細かすぎる仕掛けたち!? ──ヘルシンキの橋本が語る、サービス精神旺盛なパッケージと“時の流れ”を感じる楽曲
2017年に自身のレーベル〈Hamsterdam Records〉を立ち上げたHelsinki Lambda Club。これまで、1stシングルにはじまり、1stミニ・アルバム、1stフル・アルバム、1stスプリット…… と、“ファースト縛り”でリリースを続けている彼ら。そして今作も懲りずに、バンド“初”となるアナログ盤とUSBとミニ・トートバッグをセットにした全3曲入りのシングル『Time,Time,Time』をリリース。
もうヘルシンキといえば…… “ファースト縛り”と“パッケージの手作り感”というところでもありますよね。ただそんな“手作り感”満載のパッケージだけがヘルシンキの魅力ではないんです! 今回収録された楽曲も、いままでにないほど深層心理に突き刺さる佗しいものに仕上がっていて、これがなんとも素晴らしい! 今回は、なぜ毎回“手作り感”にこだわるのか、そして本作収録の楽曲について深く掘り下げるべく作詞作曲を務める、橋本薫(Vo&Gt.)へのインタヴューを実施! さらにOTOTOYでは、『Time,Time,Time』をどこよりも早く配信、過去作『split』の全曲配信を開始。過去作とまとめてダウンロードするのが吉ですよ〜!
OTOTOYではどこよりも早く新曲を配信!
Helsinki Lambda Club / Time,Time,Time
【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 200円(税込) / まとめ 600円(税込)
【収録曲】
1. Time,Time,Time
2. 素敵な負け犬
3. バロンダンス
USBがミニ・トートバッグに入ったアナログ盤の詳細はこちら!
【収録内容】
・7インチアナログ盤
〈収録内容〉
SIDE A : Time,Time,Time
SIDE B : バロンダンス
・USBメモリ
〈収録曲〉
1. Time,Time,Time
2. 素敵な負け犬
3. バロンダンス
・写真
ライヴ他、素敵な写真(ランダムにセレクト)
・映像
ライブ他、素敵な映像/「Time,Time,Time」Music Video
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・FLAKE RECORDS
・SECOND ROYAL
INTERVIEW : 「おまえはそれでいいの?」って問いかけるように
このインタヴューは、ドラマーのアベヨウスケ脱退のニュースが入ってくる前に行われたものである。このインタヴュー時にはアベの脱退が決まっていたかどうかはわからないけれど、本アナログ盤と今回のインタヴューは、間違いなくHelsinki Lambda Clubというバンドの佇まいを完全に体現したものとなっている。この佇まいが、Helsinki Lambda Clubなんだぜ!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文・構成 : 宮尾茉実
写真 : 大橋祐希
時折見せるかっこいい瞬間に惹かれるんですよね
──本作は3曲収録に対して、7作品の映像作品がUSBに収録されています。この映像作品たちは楽曲にどのように関係しているの? コンセプトなどメンバー間では、どんな話し合いをしたのでしょう?
橋本薫(Vo&Gt. 以下、橋本) : 話し合いすらしていないですね。「ナナインチディグリクラブ“ディグリ王決定戦"」のディレクションは僕なんですけど、当日までメンバーに内容は伝えていなかったですし、ラフな感じで制作しました。音源とかは作りこまれているものではあるんですけど、逆に映像は作りこまずにラフな感じでバンド像が見せられればいいなと思っていました。だから映像と音源との関係性はないです。
──USBの内容が2.7GB……。こんなに入れる必要あったの!?
橋本 : あはは(笑)。すぐ詰め込みたくなっちゃうんですよ。
──自分たちの内側を見せることをNOとするアーティストもいるわけじゃない。そんな中、徹底的にさらけ出したっていうのはなにか理由がある?
