“AMAZING GRACE”だけで「はい、さようなら」みたいな歌手にはなりたくなかった
──“夢のゆくえ”は1991年の映画『ドラえもん のび太のドラビアンナイト』主題歌ですが、『ドラえもん』はさすがに…
英美子:知ってました(笑)。『ドラえもん』は大好きで、この話が来たときは「ドラえもんの映画!?」って2人で喜びましたね。作詞が武田鉄矢さんで、彼(澄夫)が作曲で私が歌うということで、武田さんに会いに行ったんです。
澄夫:詞が先に出来ていたので、それに忠実にメロディをつけないといけなかったので、詞を説明してもらいました。
英美子:〈砂漠のように 静まりかえった 夕暮れの町で あなたの声だけ 私を呼んでいる〉なんて、随分素敵だなって。「こういう詞を書くんだ」って、すごく印象的でしたね。
──英美子さんが歌ってきた、様々な曲の中でも、ひと際素晴らしいと思うのが、やっぱり“AMAZING GRACE”です。
英美子:ありがとうございます。この曲は今でも、本当に私の核みたいなものですから。でも、最初は1分間の CM として録音しただけだったんですよ。それが、聴いた人たちから「あの CM 曲を歌っている人は誰ですか?」ってレコード店やレコード会社に問い合わせがきたりしたんです。というのも、当時はCMに誰が歌ってるか名前が出ていなかったので。そういう声が高まって、キングレコードから「“AMAZING GRACE”を出しませんか?」と言われたんですけど、私はレコードを売るためだけに“AMAZING GRACE”を歌う人にはなりたくなかったんですよ。それで、「シングルで出すって言うのでしたら申し訳ないけどお断りします、CM だけにしておいてください」って、お断りしたんですよ。
──そこは流れに逆らったんですね。
英美子:流れすぎないように、わりと逆らうことも好きなので(笑)。この曲を一発歌って「はい、さようなら」みたいな歌手にはなりたくないし、「“AMAZING GRACE”を中心としてアルバムが出せたら、それが一番素敵なんじゃないですか?」って話をしたんです。そうしたら、CM を手がけたプロデューサーさんがアイディアを出してくれて、「クラシックの曲を英語に直してポップな感じで歌ったらCM にまた使えるし、そういう展開だったらアルバムを出す意味があるんじゃないですか?」ってレコード会社の方を説得して、アルバムにすることになったんです。昔のクラシックって著作権はもう今関係ないですから、クラシックをそのままただ使うんじゃなくて、ちょっと切って真ん中は違うメロディーを入れて、また戻してみたいにして、ポップなクラシックにしたら絶対いいよっていうことになって、選曲して行きました。1曲目の“IF THE WORLD HAD A SONG”はバッハなんですけど(バッハのカンタータ「主よ、人の望みの喜びよ」より)、バッハのまま使うんじゃなくて、みんなが1つの曲を手を取り合って歌っていったら、絶対世界中が幸せになれるよっていうような詞を英語で書いてくれたんですよ。それに合わせて、最初はバッハのメロディを使いながら、またちょっと違うメロディーを入れて、演奏はバッハにしてとかっていう風に、かなり凝ったんですよ。だから、『AMAZING GRACE』というアルバムは、自分でも素晴らしい作品だと思っています。
──“AMAZING GRACE”は英美子さんにとってただ大ヒットした曲というだけでなく、音楽家としてのターニングポイントだったんですね。
英美子:そうですね、すごいターニングポイントでした。
──新曲の“いのちの森”は、前奏がすごく長い曲ですね。制作過程を教えてもらえますか。
澄夫:この曲は、最初は歌詞がなくて、インストで作っていたんですよ。でもレコード会社の意向として、やっぱり歌を入れてほしいということで、歌詞がついたんです。
英美子:前奏が長いのは、「イントロからもう少し長めに音楽を聴いていてもらいたいから」って彼が言っていて。それはそれでいいんじゃないかなって。
澄夫:一番最初は、ムーミンに関係したものだったら何でも、ぜひ使ってほしいっていう気持ちで作ったんですよ。それをフィンランドに行ってプレゼントして、向こうのバンドの人にも「この曲は自由に誰が演奏してもいいように作ったんですよ」って言いたかったんですけど、まあどういうわけかレコードになっちゃって(笑)。だからもう一回作ろうかと思ってます。できれば来年、ヨーロッパツアーをやりたいなと思っているので。可能になるかどうか、これからお話するんですけどね。
英美子:今回、私たちは招待でフィンランドでのコンサートに出演しますけど、90年のテレビシリーズ『楽しいムーミン一家』の曲限定でやるんです。
澄夫:ポスターに「From the 90s TV Series」という文字を増やしただけで、次の日にもうチケットが売り切れちゃったんですよ。
──すごい人気ですね!
英美子:そうなんです、「驚きだね」って。そんな風にアニメの劇伴がすごく人気で、特に、今回初めて音源化された“孤独のモラン”がすごい人気らしいんですよ。
澄夫:フィンランドには若者に徴兵制があるんですけど、偉い軍曹が来ると、みんなが“孤独のモラン”の「テッテテーテー」っていうメロディを口ずさむらしいんです。コンサートで、ロックの人がちょっと口ずさんだだけで、会場がその曲で埋まっちゃうんですよ。「テッテテーテー」「Hey!」って(笑)。
英美子:「そういう捉え方なんだ!?」って。すごく面白いよね、あちらの人たちの解釈は。
──改めて、それぞれのベストアルバムについて、どんなときに聴いてほしいですか?
澄夫:気持ちに余裕があるときに聴いてほしいですね。それだけのんびりしている作品なので、気持ちに余裕があって、のんびりしてるときに聴いてみてください。
英美子:55周年が終わって、こういうアルバムが出たことはすごく自分でも、当時のことを振り返られるし、こういう曲をずっと歌い続けてきたことで今があるんだなと、とても感慨深いものがあります。そして最後に新曲も出せたので、みなさんに楽しみながら聴いていただけたらうれしいです。
編集 : ニシダケン
白鳥英美子のベスト・アルバム
楽しいムーミン一家、オリジナル・サウンドトラック
INFORMATION: 白鳥英美子
【公式HP】
https://emikoshiratori.net/























































































































































































































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