【Drop's連続企画】中野ミホ単独インタヴュー
──「バンドで歌うことで全部発散していた」

今年結成10周年を迎えながらも、さらなる進化を遂げつつあるDrop's。昨年12月に石川ミナ子(Dr)加入後の新体制として初のミニ・アルバム『organ』をリリースした彼女たちから、早くも新作『trumpet』が届いた。OTOTOYでは、3月29日(金)の新作リリースを記念して、計3回の連続企画を掲載。第1回の今回は、Drop'sのソングライターでありフロントマンの中野ミホへの単独インタヴューを行った。高校時代からバンドをはじめた彼女が、どのように音楽に出会い、音楽を奏でることにのめり込んでいったのだろうか。たっぷりと話を訊いた。
「毎日がラブソング」を先行配信中!
Drop's/毎日がラブソングDrop's/毎日がラブソング
INTERVIEW : 中野ミホ(Drop's)
前作『organ』でDrop'sのメンバー全員にインタヴューを行った際に、4人の中でもヴォーカルの中野ミホにはとても物静かな印象を受けた。とはいえ、歌っているときの中野は激しく疾走するロックをシャウトすることもあれば、バラードを情感たっぷりに歌い上げることもある。つまり、うちに秘めた感情は誰よりも豊かなはず。そんなことを思いながら、そのパーソナリティを掘り下げるべく、単独取材を行った。インタヴュー中の彼女は、とても朗らかに感じたままを素直に語ってくれたと思う。そして、そこから覗かせる意志の強さ、ふつふつと燃える情熱はDrop'sの音楽そのものだった。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 作永裕範
古い音楽はいつも流れていた
──幼い頃の中野さんは、どんな子どもだったんですか?
私はひとりっ子なんですけど、小さい頃から歌うのが好きだったり、活発な子どもだったと思います。そんなにいつも友だちと遊んでいたというわけではないんですけど。家族とよくいろんなところに出かけたりもしていました。両親とは、いまもすごく仲が良いんですよ。母とは毎日のようにLINEをしたり。
──へえ〜! ひとり娘ですから、上京してからすごく気がかりなんでしょうね。
そうですね。ときどき、缶詰とかを段ボールで送ってくれます(笑)。
──子どもの頃に聴いた音楽や観ていたテレビの記憶ってありますか。
普通にテレビで流れてくる「だんご3兄弟」とかは好きだったと思うんですけど、父がザ・ビートルズとか洋楽が好きで。いま考えると、古い音楽はいつも流れていた気がします。

──家に帰ったときに、お父さんと音楽の話をします?
しますよ。去年も、父と一緒にポール・マッカートニーの東京公演を観に行きました。いまもそういう音楽が好きで。
──本当に親子仲が良いですね。じゃあ、Drop'sの音楽について話したりもしますか? 「この曲がいい」とか。
ああ〜、自分たちの音楽についてはあんまり言わないですね。でも、札幌でライヴをやるときにはいつも観に来てくれたり、いろいろチェックはしてくれているみたいです。
──お父さんが持っていたCDやレコードをチェックしたりはしていましたか。
CDは小さいときから家に普通にあったんですけど、高校を卒業したくらいに、父がいろんな古いレコードをくれたんですよ。そこから、レコード・プレイヤーを買って、レコードにハマりました。それまではCDを聴いていたんですけど。

