【BiSH】Episode80 リンリン「次会えたらちゃんとハッピーになってほしい」

いまや誰しもが知る存在へと成長した“楽器を持たないパンクバンド”BiSH。2020年8月19日にはZepp Tokyoにて今年で6回目となる夏恒例のフリー・ライヴ〈TOKYO BiSH SHiNE6〉を無観客、ニコ生による配信で行うなど、コロナ禍においてもファンへの想いを伝え続けている。オトトイでは、多忙な毎日を過ごすBiSHに12周目となるメンバー個別インタヴューを敢行。第4回は、リンリンの言葉をお届けします。
BiSH、全7曲収録メジャー3.5thアルバム『LETTERS』ハイレゾ配信中!(歌詞ブックレット付き)
INTERVIEW : リンリン

少しずつ、本当に少しずつリアルの公演が復活してきた。我々がBiSHを観れるのは、もう目の前だ!そんななか行われた〈TOKYO BiSH SHiNE〉は、『LETTERS』の曲が全曲演奏され、間違いなく2020年のBiSHだった。リンリンの言葉から溢れ出るBiSHの想い、ぜひ感じとってください。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 井上沙織
写真 : 大橋祐希
リキッドルームを1人で埋められたら
──最近はどう過ごしていましたか。
リンリン : PARCOでWACKのイベント〈SCHOOL OF WACK〉があって、WACKメンバー全員で日替わりで出ていました。
──いろんなお題が出されていましたよね。
リンリン : 神経衰弱とかルービックキューブとか、円周率20桁を覚えたり、ジェスチャーゲームをやったり。久々にファンの人に会えて嬉しかったです。
──自粛期間中はメンバーにも会っていなかったんですよね?
リンリン : 取材も撮影も全部リモートだったので全く会ってなかったです。仕事以外はほとんど外に出ないで、お絵描きしたりインスタを投稿したり、ファンの人と話そうと思ってSUGARを始めたりしてました。あと曲作りは続けていて、アルバムが完成しました。
──おお、ついに! どんな仕上がりになりましたか。
リンリン : バンドをやっている友達に聴かせたら「コード進行とかも分からないのに曲になっててすごいし、世界が強すぎる」って言われました。1曲だけ聴くとよく分からないんですけど、アルバムを通して聴いてもらったらこういうことがしたいんだなって思ってもらえると思います。
──聴いてみたいです。いつか聴けますかね?
リンリン : どうですかね……? 遠い未来の話ですけど、目標はリキッドルームを1人で埋められたらと思っているのでこつこつと頑張ります。
──家族とは連絡を取ったりしていますか?
リンリン : お母さんと電話したりしています。実家にも帰りたいですけど、自分が東京にいていろんな仕事をしているので、もしうつしちゃったらと思うと帰るのはちょっと怖いですよね。犬ももうおじいちゃんだから早く会いたいですよ。

ひとりで泣きそうになりながら振り入れを見ていた
──『LETTERS』をリリースして約2ヶ月が経ちますが、改めてどんなアルバムになりましたか。
リンリン : いましかできない感じのアルバムだなって思いますね。曲の雰囲気も歌詞もいままでにないくらい正直で。最初はBiSHっぽくないなっていう違和感があって、ちょっと気恥ずかしかったです。
──例えばどういう部分ですか?
リンリン : “LETTERS”のサビの<全て届けるよ>とか、すごくまっすぐで。これをBiSHが歌うんだって思いました。
──実際に歌ってみて気持ちに変化はありましたか?
リンリン : 配信ライヴで披露したときに泣きそうになっちゃいましたね。歌い出しの自分のパートをいざ歌ってみると、それを宣言しているみたいで心が苦しくなりました。
──宣言?
リンリン : ライヴもできない、お客さんにも会えない、この状況を認めることになっちゃうなって。

──それはまだどこかでこんな無茶苦茶な現実は認めたくないと思っているということですか?
リンリン : 認めてはいるんですけど、すんなりと受け入れられないというか。現実の世界がそうじゃなくなってほしい気持ちが強すぎてスッと歌えなかったですね。
──そんな葛藤があったんですか。でも多分リンリンが歌い出しの重要なパートを任されたのは意図があってのことですよね。
リンリン : 松隈さんもいままでにない感じで歌割を決めたって言ってました。しっとりしたリード曲で歌い出しをやるのは初めてで、歌も上手じゃないからヤバいなと。
──〈TOKYO BiSH SHiNE(以下、TBS)〉では堂々と歌っているように感じましたよ。
リンリン : 〈TBS〉はやっぱり楽しかったです。久々のワンマンだったので。
──『LETTERS』の曲をはじめ、攻めのセットリストだなと。
リンリン : セットリストはハシヤスメが担当だったんですけど、いまの世の中でやるワンマンだからもうちょっとみんなで話し合いたいねって、みんなの意見も取り入れてあのセットリストになりました。ほぼ新曲で、他にも半年以上やってない曲もあったので確認が大変でした。
──皆で集まっての練習はなかなかできなかったんじゃないですか?
リンリン : そうなんですよ。それぞれいろんな仕事が入っていたのもあって、日程がなかったので詰め詰めで。スタジオもあちこちいかない方がいいから事務所の狭いところでしかできなくて、バミリの感覚とかも掴めなくて難しかったですね。
──新曲の振りは事前にアイナが考えてくれていたんですか?
リンリン : はい。振り入れのときに何回か繰り返して練習して、あとは個人でやって。新曲の振り入れもライヴの2、3日前に完成したくらいだったので、みんなバクバクでやっていましたね。本編ラストまで新曲があったから、最後の最後まで緊張が続いてヤバかったです。〈TBS〉が終わった後は全く寝られなくて。切羽詰まっていたものが無事に終わった安堵感があって、大きい会場でやったときと同じ気分になっていましたね。

