
2013年kilk recordsの新連載、第6回目の相手は劔樹人
kilk recordsの主宰者、森大地が、さまざまなゲストとともに音楽業界のありかたについて語り合う対談「kilk records session 2013」。6回目となる今回の対談相手は、パーフェクトミュージックの劔樹人。神聖かまってちゃんのマネージャー(今年8月に復帰)であり、あらかじめ決められた恋人たちへのベーシストとしても活動している劔。一見すると異色の組み合わせにも思える初対面の2人だが、ミュージシャン / レーベル運営という両輪で活動する森とは同い年でもあり共通点も多い。マネージャーという影の存在でありながら、音楽業界で確固たる存在感を発揮している劔の“人間力”に注目した森との対談は、今後のコラボレーションへの発展も示唆したものとなった。
進行・文 : 岡本貴之
kilk records(森大地)
2010年、Aureoleの森大地により設立。「精神に溶け込む、人生を変えてしまうほどの音楽との出会い」。kilk recordsはそういった体験を皆様にお届けすることを第一に考えております。オルタナティヴ・ロック、ポスト・ロック、エレクトロニカ、テクノ、サイケデリック、プログレッシヴ、フォーク、アヴァンギャルド、アンビエント、ヒップ・ホップ、ブレイクコア、インダストリアル、ジャズ、クラシカル、民族音楽... 。魂を震わせるような音楽であれば、ジャンルは一切問いません。kilk recordsが最もこだわりたい点は「独創性」です。信じられないほどの感動や興奮は「独創性」から生まれるように思えます。これから多数の作品をリリースしていきます。末永くkilk recordsにお付き合いくだされば幸いです。
kilk records official HP
劔樹人
新潟県出身のベーシスト/マネージャー。(株)パーフェクトミュージック所属。ベーシストとしては、イデストロイド、ミドリ、22歳ノ私、シェパード放し飼い、ピングループ、バンドじゃないもん! などに在籍経験あり。
パーフェクトミュージック official HP
あらかじめ決められた恋人たちへ official HP
kilk recordsプロデュースのライヴハウス、ヒソミネにて、劔樹人×森大地のマネージメント対談が決定!
神聖かまってちゃん、撃鉄のマネージャー、あらかじめ決められた恋人たちへのメンバーである劔樹人氏とkilk reccords森大地による対談。これから音楽業界に携わりたい方、必見です!
【開催日】 2013年10月22日(木)
【会場】 ヒソミネ(埼玉県宮原町)
【出演】 劔樹人(神聖かまってちゃん、撃鉄マネージャー)、森大地(kilk records)
【OPEN / START】 19:00 / 19:30
【ADV / DOOR】 2,000円 / 2,000円
ヒソミネ official HP
好きだから、仕事も音楽に近いことをしたいという所からのスタート(劔)
森大地(以下、森) : どうもはじめまして、よろしくお願いします。
劔樹人(以下、劔) : はじめまして! よろしくお願いします。
森 : 僕、一度だけ神聖かまってちゃんのライヴを拝見したことがあるんですよ。

劔 : あ、そうなんですか?
森 : 2年ほど前に、NATSUMENと一緒にやったライヴ(2011年12月13日@新木場スタジオコースト)なんですけど。
劔 : ああ、ひどかったライヴのときですね! メンバー同士が喧嘩をはじめたときの。
森 : ははははは。
劔 : 最近はないですけど、昔はよくメンバー同士の喧嘩とかあったんですよ。
森 : そのとき、最後に劔さんが出てきて、お客さんに挨拶されていて。
劔 : そうですね。不穏な感じで終わっちゃったので、「すいません、今日はこれで終わりです」って、強制退場みたいな。
森 : ははははは!
劔 : 喧嘩になったのを収めて、とりあえず僕が謝りに出て、罵声を浴びせられるという、辛い役回りの日です(笑)。それは不本意でしたけど。
森 : 今回、対談のお相手にお招きしたのは、僕が事務所的な仕事に移行しようかと考えていたときに、かまってちゃんのライヴでの劔さんを見て、「すごいな、これは自分にはできないな」って思ったからなんです。
劔 : ええっ!? 本当ですか?
森 : はい。あれを見て、事務所っていうのは生半可な気持ちじゃ出来ないなと思ってその考えをやめたんです。すごいなって。
劔 : いやいや、めっそうもないです。
森 : 劔さんは“あらかじめ決められた恋人たちへ”(以下・あら恋)のベーシストで、ミュージシャンでもありますけど、ミュージシャンっていう前に出たいエゴがある人が多いなかで、反対に神聖かまってちゃんでのマネージャーっていうのはある意味“悪役”みたいなところがあるじゃないですか? それをどう両立させているんですか?
劔 : 確かに、悪役になることが多いですよね。まあ運営ってそもそも悪者になることが多いんじゃないですかね?
森 : そうですよね。だからマネージャーとして捧げている部分と、ミュージシャンとしてのエゴって相反すると思うんですけど。

