「誰も知らない世界」を描くLööfのトイトロニカ・ポップとは?

Björk、Sigur Rós、múmなどアイスランドや北欧のアーティストを彷彿とさせる作品を制作してきたLööf(レーフ)が、2ndアルバム『Frog Songs For Whales』をkilk recordsよりリリース。そのタイトル通り、カエルからクジラへと大きな変化を遂げるような、静かで、かわいらしく、聴き心地のよい、いわばトイトロニカ・ポップ。そこに、チヒロが歌うノスタルジックで不思議な世界観の歌詞が加わることで、このバンドの独自性をより一層強く作りあげている。エレクトロニカ、ポストロック・バンドというステレオタイプを飛び越えていこうとする彼らの活動に迫るべく、ハイレゾ配信とともにメンバー3人にインタヴューで迫った。
Lööf、約3年ぶりの2ndアルバムをハイレゾ配信!!
Lööf / Frog Songs For Whales
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) : 単曲 200円(税込) / まとめ価格 2,000円(税込)
mp3 : 単曲 150円(税込) / まとめ価格 1,500円(税込)
【収録曲】
1. Recurring / 2. Whim / 3. 22℃ / 4. Vague
5. Atmosphere / 6. Inkarusi / 7. Frog Song
8. Trembling / 9. Water Tree / 10. Whale Song
INTERVIEW : Lööf
“精神に溶け込む、人生を変えてしまうほどの音楽との出会い”を多くの人に届けるべく、森大地により2010年スタートしたkilk records。設立5年目に突入した今年、大きな変貌を遂げてレーベルのポップ・アイコンとなったコッテルや、1ベース&ラップトップ、2ドラムスによる肉体派ダブステップ・バンドAUDIO BOXINGのデビュー、深化しつつ攻撃的な世界観を覗かせたFerriの新作など、充実した作品を世に送り出している。また、森自らが率いるバンド、Aureoleも2年振りとなるシングルを無料配信するなど、さまざまな試みをおこなうことでインディーズ・シーンを膠着させまいと刺激的な音楽を発信し続けてきた。
そんなkilk recordsの積極的な姿勢を顕著に表している作品がまたひとつリリースされる。2012年にアルバム・デビューしたLööfが約3年ぶりに発表する2ndアルバム『Frog Songs For Whales』は、自ら外の世界に出て行こう、ジャンプアップしようという意志をテーマにしたポジティブな躍動感に溢れた作品だ。エレクトロニカ、ポストロック、アンビエントというジャンル分けをすることは、リスナーにとって音楽と出会うきっかけとなる上で必要なことだと思う。しかしそれはときに「自分の好みじゃない音楽だからこれはパス!」と、聴く前に事業仕分けのように切り捨ててしまうことにもなりがちだ。その壁をカエルのように跳び越えて、より多くの人に音楽を届けるべくポップなアプローチを試みた今作についてメンバーの3人に話を聞いた。
インタヴュー & 文 : 岡本貴之
今は模索中で、まだまだ完成形ではないですね
ーーLööfは最初、Koibuchiさんとチヒロさんの2人で始まったんですよね。その後kilk recordsとの契約を機に国内での活動を本格化させたとのことですが、最初に活動を始めた経緯を教えてもらえますか?
Yasuto Koibuchi (Gt、Key、Sampler、Programming) : はじめは2人で別の社会人バンドをやっていたんです。その後自分が勤めていた会社を辞めて、なかなか仕事が見つからなかったので(笑)、ソロ・プロジェクト的に音楽をやってたんですよ。(チヒロが)いいヴォーカリストだったんで、「歌ってよ」って声を掛けたんです。
ーー最初にやっていたバンドはロック・バンドだったんですか?