──最初に買ったり、買ってもらったりしたCDって覚えてます?
SMAPの「世界に一つだけの花」です。小学校に上がったくらいだったと思うんですけど。
──すごく流行ってましたもんね。アイドル好きだったんですか?
母に連れられて、SMAPのコンサートに行ったりしていたんです(笑)。それで好きになりました。
バンドで歌うことで全部発散していたんだと思います
──ロックを聴くようになったのはどんなきっかけだったのでしょうか。
小学生からずっとエレクトーンを習っていて、楽器を弾いたり歌ったりするのが好きだったんですけど、中学生くらいから洋楽を聴きはじめたんです。コンピレーションCDを聴いていたときに、オーストラリアのJETというバンドの曲が入っていて。そのCDに入っていた他のアーティストの曲はいまっぽかったんですけど、JETの曲だけ「これ、ビートルズの曲みたいだな」って思って好きになったんです。
──JETというと、どうしても真っ先に「Are You Gonna Be My Girl」が浮かびますけど。
そうですよね。でも、あの曲じゃないんですよ。JETってああいうガーンていう曲もあるけど、綺麗なバラードもあって、個人的にはそっちの方がすごく刺さったんです。「Look What You've Done」という曲なんですけど。それでJETのことを知ってオリジナル・アルバムを買ったら、すごく叫んでいてびっくりしたんですけど(笑)。
それと、叔父もすごく音楽が好きで、BLANKEY JET CITYとかthee michelle gun elephantとかのCDを持っていたんです。私は、最初の邦楽ロックの入りがThe Birthdayだったんですけど、叔父がCDを持ってそうだなと思って聞いてみたらやっぱり持っていたので貸してもらって(笑)。そこから日本のロックがすごく好きになりました。
──その頃には、自分で曲を書いたりもしていたんですか。
曲は作ってなかったんですけど、中学生くらいから詞は書いたりしていました。でも、周りにバンドを組むような人もいなかったので、高校に入ったら軽音楽部に入ってバンドを組もうってずっと決めていました。中学のときは詞を書いたりギターを友だちに教わったりしていました。
──それで、高校の軽音楽部でメンバーと出会ったわけですね。
そうですね。
──中野さんって、お話している感じとかはとても穏やかで大人しい印象ですけど、歌っているときはすごく激しいですよね。バンドで歌うようになったときって“変身”するみたいな感覚だったんですか。
う〜ん…… 中学生で詞を書いている頃から、自分のモヤモヤした気持ちとかイライラしていることとか、どちらかというとマイナスな感情を書いていたんです。それが、バンドのみんなと合わせて音になったときに、すごく楽しくもあるけれど、自分の感情を唯一吐き出して良い場所になるというか。自分では“変身”という感じはしていないけど、自然とそうなっていたというか、バンドで歌うことで全部発散していたんだと思います。
──なるほど。じゃあ、バンドをはじめた頃は、とにかく自分が好きな音楽を歌って発散したいという感じで?
最初はオリジナル曲もなかったし、コピーをやるだろうなって自分で思っていたんです。でも、高校に入っても、案の定誰もミッシェルとかThe Birthdayを知らなくて。それで、なにをやればいいかなって考えたんですけど、Superflyが日本のメジャーのトップにいるのに、すごくロックンロールでかっこいいなと思っていて。Superflyならみんな知ってるし、バンドスコアを買ってきてみんなでコピーしました。
──そのSuperflyにいた多保孝一さんと、いまは一緒に作品を作っているんですからすごいですよね。
本当そうですね、はい(笑)。
──そこから、徐々にオリジナル曲をみんなに聴かせるようになっていったんですか。
高校2年くらいからライヴをやるようになって、地元の楽器屋さんのコンテストに出たんです。タダでライヴができるからという理由で(笑)。コンテストに出るなら、オリジナル曲があった方がいいのかなということで、1曲作ったんです。そこがはじまりです。
──自分の気持ちを書いた詞や曲を、人に聴かせることには最初から抵抗はなかったんですか。恥ずかしい、とか。
あんまりなかったと思います。むしろ、自分の頭の中に最初から曲のイメージがあって、それをどうみんなに伝えるかということが、すごくもどかしくて。でも、そのぶん曲ができたときはすごくうれしかったです。

