白鳥英美子・澄夫夫妻が語る、“想像の世界”──ムーミン、ドラえもん、FF9の音楽を紡いだ、夫婦クリエイターの軌跡

トワ・エ・モワのメンバーとしても知られるシンガーソングライター、白鳥英美子が、活動55周年を超えてベストアルバム『白鳥英美子ベスト~ミュージック・オブ・ファンタジー』をリリースした。本作には、アニメ『楽しいムーミン一家』や映画『ドラえもん のび太のドラビアンナイト』、ゲーム『FINAL FANTASY Ⅸ』の主題歌に加え、新曲を含む全17曲が収められている。OTOTOYでは今回、白鳥英美子と、彼女の夫であり、その楽曲制作を数多く手がけてきた、作曲家の白鳥澄夫にインタビューを実施。制作の裏話など、ここでしか聞けないさまざまなエピソードを伺った。
白鳥英美子のベスト・アルバム
楽しいムーミン一家、オリジナル・サウンドトラック
INTERVIEW : 白鳥英美子 & 白鳥澄夫
1969年からミュージシャンとして活動を開始して以来、公私ともにパートナーとして歩んできた、シンガーソングライター・白鳥英美子と作曲家・白鳥澄夫。もしもその名を知らなかったとしても、アニメ、ゲーム、CMなどを介して、その声とメロディにきっと聴き覚えがあるはず。とくに、テレビアニメ『楽しいムーミン一家』シリーズの音楽は、日本はもちろん、ムーミン誕生の地フィンランドでも広く支持を集めており、2人は11月にフィンランドの首都ヘルシンキで開催される、史上初めてのオーケストラによる「ムーミン音楽」のコンサートにゲストとして招かれているほどだ。今回、お2人にインタビューを行い、『白鳥英美子ベスト~ミュージック・オブ・ファンタジー』、『楽しいムーミン一家 オリジナル・サウンドトラック ベスト』それぞれについて語ってもらった。なんと、ご夫婦揃っての取材は長いキャリアでも初めてのこと。貴重なお話をたっぷりと訊かせていただいた。
インタヴュー・文:岡本貴之
「争いごとをしない」っていうのが、ムーミンたちの世界
──お2人は長年パートナーとして音楽制作をしてこられたわけですが、ベストアルバム2作品が同じ年に世に出るというのは、なかなかないことですよね。
英美子:そうですね。私は、昨年55周年コンサートを開催した時に、もう一回やってほしいというお声に甘えて、今年もコンサートを開催することになったんです。そのコンサートに合わせてアルバムを出してみませんか?とお声がけいただいて。じゃあせっかくなら、アニメーションやゲーム音楽、テレビドラマとかとコラボした曲を集めたアルバムにしてみようかっていうことになって、『白鳥英美子ベスト~ミュージック・オブ・ファンタジー』が出来上がったんです。それと、「1曲は新曲を入れたいですね」とキングレコードの方から言われまして(笑)。それで急遽、夫と話をしたら、じゃあせっかくムーミンのベストも出るし、フィンランドにも呼ばれてるので、フィンランドをイメージした曲を入れようかってことになったんです。
澄夫:僕はフィンランドに行ったことがないんですけど、彼女は一回行ったことがあるので、その話を聞いて、そこからイメージを膨らませて作った曲が“いのちの森”です。
英美子:ちょうど夏の暑い盛りに、寒いフィンランドをイメージして詞も書かなくちゃいけなかったんですよ。急遽作った曲だけど、なかなかいい曲になって良かったねなんて言いながら、収録させていただきました。
澄夫:もう本当に、想像の世界ですから(笑)。正直なところ、ムーミンの音楽自体を作り出した最初は、ムーミン自体は知っていましたけどフィルムも見たことがないし、絵コンテがちょっとあって横に言葉が書いてあるぐらいで、その言葉に沿った曲を作らないといけなかったんです。だから本当にイメージだけなんですよ。「多分こうだろう」っていう(笑)。
英美子:そうそう。だからこの“ムーミン谷の冬”(『楽しいムーミン一家 オリジナル・サウンドトラック ベスト』収録)っていうのも想像の世界だよね。
澄夫:そう。それまで、冬のムーミンの曲ってなかったらしいんですよ。それで、日本でアニメを放送するときに、みんなが春に目覚めるところから始まるっていうので(第1話「ムーミン谷の春」)、それまで冬眠してるっていう音を作らなくちゃいけなかったんですよね。でも、「真冬に冬眠してる音ってどんなのだろう?」と思って(笑)。
──音のない世界を音にしなきゃいけないわけですね。
澄夫:そうなんです。それで、イメージして作った曲を聴いてもらったら、一発で気に入ってもらえたので、「じゃあ、これだったらできるかな」と思って作って行ったんです。とにかく想像の世界でしたね。
英美子:まず第1話の音楽を全部つけなきゃいけないというので、まだ色がついてないラフの段階の絵コンテを何枚もめくっては、一生懸命夜を徹してやっていました。でも、後になって聞いたら、フィンランドの若者たちは、この曲が一番好きなんですって。「ムーミンベスト100」っていう、劇伴のランキングで1位だったんです。「あたかも見ていたかのように音楽をつけていてすごいね」って言われました。
──イメージして書いた世界観がピタッとハマるってすごいですよね。ムーミンは、明言はされていないものの、妖精みたいな生き物だと思うんですけど、登場キャラクターはどのように捉えていらっしゃったんですか?
澄夫:結局、中身がわからなかったので、人間なのか動物なのか、それとも妖精たちがやってるのか、何がなんだか全然わからないんですよ (笑)。ただ、日本のアニメは争い、戦いが多いですよね?ムーミンはそういう感じはまったくないし、温和な物語なんですよね。そのうちイントロができてオープニングの映像ができたのを見た瞬間に、「ああ、こういう作品なのか!」って思ったんです。まあでもそこから2年間作ってたんですけど、最後まで実際のところわからなかった(笑)。でも自分ではすごく合っていたなと思います。
──英美子さんのベストアルバムにもムーミンの曲がたくさん入っていますね。“夢の世界へ”は『楽しいムーミン一家』オープニングテーマですが、ワルツ調のファンタジックな曲で、アルバムタイトルにも繋がっている気がします。
英美子:ムーミンのキャラクターのイメージで、楽しいけどちょっとシャイで弱虫なところがあったりするので、「そんな感じで曲を作ったらいいんじゃない?」なんて言いながら、結構話し合いながらできた感じです。初めてカラーアニメーションの1作目第 1話がちょっとできたぐらいのときに、それを記念して(原作者の)トーベ・ヤンソンさんが来日されたんです。そのときに私たちも呼ばれてご挨拶させていただいたんですけど、関係者経由でこのオープニングテーマを聴いてくれたらしいんですね。それで、「とても素敵な曲なので気に入りましたよ」って言ってくださったので、「トーベさんに褒められちゃったよ!」ってすごい気をよくして(笑)。それからイメージがパッと出てきたんじゃないかな?不思議ですよね。

