シティポップの息の根を止めるペドラザって一体何者?!──diskunionからの刺客〈第2弾〉
2016年に開催されたディスクユニオン主催による初の本格的オーディション〈DIVE INTO MUSIC.オーディション2016〉。数多くの応募を勝ち抜き選ばれたのは、unizzz…、ペドラザ、東京塩麹という実力者3バンド。合格者はCD、レコードのWリリースが約束されており、6月から8月まで3ヶ月連続で音源が全国流通される。OTOTOYでも順次配信をスタート、各バンドへのインタヴューを掲載していく。
第2回となる今回は、都内を中心に活動するオルタナ・ロックのニューカマー、ペドラザ編です! くるりやナンバーガール、Oasis、Pavement、Rage Against the Machine等への憧れを詰め込めるだけ詰め込み、グッドミュージックとして昇華する彼ら。「シティポップの息の根を止めるべく結成された」という彼らは一体何者?! というとでペドラザへのインタヴューを敢行。OTOTOYでは、彼ら曰く今までのベスト盤的なアルバムに位置付けられるという『アイホープ アイシンク アイノウ』を1週間先行リリース。さらにリード曲「幽体離脱」を期間限定で1週間フリー配信! このインタヴューを読んで気になった方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?
オーディション合格者、第2段リリース!
ペドラザ / アイホープ アイシンク アイノウ
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 205円(税込) / アルバム 1,697円(税込)
【収録曲】
1. 無題
2. 幽体離脱
3. タウンワーク
4. リブフォーエバー
5. 空気
6. 大器晩成
7. ウィンターキルズミー
8. フィクション
9. 不安を煽る
10. 17
11. アイホープ アイシンク アイノウ
12. サマーエンズ
リード曲を期間限定フリー配信!
ペドラザ / 幽体離脱
【配信形態】mp3
【配信価格】単曲 0円(税込)
【収録曲】
1. 幽体離脱
※2017年6月28日(水)から7月5日(水)までの期間限定になります。
INTERVIEW : ペドラザ
アダチサマーソニック(Gt / Vo)、ぬちんちん(Dr)、シホちゃん(Ba)、吉水アンリ(Gt)。なんだその名前? いったいこの人たち何者!? と思わざるをえないバンド、ペドラザ。初の全国流通盤・配信となる『アイホープ アイシンク アイノウ』を聴くと、オルタナティヴ、ノイズ、シューゲイザー、ヒップホップ、ファンク、色んな要素を飲み込んだ音にますます謎が深まるばかり… かと思いきや、その着地点は明確に歌を主役にしたポップ・ソングとなっている。至って不器用そうに、だけど心から音楽を楽しんでるかのように見える彼らの内に秘めた“なにか熱いモノ”を探るべく初インタヴューを行った。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 大橋祐希
轟音を出し合っていてウマが合うなって
──まずは自己紹介をお願いします!
アダチサマーソニック(Gt / Vo)(以下、アダチ) : ギター・ヴォーカルのアダチサマーソニックです。サマーソニックと付けたのは縁起が良いからです。お祭り感というか。フジロックの方が好きですけど(笑)。
ぬちんちん(Dr) : ドラムの、ぬちんちんです。
──ぬちん… なんて呼んだら良いですか?
ぬちんちん : あ、「中島」でいいですよ。
──(笑)。わかりました。
吉水アンリ(Gt)(以下、吉水) : ギターの吉水アンリです。アンリは本名です。カタカナで書いているだけで。
シホちゃん(Ba)(以下、シホちゃん) : ベースのシホちゃんです。本名はクリハラタツヒコと申します。Twitterとかで女のふりをしていたことがあって。芸名みたいなものを付けるときにちょっと変な方が良いかなと思って、シホちゃんと名乗っています。
──すでに変わったバンド感がビンビン伝わってきますけど、どうやって集まった4人なんですか?
アダチ : 僕が長野県の大学に通っていて、そのときにバンドがやりたくなって、高校生だったぬちんちんをライヴハウスの人から紹介してもらって。
ぬちんちん : 僕は実家が長野県の松本で、アダチが通っていた大学のすぐ隣の高校に通っていたんです。
アダチ : 最初に音を出したときに僕は2時間ずっとファズを踏んで、轟音を出し合っていたんですけど(笑)、ウマが合うなって。
──どんな音楽をやりたかったんですか?
