東北に向かい合い、その精神性に寄り添うためにーー青谷明日香、2年ぶりの3rdアルバム『冬の神様』をリリース

キーボードをかついで街から街へ旅する吟遊詩人、青谷明日香が、約2年ぶりとなる3rdアルバムをリリース。今作は、自身のルーツでもある東北と向き合い、長く厳しい「冬」からはじまる、美しく気高いストーリーたちで溢れている。田辺玄、トンチ、とんちピクルスなど、豪華グスト・ミュージシャンと共に作り上げたエモーショナルで力強い本作には、秋田県観光PRイメージ・アップ・ソングとして制作した県内外で大反響を呼んだ「あんべいいな」をはじめとした全12曲を収録。その歌声から感じる気高さに耳を傾けてほしい。そして、じっくりと青谷明日香へのインタヴューをご覧いただきたい。
青谷明日香 / 冬の神様
【配信価格】
mp3 : 単曲 200円 / アルバム購入 2,400円
【Track List】
01. 冬の神様 / 2. みなみかぜ / 03. 弟よ / 04. 迷子の竜 / 05. 同窓会の夜に / 06. 大気圏で押し問答 / 07. エマ / 08. 緑と赤と青 / 09. 幽霊船 / 10. あんべいいな / 11. LIFE / 12. うつくしいふるさと
※まとめ購入のお客様にはWebブックレットがついてきます。
INTERVIEW : 青谷明日香
東日本大震災を経験し、青谷明日香が唄う理由は、不変のものとなった。彼女の歌からは、強い季節の匂いが漂う。四季で移り変わる山々の色を連想し、我々は日本を思う。青谷明日香に導かれるように...。
インタビュー&文 : 飯田仁一郎
わたしも何か届けることができるんじゃないかなって
ーー青谷明日香さんは、秋田が故郷なんですよね。秋田から上京したきっかけは?
青谷明日香(以下、青谷) : 田舎育ちなので、都会にすごく憧れがあったんです。東京の大学に行ってからは、ずっと東京ですね。
ーー秋田県の観光PRイメージ・ソングや今回のアルバムのように、自分の故郷を歌うようになったのには、なにか大きな変化があったのでしょうか?
青谷 : それまでは「実家」というだけの存在だったんですけど、2011年3月11日に東日本大震災が起きて、東北に向き合う機会が多くなったことが大きいですね。
ーーその後のLOVE FOR NIPPON(※1)に関わったことも大きいですか?
青谷 : そうですね。
※1 Candle JUNE、若旦那(湘南乃風)、MINMIら多数のアーティストが参加する東日本大震災の支援プロジェクト

ーーこれはどういうきっかけで参加を?
青谷 : もともとジュンさん(Candle JUNE)が、新潟の中越地震復興イベントを毎年やっていて、それに出演したことがきっかけで彼と交流がはじまったんですけど、東日本大震災が起こった2、3ヶ月後に、「LOVE FOR NIPPONをはじめるから一緒に行かないか?」って声をかけてもらって、かなりのペースで参加させていただきました。
ーー東日本大震災以降、最初に歌った時には、どのようなことを感じましたか?
青谷 : 最初は福島の四倉へ行ったのですが、行く前は「何にもできないだろう」という思いのほうが強くて「大丈夫かな?」って。でも、現地の人たちのほうが東京よりも全然元気があって、むしろこっちが元気をもらいました。それ以降、行くことでわたしも元気をもらえるし、同じように、わたしも何か届けることができるんじゃないかなって、抵抗なく唄いに行けるようになりましたね。
ーー東北へ行ったとき、1番思い出に残っている風景やできごとはなんでしょう?
青谷 : ある仮設住宅へ行ったときに福島県富岡町出身の方がいたんですね。富岡町は警戒区域に指定された町なんですけど、すごい桜の名所があるんです。その桜の名所について詩を書いた方がいて、それに曲をつけてほしいって言われて曲を書いて。その歌を歌ったときに、みなさんがいろいろ思い出してくれて、普段は聞けないような言葉を聞けたりとか、富岡に帰りたいって話を聞いたり、思い出がよみがえったって言ってもらえたりとか。それが一番印象に残っていますね。
季節が移り変わっていく一連のストーリーみたいなものがある
ーーそんななか、どのタイミングで、このアルバム『冬の神様』を創ろうと思い出したんですか?
青谷 : 東日本大震災が起こってから、無意識ですけど改めて東北と向き合おうと思ったんですよね。そんなときに、LOVE FOR NIPPONに参加して、秋田の観光PRのテーマ・ソングを作るお仕事もいただき、地元の人との交流も多くなってきた。そうやって東北を巡りつつ、個人的に興味があって山伏のいる山形の出羽三山の宿坊に泊まりにいったんです。そのころは、東京でも色んな動きがあって、首相官邸前で大規模なデモが起こったりとかしていたんですけど、なんとなくその流れに乗れないでいる自分がいたんです。答えが見つからないまま、行動に移したくないというか…。震災後、どう生きていくか、自分なりの答えを探してた時期だったんですけれども、そのなかで山伏の人たちと出会って、東北で生きるため、冬を乗り越えるために色んな知恵があって、その精神性も教えてもらって。「ここにこれからの答えがあったか」と思ったんです。だから次にアルバムをつくるんだとしたら、東北の精神性みたいなのにぎゅっと寄り添ったアルバムをつくりたいなと思ったんですよね。
ーー答えというのは?
青谷 : 言葉にするのは難しいんですけど… 昔の知恵を取り入れつつ、現代を良いバランスで暮らしていくこと、というか。山伏は、山と街を行き来しつつ、例えば山の中で採れたものを美味しく食べる方法や、この山のこのポイントに山菜があるよ、とか色んな知恵を人に広める役割の人たちなんですけれど。昔からの知恵を伝えていくこと、それが伝わっていくこと、そんな東北の精神性に寄り添いたいなと。
ーーそれをアルバムでは、どう表現しようと思ったのでしょう?
青谷 : 東北では「冬」がポイントなんですね。たくさんの知恵を使って過ごさなければいけないほど厳しい。でもそうやって過ごした冬の後だからこそ、春になるといっそう喜びが大きいというか。そういった「季節感を大事にした世界から色んなものを見てみました」っていうアルバムにしたかったんです。

