小川選 a.k.a. 風や木々にしか発音できない、中村つよし、noinoi、ZAMBARAの4人で、都内を中心に活動する自由模索クラブが待望の1stアルバムを完成。ダブやアンダーグラウンド・ヒップホップを基調に、うずまくグルーヴ、小川の歌とラップが混ざり合い、彼らにしかなせない世界観がうずまいている。OTOTOYでは、本作をHQDで配信。さらに、初インタヴューとともに未発表曲1曲をフリー・ダウンロードでお届け。まずはこの楽曲で、ときに静かに、ときに強く訴えかけるその独自の世界観を五感で感じてみてほしい。
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自由模索クラブ / 野生の馬
【配信形態】
HQD(24bit/48kHzのwav) : 単曲200円 まとめ購入1,500円
mp3 : 単曲150円 まとめ購入 1,200円
【Track List】
1. 地球の果実 / 2. ゴリアテ(PITCH BLACK ver) / 3. 僕らの未来 / 4. 野生の馬 / 5. 蜘蛛の糸 / 6. 揺れる丘 / 7. shanti shanti shanti / 8. 南極のニンゲン(ボーナストラック)
INTERVIEW : 自由模索クラブ
「自由模索クラブ」を知ったとき、やはり最初に気になったのはそのバンド名のことだった。一見ライトなポップス・バンドのようなネーミングに思えたのだが、聴いてみるとその音楽は極めて人間臭く、愚直ですらあり、歌詞の内容はスピリチュアルなメッセージに満ちている。それは現代文化へのアンチテーゼと感じさせるものだ。そうか、「自由を模索」するのは誰もが同じこと。人間の根源から湧き出る永遠のテーマだ。この「自由模索クラブ」という名前はボーカルの小川選が自然に口にしたフリー・スタイルのリリックから名付けられている。彼らはむしろ無自覚に自分たちの、そして人々の「自由」を探し続ける、心の声を表現しているのではないだろうか。その姿はまっすぐで、孤高ですらある。ヴォーカルの小川とベーシストの中村つよしのふたりに、バンドのこれからを聞いた。
インタビュー&文 : 岡本貴之
何も考えずに出てきた言葉が「自由模索クラブ」だったんです(小川)
——自由模索クラブというバンドの成り立ちから教えてもらえますか?
中村つよし(以下、中村) : インターネットのメンバー募集サイトで知り合って、2009年の3月に結成しました。
——中村さんはどんなバンド、どんな音楽をやろうと思って募集を出していたんですか?
中村 : 僕は、静かなアコースティックな音楽をやれたらいいな、と思ってました。
——それに対して、小川さんはどんな音楽がやりたかったんでしょうか?
小川選 a.k.a. 風や木々にしか発音出来ない(以下、小川) : 僕はラップがルーツにあるんで、ヒップ・ホップのバンドをやっていたんです。中村さんの音源がネット上に上がっていたのを聴いて、自分がやってきたラップを中村さんのトラックに乗せられたらいいな、と思って連絡を取りました。
——おふたりの音楽的ルーツについておうかがいしますけど、小川さんが音楽に目覚めたのはいつ頃なんでしょう?
小川 : 18歳位ですかね。その頃は、ヒップ・ホップが好きでしたね。いまはもうラッパーという意識はないんですけど、やっぱりルーツにヒップ・ホップがあるんで、やりたいこと、出来ることは全部やろうという気持ちです。
——中村さんのルーツはなんですか?
中村 : 僕のルーツはエックス・ジャパンですね(笑)。ビジュアル系とか、メタルです。
——お、意外な名前が出ましたね。それはベースを持ったときから?
中村 : 最初はギターだったんですよ。エックスがきっかけでギターを始めまして。それから、2年位前に、ベースのメンバーが定まらないので、ベースに転向して自分が弾くようになりました。
——今日もストリート・ライヴをしてきたそうですけど、これまでもストリート・ライヴは頻繁にやってきたんですか?
中村 : そうですね、夏場は。
——暖かくなったらやる、という(笑)?