ぬちんちん : 俺が高校生のときはずっとメタルをやっていて。その前はナンバーガールとかも一応聴いていたので、バンドやるんだったら日本語ロックだろうなって。
アダチ : 僕も日本語のオリジナル・バンドをやっていきたいとは思っていたので、方向性がちょっと近いので一緒にやり出した感じです。それでできたのが前身の「お前の先祖」というバンドで。2012年に僕とぬちんちんは住まいを東京に移したんですけど、都内で活動するようになったけどあまり芳しくなくて。
ぬちんちん : メンバーがいきなり実家に帰るとか言い出したりして。
アダチ : メンバーが抜けて僕とぬちんちんだけになったところで、吉水さんは僕の知り合いのバンドマンに紹介してもらって、シホちゃんはどこからともなくTwitterで連絡を取って来て。
シホちゃん : 吉水をアダチさんに紹介した人のTwitterのアクティビティでアダチさんを見つけて、サウンドクラウドとかを聴いて連絡したんです。それまでバンドはやったことなかったんですけど。
アダチ : 吉水さんと最初にスタジオに入るつもりでいたらクリハラ君(シホちゃん)から連絡があったので、4人でスタジオに入って曲を合わせたら良い感じだったので、そこから活動が始まりました。
──最初からオリジナルをやったんですか。
アダチ : そのときは前身バンドの曲をやりました。今回のアルバムでもいくつか前身バンドの曲が入っていて、7インチ化する「幽体離脱」、「大器晩成」「フィクション」「リブフォーエバー」がそうです。
色々こじらせていたものがまだ残っているんです
──曲はアダチさんが全部書いているんですよね。どうやってバンドで完成させるんですか。
アダチ : 作曲の断片的なところは僕がやっていて、アレンジはバンドでやってます。弾き語りっぽく作ったものをスタジオで広げるときもあれば、スタジオで何の気なしに適当に手癖で弾いたものにみんなが合わせてくれて曲になったり。詞は全部僕が書いてます。
──アダチさんには“こういうメンバーを集めたい"っていう理想があったんでしょうか?
アダチ : デカい音を出す人ですね。音源は聴きやすく、ライヴはデカい音でっていう感じで。
ぬちんちん : CDでは爆音じゃなくても成り立つものになっているから音をデカくしてないというか。
──でもライヴだと爆音になる?
ぬちんちん : ライヴで音がデカくなるのは、原因はそもそも俺にあって。音量の調整があんまりできないんですよ。前身バンドのときはVic-Firthっていうメーカーの「メタル」っていうモデルをずっと使っていたので、音はずっとデカくて。最近になってようやく、音がデカくなくても良いなと思って、いまは普通のサイズにしているんですけど。そしたらシンバルとかもちゃんと良い音で鳴るようになったんですよね。
吉水 : 最初にやったときに、「音デカいな」って思いました。今まで一緒にコピバンとかやってたバンドのドラマーはいったいなんだったんだっていうくらい(笑)。今はスタジオでもドラムに音量を合わせているので、アンプのボリュームは常にフルテンでやってます。
シホちゃん : いや、盛ってるでしょ(笑)。
吉水 : …… ちょっと盛りました。
一同 : (笑)。
──吉水さんはどんな音楽が好きなんですか?
吉水 : ギターを始めたきっかけは、70年代フォークとかでした。しばらくして日本語ロックのバンドを聴いてバンドをやってみたいなと思ったんです。
──シホちゃんはどんな音楽志向なんでしょうか。
シホちゃん : 僕はジャミロクワイとかが好きです。あんまりロックとか通ってないんですよ、じつは。ファンクとかフュージョンっぽいのが好きですね。大学でもジャズ研に入ってました。
アダチ : 全員が共通して好きなものってないですね。
ぬちんちん : ちょっとずつかぶってる部分がそれぞれにある感じです。
吉水 : 円が重なって濃くなっている部分というか。
──その“濃くなっている部分"がこのアルバムの曲になっているということですね。
アダチ : 幅があるようなところは、そういうところが元になっているかもしれないです。みんながみんな同じ音楽を好きだったら、もうちょっと統一感のあるアルバムになってたかもしれないですけど。ぬちんちんなんてメタル小僧だったのに今ヒップホップとか聴くもんね?
