コンプレックスにはコンプレックスを!!ーーthe coopeez・藤本浩史 × 忘れらんねえよ・柴田隆浩による、世にも奇妙なフロントマン対談
京都在住のDIYロック・バンド、the coopeezが、自主レーベル「chadult(チャダルト)」より3rdフル・アルバム『rucksack』をリリースした。オルタナティブ・ロックを基調とした変幻自在な楽曲群と、フロントマンである藤本浩史のコンプレックスから発する言葉の力で、 世代や性別を飛び越えて中毒者をじわじわと増やし続けている。一度見たら忘れないアートワークも全て藤本が手掛けており、まさに自給自足バンドといえる彼ら。本作のリリースを記念し、忘れらんねえよの柴田隆浩と藤本の対談が実現。形は違えど、コンプレックスを原動力にロックする2者の対談を、クリエイティビティ溢れるMVとともに、じっくりお楽しみあれ!!
the coopeezの3rdアルバムを配信スタート!!
the coopeez / rucksack
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC
【配信価格】
単曲 200円(税込) / まとめ購入 2,000円(税込)
【Track List】
1. イントロダクション / 2. イチカ&バチカ (album ver) / 3. リュックサック / 4. バランスの鬼 / 5. 長所と短所のブルース / 6. ラストチャンス / 7. ダイハード / 8. 未知との遭遇 / 9. バックトゥザフューチャー / 10. マイウェイマイラブ / 11. ターミネーター
対談 : the coopeez・藤本浩史 × 忘れらんねえよ・柴田隆浩
キャッチーで耳に引っかかるメロディと特徴的な声、ロック言葉を排除したような飾らない歌詞、内省的でありながら大衆的であろうとするアンヴィバレントな感情がほとばしるthe coopeezの3rdアルバム『rucksack』。冒頭の「イチカ&バチカ」から洋画のタイトルが並ぶ後半へと続きラスト〈寂しくて死にそうな声、それが誰かを生き返らす〉と歌う泣きメロ「ターミネーター」を聞き終わる頃には“このバンドは、俺だ!”というくらい感情移入してしまうのではないだろうか。
こんなによいアルバムを作ったthe coopeezのヴォーカル・ギターであり作詞・作曲を手掛けている藤本浩史は、全作品のアートワークも手掛けるデザイナーでもある。我々凡人から見たらそれこそ「才能の固まり」としか思えない藤本だが、1stアルバム発売時からひたすら自らを「コンプレックスの固まり」と称している。そんな藤本が今回『rucksack』をリリースするにあたり、忘れらんねえよの柴田隆浩を対談相手に指名した。藤本の“安定のロー”っぷりにたじろぎつつも、「the coopeezは絶対にいける!」と絶賛する柴田との「目には目を、コンプレックスにはコンプレックスを」対談をどうぞ。
インタヴュー & 文 : 岡本貴之
写真 : 大橋祐希
あんまりいい思いをしたことがないんでね、人生
ーー今回は、the coopeezの3rdアルバム『rucksack』発売記念として、藤本さんのご指名で柴田さんとの対談を企画させていただきました。柴田さんを対談相手に選んだのは、どんな理由があったんでしょうか?
藤本浩史(以下、藤本) : 今年の3月に僕らのイベントで、the coopeez、忘れらんねえよ、イナズマ戦隊の3マンをやったんです。そのときに単純に、「あ、こんなに気に入ってもらえたんや」みたいな驚きがあって。
柴田隆浩(以下・柴田) : めちゃくちゃよかったんですよね。以前、京都MOJOに出させてもらったときにCDを頂いて帰りの車の中で聴いたら「途中の人」(2ndアルバム『newbalance』収録)に衝撃を受けてリピートしまくって。PVもまたシンプルでめちゃくちゃよくて。でもライヴをガッツリ観たのはこの前の対バンのときです。
藤本 : そうですよね。前の渋谷屋根裏の(対バンの)ときはほとんど…。
柴田 : いや、俺たぶん自分のことしか考えてなかったと思うし。俺だいぶ別人でしたよね(笑)、見た目的にも。
藤本 : そのときはほとんどしゃべれなかったですね。みんな酔っ払ってたんで、忘れらんねえよ陣が(笑)。酒田さんとかも目がイっちゃってて(笑)。梅津さんはめっちゃ体調悪いとかで楽屋ですっごいテンション低くて(笑)。とんでもないバンドだな、みたいな。
柴田 : わはははは! 底辺バンドだなっていう(笑)。
ーーその渋谷屋根裏での対バンはいつ頃の話ですか?
