妄想から生まれる最悪で最高の“彼女”たち──明神ナオ(PARIS on the City! )単独インタヴュー
モータウン・サウンドやR&Bをルーツとするサウンドとその確かなライヴ・パフォーマンスで、その知名度がじわじわと広がりつつあるPARIS on the City! が、2ndミニ・アルバム『寧ろ最低だった恋のストーリー』をリリース。OTOTOYではバンドのフロントマンでありソングライターの明神ナオの単独インタヴューを敢行! 一筋縄ではいかない個性を感じる彼らの音楽が、どのように生まれるのか、じっくり語ってもらった。そして期間限定でアルバムのオープニング・トラック「一度わかれよう」の無料配信もスタート。1曲目からPARIS on the City !のエッセンスが詰まった今作、ぜひお楽しみください!
知名度が拡大中の彼らの2ndミニ・アルバム配信中!
期間限定のフリー配信もやっています!
PARIS on the City! / 一度わかれよう
【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信期間】
2018年11月22日(木)〜11月29日(木)23:59
INTERVIEW : 明神ナオ(PARIS on the City!)
“恋愛恐怖症男4人組バンド”なんて言いながら、音楽を聴くかぎり結構モテそうなバンド、PARIS on the City! 。最新作の2ndアルバム『寧ろ最低だった恋のストーリー』でも、往年のブラック・ミュージックやカントリー・ミュージックの躍動感に日本人ならではの情緒を振りかけて、爽やかな和製ポップスに仕上げている。楽曲の構成、メロディは、20代にして酸いも甘いも噛み分けているような完成度の高さすら感じさせるものだ。でも、何度も聴いていると、歌っている内容はやっぱりどこかヘン。いったいこれってなんなんだろう? ということで、作詞作曲を手掛けるバンドの中心人物・明神ナオ(Vo.Gt)に初の単独インタヴューを敢行。一回通り過ぎてから「ん!?」っと思わず二度見してしまうような楽曲が生まれる理由を語ってもらった。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 黒羽政士
音源は世の中にどんどん発信していきたい
──11月7日に発売2ndミニ・アルバム『寧ろ最低だった恋のストーリー』が発売されたばかりですが、率直に言ってどんな作品になったと思ってますか。
いままでは僕が1人でデモを作ってメンバーに投げる形が多かったんですけど、ゼロからメンバーで作り上げた曲(リード曲「言い訳を抱いて」)もあったので、そういう意味では新鮮な作品になりましたね。
──これまではある意味、明神さんの頭の中をメンバーで再現する、みたいな感じだった?
そうですね。PARIS on the City! は、夜の11時くらいから朝の6時ぐらいまでスタジオに入って曲作りをすることが多いんですけど、朝4時ぐらいに頭がおかしくなってくる時間がありまして(笑)。そういうときに、寝だすメンバーもいるんですけど、手が空いたやつで、曲のフレーズを作ってみたりしてできあがったのが、今回のリード曲で。歌詞は後付けなんですけど、サビの〈抱いて抱いて〉っていうフレーズ自体は、4、5年前からすでにできていて。携帯のボイスレコーダーに、いつかバンドでやれたらいいなって弾き語りで入れていたんです。そのフレーズが、たまたま合わせたときに自然に出てきたので。そのワードを当てはめて物語を作りました。
──昨年、今年と年2枚ペースで順調に作品を出している印象ですけど、いまのバンドのムードはどんな感じですか。
自分たちはライヴもやるんですけど、とにかく音源にこだわっていて。ライヴもやりつつ早めに音源も作って、世の中にどんどん発信していきたいっていうスタンスでやってますね。
──曲は常に作ってます?
作ってます。まあ、しんどいときもあるんですけど(笑)。
──しんどい時、あるんですか? というのも、前作から今作まで聴いて、明神さんってメロディメーカーとして天賦の才がある人なんじゃないかと思っていて。
あ、本当ですか。
──「櫛」を聴いたときに、鼻歌でパッと作っているような感じを受けたので。もちろん、曲が完成するまでは大変だとは思うんですけど、元のメロディがすぐ浮かんでくるタイプなんじゃないかと思うんですよ。
ああ〜、そうですね、メロディ自体はすぐできるんですよ。でも、歌詞がなかなかむずかしくて。だから、歌詞が納得いくまでに、本当はもっと時間をかけたいんですけど、制作の時間に制限もあるので。でも逆にそれが良い意味で刺激になって、自分の成長にもなりました。
──歌詞は悩むけど、メロディはあんまり悩まずにできる?