Koibuchi : いや、かなりアンビエントな、ポストロック的なバンドでした。今回のアルバムに入っている「Water Tree」はその頃の曲なんですよ。

ーーkilk recordsから作品をリリースするようになったきっかけはなんだったんでしょう。
Koibuchi : 当時はMySpaceが流行ってたんで結構力を入れてやってたんです。「レーベルタイプ」っていう欄があるんですけど、そこに「探してますよ」っていうメッセージを書いておいたら森(大地 / kilk recordsオーナー)さんから連絡が来たんです。
ーー1stアルバムを出したときにはまだKanazawaさんはまだいなかったんですね。
Toshiaki Kanazawa (bass) : 僕はサポートで入ってたんですけど、2012年の10月くらいから正式なメンバーとしてやっています。
Koibuchi : ライヴをやるようになってくると、欲しくなって来ちゃうんですよ(笑)。その当時ドラムもいたので、その流れでベースも入れようということで。
ーーチヒロさんはヴォーカルだけでなくジャケット・アートワークを手掛けていたりと、Lööfの世界観を表現する意味で全面に立っていますね。
チヒロ(Vox、Lyrics、Artwork) : 今は模索中で、まだまだ完成形ではないですね。どういう色にしたらいいのか、どういう形にしたらいいのか、今まだ考えている最中です。
ーー最初は2人でどんな音楽を形作ろうと思ったんでしょうか。
Koibuchi : 完全に自分の趣味で始めたようなものなので、もっとアンビエントな、今ほどキャッチーじゃなかったですね。ただやっぱりレーベルから音源を出すとなると責任も出てきますし、そういうものを考えた上で今に至ってます。
ーー今作は非常にポップな曲も入っていますし、ジャケットも含めてだいぶ親しみやすさを打ち出したかったのかなと感じたんですが。
チヒロ : はい、そうですね。でも自分の好みも入れました。視覚的にもハッキリしたものが好きなんで、このジャケットの色とかって人に受け入れられやすいのでいいなと思って作りました。
Koibuchi : 彼女はもともと、音楽よりもアート寄りの仕事をしていたので。バンドを始めるまえは他のバンドさんのジャケを手掛けていたりするんですよ。
チヒロ : 絵を描いてたんです。むしろバンドをやるなんて思っていなくて、不思議な感覚ですね。もともとバンドを観に行くのが好きなんです。
ーーKanazawaさんがLööfに加入したのはどんなきっかけだったんですか?
Kanazawa : 自分が好きで聴いている音楽が、くくり的にポストロックというジャンルだということに数年前に気が付いたんですよ。でもすごく広いくくりじゃないですか? それでどういうものがポストロックっていうものなのかと聴いている中で、ちょうどLööfを知って、「こういうのもポストロックなんだ、じゃあやってみよう」と思って今に至るという感じですね。
私、妄想することが多いんです
ーー今Kanazawaさんが言ったポストロックも含めて、Koibuchiさんはジャンルって意識してます?
Koibuchi : 意識はしていないけど、結果そういうところに入っちゃいますね。でも全然嫌じゃないですよ。くくられるのが嫌だという人もいるとは思うんですけど。僕は全然嫌じゃないです(笑)。
ーー人によってはジャンル分けされたくないという人もいますもんね。でもそういうジャンルに入っていたからKanazawaさんがLööfを知ったわけで。
Koibuchi : ジャンルをどう思うかは聴く方の自由なので。そこにあまり口出しはしないですね(笑)。違うと思っても、「そういう聴き方もあるんだな」と思います。
ーージャンルとか日本とか外国というボーダーをあまり意識していないような印象だったんですが、最初はネットを介して海外に音楽を発信しようとしていたんでしょうか?
Koibuchi : 完全に当時の主流がMySpaceで、海外からも見てもらえるということですし、気に入ってくれる人もいっぱいいたし。
ーーその姿勢は今も変わらない?