藤本 : それは3年前位ですかね(※2012年5月16日)? 前の前のアルバムを出したくらいのときに、当時渋谷屋根裏でブッキングしてたブービー君のブッキングで一緒になって。僕はそのときぶっちゃけ、うらやましいなと思いましたね。「キテるよ~!」みたいな感じでしたから。
柴田 : うっそ!? そんときあんまりキテなかったし今もあんまりキテないっすよ(笑)。
藤本 : いや、ブービー君が「今、忘れらんねえよ、すげえんすよ!」って。
柴田 : 忘れらんねえよが結成してそんなに時間が経ってない頃で、渋谷屋根裏の店長の赤城さんという人が「なんかオモロい奴らがいる」って感じで、小さいグループの中で盛り上がってたんですよ。でも動員5名みたいな(笑)。そんな感じの頃だった気がします。
藤本 : 僕は「すごいっすよ最近」みたいな感じで聞いてて、PVとかも見ていて。「悔しいなあ」という気持でしたね。そこからは全然、対バンとかはなくて。その辺くらいから来たじゃないですか、忘れらんねえよ。
柴田 : 「この高鳴りをなんと呼ぶ」で。
藤本 : そっからもう、すごいことになってるぞみたいな。
柴田 : 実際にはそんなにすごいことにはなってなかったですけどね(笑)!。
藤本 : いやいや(笑)。「なんなんだ僕らは」みたいなくらい、ウンともスンともいってなかったんで。まあ今もいってないですけど。「チクショー!」みたいな(笑)。
柴田 : ははははは!
ーーお互いに「何ともなってない」とおっしゃってますけど、2バンドとも評価が高いと思いますし、ファンも増えていると思うんですけど。
藤本・柴田 : いやぁ~…。
柴田 : これはバンドマンの宿命なんですかね? どうしたって上を見ますよね?
藤本 : そうですね。
柴田 : なんで俺良い曲書いているのにこれを世の中に伝えられない無能野郎なの? ってすげえ自分に腹が立ってくるんですよね。色々考えてドミノとかやるんですけど、ずっと横ばいなんですよ。ハネなくて次のステージに行けなくて。
藤本 : 本当ですか? 対外的に見たら全然そんなイメージないですけど。
柴田 : ああ、それはそういうふうに見せてるんです(キリッ)。
スタッフ一同 : (笑)。
藤本 : だから、聴かすためにこそこういう企画(ドミノ倒し等)をしているということですよね。それはめっちゃすごいなと思うんですよね。
柴田 : 今回のthe coopeezのアルバム『rucksack』に入っている「イチカ&バチカ」はかなり好きなんですけど、要はそういうことを歌ってくれているというか。〈愛せば愛す程、言えなかったよまた今日も〉とか、“一生懸命やってるのに上手くいかない”ということを、こんなに美しく書けるかみたいな。俺このメロディも超好きです。
藤本 : ああ、ほんますか(照笑)。あんまりいい思いをしたことがないんでね、人生。
柴田 : わははははは!
藤本 : そもそも、そこから来てるんですよ。昔から、幼少の頃からの。
柴田 : 幼少の頃から(笑)!
藤本 : 柴田さんはどういうお子さんだったんですか?
柴田 : 僕は、浮き沈みがありましたね。イケてる時期とイケてない時期と。小学校の頃はイケてました。
藤本 : もう、クラスの人気者的な。
柴田 : そうそうそう。勉強も出来てスポーツも出来るみたいな。でも中学校で激落ちして、「2軍」って罵られて。それですげえコンプレックスが出来て。で、高校デビューしたんですよ。バンドというものを見つけて。そのときはブルーハーツが地元で流行っていてコピバンをしていたんですけど、それを上手くやれてたから、そこで浮上したりとか。だから結構浮き沈みがあります。
藤本 : 僕は常にこうやったんで(手で低空を飛ぶアクション)。
柴田 : わははははは!
藤本 : 常にコンプレックスを培って生きてきたのでこういうことになってるんですよね。
俺、eastern youthと同じものを感じるんですよ
ーーインタヴューでも常にコンプレックスという言葉が出てきますが、それは作品を出すにつれて払拭されたりしないんですか?
