変革期を迎えた岸田教団&THE明星ロケッツ――TVアニメGATE後期主題歌含む新シングル、ハイレゾ配信!

TVアニメ『GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の2ndクール放送にあたってOPテーマを再び担当した岸田教団&THE明星ロケッツ。重厚なギター・サウンドに畳み掛けるドラミング、戦闘的な要素を持つヘヴィーな楽曲であるそのOPテーマを収録した新たなシングルがハイレゾで到着した。
前シングル『GATE~それは暁のように~』の特集では代表・岸田にインタヴューを敢行。音への探究心と強いこだわり、そしてハイレゾ録音の奥深さをあらわにしてくれた。その反面、岸田教団&THE明星ロケッツの全体像を伝えきれなかったため、今回はフロントに立つヴォーカル・ichigoに結成から現在に至るまで話を訊いた。そのなかで見た、「武道館を目指す」と言い切り、バンドとしての自負に目覚めたichigoの姿。変革期を迎えた岸田教団&THE明星ロケッツの現在を届ける。
岸田教団&THE明星ロケッツ / GATE II 〜世界を超えて〜
【Track List】
01. GATE II 〜世界を超えて〜
02. count 4
03. GATE II 〜世界を超えて〜 (instrumental)
04. count 4 (instrumental)
【配信形態】
24bit/96kHz (WAV / FLAC / ALAC) / AAC
【価格】
単曲 500円(税込) / アルバム 1,500円(税込)
「GATE II 〜世界を超えて〜 」MV「GATE II 〜世界を超えて〜 」MV
INTERVIEW : ichigo(岸田教団&THE明星ロケッツ)
本取材でichigoは、とても丁寧に言葉を綴ってくれた。その言葉は、岸田教団&THE明星ロケッツの今を感じ、未来を想像出来るに足りうる強い力を持っていた。歌詞でも確認出来るが、岸田とichigoの対比は、一つのバンドとしてとてもおもしろいものだ。岸田の話を訊いている時は、まさか、岸田教団&THE明星ロケッツから、「武道館」って言葉がでてくるとは思わなかったもの。ぜひそんな対比にも注目して、本取材を読むと、さらに岸田教団&THE明星ロケッツが好きになるだろう。
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
写真 : 雨宮透貴
お客さんに育ててもらったなと思います。どんどんこの場所、この時間が手放し難くなったから
――前作『GATE~それは暁のように~』では岸田さんとお話させてもらいました。その内容は音響や機材、ハイレゾの話と、かなりマニアックなところまで訊けて…。でも「岸田教団&THE 明星ロケッツ(以下、岸田教団)とは」の部分やメンバーの皆さんの関係性などが抜けてしまったので、今回はそこも含めて話したいなと思っています。
読みました。始まって15%くらいしか意味わかんなかったです(笑)。
―― (笑)。今作をはじめ、岸田教団ではどういうふうに楽曲の制作をスタートしますか?
1曲目の「GATE Ⅱ 〜世界を超えて〜」は、岸田の完全プロデュースなんですけど、他の曲に関しても岸田がデモをつくります。特にリズムに関してはほぼ岸田のデモ通りだと思いますね。逆に岸田のデモ通りに叩けるのはみっちゃんしかいないっていうぐらい、複雑でテンポも速い。基本的に岸田教団は岸田の作る音楽を表現するのに都合のいい人間が集まった感じなんです。あの速さで叩けるドラマーはみっちゃんしか居ないし、この2016年にあんなギターを弾く人は、はやぴ〜しかきっといない、そしてあの速さで強い響きを持って歌えるヴォーカルっていうのに、私は自信があるので。最初は本当に寄せ集めだったんですけど、いまはこうあるべきだったって思っていますね。
――もともとどうやって集まった4人なんですか?
岸田は「人間性を不問にして腕の立つやつを集めたらこうなった」ってよく言ってるんですけど、実際にそうだと思います。音楽が好きで、バンドが好きで、それなりにしっかりやってたんですけど、所属してるバンドが長続きしないというか。メンバーそれぞれアクが強いから。私とみっちゃんは福岡のアマチュア・インディ・シーンのなかで知り合いでした。
――そのころの福岡はどんな感じでしたか? 例えばだいぶ上の世代だと、70〜80年代の”めんたいロック”とかありましたが。
そうですねえ…。私たちの世代はちょうど不作だと思いますね。少し上だと椎名林檎さんとかいるし、少し下だとアコギ系の女の子がばーっと出てくるんですけど、バンドがなかなかどーんといかない世代で。福岡は結構弾き語り系が盛んで、人間味を歌うみたいなシーンが強い土地柄なのもあって、私自身はどうしても馴染めなかったんです。

――ichigoさんとみっちゃんさん、そして岸田さんが福岡?