ぬちんちん : ヒップホップばっかり聴いてる(笑)。メタルをコピーしていたときもそうだったんですけど、結局、ビートが面白くないと聴けなくて。ヒップホップとかは、ラッパーのフロウがビートに対してどう当てはまっているかみたいなものなので、日本語だったら言葉の面白さを含めて聴くんですけど、音楽を聴くときにはドラムがどうとかビートがどうとかいう聴き方をしてしまいますね。
──「フィクション」なんかはヒップホップの要素も感じさせるリズムだと思うんですが、そういうところはぬちんちんさんが持ち込んでいるようなところもあるんですか?
アダチ : 僕が曲を作るときにヒップホップというのは意識していなかったんですけど、そういうテイストが入るのはぬちんちんのドラムのニュアンスがデカいんじゃないでしょうか。
──アルバムはどんな1枚にしようと思ってまとめました?
アダチ : 今まで作ったものから良い曲を全部入れたベスト盤的というか、統一感よりも“いいな"って思った曲を入れた感じです。その分とっちらかった感じはあるかもしれないですね。アルバム・タイトルにもなっている「アイホープ アイシンク アイノウ」をアルバムの中で2回に分けて歌うことで(1曲目「無題」の中でもプロローグ的に同曲が使われている)、とっ散らかったアルバムに少し統一感が出るんじゃないかなって。
──とくにとっ散らかった印象を受けないのはそれもあるのかもしれないんですけど、後半の「17」「アイホープ アイシンク アイノウ」「サマーエンズ」と続く曲に統一感があるなって思ったんですよ。青春感があるというか。
アダチ : ああ~、それは僕が色々こじらせていたからです(笑)。今は違いますけど、たまにそういう甘酸っぱさとかモラトリアム感というのが曲に出ちゃうんですよね。まだそういうところが残っていて。
──今は違う、というのは?
アダチ : バンドやって明るくなりました。
一同 : ははははは!
──そもそも、そんなにこじらせていたアダチさんがどうして人前に立って歌おうって思ったんですか?
アダチ : ステージに立つのが楽しそうに見えたからです。兄がもともとバンドをやっていて、すごく影響を受けて自分もバンドをやってみたいと思うようになったんです。高校時代は上手く仲間に巡り合えなかったですけど、大学に行ったら趣味の似通った同級生もいて、コピバンとかオリジナル・バンドをやるようになって、それが一貫して楽しかったから未だに続けているんです。
音楽は続けていきたい… 絶世の美女に出会ったらわからないですけど
──それぞれの推し曲を挙げてもらって良いですか?
アダチ : 聴きやすいものであった方が良いなと思うし、リード曲がキャッチーな感じが良いと思ったし。「幽体離脱」がすごく好きって言ってくれるバンド仲間やお客さんもいるので、これをリード曲にしたら良いかなって思ったんですけど、僕の推し曲は「不安を煽る」ですね。
──「不安を煽る」は“こうしなきゃいけない”みたいな脅迫観念を歌ってますよね。
アダチ : 街に出たら広告を見るだけで不安になってくるというか。金貸しとかダイエットとか自己啓発とか、すごい煽ってきて締め付けが激しい世の中だなって。そういうのをスタジオに向かう電車の中で考えていたらリフが浮かんできて上手く曲に出来ました。
──大学を出て就職しなきゃとか結婚しなきゃとかっていうことも「不安を煽る」に繋がると思うんですけど、バンドをやって生きて行くっていうことはドロップアウトして生きていくことじゃないですか? そこはどう思っているんですか。
アダチ : 音楽は続けていきたいです… でも明日にでも絶世の美女に会ったらわからないですけど(笑)。今のところは世間になんと言われようと続けて行きたいです。「不安を煽る」には「煽ってくるけど、俺はびくともしないよ」という気持が裏にあります。
ぬちんちん : 7インチ『幽体離脱』のB面に「拝啓、ジャニーズ」という曲があるんですけど、自分はみんなでリフを元に曲を作ろうっていうときに、なんとなく個人的にテーマを決めて毎回やるんですけど、そのテーマを初めて「オシャレにしよう」と思ってやった曲なので、あんまり他の曲で使っていなかったようなアプローチをしていて。違う一面が出せたと思います。
吉水 : 私は「17」ですね。最初に曲が出てきたときに、こういうアレンジと音でやりたいなというのがすぐ浮かんだ感じなので。すごく音にこだわったので、今でも聴き返して「ああ、頑張ったな」って思う曲です。