中村 : そうですね。冬場は、ちょっと(笑)。
一同 : (笑)。
——ストリートでバンドのCD‐Rを売ったりしてるんでしょうか?
中村 : そうですね、それはやってますね。
——今日も売れました?
中村 : それが、今日はCDを忘れてきてしまいまして(笑)。
——駄目じゃないですか(笑)。じゃあ話を変えて、アルバムについてお伺いしましょう。『野生の馬』というタイトルにはどのような意味を込めているんですか?
小川 : 自分のリリックのなかから抜擢して「野生の馬」という曲を作ったんで、そこから題名にしたんです。
中村 : あと、ジャケを馬にしようという話が最初にあったんじゃないかな? 馬が走っているジャケにしようというのが漠然とあって、それでタイトルが『野生の馬』というのが相応しいんじゃないかな、と。
——そういえば最初にお訊きしようと思ってたんですけど、「自由模索クラブ」という特徴的なバンド名の由来ってなんですか?
小川 : 以前、フリースタイルをやっていたときに、なにも考えずに出てきた言葉が「自由模索クラブ」だったんです。それが頭の片隅に引っかかっていて、ふたりでバンドをはじめるときに「これでやってみませんか?」って言ったら中村さんも「いいね」って言ってくれて。
自然と湧き出てくる言葉には勝てないですよね(小川)
——なるほど。全体的に言葉がギュっと詰まっていて、メッセージ性がすごく強いアルバムだと感じたのですが、どんなことをアルバムを通して伝えたかったんでしょうか?
小川 : 人に伝えるというよりは、精神世界みたいなものについて、人生とか命とはなんなのかといったことについて模索していくなかで、気付いたものを歌詞の中に入れているだけですね。
——届けたいメッセージがかなりあるのかなと思いましたけど、むしろご自分の内的な世界が出てきているということですか?
小川 : そうですね。自分が発見しているものに関しての答えを自分で出して、納得しているという感じです。
——中村さんは小川さんが書く歌詞に関してはどう感じているんでしょうか?
中村 : う~ん…。あまり深くは理解できてないかもしれないですけど(笑)。質感というか、肌触りとしては好きな言葉ですね。言葉の耳触りは好きですね。
——それはこの歌詞が好きとか、ではなく全体的に?
中村 : 単語とかですかね。サビの単語がすごくひっかかったりだとか。
——それはさっきおっしゃった「自由模索クラブ」という言葉が出てきたときのように、小川さんのなかから湧き出てくるもの?
小川 : そうですね。やっぱり考えずに出てきた言葉のほうが良いですよね。
——アルバム制作にあたって言葉で悩んだりしたことはありましたか? 溢れ出てきた感じですか?
小川 : そうですね~。まあもちろん考えながら作ってる部分も大きいですけど、やっぱり自然と湧き出てくる言葉には勝てないですよね。
——そういう言葉は、どういうときに出てくるんですか?
小川 : やっぱり1回経験したことじゃないと詩には書けないので、なにかを経験するたびに、次に曲を作ろうっていう気持ちになって出てくるんです。それであとから考えてみると、あのときの経験が生きているんだな、と思うことがありますね。
——歌詞は全体的にはシリアスですし、聴く人によっては重く感じる人もいると思います。小川さん自身どう思いますか?
小川 : う~ん…。悩み体質なんですかね(笑)? 考えがとまらない、みたいな(笑)。
中村 : 趣味が悩むこと(笑)。
小川 : まあ、うん。そうですね…。
——いや、そんなにここで悩まなくても大丈夫です(笑)。
一同 : (笑)。
小川 : これだけ物質では豊かなのに、1年で3万人の人が自殺する国だとか、やっぱりなにかのバランスがおかしくなっているんじゃないかなと思うんですよ。だから、精神世界というか、心の世界が基本になっているんじゃないのかな、っていうことを突き詰めていくにつれて、「肉体と魂と霊」、3つのバランスを取れるような視点が人を幸せにしていくんじゃないかな、と思うんです。そういうことは歌詞に込めてますね。
——例えば、「蜘蛛の糸」っていう曲がありますけど、まさに「救い」がテーマの歌ですよね。
小川 : 本当、そうですね。
——そういう、小川さんのなかでのつねひごろの葛藤が表れているということでしょうか?
