エルスウェア紀行、これまでの旅路が結実したツアーファイナル──「strange town tour 2025-2026」

2026年2月7日、日本橋三井ホールにて、安納想 (Vo.Gt)、トヨシ(Gt.Dr.Cho)による二人バンド、エルスウェア紀行のワンマンライブ「strange town tour 2025-2026」ファイナル公演が開催された。過去最大キャパであり、トイズファクトリーからのメジャーデビューが発表されるという大きな転機の一夜となった。静と動を行き交いながら紡がれた、物語のすべてをレポートする。
エルスウェア紀行「のびやかに地獄へ」配信中!!
LIVE REPORT : エルスウェア紀行「strange town tour 2025-2026」
取材 &文 : 金子厚武
撮影 : 髙野立伎
2月7日、エルスウェア紀行が「strange town tour 2025-2026」のファイナルとなる東京公演を日本橋三井ホールで開催した。安納想とトヨシの2人にとって、過去最大キャパのワンマンライブとなったこの日は見事ソールドアウト。アンコールにはトイズファクトリーからのメジャーデビューが発表され、バンドとオーディエンスの双方にとってメモリアルな一夜となった。


ルームランプの温かな光が灯るステージに安納とトヨシが登場して、ライブは新曲の「温度と一部」からスタート。エルスウェア紀行はメンバー2人によるアコースティックセットでのライブも大事にしていて、今回のツアーからその編成を「微光奏」(バンドセットを「遠景奏」)と呼び、この日は微光奏のデュオセットで幕を開けた。そこにキーボードのノ上が加わって、トリオセットになると、「さよならに」を披露。この編成ではトヨシがアコギを弾きながらバスドラやスネアも鳴らす「足ドラム」が特徴で、続く「キリミ」のような音源では激しいバンド・サウンドを聴かせる曲を、アコースティックでも表現できるのは「足ドラム」があるからこそだ。
この編成で最後に演奏されたのは、「普段は本編の最後にやることが多い」という「ひかりの国」。もともと「救いのない曲」だったが、「救いのなさに救われる人もいる」という言葉をもらったり、この曲でライブのサポートメンバーとも出会い、新しく踏み出す一曲になったことを語り、「終焉をテーマに書いた曲だけど、終わりから始まるストレンジな街にみなさんをお連れしたいと思います」と話すと、場内は大きな拍手に包まれる。<ぼくらに光はない><遠くへは届かない>と歌いながらも、中盤でワルツのリズムに変わるセクションから徐々にステージが美しい照明に包まれ、力強いアウトロで微かでも確かな光を奏でてみせた。


逆回転のような音で始まり、列車や踏切の音が聴こえるSEが流れる中、ステージの背景にきらびやかな星空が輝き、「これからのひととき、エルスウェア紀行がお送りする音楽の旅。お忘れ物はございませんか?それではみなさま、気をつけて行ってらっしゃいませ」というアナウンスが流れると、ギターのqurosawa、ベースの千ヶ崎学、キーボードのsugarbeansとともにエルスウェア紀行の2人が再度登場し、「ムーンドライバー」からバンドセットがスタート。序盤は千ヶ崎のベースがファンキーな「少し泣く」や、qurosawaが歪んだギターを鳴らす「鬱夢くたしかな食感」など、プログレのような展開も含んだ熱量の高い演奏で、ロックな側面を見せていく。
MCではトヨシが安納と音楽をやり始めてもう10年が経ち、今までで一番大きな会場がソールドアウトになったことへの感謝を伝え、安納が「これからもエルスウェア紀行と一緒に旅をしてくれたら嬉しい。ちょっとずつ変わっていきながら、みんなとまだ見ぬ場所へ行けたらいいなと思います」と想いを語る。ここからは「素直」や「無添加」といったシティポップ風のアレンジの曲が続き、淡々とした曲調の中で繊細な感情を表現していく安納のボーカルの良さが引き立つ。ツアーのタイトル曲とも言うべき「マイ・ストレンジ・タウン」もまさにそんな一曲だが、クールで洗練された「シティ」よりも、「タウン」という言葉の持つ親しみやすさがそのまま安納とトヨシの人柄ともフィットしていて、エルスウェア紀行の魅力を形成していると感じた。


