名曲「Rollin' Rollin'」を作ったのは、アーバンな3人組。七尾旅人とやけのはら、そして第3の男、DORIAN。七尾旅人ややけのはらのニュー・アルバムでの彼の活躍ぶりに触れると、「Rollin' Rollin'」のキーマンは、この男であったことが分かる。初めて見たCUBISMO GRAFICOの松田"CHABE"岳二主催の「第3の男」での彼のヒップでエモいライヴは、たった1台のRoland909で大荒れの土曜日・新宿・歌舞伎町を常夏に変えた。とは言え、既に長い経歴を持つ七尾旅人ややけのはらとは異なり、彼はまだまだ謎に包まれている。いったいどこから来たの? いつ現れたの? ファースト・アルバム『Melodies Memories』の発売のタイミングで、聞いてみた? DORIANっていったい何者なんだ?
インタビュー & 文 : JJ (Limited Express (has gone ?))
"Mr. トロピカルディスコ"DORIANの待望の1stアルバム配信スタート!
DORIAN / Melodies Memories
DORIAN鮮烈の1stアルバムはカラフルでスウィートな80'sのディスコ風味が満載。ポップで人懐っこいメロディと流麗なシンセがキャッチーに響き渡る。思わず体が動き出すようなノリの良い楽曲群は、これまでの数多くのイベントやパーティで磨き上げられた現時点におけるDORIANの集大成ともいえるもの。このドリーミーでロマンティックなアーバン・ダンス・ミュージックに身も心も捧げて間違いなし!
〈Track List〉
01. Dorian's Openning Theme / 02. Nasty Ice Cream feat. LUVRAW&BTB / 03. Melodies Memories / 04. Flash / 05. Natsu no Owari feat. G.RINA / 06. Magic Fly Love Affair / 07. Free / 08. Morning Calling / 09. Disco4.5 (ASYK MIX) / 10. Shooting Star feat. TAVITO NANAO&YAKENOHARA / 11. Crystal Girl
INTERVIEW
ーーDORIANとして活動を始めたのはいつからですか? キッカケを教えてください。
DORIAN : DORIANとしてやりだしたのは2006年の6月ですね。キッカケはDJ。それまでも音楽を作ってはいたんですが、なんか嫌になっちゃって... 数年間何もやっていなかった。そのうち色んなキッカケでDJができる機材が揃い、パーティーとかイベントでDJをやる機会が出来たので、やってみたのが調度その頃で、名前も友人に決めろと言われて「じゃあ、DORIANで」って。それまでは、色んな人の曲をアレンジしたりトラックを作って提供したり、たまに少しだけ自分でラップしてみたり。特に名義みたいなものも持たずにやっていました。たまにバイト的な感じでJ-POPのアレンジをやったり。でもその頃は何も面白いことなんか無かったですね。
ーーDORIANって基本はトラック・メーカーとして考えていいんでしょうか? キーボードも弾きますよね?
DORIAN : あれは単なるMIDIキーボードなんです。そうですね... 自分のことをなんて言っていいか分からないですね(笑)。トラック・メーカーでいいと思いますよ(笑)。
ーー(笑)。作曲やトラックを作り出したのはいつ頃から?
DORIAN : 中学1年生位の頃ですかね。キッカケは小学5年生位の頃にテレビでTM Networkを観て、シンセが何台も並んでいるのを見てやりたいなって思ってキーボードを買いました。色々勉強しているうちに、中学に入って打ち込みというのがあることを知って、お年玉でシーケンサーとかを買いました。誰とも遊ばず、ひたすら毎日音を作り続けていましたね。
ーー早熟! その頃作っていた音がきっかけで、アレンジ等の仕事がまわってきたのですか?
