崎山蒼志が仲間たちと追求した、「生活」と「混沌」の共存──新作に浮かび上がる思考と嗜好の輪郭

崎山蒼志が、新たなフェーズへと踏み出した。約2年半ぶりに完成したアルバム『good life, good people』は、穏やかなタイトルの印象とは対照的に、混沌とした現実と日常のあわいを行き来する作品だ。まず耳を引くのは、フォークからハイパーポップまでをも横断する幅広いサウンド。その多彩さに加え、原口沙輔やPAS TASTA、Mega Shinnosuke、紫 今、諭吉佳作/menといった面々とのコラボレーションも、本作に豊かな奥行きをもたらしている。キャリアの転機を経た今、彼は何を見つめ、何を歌おうとしているのか。「生活」と「混沌」が同居するこのアルバムの背景にある思考、そして彼自身の嗜好に、じっくりと迫った。
崎山蒼志、4枚目のフルアルバム!!
INTERVIEW : 崎山蒼志

「ようやく自分の言葉で歌い出したのかな」という取材の終盤に漏れ聞こえた一言を、その後しばらく頭の中で反芻していた。崎山蒼志が歩んできた道のりを思えば思うほど、最新作『good life, good people』の持つ重大な意味に気付かされる。アーティストとしての強烈な自我が顔を見せ、これまでのキャリアで出会った仲間との関係性が刻まれた今、彼は新たに生まれ直したのだ。
最初はギターを抱えた天才少年として、そして今ではTVアニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」のEDテーマ「燈」を含め数多くのタイアップ曲を手がけるSSWとして、崎山蒼志はその繊細な言葉を遠くへと届けてきた。『good life, good people』ではラップトップを用いて音の上を跳ね回る奔放な側面を原口沙輔やPAS TASTAの面々と追求。同時にMega Shinnosukeに紫 今、さらに久しぶりの共演となった諭吉佳作/menなど同世代のミュージシャンとのコラボレーションも自身の生活のハイライトとして収録している。
本人曰く、『good life, good people』の「people」にあたる部分はこのような客演陣だという。そしてもう片方の「life」とは、紛れもない崎山自身の生活だ。アートワークからギターのストローク、そして何より言葉の節々に、崎山蒼志という人がいる。そして日本のフォークやハイパーポップなど、種々雑多な彼自身の興味もそこに組み込まれている。成熟の最中にありながら、胸の内にある矛盾を描く、この上なく誠実な、一人の歌うたいに話を訊いた。
インタヴュー&文 : 風間一慶
撮影 : 西村満
僕の好きな山田五郎さんとか、思えばかなりハイパーなんですよ
──アルバムのリリース、おめでとうございます。
ありがとうございます。
──最初に『good life, good people』という作品に触れた時、まずアートワークに驚きました。カラフルなイラストが初回限定盤で、サブスクなどで表示される通常盤にはダニエル・ジョンストンのような簡素なイラストが用いられています。


松本(セイジ)さんが描いた線画が前から好きで、今回のアルバムに合ってると思ったんですよね。
──アルバムの形を意識し出したのはいつ頃ですか?
一昨年の後半ですね、「ダイアリー」を制作した時にはアルバムの計画を進めていました。その時はコラボ・アルバムというか、色んなゲストの参加するミックステープを想定していたんです。結果的にはこういった形のフル・アルバムになりましたけど、最初の計画の影響で『good life, good people』はコラボ曲が多くなっているんです。
──前作『i 触れる SAD UFO』をリリースしてから約2年半の間は、「燈」の大ヒットや海外公演もあり、キャリアが大きく動いたタイミングだったのではないかと。
そうですね。AbemaTVで配信された『日村がゆく』の「五月雨」で印象が止まっていた人が「燈」で再び知ってくれたというか、あれは2つ目のデカい出来事でした。「燈」は弾き語りのテイストじゃないですし、自分のキャリアとしても節目になったと思います。
──これまでの作品の中でも、ギターによる弾き語りとラップトップを駆使するスタイルの二つは使い分けられていましたよね。作曲の段階から、両者は意識的に隔てられているのでしょうか?
あー、ちょっと分けてるかもしれません。一応、弾き語りは活動のルーツでもあるし、やっぱりギターを持って作ることが多いので、最終的には違う形になったとしても「弾き語りをするぞ!」っていう気持ちで臨むというか(笑)。そうじゃない時はLogicでビートを作って、並べたプロジェクトの上で言葉とメロディーを載せていく、みたいな。