そうです。はやぴ〜は岡山の人なんですけど、詳しくは知らないんですよね…(笑)。私たち東方projectのイベントでライヴをするために岸田に集められたメンバーで。そこから始まったんですけど、最初は本当に「わけがわからないバンドだな」って思ってました。歌える場として大事には思ってたけど、主に岸田がプロデュースしているから良くも悪くも無責任感もあって。でもここ2、3年で「あ、この場所だな」って。高校生の頃から「音楽をやっていく」っていうことだけ考えてて、迷いはなかったけど細かく考えてもなくて。もともとシンガー・ソングライター志望だったんですけど、思い描いていたリスナーの眼差しとか声とかライヴでの盛り上がりとか、この場所でこのジャンルでこの音楽をやってなかったら得られなかったなと思って。結成から10年近く経って、バンドの士気も今が1番高いような気がします。登るべき山が分かってきたというか。
――もともと「プロジェクト」ぽかったものが「バンド」になったんですね。今はみんなで岸田教団の方を向いているという。
数年間、どんなインタヴューでも「全然メンバーと仲良くないです」とか「しょーもないやつらです」とか言ってて、その気持ち自体は変わってないんですけど、なんか今はすごく「バンドだなあ」って思いますね。
――メンバーのことをどう思ってるんですか? 今は。
仲良しで始めたバンドじゃないから仲が悪くなることもないし。よくある「音楽性の違い」は最初からのことで、辞める理由にはならないですね。だから、別に好きじゃないけどそれが程よい距離感というか。腕は信用してるっていうか。
――「バンドになった」のはichigoさん的には何故だと思いますか?
お客さんに育ててもらったなと思います。どんどんこの場所、この時間が手放し難くなったから。
――岸田教団は、急激に大きくなっていったわけではなかったし、お客さんの層は、ネット、アニメや同人好きの人が中心だったり、いわゆるロキノン系ではないですよね。そういうことを含めて、この場所はおもしろい?
おもしろいですね。そしてすごく自由です。
――自由?
自由です。何やったら怒られるんだろうって思うくらい。みんな本当にやりたいことをやるんですよね。メジャーの活動もそうですけど、個人の活動とか。このあいだはお客さん参加型の、銀座の街でichigoを見つけてもらうっていうイベントをやって。Twitterでヒント出して、「あーいたいたいた!」とか言われながら本当に走って逃げたりして。わけわかんないじゃないですか。ミュージシャンがするイベントじゃないよな、とも思うんですけど。でもおもしろそうだなと思うことを全部やりたい。もちろん「どこに向かってるんだ?」って思う人もいるだろうけど、何人かのそういう気持ちばかりを気にしておもしろそうなことができないのはつまんないなと思って。そうですね、怒る人が少ない場所です。大人も含めて。
いい音を追求するいいチームです。そうやって生き残っていきたいうし、そのための練習や努力することにお金や時間をかけることを惜しまずやっていきたい
――ichigoさんは、もともとアニメや同人の世界にいたんですか?
いなかったです。もともとアニメも漫画もゲームも好きなので、東方projectを説明されたときもすんなり「へえーそんなジャンルが」という感じで受け入れることはできましたけど。
――岸田さんと出会ったときは知らなかった?
はい。でもやっぱり熱がすごいなと。コミケも岸田教団になって初めて参加したんですけど、みんなすんごい楽しそうで。私が知ってる音楽ファンってみんな腕組んで「うんうん」って感じのお客さんが多くて。「うんうんってなんだよ」みたいな。でもそういうもんだと思ってたし、そういう人たちに受け入れてもらわないといけないと思っていたけど。でもそうじゃなくて、こうやって迎えてくれる感じの人たちもいるんだなって。さっきもいったけど本当にお客さんに育てられたんです。
――じゃあ岸田教団を初めてから、その周辺をどんどん好きになっていった?
好きですね。おもしろいんですよね。Twitterとかでよくお客さんと話したりするんですけど、まあ皮肉屋さんが多い層なんですよ。でもそのぶん冗談が通じるっていうか。こっちの真意を汲み取ってくれる。なんか雑なことを言ってもそれを私が楽しんでるってわかった上で反応してくれる感じっていうのは、このジャンルならではなんじゃないかな。

――僕もどっちかというと、腕組んでライヴ観て観られて… みたいなシーンにいる人間なんですけど、岸田教団に出会うことで新しい発見があったりして。それはシーンのおもしろさだけじゃなくて、音楽的なおもしろさもあります。例えば今回の岸田さんの書く歌詞とichigoさんが書く歌詞の対象な感じとか。ichigoさんは岸田さんの書く歌詞に関してどう思っていますか?