Koibuchi : 1stは英詞でやったんですけど、今回の2ndでは日本語を取り入れました。それっていうのは今まで日本語が嫌だったわけじゃなくて、出来なかったんです。日本語にするとカッコ悪い感じになってたんですけど、それが出来るようになったんで、進化したかなと思っています。そもそも英語がそれほど得意ではないんで(笑)。日本語の方がサクサク進みますよね。
チヒロ : そうなんですよ(笑)。伝えたいことも英語のときより明確というか、良く出てるなと思うんで、自分的にも歌いやすかったですね。
Koibuchi : 1stのときも日本語のバージョンの歌詞も作ったんですけど、どちらかというと英語の方がよかったのでそっちを選んだだけですから。それが日本語でも良いようにできるようになってきたと思います。

ーーチヒロさんがアートワークについて「ハッキリしたものが好き」とおっしゃったんですが、曲を聴くとヴォーカルはウィスパー・ヴォイスでやっていますよね。そこにギャップを感じたんですが、ご自分の中では歌とアートワークの関係はどのように関連付けているんでしょうか。
チヒロ : このジャケットもハッキリしたものに見えるんですけど、結局はあいまいなんですよ。絵自体が猫の形をしているわけじゃないし、抽象的なんですよね。そことの兼ね合いはあります。“抽象的なものでもハッキリしたもの”が好きなんだと思います。
ーー確かに、視覚的にはハッキリした色をしていますけど、何を形作っているのかはわからないですもんね。ヴォーカリストとしては歌い方の手法はずっと変わらないんですか?
チヒロ : そうですね。変わらない感じですね。
Koibuchi : 「それは違うんじゃないか」とかいうのは、よく言いますからね(笑)。
チヒロ : 言いますね、何回も(笑)。
Koibuchi : 「そこはもう少しこんな感じで」とかはものすごく言いますから。これはその結果です。
ーー英語と日本語が混ざっていると、パッと聴いたときにはどちらなのかわからない感じもありますよね。
チヒロ : まさにそんな感じの歌が多いんですけど、やはり歌うときも絵を描くような気持で歌ってます。歌詞も絵を描くように作ってます。歌詞も絵です、そういう意味では(笑)。今回はハッキリした言葉で歌っているものもあるんですけど、抽象画のような言葉も多くて。私、妄想することが多いんです。それでよくにやけてて気持ち悪い感じなんですけど(笑)。そこから出てきた言葉を全部書くのは絵を描いているのと同じ気持ちですね。
ーー直感的に出てきた言葉をデッサンしていくようなイメージですか?
チヒロ : そうですね。頭の中に出てきた言葉を全部書いて、絵を完成させるように組み立てていく感じです。
Koibuchi : 制作過程を言うと、完全にオケが先ですね。
チヒロ : なんか、今のだと私が先みたいでしたけど、そうですね(笑)。
Koibuchi : まず、ほぼ完成形に近いオケを出します。まあ、ある程度出来るヴォーカリストだとアドリブで歌えるじゃないですか? そういうアドリブのメロディを歌ってもらいつつ「それいいじゃん!」とか言いながらあてはめていくんです。だからアドリブで歌詞も出ているじゃないかな。降りてきたものを捕まえる感じですね。
チヒロ : そうですね、曲を聴いてから出てくる言葉ですね。書くイメージというのは。あたかも自分の中から出てきたように言いましたけど(笑)。
一同 : (笑)。
Frog(カエル)というのは自分たちを比喩しているんです
ーーKoibuchiさんが作ってくるオケをもらってからKanazawaさんがベースを録音するわけですか?
Kanazawa : ベースが入ったりしている曲もあったり、入ってなくて「これどうするんだろう?」という曲もありますね。「こういうパターンで」と言って持って来てもらうこともあります。
Koibuchi : 結構ムチャぶりするんですよ。「入ってるけどもっと良くしてね」って(笑)。それに応えてくれているんで。
Kanazawa : ありがとうございます(笑)。
ーー逆にKoibuchiさんがお2人からインスピレーションを得て作るときもあるんですか?
Koibuchi : ありますよ。結構ベースが派手な曲が今回多いんですけど、それはベースが入ってから作ろうと思った曲ですね。リズム隊が前作より複雑というか派手になってるのはドラマーがいたときはドラムを活かしたいと思ってたんで、それが反映されています。
ーー「Vague」はベースから始まる曲ですね。
Koibuchi : この曲は前のバンドでやってた曲を基にしているんですけど、ベースのリフ中心に肉付けしていったんで。
Kanazawa : 特にこだわったのは音ですね。もうこれはこれで完成している、というものが結構多かったりするので、それをどうしたら… なんで自分に渡すのかなって(笑)。
一同 : ははははは!