澄夫:ムーミンの催し物があると必ず行くようにしていたんですけど、トーベさんの画は日本のムーミン一家と全然違うんですよね。トーベさんの画を見ると怖さもあるんですよ。だけど、中身は優しい。
英美子:そうそう。その辺がむずかしかったよね。よく言ってたのは、トーベさんが好きなのは「争いごとをしない」っていうのが、ムーミンたちの世界だっていうことなんです。
澄夫:うん、そうだね。
英美子:決して争ったり喧嘩したりせずに、どんなやんちゃな子であってもちょっと手を差し伸べるっていう。そういう意味で、全体的に幸せなんだけど、でもしっかりしたところがなきゃいけないし。ホワホワした感じばかりじゃないよねっていう話は2人でしていましたね。
澄夫:激しい曲も作ったんですけど、そういう激しい曲を好んで、フィンランドのメタルバンドの人たちが、お化粧をしてディストーションをかけたギターで弾いて、ヘビーメタルにして歌っているんですよ(笑)。
──そうなんですか!?
澄夫:でもピアノとかハモンドオルガン、パイプオルガンを使った優しい曲は、やっぱり女の子に人気があるみたいです。だから、完全に人気が2つに分かれてますね。今度、フィンランドのヘルシンキ・ミュージックセンターで開催されるコンサートのゲストにそのメタルバンドの人たちが来て、ギンギンに弾いてくれる予定です。
──今、世の中が殺伐としていたりする中で、優しい曲も激しい曲も、ムーミンの音楽を聴くとすごく癒されます。
英美子:それはやっぱりムーミンの世界が、争いごとがあんまり好きじゃなくて、例えば仲違いするようなことがあっても、なんとか仲直りしようって努力するようなシーンがあったりとかするからだと思います。ムーミンは子どもたちが小さいときに見せるのにも本当にいいアニメーションなんだなって思いました。























































































































































































































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