ーーなるほど。1曲目と同名のアルバム・タイトル『冬の神様』とは?
青谷 : 冬からはじまる1年をテーマにしたアルバムなので、冬の神様っていうタイトルがいいかなって。ここには、冬の歌だけじゃなく、季節が移り変わっていく一連のストーリーみたいなものがあるんです。
ーーこのアルバムの曲たちは、東北にいるときにできたんですか? それとも東京に帰ってきて、東北を思い返しながら?
青谷 : どっちのパターンもありますね。
ーー青谷さんにとって東北と東京ってどういう関係ですか?
青谷 : 東京もすごく好きなところなんですよね。すごくバランスがいいというか。どこにでも行きやすいしすごくエネルギッシュな都市だと思うので、そういうところに助けられることもある。東北から帰ってきたあとだと、良い意味で客観的に整理して、作品をつくれるところでもありますね。
やりたいことを全部このアルバムで出し切ってしまった
ーーなるほど。今回は色んなミュージシャンも参加してますよね。トンチがいたり、とんちピクルスがいたり。
青谷 : ダブルとんち(笑)。
ーーそうそう(笑)。そのダブルとんちの曲が、どちらもすごいよかったです。この参加ミュージシャンたちを選んだ理由は?
青谷 : 今回は空気感を大事にしようと思って、空気を上手く料理してくれそうな、わたしの大好きなミュージシャンを選んでお願いしました。
ーー彼らとは全国各地をツアーしているときに出会ったのでしょうか?
青谷 : そうですね。例えば田辺玄(WATER WATER CAMEL)さんは、秋田のハイコーフェスっていうイベントで出会って。打ち上げで次のアルバムにぜひ参加してほしいって言ったら「あ、いいよー」って快く受けてくださって。
ーーとんちピクルスは九州ですよね? どうやってセッション・ワークをしていったんですか?
青谷 : とんちピクルスさんと御一緒した時は、九州に録音しに行きましたよ。フィドル(ヴァイオリン)のMaika(baobab)さんも大分に住んでいるので、どうせだったら九州でレコーディングも楽しいかなって。エンジニアを内田伸弥さんにお願いしたんです。内田さんは、ライヴ・レコーディングとかもされる方なので、機材をぐっとコンパクトにして、遠いところにも行って録音ができたんです。
ーーアルバムができあがった感想は?
青谷 : ゲストの方々に味付けしてもらって予想以上になりました。

ーーゲストの参加は大きいですよね。鳴る音が曲によって違うので、退屈しなかったです。最後に、今後はこれをやってみたいとか、自分が表現者として目指すべきものとかありますか?
青谷 : やりたいことを全部このアルバムで出し切ってしまったので、いま色々考えている最中なんですけど、次は暗い、部屋にこもってる人たちに向けてつくっていきたいと思っていますね。今回は季節感を大事にしたものなので、「窓の外にある風景」っていう感じだとしたら、次は部屋の中にある心の風景というか、そこでまた違うものになってしまうと思うんですけれども、そういうところに入り込んでいって、作ってみたいなと思っています。
青谷明日香 過去作
青谷明日香 / そこからはじまる
震災後何度も被災地を訪れ、東北への想いを曲にした「そこからはじまる」をバンド編成で再収録など、青谷明日香の代表曲6曲を収録した、初の配信限定でリリースするミニ・アルバム。まとめ購入の特典に、制作エピソード満載のシュール&キュートな歌詞付き描きおろし四コマ漫画!!
青谷明日香 / 異端児の城
前作から約9ヶ月という驚異的なスピードでリリースの青谷明日香2ndアルバムは物語の中に吸い込まれる、究極のピアノ弾き語り集。ライヴでも大人気の楽曲、「異端児の城」を収録。全10曲。
青谷明日香 / 夜はミカタ
ライヴで定評のある「シチュー」、盟友オムトンと録音した「会いたい人はお空の上」など全9曲を収録した初のフル・アルバム。
青谷明日香の初音源となる1stミニ・アルバム。ライヴで大人気の「サイフの中にはもう40円」など、5曲を収録。
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LIVE INFORMATION
青谷明日香 “冬の神様”リリースツアー
2014年6月7日@山梨 小淵沢
2014年6月8日@長野 中川村 サウンドホール
2014年6月14日@愛知 蒲郡 和cafe千草
2014年6月21日@新潟 柏崎 cafe confine
2014年6月23日@新潟 長岡 カフェ食堂 BONBON
PROFILE
青谷明日香
キーボードかついで街から街へ。旅する吟遊詩人、青谷明日香。
郷愁あふれる田舎の風景から、哀愁ただよう都会のビルの風景まで、様々な主人公の物語を歌い紡ぐ。笑いあり涙あり、じわじわと感情ゆさぶるステージで、じわじわと信望者を増やし続ける。FUJI ROCK FESTIVALに2011年、2012年と2年連続出演など、いま話題沸騰中。
2006年 弾き語りとしての活動をスタート。
2010年 1stミニ・アルバム『さようならくじらぐも』リリース。
2011年 1stアルバム『夜はミカタ』リリース。
2012年3月 2ndアルバムにしてピアノ弾き語りアルバム、『異端児の城』リリース。
2014年5月 3rdアルバム『冬の神様』リリース。