劔 : うーん、ここ何年も割とそういう話になるんですけど、僕のなかでは全然まとまらなくて、流れでこうなってるとしか言いようがないんですよ。
森 : 思考の切り替えスイッチみたいなものがあるんですか?
劔 : いや、もう全然ないですよ。わからないですね(笑)。みんなミュージシャンのスタッフだから、そう思われると思うんですけど、これがコンビニでバイトしながらミュージシャンをしていたら、全然疑問に思われないと思うんですよ。
森 : ああ、なるほど。
劔 : バイトとか仕事を終えてから、夜ライヴに行くっていうのと、あんまり変わりないと思うんですよね。
森 : じゃあ、本業はミュージシャンということですか?
劔 : いや、僕は自分が決してミュージシャンとして一流になれるとか、思ったためしがないので。好きだから、仕事も音楽に近いことをしたいという所からのスタートですね。それと、自分はバンドでももともと真ん中に立って指揮するタイプじゃないですから、支える立場としてはバンドもマネージャーも変わらないですし。
バンドを始めたときから、自分は主役じゃないと思っていた(劔)
森 : 野望というか、目標ってないですか?
劔 : これはたびたび聞かれるんですけど、答えられないんですよね。
森 : ははははは。マネージャーっていうのは、ご自分で志願して「このアーティストのマネージャーをやりたい」っていうことが多いんですか?
劔 : 会社に入ったときには、「なにをやってもいい」くらいの感じでしたから、そのとき気になっていた神聖かまってちゃんの仕事をしてみたいなというのが最初でした。自分がやってきたバンドの活動のなかで、事務所に所属したことってなかったんで、自分たちでバンドを運営するノウハウは持っていましたし、それを他人のバンドでやるっていう感じでしたね。
森 : 劔さんご自身は自覚はないかもしれないですけど、これまでの一般的な売り込み方とは違う、新しいやり方だなと思うんですが。
劔 : そうやって言って頂くこともあるんですけど、僕はそんなふうには思っていないんですよね。ただ、なんとなく、自分がみつけたものとか、好きになったものに関しては気になるので。
ーー劔さんは、森さんがやっているレーベル運営ということに関してはどう感じますか?
劔 : かっこいいですよね。僕、細かいことできないし。
森 : 実は今年、大宮に「ヒソミネ」っていうライヴハウスを作ったんですよ。
劔 : ああ、本当ですか!?
森 : キャパ70人くらいの小さいハコなんですけど。CDが売れないっていう現実問題からいろいろ考えて、ライヴハウスを立ち上げたんです。劔さんはこれまで独立しようと思ったことはないんですか?

劔 : 全然ないですよ(キッパリ)。みんなに勧められたことはありますけど。いまの会社に自分の大きな爪痕を残さないと。
森 : へぇ~! 周りから見ると、充分爪痕を残している気がしますけど?
劔 : うん、それも良く言われるんですけどね。まだ足りないんですよね、気持ちとしては。自分のなかに“一発屋感”があって。
森 : 失礼かもしれないですけど、かまってちゃんのマネージャーについては、ご自分が前に出るという戦略的なものがあったんですか?
劔 : いや、かまってちゃんは完全に成り行きですね。それに、お客さんがそういうスタッフとかにも感情移入していくというものがあって。それはかまってちゃんのファンだけじゃないかもしれないですけど。そこに、僕の持っていた物語みたいなものがはまってたんじゃないですかね?
森 : ある意味、自分自身のことも商材として使っちゃえ、みたいな?
劔 : まあ、最終的にそうなりましたけどね。自分が動いているのが一番楽なんで。「メンバーが無理って言ってるんで僕でいいですか?」みたいな。まあただ、誰にも求められていないところに出て行くというのは、ものすごい気持ちになりますけどね、ハチの巣になりに行くというか(苦笑)。だから、その気持ちを持てるかどうかという問題はありますけど。
森 : そうですよねえ(笑)
劔 : みんなやっぱりトラブルがあったら我関せずってなるじゃないですか? でもそういうときに、自分も本当は逃げたいんですけど、立場上とかで巻き込まれなきゃいけないときが多かったんだと思いますね。それが外から見たらおもしろかったんじゃないかな。
森 : 以前のインタヴューで拝見したんですけど、劔さんは脇役的にみんなを支えるというのが、自分の役割というようなことをおっしゃっていて、それは最初からそうだったわけではなくて、徐々に気付いたことなんでしょうか?
劔 : まあ、バンドを始めたときから、自分は主役じゃないと思っていたことは間違いないですよね。
ーーベーシストというパートを選んだというのも、支える立場っていうところからきているんでしょうか?
劔 : いや、ベースがいなかったからです。だから全部成り行きなんですよ、情けない話。
森 : いやいや(笑)