藤本 : 変わらないですね、たぶんこれからも。幼少期からずっと、あんまり相手にされない人間だったんで。クラスの人気者的な時期を味わったことが僕はないので。だから、上がってる時期を知ってるのは逆にツラいかもしれないですね、下がった時が。僕はもう、常に下がってるのでそういう意味では安定しているというか。「安定のロー」みたいな(笑)。
柴田 : わははははは!
ーーどうすれば、上がったと実感できそうでしょうか。
藤本 : そうですね、バンドで結果を出したいなと。いうても、(ツイッターも)柴田さんの10分の1くらいのフォロワーですからね、僕。
柴田 : あのフォロワーも、残酷に戦闘力みたいになってるじゃないですか? けど俺はもう、抜かれたバンドのフォロワーを見ない能力がついていて。
藤本 : (笑)。あ、そのアカウントにいったとしても。
柴田 : いったとしても見ないです。そこに目の焦点を合せない能力が身についてるので。これは、練習すればできるようになります。
藤本 : マジすか。逆に自分のフォロワー数を見ない技を身に着けるのはどうですかね。
一同 : (爆笑)。
藤本 : 「みんなこんなに行ってるんや! 俺はまあそれのちょっと下くらいかな」みたいな。
柴田 : なるほど! どっちも身に着けられれば最強ですね、それは。
ーー何に共感し合ってるんですか(笑)。2人共もっと自信持ってくださいよ! 2人共、いい曲書くんですから。
柴田 : 『rucksack』を聴かせてもらった感想なんですが、すごく表現が純粋に見えるんですよね。コンプレックスを感じてきた人が、ある意味一回も汚れていないわけじゃないですか。いい思いをしていない、コンプレックスがどんどん深化しているという。特に「リュックサック」の〈やり続け、願い続ける姿は、花よりよっぽど綺麗じゃないか〉って、これは1回も汚れてなくてずっとローで来た人しか到達できない、すっごい純粋な表現なんじゃないかなって思って。自分の歌詞は割とスカすことが多いというか、あえて笑わせようとか。それは俺の武器だとは思っているんですけど。そうじゃない、本当に訥々と静かに思っていることを丁寧に話している気がして。それが僕にはめちゃくちゃ刺さるんです。俺、eastern youthと同じものを感じるんですよ。
藤本 : それは畏れ多すぎですね(笑)。
柴田 : いやこれ、マジですよ。俺「踵鳴る」とか聴くと泣くんですよ。〈解答(こたえ)は知らない〉とか〈標識(しるべ)はいらない〉とか、あれは嘘じゃなくて本当に思っているじゃないですか?
藤本 : 僕も大好きな曲です。
柴田 : それと同じで汚れてない。eastern youthはそれを絶叫しているけど、the coopeezは静かに訥々と思ったことをゆっくり喋っているような。それは1回も汚れてない人しか言えない言葉のような気がして。そこがすごく好きなところなんですよね。
ーー聴いている方からすると、藤本さんも柴田さんもコンプレックスを曲に昇華できる人だと思っていて。でもそれをもっと病んだ感じで表現する人もいると思うんですが、お2人の作る曲はそうした病んだ感じには決してならないですよね。
柴田 : そうですね。だって、「リュックサック」もサビで前を見るじゃないですか。「イチカ&バチカ」も〈必ず想いは伝わるはずさ〉って。“しんどいな”で終わらないですよね。それは藤本さんがそういう考えの持ち主なんですか? それとも歌くらいはそうしたいみたいな?