──そういう作り方は、いまも同じなんでしょうか。
いまは、弾き語りで作ってメンバーに投げたら、みんなからすごくおもしろいものが返ってきたりもするので、イメージを伝えるときもあるし、1からみんなでアレンジするときもあります。
──軽音楽部でのバンド結成から、ミュージシャンになりたいという気持ちも芽生えていたんですか。
なにか根拠のない自信がその頃からあって(笑)。全員女の子でバンドをやっている人たちも周りにもいなかったし、「これは絶対かっこいい」って思っていて。そのときは、上京したいとかバンドでずっとやっていくとかは考えていなかったですけど、インディーズでCDを出すことになったときに、ちゃんとやりたいなと思うようになりました。
これからもっと新しいことをやって、どんどんおもしろく転がって行きたい
──バンドをはじめた頃を振り返ると、ご自分の歌い方に変わったところは感じていますか。
高校の頃はもうとにかく、がなっていたというか、叫んでいたというか。それが良いと思ってやっていたんですけど、それだけじゃなくて色んな音楽を聴くなかで、いろんな歌い方の魅力に気が付きました。詞の内容もどんどん変わってますし、いろいろな面が変わっていると思います。
──今作でも、「空はニューデイズ」や「ムーン・ライト」とか、情景に自分の心象風景を重ねた世界が中野さんが書く詞の特色だなと感じるのですが、こういう歌詞ってどんなときに生まれるんですか。
心に引っかかることとか、散歩していたり外を歩いたときに見た景色とかは、いつもメモするようにしていて。それがたまっていって、曲を書くときにその断片を拾い集めて、自分の気持ちに重ねて、どんどんイメージを膨らませて行くんです。
──メモって、紙に書いておくんですか? それともスマホに?
どっちもあります。歩いていてすぐに書けないときにはスマホに書いたり。紙に書くことも好きなので、ノートに書いたりもします。
──高校時代、授業中に思いついてノートに書いたりとかしてました?
ああ〜、あったと思います(笑)。

──そういう、夢想しているような時間って学生時代から多かったですか。
そうですね、あんまり友だちもいなかったので(笑)。大学受験もしなかったから時間もすごくあったので、「いま、自分はどういう気持ちなんだろう?」みたいなことを掘り下げたり、いろんなことを考えたりはしていました。
──バンドを結成した10年くらい前に書いた言葉の断片が、いま歌詞になったりすることも?
何年も前にメモした気持ち、というのはないですね。景色とかはあるかもしれないですけど、気持ちとしてはいまのことを書きたいと思うので。それが、最近見た景色とリンクして曲になっていると思います。
──中野さんは弾き語りのライヴもしていて、ソロとバンドという2つのチャンネルを持っていますよね。なぜ、最初からひとりで歌うのではなくて、バンドをやりたかったのでしょうか。
詞はすごく書きたかったんですけど、自分が曲を書くとは思っていなかったんです。「曲は誰かに作ってもらおうかな」くらいの気持ちだったので(笑)。バンドで人と一緒にやることで生まれる化学反応みたいなものがすごくあるし、みんなの力が借りたいというか。それに、ライヴをしていても自由だし。ライヴ中に「あ、いま、荒谷めっちゃカッコイイな」とか思ったら、やっぱりこっちも「やるぞ!」って思うんですよ。そういうのが楽しいですね。ライヴはひとりのときとは違う楽しさがあります。どっちも好きなんですけど。
──ひとりで弾き語りライヴをするときには、どんな楽しさがありますか。
ひとりのときは、100%自己責任というか、間違えても全部自分のせいなんですけど、本当に自分の好きなリズム感、呼吸でできるところが楽しくて。すごく小っちゃい声で歌ったりしても、自分がギターのヴォリュームを小さくすれば聴こえるじゃないですか? そういう振り切った表現ができるのが、ひとりのときの楽しさですね。
──では、メンバーそれぞれについて教えてください。まず、ギターの荒谷さんは中野さんにとってどんな人ですか。
女性で、ああいう感じでガッていけるギタリストってあんまりいないと思うし、すごくカッコイイと思ってます。最近は新しい音楽を聴いたりしていて、いろいろ教えてくれたりしてくれるので、頼もしい仲間ですね。ちょっと、天然なところもありますけど(笑)。すごくおもしろくて、普通に話していて楽しい人です。
──同じく高校時代からのお付き合いのベースの小田さんについてはいかがでしょうか。
小田は、あんまり自分からいっぱい喋ったりしない人なんですけど、物事を冷静に見て考えていて、的確な判断をくれる人です。やっぱり、縁の下の力持ち的な、ベーシスト感はありますね。“芯があってカッコイイ女”という感ですね(笑)。
──ドラムの石川さんについてはどうですか。
ミナ子さんとは上京してから出会ったんですけど、ずっと東京で音楽をやってきた人で、本当にすごく努力をするし、ストイックだし、音楽に対する情熱とか向き合い方を尊敬していて。このバンドに入ってくれなかったらどうなっているんだろう、というくらいめちゃくちゃ感謝している人物ですね。カッコイイ人です。
──最後に、バンド結成10周年を迎えたお気持ちを聞かせてください。
気付いたら10年が経っていたという感じなんですけど、これからもっと新しいことをやって、どんどんおもしろく転がって行こうと思います。10周年とは言っていますけど、あんまり関係なく新たな気持ちで活動していきます、そういう風に見てもらえたらうれしいです。