Kanazawa : だったら生音で。普段は指弾きなんですけど、「Vague」はピックで弾いてるんですよ。それで、「この音でどうですか?」って持っていって「いいじゃん」って言ってもらえた曲ですね。

ーー最初に音が出来てると何もない状態よりも悩みませんか?
Kanazawa : 悩んだ曲もありますね。
Koibuchi : でも自分で考えてきた曲もいっぱいあるじゃん。
チヒロ : うんうん。
Koibuchi : 好き勝手にやっててそれがハマっててカッコいいというか。その辺はやっぱりせっかくバンドですから。自分はそこまで作り込まないんですよね、人がいるところには。ベースもヴォーカルも、期待して「どうなるかな?」って。それが今のところ良くなって返ってきていますね。
ーーKoibuchiさんはギターをご自分で入れているんですよね。
Koibuchi : ギターを入れたり、ドラムは生を入れたり打ちこんだり、サンプラーを使ったり。なんでもありで。まあいないから逆に、ドラムを3つくらい重ねちゃったりとか(笑)。
ーー2曲目の「Whim」は徐々にマーチ調のスネアを中心に盛り上がっていきますけど、たとえばこれはドラマーがいることを想定して作ったんでしょうか。
Koibuchi : ドラマーがいたかいなかったかは覚えていないんですけど(笑)。これは結構かっちり作ってましたね。
ーードラムを3つ重ねている曲というのは、どれですか?
Koibuchi : それは1曲目の「Recurring」です。生ドラム2つと打ち込みドラムに、リズマシン的なリズムを複雑に絡み合わせてますね。結構全然予想してないような出来上がりになるんですよ、重ねていくと。なんでもありなんで。メンバー4人だったら4人で演奏できるようにならないといけないとか、そういうバンドの制限が嫌なので。結構好き勝手にやってます。
ーー『Frog Songs For Whales』というタイトルはどんなテーマで付けられているんでしょうか。「Frog Song」「Whale Song」という曲もありますよね。
Koibuchi : 前作が『Miniature Garden』という、「箱庭」だったんですけど、あれは自分の中の精神的な、内省的な話で。まあ「箱庭療法」的というか、自分で自分に箱庭療法をした、みたいな(笑)。模型を使ってやるところを音楽でやった結果あれが出来て。そうしたら次の段階に行く上で、外の世界に出るわけです。それが今現在なんですけど、2ndを出すときには色んな外部からの刺激を受けて作られているので、Frog(カエル)というのは自分たちを比喩しているんです。「井の中の蛙大海を知らず」みたいな、箱庭から出てきたばかりなんで。Whale(クジラ)というのは、大きいもの、世間的なものに対する自分たちというイメージですね。
ーー曲の流れもそういうストーリー性を持って作られているんでしょうか。
Koibuchi : それも結果、自然とはまっていった感じなんですよね。
「これはどんなジャンルになるんだろう?」と感じるような、新しいポップスだと思います
ーーさきほど“内省的”という言葉が出ましたけど、そうした音楽はアンビエントとかポストロックというジャンルにくくられることが多いですよね。以前、kilk records代表の森さんがインタヴューで海外のバンドだとレディオ・ヘッドやビョークみたいな内省的で精神的な音楽でも大きなフェスのトリを務めているのに、日本のバンドではなぜかそれがないので、kilk recordsからそういうものを生み出したいと言っていたんです。
チヒロ : うんうん。
ーーただ、やっぱりポストロックって難しそう、と敬遠する人もいると思うんです。今回、こういうジャケットやポップな曲で親しみやすさを打ち出したのは、そういうところを越えて行きたいという気持もあったんでしょうか?
