「日本で一番歌が上手いから」って、植松伸夫さんが言ってくれたんです
──英美子さんのベストアルバムには、ムーミン以外の共作もあります。“ヘブンリー・ブルー”は、作詞が澄夫さん、作曲が英美子さんですね(1992年のドラマ『天上の青』主題歌)。
澄夫:作詞作曲を、いつもと逆でやろうと思って書いたんです。
英美子:この曲は、フジテレビの昼ドラの主題歌で、なんで私たちに依頼が来たのかわからなかったんですけど(笑)。昼ドラだし、私が書くと女の詞になるから、じゃあ逆にしようって。テレビドラマの曲は、“LET THE RIVER RUN”(ドラマ『HOTEL』主題歌)もあるので、同じような感じでドラマの主題歌を入れることになったんです。この曲は、音としてすごくいいって言われたんです。ライブでは歌わなかったんですけど、コンサートのPAさんが、音合わせの調整にこの曲を流すんですよ。「なんでこの曲流すの?」って訊いたら、「これはすごくいい録音で、音の調整にちょうどいい」って言うんです。まあ、音的によかったならそれでもいいかって(笑)。
──哀愁があって良い曲だと思います!“LET THE RIVER RUN”はカーリー・サイモンのカバーですが、ドラマのヒットもあって英美子さんの代表曲の1つだと思います。
英美子:これは日本語の歌詞をつけて歌ってほしいって言われたんです。ただ、追い立てるようなところはちょっと日本語だとモゴモゴしちゃうから、英語のまま歌うパートもあって、バックコーラスは、EVEっていうものすごくカッコいい女性グループがやってくれています。私は当時カーリー・サイモンが好きだったので、彼女の雰囲気が日本語になればいいなっていう気持ちで歌っていたんですけど、結構評判が良かったですね。
──今回、トワエモワの“YAKUSOKU ~父に送る手紙~”がボーナストラックになっているのはどうしてですか?
英美子:彼(澄夫)は普段、レコーディングに関してもプロモーションに関しても、プロデューサーとして、どういうふうに歌おうとか、どういうふうにやった方がいいとか、全部やってくれているんです。だからトワエモワの録音のときも彼がほとんどプロデューサーとして、一貫して見ててくれてる感じなんですけど、トワエモワと白鳥英美子は分けて考えているので、ボーナストラックとして収録しました。
──今回取材にあたって、英美子さんの自叙伝的なエッセイ『風たちの輪舞』を拝読させていただいたんですけど、トワエモワ解散後に、お2人は「鴉鷺」(あろ)というユニットを結成して活動していましたよね。そこから色んな変遷がありつつ、公私ともにパートナーとしてキャリアを重ねていらっしゃるわけですが、どのようにしてミュージシャンとして自分自身を保ってやってこられたのでしょうか。
澄夫:(英美子が)トワエモワを組む前から一緒にいますから、いいところも悪いところも分かったつもりでいます。すごくそばにいるわけですから、もし何かダメなことがあったりする場合は、話をできるでしょ?そうやってしっかり話すと、いいときも悪いときも必ず、まとまっちゃうんですよね。それがやっぱりすごく楽だったっていうか。トワエモワの芥川(澄夫)さんも一緒の仲間だし、当時からあんまり活動への葛藤みたいなものはなかったですね。
英美子:たぶん、私たちは珍しいタイプなのかもしれない(笑)。よく言われるのが、夫婦なんですけど、夫婦っていう雰囲気もなくて、友だちという雰囲気だけでもなくて。でも、音楽家同志っていうのでもなくて、2人で一緒にいる感じが、すごく不思議がられるんですよ。
「それってなんだろうね」とかって言いながら、「いつも普通でいればいいんじゃない?」みたいな感覚が2人の中にあるんです。「普通ってなんだろう?」って考えるんですけど、無理をしないとか、我を張らないとか、こう見えさせようとか、そういう気持ちを一切なくせば、何にも怖いことはないよねって。2人で話すと、そんな感じなのよね?
