃、飯田君(インタヴュアー)の働いてた京都のCDショップには、ソウル・フラワー・ユニオンとニューエスト・モデルが全作そろってたよな(笑)。J-ROCKの“S”の欄を見て、逃げるように店を出たよ(笑)。まあ、ソウル・フラワー・ユニオンを置いてないCDショップとか全部潰れればいいし、文化的に存在価値がない! ということで(笑)。
『バタフライ・アフェクツ』のご購入はこちらから
ソウル・フラワー・ユニオンの過去作もチェック!
新→古
過去のインタヴュー・ページ
・中川敬『豊穣なる闇のバラッド』特集
https://ototoy.jp/feature/2017092701
・ニューエスト・モデル『ザ・ベスト・オブ・ニューエスト・モデル 1986-1993』特集
https://ototoy.jp/feature/2016062909
・中川敬『にじむ残響、バザールの夢』特集
https://ototoy.jp/feature/20150928001
・ソウル・フラワー・ユニオン『踊れ! 踊らされる前に』特集
https://ototoy.jp/feature/20130629
・ソウル・フラワー・ユニオン『キセキの渚』特集
https://ototoy.jp/feature/20111222
・ソウル・フラワー・ユニオン『キャンプ・パンゲア』特集
https://ototoy.jp/feature/2010120900
・ソウル・フラワー・ユニオン『死ぬまで生きろ!』特集
https://ototoy.jp/feature/20100623/1
・ソウル・フラワー・ユニオン『アクア・ヴィテ』特集
https://ototoy.jp/feature/20091216
LIVE SCHEDULE
ソウル・フラワー・ユニオン ニューアルバム発売記念ツアー 〜年末ソウルフラワー祭2018
2018年12月8日(土)@東京 LIQUIDROOM
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2018年12月10日(月)@宮城 仙台LIVE HOUSE enn2nd
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2018年12月15日(土)@大阪 umeda TRAD
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2018年12月16日(日)@愛知 名古屋 CLUB QUATTRO
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
●各公演共通 チケット
一般 前売 : 4,800円 (ドリンク代別、オールスタンディング、整理番号付き)
学割 前売 : 2,400円 (ドリンク代別、オールスタンディング)
詳しいツアー情報はこちら
PROFILE
ソウル・フラワー・ユニオン
【公式HP】
http://www.breast.co.jp/soulflower
【公式ツイッター】
https://twitter.com/soulflowerunion