メロディに関しては、思いついたらすぐに録ってるんで、結構ボイスレコーダーの中に入ってるんですよ。音楽を始めてライヴ活動をし始めて9年ぐらい経つんですけど、それは最初からずっとやってるので。
──リード曲をバンドで作ったというのは、この1年の活動を経て、メンバーの技術的な成長やアイデアが出るようになったからですか。
このバンドは、上ものでアイデアを出していく傾向があって。スタジオに入るときに1回僕のデモを聴いた上で、自分なりのアイデアを出してくることが多いんですけど、リード・ギターに関しては、ほぼ任せてますね。
──ギターは今回、弾きまくってますよね。
そうですよね。ちょっと弾きすぎだって怒られるぐらいに(笑)。演奏の技術面に関しては、成長していると思います。
──空中カメラのスプリット・ツアー(〈パリジェンヌ、空中でポップに抱かれるTOUR〉)もありましたが、結成してからライヴの面で変化してきたことってどんなことがありますか。
僕の視点で言うと、これまでライヴでは声を張り上げて情熱的に歌うことが多かったんですけど、最近はそれもしつつ、“家で歌ってる感じ”をライヴで再現できたらいいなって意識して歌ってるんです。その感覚がいま1番自分にしっくりきているというか。
──音源ではあえて淡々としている感じにも聴こえますけど、それをライヴでは音源と違う感じにしようと思って歌っていた?
ライヴだと、熱くなっちゃうんですよ(笑)。どうしても、言葉を放り込みたいっていう意識が強すぎて、いつの間にか声がバーッて出ていて。もうちょっと、作品に近い感じでボソっと歌えたらなって。というより、これからはどんどんそういうことをやっていかないといけないのかなって思うんです。
──それはどうしてそう思うんですか?
やっぱり、世に出て行く上で、音源に近い歌い方とかで歌っていかないといけないなって。作品を聴いてライヴに来てくれた人たちに、そのままの歌を聴いてもらいたいので。もちろん、そうじゃない良さもライヴにはあるので、むずかしいところですけど。曲によって歌い分けていければなって。
──演奏面では、「一度わかれよう」が、アップテンポなカントリータッチ、アイリッシュパンクみたいな感じだったり、「櫛」はちょっとニューオリンズ風のリズムとか「わからない」はモータウンっぽいベースライン、ディスコ調の「言い訳を抱いて」まで、色んなリズムで曲ができてるなと感じたんですが、どんな制作過程がありましたか。
「一度わかれよう」なんかは、最初はぜんぜん違うテイストの雰囲気のデモができていて、8ビートだったんですよ。でも、みんなで合わせたときに何か違うなって。それでテンポをめちゃくちゃ速めてみようということで、こういうカントリーテイストのアレンジになったんですけど。結構、今回の作品のリズムに関しては何回か試行錯誤して作っていった感じですね。「STAR LIGHT FUTURE」はSundayカミデさんの曲なんですけど(ワンダフルボーイズのカヴァー)、この曲はいまのバンド・メンバーで結成する前からやっていて、いつもやってるのはもっとBPMが遅いんですよ。音源に関しては、BPMを上げてゆったりノレるようなバラードに仕上げました。
出来事に対して生まれる感情を強く歌いたい
──大きなフェスに出演したりもしてファンも増えてきたんじゃないかと思いますけど、以前言っていた「悔しいことを明るく歌う」っていうスタンスについては、いまはどうなんですか。
そこは、変わってないですね。
──妄想で曲を書くというところも変わってない?
物語の妄想っていうよりは、どちらかというと物事が起こって、そこに生まれる感情を妄想しているっていうのが、曲作りで前作から共通していることで。出来事に対して生まれる感情を強く歌いたいっていうのが、コンセプトなんです。もちろん、物語を妄想して書くときもあるんですけど、実体験に当てはまる曲もいっぱいあるので。
──1曲目の「一度わかれよう」でいうと、きっかけとしては実体験があるわけですか。
この曲は想像して作ったんですけど、たとえば自分と結婚を前提に付き合ってる人がいたとして、別れたとしても、運命の人だったらまた出会えるだろうなとか。まあ、付き合いながらそうやって考えているのは失礼なんですけど(笑)。そういう感情を歌詞に落とし込めたらいいなって書いた曲ですね。
──なんというか、感情の持ち方が独特ですよね。
なんか、昔からそういうことばっかり考えちゃうんですよね。「いま、ここでこんなことをしたらどうなるんやろう?」みたいなことを考えてしまうんですよ。
──いまこうやって話している最中に、突然机をひっくり返したらどうなるんだろうとか?