澄夫:うん、そうだね。
──SNS が浸透している時代で、何かに認められたいとか、自我に苦しんでいる人も多いと思うんですよね。そういう自己顕示欲みたいなものは、お2人には全然なかったですか。
英美子:なんか、ないんですよ。特に私は「流れるままに」みたいな感じで。小さい頃から歌が好きでただ歌ってただけなのに、トントン拍子でトワエモワを組むことになって。でも嫌になったらやめればいいよね、ぐらいに執着していなかったので、「忙しすぎてちょっと嫌になっちゃったから、辞めた方がいいよね」って解散したんです。そんな風に、苦しくなったら解決しようとか流れるままに行ったら、55 周年まで来ちゃいました(笑)。
澄夫:(トワエモワは当時)僕がベースを弾いていて、芥川さんも彼女がいて、4人でライブ活動をしていた時期もあるんです。そういう仲間で自然に生活してたから、「(白鳥と芥川が)トワエモワだから」とかってあんまり意識することはなかったんです。
英美子:そうそう、全然なかったよね。でも、男女で組んでいるから「トワエモワって恋人同士ですか?」って言われることは多かったです。「いや、私たちは違うんですよ」って言ってるのに、記事を書く人は、「恋人同士ではないのか!?」みたいにするんですよ。
澄夫:名前が、僕も芥川さんも同じ「澄夫」なので、よく誤解されましたね。
英美子:でもまあ誤解されても、別に違うんだからいいよねみたいな感じでした。だから、本当に流れのままに来ればきっと幸せもついてくるし、チャンスも来るし、そんな感じがします。2人で鴉鷺をやっていたときも、お仕事が止まっちゃって大変だった時期もあったけど、「ちゃんとやってれば、そのうち誰かが聴いててくれるだろう」みたいな感じでやっていたら依頼が来たり、チャンスがついて来るんですよね。あれは不思議だったなって思います。鴉鷺が終わった後も、「ソロでやった方がいいんじゃない?CM ソングとか依頼が来たら作ろうか?」って彼が言っていたら、CMソングの依頼が来たり。
澄夫:歌を彼女に歌ってもらうって言うと、「あ、白鳥さんだったら OK です」みたいな感じで依頼が来ちゃうんです。だから仕事は結構来ましたね。
──チャンスが来るといえば、『FINAL FANTASY Ⅸ』の主題歌 “Melodies Of Life”はどんな流れから歌唱することになったんですか?
英美子:それも不思議なんですよ。
澄夫:はじめに、2人の男性が事務所に来て、「こういうものがあるんだけど、白鳥英美子さんに歌ってほしいんです」と言うんです。でも、僕はそれが何か全然知らなくて。
英美子:2人とも、ゲームをしないですから。
澄夫:キングレコードに電話して、「これ知ってる?」って聞いたらよく知っていて。それで、じゃあ話だけ聞いてみようということになって。でも、当時50歳ぐらいの歌手が、若い人のこういうゲームの曲に合うのかなって、「なんで白鳥英美子なんですか?」って訊いたら、「日本で一番歌が上手いから」って、作曲の植松(伸夫)さんが言ってくれたんです。それで、「じゃあ、本人に話してみます」って返事をしたんですけど、キングレコードの人は「絶対やるべきだ」って言っていて。
──それは絶対そう言いますよね。
澄夫:「そんなにすごいのか!?」と思って若い人に『FINAL FANTASY』について訊いたらみんな知っているし、ムーミンじゃないけど、知らないのは僕だけだと思って(笑)。それで今度は僕がスクウェアに尋ねて行って、決まったんです。
英美子:私は、「ゲーム音楽で曲を歌うってどういうこと?」って、わからないままで。それでまずゲームの説明をされて、「何日もかかってクリアをしてやっと最後にたどり着いた時に、白鳥英美子さんの声がファ~っと流れてくるような、そんな感じの歌なんですよ」って言われて。それで譜面と詞と、ちょっとメロディーが入ったものを聴かせていただいたら、なかなか素敵なメロディーで。ゲーム音楽と言ってもピコピコしてるんじゃなくて、ちゃんとメロディックな普通の曲で歌詞も意味があって、「へえー、ゲームにこういう曲をつけるんだ」と思って歌うことにしたんです。
──その結果、世界的にも知られた有名曲になりました。
英美子:本当にそうですよね。こんなことになるとは想像もできなかったです。私たちはゲームをクリアしていないので、エンディングで聴けてないんですけど(笑)。でも、コンサートでサイン会をしたら、「僕は何日もかかってクリアしました」っていう若者がいっぱいいて、うれしかったですね。
澄夫:こないだ植松さんのコンサートに出させていただいたときもすごい声援だったし、あれはうれしいよね。ゲームやアニメの音楽をやるようになってから、お客さんとか聴いてくれる人に逆に感動を与えられるんですよ。
英美子:ゲームやアニメ系の音楽以外だと、私のコンサートはわりとシーンと静かになっているんですけど、『FINAL FANTASY』や『ドラえもん』の曲を歌ったりしていくと、お客さんがすごく盛り上げてくれるんです。
澄夫:こっちが鳥肌が立ったりしてね。
英美子:本当に、うれしいよね。























































































































































































































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