小川 : そうですね、はい。昔観た映画のなかで、「誰も地獄に行かないよ。ここが地獄だからね」っていう言葉があって、頭に残ってたんです。「蜘蛛の糸」を書いていたときに、ああ、あのときの映画のセリフが入ってるんだな、って気がついたんですよね。
僕の伝えるイメージって大抵「死に向かう」みたいなことなんですよね(笑)(中村)
——今のお話はいかがですか、中村さん?
中村 : なるほどなぁ~と(笑)。
一同 : (笑)。
小川 : あんまり話さないんでね、普段。この曲がどうしてできた、とか全く話さないんで(笑)。
——(笑)へぇ~、なんでですか? おふたりで突き詰めていらっしゃるのかと思いましたが。
中村 : いや、ほとんど丸投げですね(笑)。
——(笑)。でもいまの小川さんの話を聞いて、なるほどな、と。
中村 : まあ、自分の曲に歌詞をつけてもらうときは、多少はイメージを伝えますけど。でも僕の伝えるイメージって大抵「死に向かう」みたいなことなんですよね(笑)。
——中村さんの曲に関するイメージは“死”が多い。
中村 : ほぼ、そうですね(笑)。
——ほぼ(笑)! それはなにか原因はあるんでしょうか? 人は生まれてから死に向かっている、とか。そういう刹那的なことでしょうか?
中村 : いや、そういう現実的な死というよりは、「異界」というか、この世ではない所とか。雲の上とか。
小川 : 涅槃とかね。
中村 : あと夢のなかとか。そういうイメージで曲を作ることが多いんで。あまり現実的なイメージでは作っていないかもしれないです。
——そういう音楽の発想というのは、ご自分ではどこからきていると思いますか? なにかしらの音楽体験から影響ってあると思うんですけど。
中村 : たぶん、童謡だと思うんです。
——童謡が死と繋がっている?
中村 : 例えば、「シャボン玉」ってあるじゃないですか? 実は亡くなった子どもが空に昇っていくっていう歌詞だったりとかいうことがあるじゃないですか。
——ああ、「シャボン玉」ってそうなんですか。
中村 : たぶん、そうだったと思うんですけど(笑)。そういう裏に込めた意味みたいなものがあれば、おもしろいかなと思っていまして。
——じゃあ小川さんにイメージを伝えるときには結構そういう話をするわけですか?
中村 : 「フランダースの犬」のラスト・シーンを…。
一同 : (爆笑)。
——思い浮かべて悲しくなっちゃいますね(笑)。小川さんはそれに対してどう思われてますか?
小川 : 自分も最近、「涅槃」だとかそういうイメージの曲を作っているんで、まあ最近ですけど。合ってるなと思いますけどね。
——こういう場で話すと、改めてお互いのことがわかるんじゃないですか?
小川 : 本当、そうですね(笑)。
中村 : う~ん、そうですね(笑)。
——(笑)。本当に普段は全然話さないんですか?
小川 : そうですね。もう、作って「ああ、いいね~! 」っていう感じで。
——それで伝わっているということですか?
中村 : まあ、イメージとズレていなければ。
——細かいこともわかりあえている関係なんですね。
小川・中村 : そうですね。
人間の目に見える以外の所に関心がいけばいいな(小川)
——改めて『野生の馬』の曲について聴かせて欲しいんですけど、1曲目の「地球の果実」はどちらが書いた曲なんですか?
小川 : これは詞も曲も僕ですね。あとは、「僕らの未来」「揺れる丘」ですね。
中村 : 「ゴリアテ」はバンドでセッションした曲です。
——「蜘蛛の糸」は?