ああ〜そうですね、考えますね。
──やめてくださいね(笑)。なんでそんなこと考えちゃうんですか?
なんでですかね? 本能的にそう考えちゃうんですよね。
──本当にそうやったら、周りの人に迷惑をかけちゃいますよね。
もちろん、そうしたら周りの人に申し訳ないなっていう感情にもなるんですけど、でもそういう考え方もひとつの考え方だよねって思うんですよ(笑)。なんというか、ひとつの物事に対して、いろんなことを考えられる練習をしているようなところもありますね。最悪なことも考えるし、逆に最高のことも考えるんですよ。
──なるほど、だから〈最悪で最高の彼女なのさ〉(「櫛」)みたいな歌詞が出てくるわけですか。
ああ〜、それも関係しているかもしれないですね。付き合ってると嫌な部分とかも見えてくると思うんですけど、でもやっぱり最高だなって思うときもあるし、そこが1番いいなっていう彼女を妄想して作ったんです、この曲は。
──そういう妄想をするにも、経験がないとできないですよね。
それはそう思います。妄想なんですけど、経験からできてる曲がほとんどかなって思いますね。今回だと「言い訳を抱いて」は、いままで付き合ってきた彼女のほとんどの方に言えるんですけど、僕は曲を作るタイミングって、決まってないんですよ。だから一緒に遊んでいる時間が長ければ長いほど、「曲を作りたい」っていう欲もどんどん湧いてきて、家に一緒にいたりすると、ギターを弾きだしたりするんですけど。「音楽と私のどっちが大事なの?」じゃないですけど、ライヴ活動もちょっと嫌だっていう彼女がいたり。そういうのが原因で「あなたにはもっといい人がいる」って、別れちゃったりとかすることが多いので。
──それらの経験が曲に活かされているわけですね。「言い訳を抱いて」には〈スケベな映画でごまかした〉っていう歌詞が出てきますけど、これってなんですか?
現実逃避をしたかったというか……。“スケベ”っていう言葉がいいなって思ったんですよ。どうしてもそこに入れたくて。でも“スケベな本”だと生々しいじゃないですか? “スケベな映画”だったら、芸術的だなって(笑)。
──そういう引っかかるワードがさらっと歌詞に中に入ってるのが、PARIS on the City! らしさになってますよね。前作の歌詞に出てくる“悪魔”っていう言葉とか。さっきの話じゃないですけど、破壊衝動みたいなものがあるんですかね?
言葉でもメロディでも、お客さんがパッと聴いたときに、それが好きか嫌いかは別として、とりあえず残ればいいなって思っているんですよ。それが曲を作るときの大前提にあるので、インパクトのある言葉を出していきたいんです。どうしても汚したくなるんですよね(笑)。キレイ、キレイ、キレイってきて汚れるっていうのが好きなんですよ。
──実際、まんまとその思惑通りに耳に残ってしまいました(笑)。
ははははは(笑)。
人の愛ってどう転がるかわからない怖さがある
──シングル「櫛」をリリースしたときに「恋愛恐怖症男4人組バンド」と紹介されていましたけど、恋愛の何が怖いんですか?
恋愛って、形がないものなので、気持ち次第に成り立つというか。お互いの温度感の違いで別れちゃったり結婚まで行ったりすると思うんですけど、この歳(27歳)になって思うんですけど、自分が結婚する気がなくても相手がバリバリ結婚したいと思っていたら、5年ぐらい付き合っていてもそのタイミングが違うだけで、別れちゃったりすると思うんですよね。他人と他人が出会って、好きで付き合って、それが原因で別れてしまうっておもしろいなって思う反面、すごく怖いなって思うんですよ。そこから「恋愛恐怖症」っていう言葉になっているんですけど。あと、片方が付き合っていると思っていても相手はそう思っていなくて、それが原因で殺人事件が起こったりとかするじゃないですか? 人の愛ってどう転がるかわからない怖さがあるなって。
──そういうことは昔からよくありますよね。
最近、五十嵐貴久さんの「リカ」っていうホラー小説を読んだんですけど、まさにそういう話で。軽はずみではじめた出会い系で知り合った女性とメールでやりとりしていくんですけど、向こうが豹変していって、最終的に…… っていうストーリーなんですけど、「私だけのものにしたい」っていう愛が強すぎて、それが衝撃的で怖くて。
──小説とか映画とかから影響を受けて曲作りすることもあるんですか?