──その二つを可能にしているのがインプット量というか、端的にめちゃくちゃ音楽をディグってますよね(笑)。最近のマイブームってあります?
今はチェ(Che)っていうラッパーが好きです。あとファッカーズとかギースとか、ケニー・ビーツ(現ケネス・ブルーム)のプロデュースするアルバムが大好きなんです。本人はヒップホップ出身なんだけど、今はバンドとかエレクトロニカをやっているのが面白くて。
──独特のバランス感覚がありますよね。
あと、マイ・ニュー・バンド・ビリーヴの「Numerology」。これヤバかったです。フラメンコのギターみたいな感じでカッコよかった。
──ここ数年で聴いたものの中から、ダイレクトに『good life, good people』の制作に影響を与えたものってあります?
んー……フォークですね。僕、『日村がゆく』の「高校生フォークソングGP」っていう企画で世に出てきたのに、フォークを全然知らないんですよ(笑)。なのでちゃんと知ろうと思って、三上寛さんを聴いたんです。三上さんってフォークだけどオルタナっぽく聴こえるというか、バイクのエンジンをふかす音が大音量で使われていたり、とにかくハイパーなんですね。lilbesh ramkoさんとか、いわゆるハイパーポップも聴いていたんですけど、それとは別に過剰なのを探していたら三上さんにハマるっていう。
──なるほど、すごいテイスト。
アルバムの最初に入っている「悪魔」って曲は三上さんがインスピレーションで、四畳半フォークっぽい進行を試してみたんです。それにドラムの高橋直希くんが最近ハマってるっていうモジュラー・シンセを合わせてみて、両極端の要素が組み合わされた曲を作ったらどうなるのかなって。
──「悪魔」のコード・ストロークは極めて簡素というか、フォークやカントリーのスタンダード曲のようですよね。そういう意味で『good life, good people』のアートワークとも親和性が感じられます。
確かに、それは日本のフォークをずっと聴いていたからかも。「悪魔」を作った時は三上寛さんと、あとは山﨑ハコさんも聴いていて。怨念をまとっているような、ちょっとホラーっぽいムードに惹かれていたんです。自分にとってハイパーなものに興味があった時期で、「おかしいだろ!」みたいな表現を探していたんですよね。岡村靖幸さんとかマイク(MIKE)とか、テンションはローなんだけど過剰なことをしてる人が大好きで。
──ローテンションでハイパーな人。
そう。僕の好きな山田五郎さんとか、思えばかなりハイパーなんですよ。テンションは一定なのにとんでもない知識があって、『出没!アド街ック天国』とかでも「この街行ったことあるんですよ〜」って絶対にコメントしてるし。冷静に考えて、行き過ぎだと思うんですけど(笑)。通常運転で突き抜けてるんですよね。
──確かに、マイクと山田五郎さんは似てるかも。ヤバい(笑)
そういうのが好きなんです、ちょっと変わった人いうか。
──それと、方々で言ってますけど、吉田類さんとか……。
吉田類さんも面白いですよね。『酒場放浪記』とか相当変じゃないですか? この前とかオープニングからダフト・パンクの「One More Time」流してたし、居酒屋に行っても類さんは感想すら言わないし。それで最後に俳句を詠んで15分で終わるっていう……それが通常運転で(笑)。でも、そういう人を見ると元気が出るんです。












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