DORIAN : それは20歳位からですね。18〜20歳位の頃はラップをやってはいたものの、HIP HOPがしっくりこなくて、何が面白いのか分からなかった。そこに居るだけで、音を聞くだけで辛かったですね。自分の周りは割とガツガツしてる感じで、「人生HIP HOP」みたいなのには馴染めなかった。なんか「疲れた...」みたいな(笑)。だから遊んでたって感じはないですね。DORIANを始めた2004年位からやっと遊んでる感覚になってきましたね。
ーーなるほど。何もやっていなかった数年というのは、その時期だったんですね。
DORIAN : そうですね。その後にRAW LIFEを知って、よくそこに遊びに行くようになって...。その頃はまだDORIANとしての活動はしてませんでした。RAW LIFEを知って、自分にもできるかも、自分もここに混ざりたいって思った。僕の中ではあそこに出てた人達はスターって感じで、向こう側の人でしたね。やけさん(やけのはら)もそうでした。
ーーやけさんとは、どういったキッカケで知り合ったんですか?
DORIAN : 2年位前ですかね。割と近い所にはいたと思うんですが、僕の知り合いがやけさんと知り合いで「DORIANいいんですよ! 」って言ってくれてたみたいで。ただその友達の評判が悪くて、「どうせあいつの友達だろ?」って感じで思われてたらしいんです(笑)。その後に何かのキッカケで僕のMySpaceを聞いてくれてそれが良かったらしく、自分のブログに載っけてくれたんですよ。それでありがとうってメッセージを送ったら、次の週のライヴに遊びに来てくれて、そこからですね。
DORIAN : そうですね。かろうじて音楽を聞いたり、家で遊ぶ感じで月イチ位のペースで1曲作ったりとか。自分が面白いって思えることをやってたりする人達も周りにいなかったし、自分のトラックを勝手にリリースされたり、トラックを提供したのにうやむやにされたり、まぁ他にも色々ごちゃごちゃあって... なんか嫌になっちゃったんですよね。だからその頃は、基本家でずっと悶々としてました(笑)。
ーー今作に参加されているLUVRAWさんやG.RINAさん達とは、元々どういった繋がりで? すごくハマってる感じがしました。
DORIAN : ハマっていたんだったら嬉しいですね。LUVRAWさんは、やけさんが主なキッカケ。やけさんと知り合っていくうちに、その周辺のパーティーとかに呼んでもらえるようになって、そこで出会った感じですね。G.RINAさんに関しては、他の所でご一緒する機会があって、実は僕が一方的に好きだった。また一緒にできたらいいなって思ってたら、今回一緒にできることになったんです。G.RINAさんに関しても2年前位に最初にお会いしてから何度か面識があって、ここ最近で急速に周りの状況が変わっていった感じですね。
ーーDORIANの現在のサウンドは、その2、3年前からもう頭の中で出来上がっていたんですか?
DORIAN : いや。全く何もなかったですね。元々ライヴもやる気はなくて、友達に「トラック作ってるんだったらライヴやってよ」って言われて、やったら「いいね」ってなったので、「じゃあもっとやってみるわ」って。
ーーサウンドは?
DORIAN : 機材はもっとこまごましてましたね。段々面倒臭くなったので、1台でできるハードを使おうと思い、足りないものは追って導入しようみたいな感じですかね。
ーー今使用しているRoland909を買ったのはいつですか?
DORIAN : 2008年位ですかね。自分のサウンドを意識的に変えた感じはありますね。ビートだったり面白い音だけでは足りない感じがして、抽象的なものを排除して、もっとメロディーを重視するように考えていきましたね。その頃から、もう少し色んな人に聞いてもらいたいなって思いだしました。
ーー例えばDORIANのサウンドを形作るにあたって、キーワード的なアーティストっていますか?
DORIAN : あんまりいないですね。ライヴのスタイルとして影響を受けたのはCHERRYBOY FUNCTIONですかね。中学生の頃にMC909の前に303っていうのがあって、それでずっと音を作ったりして遊んでました。彼もそれを使ってて、彼のライヴを初めて観て「こんな感じで人が踊るなんてあり得るんだ」って思った。「これでいいんだ! 」って思いましたね。
DORIAN : 何でしょうね(笑)。友達のお兄さんにさんピンCAMPのビデオとか観せられて、そんな面白いとは思わなかったんですけど、そういうのが影響しているのかもしれませんね(笑)。それと、親が聞いていた音楽を小さい時から車の中で聞いていたのも影響しているのかもしれませんね。サンタナとかのフュージョンっぽいのだった。そういうのが勝手に染み付いてる様な気がします。
ーー『Melodies Memories』の構想はいつから考えていたんですか?