橋本 : ヘルシンキのメンバーはそもそも自分を飾ることとかが苦手なんです。それに、作り上げたバンド像よりも、ありのままやっているなかで、時折見せるかっこいい瞬間に惹かれるんですよね。僕らはふざけられるチャンスがあるならふざけたいし、飾って作り上げることに気持ちが向かない部分もあります。僕自身も、カリスマ性があるバンドも好きなんですけど、それよりもおふざけ要素があるバンドの方をずっと追いかけていたりするので。
──橋本さんやHelsinki Lambda Clubの思う、かっこよさとは?
橋本 : 普通の人となんら変わりがないように思える人が、ライヴでは輝いてみえるというか、ダサいとかっこいいの紙一重みたいなものに惹かれます。
──ダサいとかっこいいの紙一重的存在か。まさに稲葉(Ba)さんだ!
橋本 : そうです! まず、稲葉がメンバーにいる時点で僕らは飾れないですし(笑)。
このUSBを持った人からそれぞれのストーリーをつくってもらえればいいなって
──今回の映像作品で、稲葉さんの存在が、決定的なものとして外に出て行った気がしますね。本作はレコードだけでなく、トートバッグと、レコード・プレイヤーを持っていない人向けにUSBを同封、そこに映像作品もつけて…… 何度も言うけど…… こんな盛りだくさんにする必要があったの!? たった3曲をレコードでリリースする上で、この労力やばいのでは? しかも、手作り感はんぱないし(笑)!
橋本 : 僕ら自身飽きっぽいっていうのもあって、あまり同じことを繰り返したくないんです。かといって、みんなと同じことをやりたいわけでもないから、そういった部分でいつも手作り感を出してしまうんですよね。あとは、手に取った時にそっちの方がうれしいかなって。曲を作る時にはあんまり他者のことは考えていないんですけど、曲が完成して世に出す段階になると、人が手に取って喜べるものがいいなって思うので、そこは毎回考えているところです。
──アナログっていま、ダウンロード・カードが封入されることもあるけど、そうではなくてUSBを同封したのはなぜ?
橋本 : そもそもレコードではなく、USBでリリースしたいというのが先でした。このUSBには、僕らの曲とか映像を入れているんですけど、買った人が現代のミックス・テープみたいな感じで、さらに他の曲を入れて誰かに貸す、なんてことができればいいなと思って。それが合法違法とかは別として、このUSBを持った人からそれぞれのストーリーをつくってもらえればいいなっていうことが発端になってUSBを作ったんです。
クラムボンが昔、一部のライヴを録音可にして、その音源をファン同士で交換し交流を深める「テープツリー」ということをおこなったことがあるんですが、そういったファン同士のコミュニティの文化に魅力を感じて、それぞれが持っている画像や映像を共有できたらいいかなって。だからUSBによって、ライヴ写真とかのフォルダの中身が微妙に違うんです。
──えっ! 細かすぎでしょ! 言われないと気がつかないっす! そもそも7inchがメインだと思ってました(笑) 。
橋本 : アナログとデジタルを対比して楽しんで欲しいし、プレイヤーを持っていない人もUSBがあれば聴くことができるし、これをきっかけにアナログを聴くようになる人もいるし…。もっと音楽を楽しむきっかけになればいいなって気持ちも強かったので両方入れました。
──なるほど、今回のいろいろな仕掛けに関してのこだわりは理解したけど…… ぶっちゃけ、この時点で結構予算オーバーじゃないの? なのに、このトートバッグはいったい!!
橋本 : いやー…… その中にレコードを入れたら可愛いかなって(笑)。
──うん、そうですね…… かわいいですね〜、って! 別売りしたらよかったのでは?
橋本 : 単純に予算の話なんですけど、USBをつけるということになった時点で、高値で売るしかなくなってしまって。
──なるほど、もうひとつ価値をつけたかったってことですね。うん、うん、ん……? 何か大きく違う気がするんだけどな……。
橋本 : こういうバカっぽさを楽しめる雰囲気はみんな共有できているのかなと思いますね、バンドやチームとして。
──楽曲たちの中で中心になるのはこのM1「Time,Time,Time」ですか?