藤本 : 僕は自分のことを弱者だと思っているんですけど、弱者が最終的に「弱いなあ~」で終わったら、「弱い」で死ぬなと思って。そこは何とかならへんかなって。諦めたくないな、という所でずっと「安定のロー」で生きてきたんですけど。この歳になったら、うだつの上がらない感じが段々武器になってくるんじゃないかと思ってきて。
柴田 : うん、だってそれをむき出しにしてますよね、今回。
藤本 : そうしたら、過去の自分が救えるぞみたいになって。だからそれに対してコンプレックスはありますけど、否定をしようとか無いことにしたいとは思わないですね。
柴田 : あと、そういう部分を隠したくもないという部分もないですか? 全部出した方がカッコイイじゃん、みたいな。
藤本 : そうですね。そういう、さらけ出した感のある人が好きですね。それこそOTOTOYのeastern youthのインタヴューを読んだりして、「たまんないなあ」って(笑)。経済が破綻しかかってる、とか。いいか悪いかはわからないですけど、そこまで言える吉野さんって本当にすごいなって。
柴田 : 信頼できますよね。ギターマガジンで吉野さんが連載してる「ヨノナカバカナノヨ」でもすごい愚痴ってたけど(笑)。「梅雨死ね」とか(笑)。
藤本 : でもやるっきゃない、みたいな所に絶対いはるんで。それがもうこの歳になるとグッときますね、そういう生き方が。
柴田 : 「イチカ&バチカ」って本当に好きなんですけど、「the coopeezもっと売れてよくね!?」って思うんですよ。例えば、映画「モテキ」に出たN'夙川BOYSの「物語はちと? 不安定」みたいに、知られたら絶対行くと思うんだよなあ。俺もそうなのかもしれないけど、聴かせるまでに至らない悔しさというか。聴かせれば絶対イケるって、藤本さんも思ってる気がするんですけど。
藤本 : 思ってるんですけど、でも、全然火つかへんなあみたいな(笑)。その努力がやっぱり足りないんでしょうね。
柴田 : いや、でもそれは努力してもどうにもなんないものもありますよ。ドミノは12万人に観られたんですよ。でも曲のYouTube再生回数は12万なんて全然行かないし。「なんだよそれ!」って(笑)。要は(the coopeezが)行かないのは、ただそれくらいの理由でしかないって言いたいんですけど。後輩にも「途中の人」を聴かせたんですよ。超気に入ってCDを探してましたけど、なかなか見つからないって。
藤本 : この前もCDの返品の請求がハンパなくて…。
柴田 : ははははは(苦笑)!
自分が聴きたいものを作りたいという気持があるんですよね
ーー返品の話までさらけ出しますか(笑)!?『rucksack』は自主レーベルchadultから初めてのリリースなんですよね。
藤本 : はい、今回から。
ーータイトル通り、リュックサックのように色んなものを背負って臨んでいるわけですけど、どういった理由で自主レーベルを立ち上げたんですか?
藤本 : 単純に、前のレーベルがレーベル業を終了することになって。それから誰も相手にしてくれないんで、じゃあもう自分らで出すしかないという感じで。だから、「D.I.Y」とは言ってますけど、誰もやってくれないというだけで(笑)。PVも誰も作ってくれないので、自分でやるしかないなと。
柴田 : 歌詞ってどういうふうに書いているんですか?
藤本 : 嫌なことがあったか、仕事でツラいことがあったとか、フラれたとか…。負の作用によってエネルギーを発してしまうところがあって。「こういうふうに作ろう」って作ることは今のところはないですね。
柴田 : だから俺は純粋さを感じるんだと思ったな。すげえ純粋な感じがするもん。
藤本 : 個人的には自分の曲は世界で一番自分が好きなんですけど(笑)。それはたぶん自分が聴きたいものを作りたいという気持があるんですよね。
ーーそもそもコンプレックスがあってもバンドを組んで人前で歌えたのはどうしてなんでしょうか。
柴田 : やっぱり曲に自信があるからですよ。自分が作る曲がすごく良い曲だから聴いてほしい、聴いてもらって褒めてほしい、認めてほしいからですね。歌が伝わって「おお、これ超良い!」「だろ? 一緒に歌うぞ!」みたいな。そのためにやってますね。
藤本 : 柴田さんがバンドをやり始めた理由ってなんだったんですか?
柴田 : 中学で「2軍」になって、スポーツいまいち、ルックスもダメ、ヤンキーにもなれなくて。いまだにコンプレックスなんですよね、中学生の頃の「1軍」「2軍」って。それはずっと変わらないんですよ。それをひっくり返したくて、なんかないかなって思ったときに、俺は歌が得意だしバンドがあるぞって。それで中学のときに始めたんです。いま続けている理由はまた別になってきましたけど。
藤本 : 僕は一時どころかずっと2軍だったんで(笑)。理由はわからないですけど、人前に立ちたい、所謂フロントマンと言われる人に単純に目線が行ってた感じですね。吉井和哉に憧れてましたから。兄貴の影響でTHE YELLOW MONKEYのビデオとか観てて。「カッコイイなあ」って。モテたいとか売れたいとかじゃなくて取りあえず人前に立ちたいなって。根っこは説明不能なところで動いていたんですけど、その「2軍」のせいかもしれません。ひょっとして「1軍」で「高校でも大学でも軽音入ってバンバンライヴやってました!」とかだったら満足していた可能性もあるかもしれないですね。僕は生まれて初めてのライヴが24歳だったんで。「1回人前に立ちたい」から止まらなくなってしまった感じですね。
ーー2人共満足していないから良い曲が書けるんですかね?