DORIAN : 制作時からアルバムを作っているのかどうかが、よく分からなかったんです(笑)。「本当に作るの?」って思いながら、気づいたらできてたみたいな。
ーーP-Vineから正式なオファーが無いまま作ってたんですか?
DORIAN : 正式なオファーだったのかもしれないんですけど、正式かどうかも分からなかった(笑)。というのは、紙に何か書くわけでもなく、あまりにも軽い感じだったので(笑)。
ーーそれは『Rollin' Rollin' 』の後ですか? それで良かったからアルバムを作ってみようとなったのですか?
DORIAN : はい、そうですね。アルバムの構想ができたのは2ヶ月位前ですね。新曲っていうのはあんまり無くて、フィーチャリングものは新しく作りました。他のはライヴでやっていたものなんで、それをちゃんと録音して編集したみたいな感じ。いつもはその場でエフェクトをかけたり、パラメーターをいじったりするんですけど、1トラックずつ音を入れてって、納得できない音色とかはまた新しく入れ直したりしました。1曲分、一気に入れ込むって感じじゃなくて、パーツごとに入れていった感じですね。作り方としてはサンプリングしていった感じなんですよね。
ーービートがしっかりしている印象があるのですが、音を構築する過程では何を軸に作っていますか?
DORIAN : 色々ですね。メロディーが先に出来ていたり、ビートが先にあったり、ベース・ラインが先にあったりもします。でも半分位はビートが先ですね。
ーーフィーチャリングの曲は新たに作ったものと伺いましたが、それはフィーチャリングするアーティストを考えて作ったのでしょうか?
ーーDORIANにとっての、ライヴとレコーディングの違いを教えてください。
DORIAN : ライヴでは同じセットでも違う聞こえ方になるようにしていますね。盛り上がってくれたら嬉しいってだけで、緊張はするけど何も考えてはいない(笑)。レコーディングはまた違って、盛り上げようって感じではないんです。こだわりを入れ込むみたいな感じで頭フル回転みたいな。
ーー『Rollin' Rollin' 』等は、基本の構成やミックスはDORIANさんが行ったと聞きましたが、「Shooting Star」もトラックが初めにあった上で、歌を自由に入れてもらったという感じでしょうか?
DORIAN : 少し違うのかな。『Rollin' Rollin'』は旅人さんがギターであの「Rollin' Rollin' 」の部分を歌ったものに僕が鍵盤を重ねて、やけさんがリズムを付けていったんです。その後に自分が簡単なループや構成を作って2人に渡して、イメージを皆で話して、録音されてくる声を僕が好きなように好きにエディットしてみたいな感じですね。1回だけ皆で集まりましたね。後はメールでCCに入れてみたいな(笑)。
ーーなんだか現代的ですね(笑)。『Rollin' Rollin' 』を作ったチームとこれからも活動をされる予定はありますか?
DORIAN : どうですかね。でもライヴとかはあると思います。例えば旅人さんのライヴで鍵盤弾いたり、やけのはら+DORIANみたいな感じでやったりとか。でも基本は色んなことをやってけたらいいなと思いますね。
ーー先日やけさんにインタビューした時に、「DORIANとは性格が全然違うから」とおっしゃってたんですが、DORIANさんから見たやけさんはどういう存在ですか?
DORIAN : 性格は全然違うと思います(笑)。どういう存在かぁ... 難しいなぁ...(笑)。友達でもあり先輩でもあるという感じです。べったりはしないけど、一緒にいることが多い人ですね。僕の世界を変えてくれた人間の1人ではありますね。
ーー2人でライヴをやっているのを見て、お互いがゲストでやってる感じがしなかったんですね。「似てる」とは違うんだけどお互いが同じものを持ってるように感じたのですが...。
DORIAN : 2人でやってる時は、やけさんを手伝ってる様な感じというか、より良くなるようにやってるというか。そんなにやけさんも細かく色々言うわけじゃないんですが、たぶん向こうもここでDORIANを入れたらいいなって考えてると思うんです。確かに2人でやってても、ラップとDJみたいな感じではないですね。
ーーDORIANさんはどんな時に曲ができますか? またそのモードには、いつでもなれるのでしょうか?