次回は荒谷朋美(Gt)、小田満美子(Ba)、石川ミナ子(Dr)の楽器隊3人へのインタヴュー! 3月22日(金)公開予定です。お楽しみに!
編集 : 鈴木雄希
『trumpet』のご購入はこちらから
過去作もチェック!
新→古
過去の特集ページ
・透き通った冬の空気になじむ、泥臭く力強いロックンロール──新生Drop'sの幕開けを飾る『organ』が完成
https://ototoy.jp/feature/2018122101
LIVE SCHEDULE
Drop’s ワンマン・ライヴ
〈Drop’s 「APRIL FIRST CLUB’19〉
2019年4月1日(月)@新宿レッドクロス
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
Drop’s ツーマン自主企画
Drop’s 10th Anniversary「Sweet & Muddycheeks」(Ms.April)
2019年4月7日(日)@大阪 2nd LINE
2019年4月12日(金)@札幌 mole
【詳しいライヴ情報はこちら】
http://drops-official.com/schedule
PROFILE
Drop's

2009年北海道・札幌にて同じ高校の軽音楽部で出会った中野・荒谷・小田らによりDrop’sを結成。
Vo.中野ミホの圧倒的ヴォーカルを基軸にしたブルージーなサウンドが醸す強烈なインパクトと時代に決して媚びない独特な存在感は結成当時より話題に。
2013年メジャー・デビュー。デビュー以来4枚のフル・アルバムと2枚のミニ・アルバムなどをリリース。直木賞作家の小池真理子の半自叙伝的文学作品としても高い評価を得た映画『無伴奏』や性暴力について描かれた問題作、映画『月光』などで主題歌として起用される他、最近ではJR東日本「行くぜ、東北。SPECIAL 冬のごほうび」といったCMでも中野ミホ(Vo.)が歌起用されるなど、これまでのライヴ・バンドとしての活動に留まらずアーティストとしての幅を広げていく。
2017年、活動拠点を地元・札幌から東京に移すと同時に新ドラマー石川ミナ子が新たに合流。新生Drop’sとして活動がはじまる。2018年12月、新生Drop’sとしては初めてとなる約2年半ぶりのスタジオレコーディング・ミニ・アルバム『organ』が完成。Drop’sあこがれの作曲家・多保孝一氏と中野ミホの初共作となったリード曲「Cinderella」ではこれまであまり見られなかったダンサブルなリズムや印象的なリフを取り入れバンドは新たなステージへ。
2019年3月にはミニ・アルバム『organ』とは姉妹作品となるミニ・アルバム『trumpet』のリリースも発表!バンド結成10周年となる2019年へ向け進化を遂げたDrop’sサウンドはもう鳴り止まない!
【公式HP】
http://drops-official.com
【公式ツイッター】
https://twitter.com/Drops_official