橋本 : そうです。M1「Time,Time,Time」とM3「バロンダンス」に関しては時が経って、失ったものについて歌っています。
──時の流れについて橋本さんは思うことがあったんでしょうか?
橋本 : 今年に入って特にそういうことを強く意識するようになりました。というのも、家族に昔だったら素直に言えていたはずのことが言えなくなっていることに気がついて。こんな感じで心が凝り固まって、いろんなことが言えないまま死んでいったりするのかなっていうのを考えていましたね。
でもこれは、家族だけじゃなくてバンドのメンバーとか、恋人とかにも言えることかもしれないなと思ったら、近いがゆえに言えなくなることとかが多いなって部分から、自分に厳しく歌う歌かもしれないなと。いつもならもうちょっと前向きに落として終わる曲が多いと思うんですけど、「おまえはそれでいいの?」って歌い方で終わっているのが、今年に入ってからの曲だなっていうのはあります。
──誰かに伝えたいとかではなくて?
橋本 : まぁでもこれは誰にでも言えることだし、これで気づいて変わろうと思える人がいたらいいなって作り終えた時には思いました。たとえば、時が経つと、関係がなぁなぁになっていったりとか、ありがたみとかも徐々になくなっていったりすると思うんですけど、そういうものを改めて意識できたらいいかなって。
──3曲とも、曲調がまったく違うよね。先ほどもヘルシンキにはいろんな面があるっていうのを見せたいと言ってたけど、違う曲調の3曲を入れたのは、そういったイメージがあった?
橋本 : 僕らは毎回入れてる楽曲はバラバラですし、いろんな面を見せたいっていうのはあります。曲調っていうのは全然違うけど、根底の部分には通ずるところがあるっていうのはおもしろいと思っていたので、あえてといえばあえてです。
──シングル感があって、音作りとかも全部違ってていいなと思いました。ギターの熊谷さんは1sフル・アルバムの段階からサポートとして、制作アイデアを出していたということですが、正式に加入してからアイデアの出し方が変わったりしたの?
橋本 : そうですね。彼自身も自分の中で自分のバンドだっていう意識が出てきたと思います。以前は、僕がイメージを伝えて作ってきてもらっていたんですけど、逆に今は自分から持ってきてくれます。M2「素敵な負け犬」は僕が最初に持ってきたベーシックがあんまりハマらなかったんですけど、サビ以外は熊谷が作り変えてもってきてくれました。だから彼はバンドにかなり貢献してくれています。あんまり他のメンバーが自分からフレーズとかを持ってくることがほぼなかったから、自分から持ってきてくれる人ができたのはバンドにとっても大きいですね。今回はかなり助けられました。
──熊谷さんのやっているもう1つのバンド、Group2はもっとシューゲイザーっぽくて、ヘルシンキと音楽性が違うのかなってイメージがあるけど、彼が2つのバンドを掛け持ちしているからこそ幅が広がったというのはあるのかな?
橋本 : それはあると思います。あと、彼は“好きなものは好き"みたいな外側の部分にとらわれない人間なんです。だからこそ上手くやれているのかもしれません。もともと好きな音楽とかも近いんですけど。彼のつくっているギターの音とかもGroup2で作り慣れている音もあるし、ヘルシンキの曲も前よりノイジーというか、歪み要素とかも増えていると思います。
──以前のインタヴューでファンと狭い範囲の中でやりとりしていきたいみたいなことを言っていたと思うけど、ワンマン・ライヴも経験してバンドが徐々に大きくなっていく中で、そういうことに対する難しさも出てきてない?