最初は正直よくわかんなかったですね(笑)。もともとシンガー・ソングライター志望だったのもあって、メロディがきれいなものとか言葉のはまりが美しいものを聴いてきてたので。岸田の書く曲はエッジが強くて、歌詞も「そうはめる?」っていうものが多くて。でも歌うと意外と綺麗に響いていたりとか。そういう意味では自分とは全然ジャンル違いのものを歌い始めたような感じですね。
――普通に歌いこなせる歌じゃないですけどね(笑)。
「感謝しろ」って岸田にいつも言ってますよ(笑)。でも性にはあっていたなと思います。いま思うと、ほんとに細かいことを考えない性格だったなと。子供の頃からやりたいこと、欲しいものははっきりしてたけど、自分は何者か? 自分は何がしたいのか? ということは細かく考えてこなかったんですよね。そういう思考は生きる上では強いですけど、芸術するには不幸だったなって思うんですよね。人と共有できる苦悩が、全然なくて。「うん、今日も元気だ!ご飯がおいしい!」みたいな。「生きてるなあ!」って感じなんで。なんかミュージシャンなのになあって思うんですけど…。でも3年ぐらい前に、「なんかいいや」「わかんねえし」と思って。やれることやろうって。そうなると、いま岸田とやっていることって、目的が明確だから自分には合っていたと思う。私はもう、アスリートのような気持ちで歌をうたっていますね。
――メンバーみんなそんな感じなんですか?
そんな感じです(笑)。メンバーも含めて制作のスタッフもいい音を追求するいいチームです。例えば「ハイレゾを自信持ってお届けできます」っていうのがこれからのステータスみたいになって、選んでもらう理由になったらいいなって思いますね。やっぱりバキバキにコンプで潰した音じゃもったいないなって思うし、思いっきり補正しまくったヴォーカルじゃ深みが足りないし。ハイレゾで出せないような人は減っていけばいいなって思うんですよね(笑)。そうやって生き残っていきたいなって思うし、そのための練習や努力することにお金や時間をかけることを惜しまずやっていきたいなって思う。
――僕は岸田教団がすごいことをしていると思っているんですよ。一時期のミュージシャンが持っていた矜持がこっちに移動している感じがあります。
私たちは、ロックバンドとして音楽としっかり向き合ってやっているつもりですし、だからジャンルに振り回されたくないなっていうのはもちろんありますね。アニソンとか、同人とかいうジャンルだから聴いてもらえないとかは悔しいですね。だからこうやってOTOTOYさんに話を聞いてもらえるのが嬉しい。「音楽やってんだ」って思ってもらえたら嬉しいし、絶対音楽好きの人も「おっ!」って思ってくれると思うんですよね。
知らなかったんです。自分が歌っていることが、どんなふうにみんなの人生に関わってるかなんて。遅い気づきでしたけど、いまめちゃくちゃ楽しいんですよ
――ichigoさんのヴォーカル・スタイルで、岸田教団で1番難しいことってなんですか?
速いので感情を込める余裕がないんですよ。だから感情でニュアンスをつけるんじゃなくて、ある程度言葉を記号的に捉えて、例えば「流れる」なら流れるように歌うし、「〜だ」だったらしっかりアクセントをつけるし、結局どんなに悲しい気持ちで歌ったってその悲しさが伝わらなかったら全然意味がないと思うので、悲しい「音」がしっかり出せることを常に意識しています。
――それは、めちゃくちゃ難しいですね!
それはライヴでも一緒です。私個人の話ですけど、ステージで泣くのはありえないんですよね。声が震えるし、横隔膜が震えるし。絶対歌えなくなるから。絶対にそうじゃないやり方で、みんなと分かち合いたいし。最近やっと言えるようになったんですけど、武道館でライヴがしたいんです。その武道館の音源はもちろんOTOTOYさんからハイレゾでお届けしたいじゃないですか(笑)。でもまずはしっかりと声が響かせられるようにしなきゃいけないし、メンバーもクオリティを上げていかなきゃいけないし、やらなきゃいけないことはたくさんあるんですけど。でも今は武道館っていうのがはっきりしていて、だから応援してほしいなって思えるし。
――岸田教団はすでに実力もあるし、タイアップなどもあるなかで、武道館に行くためには、あと何が必要だと思いますか?