ありますね。そこから思いついた言葉をボイスメモに残しておいて、お気に入りのワードでタイトルをつけて、そこから物語にしていくっていうこともあります。
──じゃあ、「リカ」もいずれ曲になるかもしれない?
そうですね。
──歌詞に〈バラバラ死体〉とか出てきても、PARIS on the City! なら普通にありそうですけどね(笑)。
そうですね(笑)。なんなら、大雑把にとれば過去の曲にもそういうワードが当てはまる曲があるかもしれないですね。
──今回は、そこまで毒のある言葉って出てきていない気はしますけど、歌詞の統一感みたいなことは考えましたか?
レコーディングが終わって曲を並べたときに浮かんだテーマが「別れ」だったんです。それで1曲目から6曲目まで進んで行って、一番最後の「言い訳を抱いて」で、全部ひっくるめて前に進んでいる感じを出したかったんです。最近、「未来を目指して頑張って行こう」というキラキラした言葉よりも、「死に向かって頑張って行こう」っていう捉え方ってすごく良いなと思っていて。その中で起こる恋愛とかいろんなことに頑張ることって、すごく生きてる感じがしていて。それが表現できればいいなって思ってます。
──死に向かって?
死に向かって頑張っていく=未来に向かって頑張っていく、というか。過去のことを全部抱いて前に進んで行こうっていうことを自分たちなりの言葉で歌いたかったのが、6曲目の「言い訳を抱いて」なんです。
──それを「頑張ろう」って歌っちゃうと野暮というか、恋愛を通してそれを表現したいというのがPARIS on the City! のやりたいことなんですね。
そうですね。そこを「頑張っていこう」って歌っちゃうと、「おまえら誰なんだ!?」ってなっちゃいますから。「おまえらが恋愛恐怖症を頑張れよ」って(笑)。
──東名阪でのリリース・ツアーも控えていますが、今回は12月6日のツアー・ファイナルがTSUTAYA O-WESTでのライヴということで、過去最大キャパのワンマンなんですね。
この日は1年前からやろうって言っていたライヴで、「まだ無理じゃないか?」とか話し合ってきた中で、「やるしかない」って決めた、2年間やってきたメンバーみんなの覚悟のライヴなんです。もっと自分たちの音源とか名前を世に知らしめるためには、このライヴをやらないといけないという分岐点というか、目の前のひとつの目標なので、ぜひ観に来てください。
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新→古
【過去の特集ページ】
・『この世で一番嫌いな君へ』特集 : インタヴュー
https://ototoy.jp/feature/2017110101
LIVE SCHEDULE
2ndミニ・アルバム リリース・ツアー〈寧ろ最低だった恋のストーリー〉
2018年12月2日@名古屋 鑪ら場 tataraba
時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
出演者 : PARIS on the City! / 宮島明彦(Rain caughts) / 松岡直哉(ロストフィルム)
2018年12月3日@大阪 MUSE
時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
出演者 : PARIS on the City! / Omoinotake / SMOOTHIES / waybee / UNUBORE
2018年12月6日@渋谷TSUTAYA O-WEST
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
出演 : PARIS on the City!
※ツアー・ファイナル・ワンマン
【詳しいライヴ情報はこちら】
https://artist.aremond.net/parisonthecity/schedule
PROFILE
PARIS on the City!
恋愛に対するコンプレックスから生まれた出来事を、シンプル且つ大胆な歌詞と曲で繰り広げる4人組ロック・バンド。“PARIS on the City!”
作詞作曲を手掛ける明神ナオ(Vo,Gt)の、様々な角度から想像できてしまう棘のあるシンプルな言葉選びや、力強いウィスパー・ヴォイス。また、60年代モータウンを主軸としたメンバーそれぞれの幅広い演奏力で、ジワジワと全国に知名度拡大中。
【公式HP】
https://artist.aremond.net/parisonthecity
【公式ツイッター】
https://twitter.com/parisonthecity