柴田 : でも満足したいですけどね(笑)。僕も「満足できないから曲が書けるんだ」って言い聞かせるんですけど、満足したらもっと良い曲が書けるんじゃないかと思うし(笑)。
藤本 : そうですよね(笑)。
柴田 : 確か「イチカ&バチカ」をライヴで聴いたときに、前にいる女の子が泣いてたんですよね。サビが「ミスチルか!?」って思ったんですよ。
藤本 : ははははは!
柴田 : 俺はそこで遭遇して一発でやられたから、絶対いけると思うんだけどなあ。
藤本 : ありがとうございます。僕は『犬にしてくれ』を聴いて、今までの忘れらんねえよの感じからすると、挑戦的なアルバムだと思うし、攻めてると思ったんですよ。そういう意味では勇気のあるアルバムだなって。「ここじゃないけどいまなんだ」というのはある種の賭けというか、どっぷりしてる曲ですよね。僕らの「リュックサック」もメンバーがいいって言うから採用したんです。僕も作ったときはめっちゃ良いと思ったんですけど、これ一般的なお客さんが聴いたら誰もいいって言わないんじゃないかなって。
柴田 : いや、そんなことないでしょう。
藤本 : 一般的なお客さん向けには暗い感じかなって思ったんですけど、メンバーの後押しでタイトル曲にまで持ちあがったんです。(『犬にしてくれ』は)そういう感じのディープな要素を恐れずふんだんに盛り込んでいる忘れらんねえよのアルバムやなって。遊び心もあるし、メロディもちゃんとあるし。あのグランジ・サウンドにあの歌詞、このバランス感は他にはないなって。
柴田 : けど、まだ「そこにトライしたのね」っていう音楽的な構造がどこかで見えちゃうじゃないですか。でももっと突き詰めていけば、聴いてくれた人が何も考えずに「ウォ~すげえ!」って理屈抜きでアガれる音楽が作れるんじゃないかなって。そこがまだ俺らのこれからの伸びシロなんじゃないかと思ってるんですけど。
藤本 : そのバンドにしか出せないバランス、ブレンド感ですよね、「天下一品」のスープじゃないですけど、黄金比はまだまだあるんじゃないかと思いますね。
柴田 : そうそうそう(笑)。要は諦めないってことなんですよ。できたら絶対ハネるはずっていう。
ラーメン屋とバンドって似てますよね、仕組みが
ーー今作には「バランスの鬼」という曲も入っていますね。
藤本 : 自分らにしか出せないバランスこそが新しいんじゃないかというのもあって。そう考えると世の中なんでもバランスだなっていう意味で、とんでもなく確信めいた曲だと個人的には思っているんですけど。それが伝わるか伝わらないかは別として(笑)。YouTubeの再生回数ってどこから生まれるのかなって思うんですけど、すごいバンドが1日で再生される分が僕らの1年2年くらいで(笑)。
柴田 : ははははは! ゲス極(ゲスの極み乙女)の川谷君が言ってたけど、スマスマか何か地上波に出たら「100万回増えましたよ」って。「くれっ! 10万回分けてくれっ!」(笑)。俺はYouTubeの再生回数ってラーメン屋に並ぶ人の数みたいな感じだと思ってます。
藤本 : ラーメン屋とバンドって似てますよね、仕組みが。
柴田 : 似てる! 似てると思う。流行っている所には加速度的に人の行列が出来て行くんですよね。でも結果音楽に触れてくれればなんでもいいんです。
藤本 : 結局美味けりゃなんでもいいんですもんね。
柴田 : うん、だってゲス極はいいもんね。あれはマジで美味いラーメンだと思う。俺めちゃくちゃ好きです。まあ店構えってバンドのビジュアルである程度決まっちゃうわけじゃないですか? 僕らで言うと、辛気臭いおっさんが3人立って「いらっしゃいませ~」みたいな(笑)。味はすっごい美味いんだけど。
藤本 : 京都の僕らの住んでいる近くに一乗寺という街が所謂ラーメン街みたいになっていて、いろんな店があって色んなお客さんがいるんで、めっちゃわかるんですよね(笑)。でもやっぱり美味けりゃ最終的には残ってるなって。
柴田 : そうそう、お客さんは絶対頭がいいから。ラーメン番組に出て行列が出来ても、最終的に不味いと無くなるから。
藤本 : でもそこで安定のラーメン屋ってあるんですよね。派手じゃないけど、ずっと食べられ続けている店が。僕らは(バンドとして)そこを目指すしかないなと。派手さも若さも僕らにはもうないし、じゃあちゃんと美味いものを作るしかないなって。今は「しぶとく作るぞ!」って思っています。
RECOMMEND
the coopeezが放つ待望の2ndフル・アルバム。さまざまなジャンルを取り入れた悪ふざけ満開な楽曲と、コンプレックス全開の言葉が絶妙にブレンド。一度聴いたら耳から離れない、中毒性バツグンの1作。
>>the coopeez × THEイナズマ戦隊のロック対談はこちら
忘れらんねえよ / 犬にしてくれ
忘れらんねえよの集大成。バンドの命運握る勝負のフル・アルバムが遂に完成! サウンド・プロデューサーに、特撮のメンバーであり、BABYMETAL、ももいろクローバーZなど、ロックと他ジャンルを結ぶ天才プロデューサー「NARASAKI」氏を迎え入れ、ヘタレ・サウンドを一新! 「グランジ由来のへヴィなサウンド × 高速のビート × 超しょうもない歌詞」にて発明を起こす!