シホちゃん : 僕は「フィクション」です。前の音源にも入っているんですけど、録りなおして単純に前の曲より良く出来たと思いますし、この曲は僕が入る前からあってサウンドクラウドでこの曲を聴いて1番好きな曲だったので。そういうことも含めて推したいです。
── 一見、ゆるい感じのバンドなのかなって思いきや、アダチさんとぬちんちんさんがバンドを組んで東京で活動をしようって行動することや今回のオーディションを受けてみることとか、すごく熱いものを持っているバンドなんじゃないかなって思うんですけど、4人がこの先に思い描いているものってどんなものがあるんでしょうか。
アダチ : 4人でそういう未来像みたいな話は全然したことがないんですけど、僕はひっきりなしに演奏依頼が来てライヴ活動もやりたいし、作品もどんどんできるバンドになりたいです。
シホちゃん : フェスとかサーキット・ベントでライヴをやりたいです。今のところ100人、200人規模の会場なので、天井が高いデカめのハコでやってみたいというのはあります。そしてもちろん、売れたいです。
吉水 : いっぱいライヴをやって、回数を重ねるだけじゃなくて実のあるライヴをしたいですね。演奏が終わった後に「やった!」ってガッツポーズが出るような。それをどんどん増やしていけたらなと思います。
ぬちんちん : あんまり「バンドでこうなりたい」って考えたことないんですけど、色んな人に聴いてもらって、色んなところで「良いバンドじゃん」って思われたいという気持ちはあります。今回は全国流通と配信なので、どれだけの人が聴いてくれるのか数はわからないですけど、1つラインは越えたかなっていうのはあります。
アダチ : 今回、アートワークも自分たちでやっているんですけど、上手いこと意味深な感じのジャケットになったと思います。中身も素敵な絵とか写真が使われていて良いデザインだなって。OTOTOYさんでは先行配信ということなのでまずはそちらで聴いて頂いて、CDショップでも手に取ってみてください。色んな楽しみ方ができるので配信、CD両方で買ってくれたら嬉しいです(笑)。
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unizzz… / hello
ペドラザと同じく、ディスクユニオン主催のオーディションを勝ち抜いたunizzz…。ディスクユニオン内の新レーベルからの第1弾リリース。
Helsinki Lambda Club、バンド初のフル・アルバム。Analogfishの下岡晃(Vo, G)をプロデューサーとして迎えて制作された。
LIVE SCHEDULE
2017年7月2日(日)@高円寺クラブライナー
2017年7月16日(日)@下北沢ベースメントバー
2017年7月17日(月)@新宿ナインスパイス
2017年7月20日(木)@新宿JAM
2017年7月28日(金)@渋谷LUSH
2017年8月7日(月)@大阪 梅田ハードレイン
2017年8月8日(火)@京都 二条nano
2017年8月19日(土)@新宿dues
2017年8月25日(金)@渋谷LUSH
2017年8月26日(土)@吉祥寺WARP
2017年8月28日(月)@新宿JAM
詳しいライヴ情報はこちら
PROFILE
ペドラザ
2011年、前身バンド「お前の先祖」を足立とぬちんちんを中心に結成。地元長野県松本市で期待の若手として多数のイベントに出演。2012年、ぬちんちんと足立が東京に移住。メンバーの脱退により活動停滞。暮れに新メンバーが入るも2014年末に脱退。2015年に友人の紹介によりギター吉水加入。同時にべースくりを加入。それまでのスリー・ピースからフォー・ピースバンドへの体制変更を機に「ペドラザ」に改名。イロモノ扱いされなくなる。結成後2回目のライヴが、りんご音楽祭オーディション・ライヴ〈RINGOO A GO-GO〉で、これに見事合格し、ライヴ・オファーが増える。
2016年2月、初のレコーディング。4月には音源データは完成し各方面へばらまく。足立が愛聴する「radioDTM」で流され、5月には出演するも、具体的なビジョンなどなく出たためパーソナリティ社長氏に圧倒される。夏にりんご音楽祭2016への出演をまたもオーディション枠から勝ち取り、それに併せてMV発表、春に完成していたEP音源「p.e.d」をようやく発売する。 ライヴ会場限定販売の予定が、タワーレコード渋谷 × サウンドクルージングによる未流通音源販売企画「タワクル」で取り扱われ、3週連続トップ3を獲得する。
2016年秋、disk union主催新人発掘企画DIM.オーディションに合格。2017年7月5日に〈dim up〉から初のアルバム、7インチの発売が決定。