Koibuchi : 結構ありますよ、それは。リリースするからには聴いてほしいですし。この2人はライヴが大好きなんで(笑)、もちろん大きなフェスに出れるものなら出たいですしね。“自分たちが好きなことをやれていればいい”という人もたくさんいらっしゃると思うんですけど、そうではないかもしれないですね。結果を出したいです。1stでは結構シンプルだったので、複雑にしてみたりとか。まあ、まだ試している段階ではあるんですが1stで学んだことを取り入れられたと思います。
Kanazawa : 自分がLööfを知ったときに、自分が知っていたポストロックではなかったんです。たぶん、今回のアルバムはかなりキャッチーな曲が多いんで、想像されるような感覚はいい意味で破れるんじゃないかと思います。
Koibuchi : 自分が好きなものを徹底的にやったものをとにかく聴いてほしいですし、それで気に入れば評価してほしいですし、嫌いなら仕方ないという感じです。とにかく聴いてもらわないと始まらないので頑張りたいですね。
Kanazawa : さっきの歌詞の話もそうですけど、押しつけていない感じが僕はいいなと思っていますね。
チヒロ : 『Frog Songs For Whales』というタイトルも、これによって今まで私たちを知らなかった人たちが聴いてくれるんじゃないかなという願いが籠っています。親しみやすい可愛らしいタイトルで。こういうジャンルってむずかしい言葉を使っちゃって、敬遠する人がいるんじゃないかと思うんです。ならばこういうマスコット(歌詞カードに描かれている)を入れて、こういうのをきっかけにして聴いてくれたらいいなと思うんです。
ーー前作と比較してもかなりポップになった印象ですね。ご自分たちの中でも音楽に対する意識の変化があったんでしょうか。
チヒロ : そうですね、かなりポップな感じになったのは確かですね。はじける感じで(笑)。変化もありました、ライヴや制作も含めて。
Koibuchi : メンバーも増えましたし、自分の中だけでやっていたこととは全然違うんで。そういう意味でも外に出てきた感じです。
ーー制作環境もだいぶ変わりましたか?
Koibuchi : 前作はもう、ひどいもんでしたね(笑)。はじまりが、ちゃんと製品にしようとして世に出すとかいうものではなかったので。DTMのソフトにしてもプロ仕様のものじゃなくて、オマケで付いてた機能限定版みたいなもので作ってたので(笑)。そこは全然違いますね。3年の間でどんどんグレードアップはしているので。それと勉強もしましたし。自分でミックスまでは前回もやってたんですけど、だいぶその辺の腕は上がっていると思うのでよくなっていると思います。1枚目はそれはそれで味はあると思うんですけど、別物のように感じるくらい変わっていると思います。
ーーアルバムのはじめの方と終わりの方で、同じようなドラムパターンが出てきますよね。これは意識的にそうしているんですか?
Kanazawa : 最初の曲と最後の曲は形が決まってましたよね?
Koibuchi : 起承転結の「起」と「結」の感じは1stを出した後から制作が始まってるような感じでしたね。どんどん曲がたまっていって出すという作り方なので。レコーディングとかも10曲を期間を決めて録るというのではなくて、溜めて行って最終的に仕上げるんです。
ーー起承転結の間に、「ここにこういう曲が欲しいな」と思って作ることもあるんですか。
Koibuchi : さすがに全部うるさい曲とかにはできないので、おとなしめの曲を意識したりというのはあります。「こういうイメージで作ってほしい」ってお願いされることもたまにあるんですよ、イベントとかで。そういうのをアルバムに入れるときにイメージに当てはめていくこともあります。
ーーイメージでいうと、「Water Tree」は不穏な感じに聴こえます。
Koibuchi : これはチヒロがごく初期に作ったんです。バンドの時代に。
チヒロ : これを完成させたくて社会人バンドを組んだんです(笑)。結局そのときはできなくて、今回完成して嬉しいんですけど。最初は、シューゲイザーみたいに最後に盛り上がって「ゴォ~」ってやりたかったんですけど、(Koibuchiが)元のメロディに色々音を付けてくれて、それを聴いたときにこの曲名にしました。もともとの曲名が「mori」で、森林の中にいるようなイメージだったんですけど、今回完成してから「Water Tree」って感じがするなと思って付けました。

ーーこの曲の歌詞「誰も知らない音、誰も知らない色、誰も知らない世界」がアルバムのキャッチフレーズに使われていますし、アルバムの核になる曲ということでしょうか。
チヒロ : それはありますね。みんなが知らない、「これはどんなジャンルになるんだろう?」と感じるような、新しいポップスだと思います。
ーー“誰も知らない世界”というのは、主人公のカエル(=バンド)が知らない世界に飛び出していくというイメージも重ねて合わせているんですね。
チヒロ : そうです、そうです。
ーー「Whale Song」のエンディングに入っている音って電車が発車するとき流れる音ですか? なんとなく聴き覚えはあるんですけど。
Koibuchi : あれはそう聴こえますけど、目覚まし時計のアラームです。目覚ましなので、またそこから始まる的なイメージでしょうか(笑)。次の世界への布石です。
ーーライヴを含めて今後はどんな展開を考えていますか?