ちょっと恥ずかしいんですけど、私はずっと自分のために歌っていたんです。「歌いたい」とか、「自分がかっこよくありたい」とかで歌ってきて。でも2015年11月に、横浜アリーナで開催された「ANIMAX MUSIX」に出たんですけど、スタッフさんたちが、情熱を持って、寝ずに準備している。あれだけのお客さんが、チケットも高いのに来てくれる。そのとき、この人たちにどうやったら満足して帰ってもらえるんだろうって初めて思ったんですよね。今までも「観に来てくれてありがとう」ってもちろん思っていたんですけど、突然そこに責任が生まれたというか。でも、それが必要だったんだなって。武道館を目指すのに。もう自分のためだけには頑張れないなと。自分との約束なんか容易く変えられちゃうから、みんなと約束がしたいなって思ったところで、やっと武道館に向かうための一歩を踏み出せました。知らなかったんです。自分が歌っていることが、どんなふうにみんなの人生に関わってるかなんて。こらえらいことだぞと思って。遅い気づきでしたけど、いまめちゃくちゃ楽しいんですよ。

――ichigoさんはどんなヴォーカリストを目指してますか?
うーん… 最近気づいたんですけど、ヒーロー願望があるんです。ヒロインじゃないんですよ。強くありたいっていうのがすごくあって。去年、『GATE~それは暁のように~』のカップリングに入ってる「EGOISTIC HERO」の歌詞を書いたんですけど、それが私のなかで起点になったというか。初めて、”僕”と”君”とか、”彼”と”彼女”のストーリーではない、自分の感情で書いたんですよ。そのときに出てきたのが恋愛でもなんでもなくて「ついてこいよ!」みたいな曲で。私こんなこと思っていたんだと(笑)。書けば書くほど、わがままなヒーローが出来上がっちゃって。でもこうありたいんだなと思って。だから「ついてこいよ!」って言いたいし、「引っ張り上げてやるよ」って言いたい。そういう意味で、みんなの人生とか、みんなに寄り添える… 道を照らせる人でいたいなと思います。
――岸田教団にichigoさんって絶対必要ですね!
ははは! そうでしょ(笑)!
――ichigoさんみたいに、エモーショナルに上を目指したい人がいないと、プロジェクトって大きくならないじゃないですか? 岸田さんってそういうのないでしょ?
岸田は、いい音でギターが鳴らせて、猫が可愛ければいい人なんで(笑)。
――なんで岸田教団がこうして大きくなっているのか、今日わかってよかったです。
もともと自分のために歌ってたとか、わがままなところとか、いくら大人になってちょっと思慮深くなったところで変わらないんで。私が1番目立ちたいし、1番ちやほやされたいし。それが今は1万人にちやほやされるのを目指したいなって思っている感じです(笑)。
過去作品
岸田教団&THE明星ロケッツ / GATE~それは暁のように~(24bit/96kHz)
TVアニメ『GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』1stクールのOPテーマを収録したシングル。ストレートなロック・ナンバーである表題曲と、本インタヴュー文中にて、ichigoが「初めて自分の感情をあらわにして詞を書いた」と言っていたカップリング曲「EGOISTIC HERO」の2曲。
岸田教団&THE明星ロケッツ / hack/SLASH(24bit/96kHz)
メジャー・デビュー後、初のフル・アルバム。TVアニメ『ストライク・ザ・ブラッド』のOPテーマや、岸田以外の3人がそれぞれ作曲を手がけた曲も収録した全11曲。
LIVE INFORMATION
全国ワンマンツアー2016 〜ひさしぶりのおそと〜
2016年5月28日(土)@博多DRUM LOGOS
2016年6月15日(水)@名古屋ボトムライン
2016年6月18日(土)@札幌cube garden
2016年6月21日(火)@仙台darwin
2016年6月24日(金)@BIG CAT
2016年6月26日(日)@SECOND CRUTCH
全国ワンマンツアー2016 FINAL 〜はじめてのおそと〜
2016年7月23日(土)@日比谷野外大音楽堂
[イベント]
博麗神社うた祭
2016年7月3日(日)@CLUB CITTA
PROFILE
岸田教団&THE明星ロケッツ
岸田教団&THE明星ロケッツとは、リーダーの岸田がもともと「岸田教団」として『東方Project』のアレンジCDや、オリジナル楽曲を制作し、活動している中で、ライヴ・イベントに出るため岸田がメンバーを招集したバンドである。現在でも同人サークルとしての活動も続けている。
2010年にTVアニメ『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』の主題歌でメジャー・デビュー。2013年TVアニメ『ストライク・ザ・ブラッド』1期OPテーマ『ストライク・ザ・ブラッド』をリリース。2014年12月には、メジャー・オリジナル・フル・アルバム『hack/SLASH』をリリースすると、2015年3月に開催したZepp Tokyoワンマンライヴを超満員で大成功に導いた。2015年7月29日『GATE~それは暁のように~』リリース。
2015年11月にはANIMAX MUSIX 2015 YOKOHAMAに出演し、2016年には全国ツアーも控えている。ツアー・ファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催される。