ここで安納が口上を述べ、「万能じゃないけど、雨風から荷物を守る、トラックの荷台を覆う幌みたいに、この音楽があなたの毎日と一緒にある、別れのない友人でいられますように」と締めくくると、フォーキーな「天国暮らし」を披露。なお、2024年に渋谷WWWで行われた単独公演のタイトルが「幌をあげる」で、エルスウェア紀行のライブは常に連続した物語性を内包していることも、世界観を形作る大きな要因になっている。サポートの3人が一度ステージを離れ、安納とトヨシの2人でしっとりと「光の位相」、「問題のない朝」を届けると、今度は一転してトヨシのドラムソロがスタート。巧みなタム回しから徐々に手数を増やし、BPMを上げていくと、再びバンド編成でロックナンバーの「天才は今度」へ。さらには「あなたを踊らせたい」、「ロマンチックサーモス」とライブの人気曲が続き、場内は大盛り上がり。誰かの心に寄り添う微かな光と、その場のみんなで想いを共有する遠くの景色。その両方を奏でるバンドの真骨頂が感じられた。
前身バンド時代から演奏されている「まなざしはブルー」、さらに「冷凍ビジョン」を続けると、本編最後のMCへ。「音楽で伝えたいことはあまりないけど、自分たちにとって、できることがあるんじゃないかと思えるものが音楽」「悲しいこと、苦しいこと、辛いこと、そのおかげでできる何かがきっとある」「私たちはきっと10年後もエルスウェア紀行をやってると思うので、健康診断みたいに年に1〜2回でも、ストレンジな街でまたみんなと再会できたら嬉しい」と言葉を紡ぎ、「とわの祭り」を披露した。「大切な出会いに別れはなく、出会えた時点でとわに続く祭りのようなものなのかもしれない」という想いを美しく壮大なストリングスに乗せて歌い上げるこの曲は、バンドとオーディエンスを繋ぐ、スタンダードナンバーのような風格の名曲だ。


本編の最後に演奏されたのは、1曲目に2人で演奏した新曲の「温度と一部」。この曲について安納は「括れない『好き』や、言い切れない夢を持っていてもいい。これまで時間の流れや別れについて書いてきたけど、そういうテーマを抜けて、今思うことがそんなことでした」と語り、「とわの祭り」で「別れ」に対する想いを消化できたからこそ書くことのできた、新たな始まりの曲であると感じられた。エルスウェア紀行らしい多彩なリズムや転調で「括れなさ、言い切れなさ」を見事に表現し、「おわり」から始まった旅を「はじまり」で締めくくってみせた。
手拍子に応えてのアンコール一曲目、安納のアカペラから始まったのは「ベッドサイドリップ」。まさに今から10年前、前身バンドの最初の作品として発表された、2人にとっての原点とも言うべき一曲であり、この曲の後にメジャーデビューを発表したことは、これまでの苦楽を踏まえて新たな舞台に辿り着いた、2人の感慨や物語を強く感じさせるものだった。そして、この日最後に演奏されたのはもう一つの新曲「のびやかに地獄へ」。安納が「世の中的にも、個人的にも、苦しいことはたくさんあるかもしれないけど、どうせ地獄ならのびやかに行こう」と想いを伝え、トヨシにも話を振ると、穏やかな口調から一転、「ついてこいよ!」と叫んで大きな拍手と歓声が起こった場面はこの日のハイライトの一つだった。おわりからはじまり。はじまりから、また新しいはじまり。暴力的な「正しさ」の圧が横行する、地獄のような世の中だったとしても、括れない感情や「わからなさ」を抱きしめて、いつの日かまたこの街に集えることを願って。


編集 : 西田健
エルスウェア紀行「tour "strange town" 2025-2026」セットリスト
2026年2月7日 日本橋三井ホール
M01. 温度と⼀部
M02. さよならに
M03. キリミ
M04. ひかりの国
M05. ムーンドライバー
M06. 少し泣く
M07. 鬱夢くたしかな⾷感
M08. 素直
M09. 無添加
M10. マイ・ストレンジ・タウン
M11. 天国暮らし
M12. ひかりの位相
M13. 問題のない朝
M14. 天才は今度
M15. あなたを踊らせたい
M16. ロマンチックサーモス
M17. まなざしはブルー
M18. 冷凍ビジョン
M19. とわの祭り
M20. 温度と⼀部
<アンコール>
EN1. ベッドサイドリップ
EN2. のびやかに地獄へ
フォトギャラリー
エルスウェア紀行 ディスコグラフィー
PROFILE:エルスウェア紀行
2020年9月に始動した安納想 (Vo.Gt)、トヨシ(Gt.Dr.Cho)による二人バンド。同年12月に1st フルアルバム「エルスウェア紀行」をリリース。「さみしくて、あまくて、つよい。」映像的でリリカルな歌詞世界と、70年代シティポップの匂いを内包しながらロック・フォーク・パンク・プログレ・ブラックミュージックなどを独自に昇華した他にないサウンドは、まさしく令和の“ニュー・ミュージック”である。ライブはメンバーのみのアコースティック編成のほか、サポートミュージシャンを迎えたバンド編成など多彩な形態で行う。“どこでもない場所を旅する記録”
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