Koibuchi : コンスタントに音源を出したいです。ライヴはドラムがいるときもあればいないときもあるんですけど、逆にそれだと動きやすいのもありますね。小さいカフェみたいな場所でもやりやすかったり、クラブとかでも出来たり。そのときの状況に合わせてフレキシブルに。今作のテーマのように、大きな海に飛び出していくような活動をしたいですね。
kilk recordsの連続企画「kilk records session」公開中!
kilk records session vol.1 森大地(kilk records)×虎岩正樹(残響塾)「新しいアーティストの考え方」
kilk records session vol.2 森大地(kilk records)×木戸崇博(Ricco Label)「新しいレーベルの考え方」
kilk records session vol.3 森大地(kilk records)×竹中直純(OTOTOY代表取締役)「新しいメディアの考え方」
kilk records session vol.4 森大地(kilk records)×海保けんたろー(SONALIOドラマー、ワールドスケープ代表取締役)「新しいアーティスト・マネジメント」
kilk records session vol.5 森大地(kilk records)×出川光(CAMPFIRE)「新しいプロモーションの考え方」
kilk records session vol.6 森大地(kilk records)×劔樹人(神聖かまってちゃん、撃鉄マネージャー、あらかじめ決められた恋人たちへ)「新しいマネージメントの考え方」
kilk records session vol.7 森大地(kilk records)×永田純(音楽エージェント / プロデューサー)「新しい人と人の繋ぎ方」
kilk records session vol.8 森大地(kilk records)×高野修平(コミュニケーション・プランナー / サブ・マネージャー)「世の中の動かし方」
kilk records session vol.9 森大地(kilk records)×比留間太一(「2.5D」ディレクター)「日本のポップ・カルチャーをここから世界へ」
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待望のデビュー作とも言えるフル・アルバム。sigur ros、múmを彷彿とさせる牧歌的な暖かさと、Björkを思わせるクールさが同居した究極の心地良さ。決して仰々しくないそのサウンドはどこか非日常的でありながら懐かしい不思議な世界観を提示している。まるで無垢な子供が積み木遊びをする様に構築された音の世界で起きる不可思議な物語!彼らの創造する小さな世界「Miniature garden(箱庭)」にようこそ!!
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PROFILE
Lööf
2009年冬、東京にて結成。
Yasuto Koibuchi(gt,key,sampler,programming)、チヒロ(vox,lyrics,artwork)、Toshiaki Kanazawa(bass)によるエレクトロニカ / ポストロック・バンド。Yasuto Koibuchiによるシンプルなフレーズを複雑にオーバー・ダブしたサウンド、チヒロのアブストラクトなアートワークと歌詞、北欧の空気感を思わせるヴォーカルが特徴。都内を中心にライヴ活動も行っており、幅広い表現力のヴォーカルに生楽器を積極的に取り入れたパフォーマンスが多くの支持を得ている。
2012年1月、kilk recordsより1stアルバム『Miniature Garden』をリリース。
同年10月、Toshiaki Kanazawa(bass)加入。
2013年、Radioheadの『OK Computer』の全曲カヴァー・コンピ『Helping Hand -Tribute To Radiohead』において名曲「Karma Police」をカヴァ・ーし高い評価を得る。
また、自らの作品制作と平行して国内外のバンド、イベント等のリミックスワーク、アートワーク等を手がけ、クリエイティビティを発揮している。