橋本 : 続けられる範囲では、そういうことは続けていきたいですね。仮にバンドが売れていったとしても雲の上の存在みたいになるのは、みんながむずがゆいと思うんですよ。そういう距離感の近さみたいなものは完全に切り捨てることはたぶんないと思います。近い距離で接していたことによって、見えてくるもの、知ること、得ることとかもあると思うので。
一緒に文化を楽しむきっかけを作っていきたいって気持ちはあります
──なるほど。
橋本 : 僕たちはロック・バンドなので、男の子でも女の子でも、自分でもできそうって思ってもらえることも大事だと思うし。手の届かない存在になってしまうと、そういうキッカケにはなりにくいこともあるのかもしれないし、僕らの性にも合わないですね。結果として、近い距離で何かを伝えることによって、僕ら以外の音楽とかカルチャーに触れてもらえるきっかけになってもらえればなと。一緒に文化を楽しむきっかけを作っていきたいって気持ちはあります。
──今回の7inchもきっかけとして、アナログを聴く若者たちが増えるかもしれませんしね。今後は何をやろうっていうのはあるの?
橋本 : そろそろ、1stシリーズはきついと思うんですけど、前回もそんなこと言いつつやったんで、またやるかもしれません。
──もうアイデアを募集したほうがいいんじゃない?
橋本 : でも人から言われるとやりたくなくなっちゃうかもしれない(笑)。ちょっとめんどくさいバンドですからね、ヘルシンキは。あ、でもThe Flaming Lipsがそれぞれのパートをそれぞれ別のハードに入れて、一緒に流したら曲になるっていうのをやっていたみたいで、それはめっちゃやりてえ! ってなってます(笑)。ギターはCDで、ヴォーカルはカセットで、みたいな。くそめんどくさい感じにしてやろうって。
──それは絶対にやめたほうがいいと思います……。
橋本 : もっと素直にやれってファンもいると思うんですけどね(笑)。
──ひねくれ者の集団……。
橋本 : 素直な心なんですけど、それが結果として世間から見たらひねくれてるって感じはします。僕はわざわざひねくれた道に行こうとしてはいないんですけど。
──考え方がオルタナティヴだよね。ヘルシンキはギター・ロックっていう枠にもはまらないし、独特な橋本さんなりのポップ感があるから、やっぱりこれからが楽しみだし、だから追っちゃうんだよね〜。
『Time,Time,Time』ができるまで(パッキング編)
同タイミングでこちらも全曲配信開始!
ブラーvsオアシスを予感させる、ヘルシンキとtetoのスプリット・アルバム!
Helsinki Lambda Club,teto / split
【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(16bit/44.1kHz) / AAC
単曲 200円(税込) / まとめ 1,050円(税込)
【収録曲】
01. King Of The White Chip / Helsinki Lambda Club
02. Boys Will Be Boys / Helsinki Lambda Club
03. 宵山ミラーボール / Helsinki Lambda Club
04. 36.4 / teto
05. ルサンチマン / teto
06. 新しい風 / teto
その他、Helsinki Lambda Clubの過去作品はこちら!!
古→新
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LIVE INFORMATION
〈『Time,Time,Time』発売記念ガチンコ2マン フロア・ライヴ〉
2017年12月28日(木)@新代田FEVER
時間 : Open 18:30 / Start 19:00
出演 : Helsinki Lambda Club / 愛はズボーン
THANK YOU SOLD OUT!!
PROFILE
Helsinki Lambda Club
2013年夏、西千葉にあるラーメン武蔵家の近所でバンド結成。 THE CUREとTHE DRUMSが恋人同士になったような、そこから紆余曲折を経てThe LibertinesとTHE STONE ROSESが飲み友になってしまったかのような、まるでSex and the City的な、なんでもありなニュー・オルタナティヴ・サウンドを特徴とする。 シャンプーをしながら無意識で口ずさむぐらい、曲がポップ。そして、正統派ソングライターの橋本の歌詞はぐっとくるばかりか、歌詞内のさりげない小ネタにも知的センスを感じてしまう。
>>Helsinki Lambda Club official site