──〈TBS〉で印象的だった瞬間はありますか。
リンリン : みんなで歌をつなぎ合わせていく感じを久々のライヴで実感できてよかったです。『LETTERS』では“co”が一番好きな曲なんですけど、私レコーディングで語尾とかの伸ばす部分を途中で切っちゃうことが多くて、よく注意されていて。でも“co”はみんなでどんどんつなげる曲だからいつもより意識して伸ばすようにしたら、「これが歌のリレーか! 」と思えてすごく楽しかったです。“MORE THAN LiKE”はいつもファンの人と目を合わせながら歌っていたので、自然と会場を見る癖がついていて。いまの状況で歌うとジーンとくるし、お客さんが目の前にいてくれたらよかったのになと思いました。
──それはMCでも涙ながらに伝えていましたよね。
リンリン : 当日渡辺さんに急にMCをやってほしいって言われて、みんなただでさえ時間がなくていっぱいいっぱいになっているのにさらにパニックになっちゃって。MCを考える余裕がなかったので、はじめてその場で思ったことをそのまま話したんですよね。だからああなってしまったんですけど、ライヴで感じたその瞬間のことを言えたのでよかったです。
──最後の見せ場の“サラバかな”や“I'm waiting for my dawn”はどうでしたか。
リンリン : “I'm waiting for my dawn”はチッチが「落ちサビの歌割りを初期メンバーでやりたい」って言ったんですよ。私は初期のBiSHが好きで入ってきたのでひとりで泣きそうになりながら振り入れを見ていました。アイナ象が2人に教えていて、真ん中にチッチがいてモモコさんがついていて。アイナ象もその場で試行錯誤して立ち位置を変えたりしていたので、すごくいい光景を見てるなと思いましたね。
──BiSHに憧れて入ってきたリンリンだからこその視点ですね。
リンリン : すごく懐かしい気持ちになりました。

“LETTERS”はBiSHの言葉であって自分自身の言葉とは少し違う
──約半年ぶりのワンマンを終えてどうでしたか?
リンリン : 〈TBS〉はいつも「今年もやるんだな」って感じだったんですけど、今年はやれてよかったって思いました。私はBiSHの好きな曲・裏1位があって。登場曲の“MAIN STREET ELECTRICAL PARADE”なんですけど、登場のときその曲を聴くとワクワクしてしょうがなくなっちゃうんです。初年度の〈TBS〉、自分が入って初めてのライヴの時もこの曲から始まったので、意外と思い入れがあったんだなって改めて気づきましたね。
──いつの間にか〈TBS〉はBiSHにとってもお客さんにとっても大事なものになりましたよね。
リンリン : はい。あとさっきの話に戻るんですけど、“ロケンロー”も初披露でした。振りがすごく難しくて全然覚えられなくて……。
──とにかく大変だったと(笑)。
リンリン : もう本当に大変でした! 前日くらいに「覚えられなくて無理! 」って泣きましたし。大変だったけど、達成感とか多幸感とか全部味わえたし、伝えられたかなと思います。

──『LETTERS』を経て、いま清掃員に対してはどんな想いがありますか。
リンリン : 『LETTERS』は特典でレターセットがついていて、ファンの人がそれで送ってきてくれた手紙に私たちが返事を書く企画があったんです。みんな会えなかった期間の出来事がたくさん書いてあって。医療系の人はお仕事大変って書いてあったり、コロナ以外でも悩みがある人がいっぱいいて。ちょっとでもなにか返していきたいなって思ったし、次会えたらちゃんとハッピーになってほしいって思いました。
──何通くらい届いたんですか?
リンリン : 全部読むのにかなり時間がかかったので結構たくさん。返事は自分で選んで書いたんですけど、全部に返したいって思いました。いままで特典会とかでニコニコしてきてくれていた子にも私生活で悲しいことがあったんだって知って、もっと声をかけてあげればよかったなって後悔もしたし、もっと大事にしようと思いました。
──“LETTERS”の歌詞が直接的で恥ずかしかったって言ってましたけど、より直接的じゃないですか?
リンリン : 1対1の、人と人のそういうのはいいんです。 “LETTERS”はBiSHの言葉であって自分自身の言葉とは少し違うっていうのもあるので。
──なるほど。また直接伝えられる日が早くきてほしいですね。ライヴの再開も楽しみにしています。
リンリン : そうですね。配信ライヴだと1人で見ているお客さんが多いと思うし、〈TBS〉も生で見てほしかったです。私たちも焦ってはいたけど、気持ちはすごく強かったので。

BiSH、全7曲収録メジャー3.5thアルバム『LETTERS』ハイレゾ配信中!(歌詞ブックレット付き)
前回の記事はこちら
PROFILE
アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・D からなる“楽器を持たないパンクバンド” BiSH。
2015年3月に結成。5月にインディーズデビュー。2016年5月avex traxよりメジャーデビュー。
以降、「オーケストラ」「プロミスザスター」「My landscape」「stereo future」等リリースを重ね、横浜アリーナや幕張メッ セ展示場等でワンマンを開催し、ロックフェスにも多数出演。
2019年7月3日に、メジャー3rdアルバム「CARROTS and STiCKS」をリリース。
9月23日には、初の首都圏以外での アリーナ公演となったワンマンライブ “And yet BiSH moves.”を大阪城ホールにて実施、即日SOLD OUT。
2020年4月13日より、TVアニメ「キングダム」オープニングテーマに起用された新曲「TOMORROW」を配信。
7月8日には、BiSHとして初となるベストアルバム「FOR LiVE -BiSH BEST-」を発売することを発表。
加えて、7月22日には、メジャー3.5th AL「LETTERS」をリリース。