ザ・ビートモーターズ / The First Cut is The Sweetest
前作発売後、ツアー / フェスなどライヴ活動を勢力的に行ってきた彼らの約1年ぶりの作品。「ちくちくちく」は會田茂一プロデュース。「足しすぎず」「引きすぎず」の絶妙なサウンド・プロダクト。現時点での集大成でもあり、次のフェーズへ昇り始めた彼ら。計算されたシンプルさとキャッチーさ満載、バラエティに富んだ傑作です! 今回のthe coopeezのリリース・ツアーでも各地で対バン予定なので要チェック!
LIVE INFORMATION
the coopeez "rucksack" release tour
レコ発京都編
2015年8月22(土)@京都 MOJO
料金 : ADV / DOOR 2,800円 / 3,300円 (+1drink)
時間 : OPEN / START 18:00 / 18:30
出演 : the coopeez / おとぎ話 / ザ・ビートモーターズ
2015年8月23日(日)@神戸 ART HOUSE
2015年8月27日(木)@大阪 Pangea
2015年9月5日(土)@高松 TOONICE
レコ発東京編
2015年9月13日(日)@東京 TSUTAYA O-CREST
料金 : ADV / DOOR 2,800円 / 3,300円 (+1drink)
時間 : OPEN / START 18:30 / 19:00
出演 : the coopeez / Large House Satisfaction / tricot / the twenties
2015年9月20日(日)@長崎 ホンダ楽器アストロスペース
2015年9月21日(月/祝)@福岡 四次元
2015年10月26日(月)@名古屋 APPLO BASE
PROFILE
the coopeez
Vo / Gt 藤本浩史、Gt 小川宏実、Ba 山本聡、Dr 森田夏音
2004年8月 : 京都にて結成。幾度かのメンバー・チェンジを経て2010年現編成に。
2009年4月 : 1st ミニ・アルバム『BANPAKU』リリース。
2010年4月 : タワーレコード限定シングル『バネッサ&ハルッサ / チャダルト君』リリース。
2010年10月 : タワーレコード限定シングル『本当のAボーイ』リリース。
2011年11月 : タワーレコード限定シングル『カレーとライス』をリリース。
2012年12月 : 1stフル・アルバム 『GOLDENTIME』リリース。
2013年6月 : アルカラ主催〈ネコフェス2013〉出演。
2013年7月 : 〈JOIN A LIVE 2013〉出演。
2014年5月 : 2ndフル・アルバム 『newbalance』リリース。
過去、〈MINAMI WHEEL〉、〈shimokitazawa SOUND CRUISING〉、〈shimokita round up〉、〈Niigata Rainbow Rock Market〉等、大規模イベント多数出演。今年は、2度目となるアルカラ主催〈ネコフェス2015〉出演決定、〈SAKAE SPRING 2015〉にも出演。
現在、京都を拠点に全国的に活動中。作詞、作曲、アートワークに至るまで、全てVo藤本が手掛ける自給自足バンド。
忘れらんねえよ
ここじゃないけど、今なんだ。 僕たちは、この胸の高鳴りを信じる。
柴田隆浩(ボーカル、ギター)
梅津拓也(ベース)
酒田耕慈(ドラム)