DORIAN : 急に何か思い浮かんだり、イメージが湧いてきて作る感じではないですね。楽器なりPCなりに向かって、作るモードになって作る感じですね。でも時々朝起きて「昨日なんで作らずに寝ちゃったんだろう」って自己嫌悪になります。いつでも作らなきゃって思ってます。作らなきゃっていうとつまらなさそうに聞こえますけど、毎日何か作れるような「何か」をするようにはしてますね。
ーーもう何かを作る行為はライフ・スタイルみたいになっているんですね。
DORIAN : そうですね。ただ何にもならないようなことの方が多いですね。でもその何にも無い時間が無いとダメだとも思います。何か見えた時から出来上がるまでは比較的早い方じゃないかな。
ーーそういった「作らなきゃ」ていうのは、DORIANさんの中では切迫感として頭の中に常にあるものですか?
DORIAN : そういう時もあります。作らなきゃって。それに常に作ってないと腕も落ちるので、そういうのが自分は嫌なんですよ。自分では作ってるつもりなんですけど、はたからみたら何もしないでダラダラしてるように見えるかもしれませんね(笑)。でもまぁ基本はダラダラはしてますけどね。逆にそれがないと助走がない感じがしてダメな気がしますね。でも365日毎日「作らなきゃ」とは思ってないですけど、300日位はそう思ってますね。
ーーDORIANさんが曲を作るモチベーションになったり、何か沸き出す要因になるようなものはありますか?
DORIAN : 近い将来にステージでこんな音が鳴ってたら気持ちいいだろうなぁとか考えたり、気持ち悪いですけど思い出とか... かな。自分でこれ良いんじゃないかって思える瞬間ですね。抽象的なある1日のある一瞬の断片とか言葉ではうまく言えないんだけど。近い将来こういうシチュエーションでこういう場所でこんな曲ができたら良いなとか考えたりします。その2種類ですね。
ーーアルバムを聴いたリスナーの方々にはこう聞いて欲しいとか、この音源が出たことによって世の中がこうなって欲しいみたいなことは考えますか?
DORIAN : 世の中をどうしたいとか思いませんが、皆さんの好きなように聞いていただいて楽しんでいただければそれが嬉しいですね。
INFORMATION
2010/10/02 (土) 代官山UNIT & SALOON 『Erection presents "やけのはら, LUVRAW&BTB, Dorian 1st Album Release Party"』
2010/10/03 (日) @福岡ROOMS 『MCT2010 FREEDOM MUSIC LIVE「カクバリズム 夜の部屋」』
2010/10/07 (木)〜8日 (金) @恵比寿Liquid Room 『DE DE MOUSE presents mousetrap』
2010/10/15 (金) @cafe domina OPEN 『GOLD EXPERIENCE presents YAKENOHARA "THIS NIGHT IS STILL YOUNG"& DORIAN "Melodies Memories”W Album Release Party in NAGOYA』
2010/10/23 (土) @名村造船跡地(STUDIO PARTITA & RED FRAME) bud music & THE STARFESTIVAL presents music festival in osaka 『D!SPORT』
2010/10/23 (土)〜24日 (日) @京都 KBSホール 『BOROFESTA 2010』 ※出演は24日(日)を予定
2010/11/19 (金) @京都 CLUB METRO 『HOMESICK & SECOND ROYAL presents "やけのはら x LUVRAW & BTB x DORIAN 1st. Album Release Party in KYOTO"』
PROFILE
DORIAN
Rolandの"オール・イン・ワン・グルーヴ・マシン"MC-909を使ったライヴやDJで都内を中心に活動中。ドリーミーでロマンティックなアーバン・ダンス・ミュージックで各方面から支持を集めている。 2009年、初の自主制作盤CD-R『Slow Motion Love』を発表。トラック・メーカーとして七尾旅人×やけのはら"Rollin' Rollin'"のアレンジを担当、リミックスも手がける。 ZEN-LA-ROCK〜DE DE MOUSE等の作品への参加VMCへの楽曲提供等々。初のフル・アルバム『Melodies Memories』をリリース。