小川 : 曲は中村さんです。
——ここで中村さんの“死”のイメージが出てきてるわけですね。
中村 : そうですね。アルバムのなかで僕の曲はこれだけですね。
——「Shanti Shanti Shanti」は?
小川 : これはどっちも自分です。これは“平穏”とか“至福”とか。これなんかは涅槃というか、所謂天国へ行ったときのイメージで書いてます。
——そういう、宗教的なイメージっていうのは、なにかルーツがあるんでしょうか?
小川 : ああ、自分がキリスト教だったというのがあるんじゃないですかね。自分は小さい頃にやめてしまったんですけど。小川選(エリム)っていう名前も聖書から取ってきてるんで。
——ああ、そうなんですね。
小川 : 神がいるというのが日常だったんですけど、いまは客観的に神だとか宗教というものをみて、音楽を通して探索している感じです。「Shanti Shanti Shanti」というのもインドのヨガの言葉なんで。
——そういう、小川さんのルーツと、そこから離れてみつめなおした物がはっきりと音楽に表れているんですね。
小川 : はい、それは完全にそうですね。誰もが幸せになれるなら科学でも宗教でもどちらでもいいんじゃないかと思っています。すべてのことに良し悪しがあって情報の自由化がどんどん進むにつれて科学と宗教が仲直りする時代が来ているんじゃないかと自分は思っています。
——それでは改めて、今回のアルバムに関しての想いをそれぞれ訊かせていただけますか?
中村 : いままでやってきた集大成ということで、代表作だけを収録した自信作です。初めて自由模索クラブを聴く方にはもってこいの1枚ですので、ぜひ聴いて欲しいですね。
小川 : 物質的なもので考えると、世界がいま、どん詰まりにきているんじゃないかな、と。次の人間の進化の為にはやっぱり精神世界とか、心のバランスを取らないといけないな、と思っていまして。だから、自分たちの曲を聴くことで少しでもそういう所に気が付いて欲しいですね。人間の目に見える以外の所に関心がいけばいいな、と思っています。そんなアルバムですね。
——ひとつひとつの曲がメッセージなんですね。
小川 : はい、そうですね。
——最後に、バンドとしての目標があれば教えて下さい。
中村 : 自分たちでD.I.Yで音楽を作って売っていけるようなシステムが構築できたら良いな、と思っています。
小川 : この前、友人から電話がかかってきて、彼が仕事で疲れているときに「僕らの未来」って曲を聴いたら、「ああ、俺、もうちょっとがんばれるわ」と思ったらしくて。そういう気持ちをみんなに感じて欲しいと思うんです。そうするために、いまはとにかく知名度を上げたいですね。多くの人に聴いてもらうために。僕自身が毎日の生活のなかで、僕は僕で良かったんだっていう、自分を自分で認める様な経験を沢山して、それを音楽にしていきたいです。リスナーのほうが同じ気持ちになって頂けたら本当にありがたいです
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LIVE SCHEDULE
2013年4月30日@DAIKANYAMA LOOP
出演 : 自由模索クラブ(BAND SET) / MASA (PercussionSolo) / SANABAGUN / mesen.
開場 : 18:30 / 開演 19:00
料金 : 前売 2,300円 当日 2,800円 (+1ドリンク)
PROFILE
自由模索クラブ
Vo / Rap / G : 小川選
Ba / PC : 中村つよし
Dr : noinoi
Per / Perform / Rap : ZAMBARA
略歴
2009年結成。
2010年~ Voの小川と、バンドではBa担当の中村がアコースティック・ユニット「自由模索クラブ・アンプラグド」として都内を中心に活動開始。
2011年9月 「自由模索クラブ・アンプラグド」で4曲入り1stデモを発表(ライヴ会場のみで販売)
2011年11月 デモ収録曲「日だまり」がCRJ-tokyoチャートで2位にランクイン。
2012年 バンドのアルバム・レコーディング。
2013年2月 前任のドラムが脱退。新ドラマーにnoinoiを迎える。
2013年2月 1st ALBUM『野生の馬』発表。
現在、代官山LOOPを中心に活動中。